金 日 成

祖国の寸土を血潮をもって死守しよう
全朝鮮人民への放送演説 
1950年10月11日

 親愛な同胞の皆さん!

 兄弟姉妹の皆さん!

 英雄的な人民軍将兵諸君!

 勇敢な男女パルチザン諸君!

 強盗アメリカは、わが祖国を植民地にし、3千万朝鮮人民を奴隷にするため、朝鮮に対する武力侵略をつづけています。

 アメリカ帝国主義者は、これまでに甚大な打撃をこうむり、莫大な兵力を失いましたが、太平洋地域の兵力を総動員して一大攻勢にでました。

 人民軍は戦闘をつづけながら、やむをえず、戦略的な後退をしなければならなくなりました。こんにち、前線は、重大な局面に処しています。祖国には、大きな危機が迫っています。

 朝鮮で手先の李承晩一味が惨敗をこうむり、反動支配体制が一瞬にして崩壊するのを見たアメリカ帝国主義者は、かねてからの計画に従い、朝鮮人民に対する公然たる武力侵略を開始しました。

 アメリカ帝国主義者の武力干渉は、朝鮮を植民地にして朝鮮人民を奴隷にし、朝鮮を、アジア諸国人民の民族解放闘争を鎮圧し中国とソ連を侵略するための軍事戦略基地にすることにその目的があります。

 アメリカ帝国主義者は、朝鮮に対する侵略行為をおおい隠すために国連の看板を利用しています。彼らは、朝鮮におけるアメリカ軍の軍事行動が国連安全保障理事会の「決定」によるものだと広言しています。

 しかし、彼らの武力干渉は、実際には国連安全保障理事会の「決定」採択以前に開始されており、朝鮮人民の代表はもちろん、国連常任理事国であるソ連と中華人民共和国代表の参加なしに採択されたこの「決定」は、それ自体が効力をもたないものであります。

 強盗アメリカ帝国主義は、国連の旗に隠れて、わが国の領土を血でそめ、野獣的蛮行をほしいままにしています。アメリカの航空機や艦船は、平和的な都市や農村を焼き払い、朝鮮人民が血と汗で築いた産業企業所をことごとく破壊しています。アメリカ帝国主義侵略軍は、平和的住民を老弱男女の別なく大量殺りくしています。彼らは、国連憲章を乱暴に違反し、国際法と人間の道徳的規範を無視し、最も野獣的な方法で自由と独立を志向する朝鮮人民の不屈の闘志をくじこうと狂奔しています。

 しかし、彼らが、いかにあがこうとも、祖国の自由と独立のために侵略者を撃滅する正義の祖国解放戦争に一丸となって立ち上がった朝鮮人民をひざまずかせることはできず、勇敢な人民軍とパルチザン、そして、すべての後方人民の愛国的な戦いを阻むことはできません。

 英雄的人民軍の怒涛のような進撃、アメリカ帝国主義侵略軍は敗退を重ね、ついにわが国の領土で完全撃滅の危機に瀕しました。こうなるや彼らは、いかなる犠牲を払っても、無残に失墜した威信を回復し、朝鮮に対する侵略目的を達成するため、太平洋方面の陸海空軍と地中海艦隊の一部、それに予備艦隊まで総動員して、狂気じみた攻勢を加えてきました。

 アメリカ帝国主義侵略者は、このように数10万に達する膨大な兵力を朝鮮戦争に投入し、去る9月16日には不意に5万余の軍隊を仁川に上陸させました。仁川上陸作戦には、数100隻の艦艇と約1000機の航空機が投入されました。敵は一挙にソウルを占領しようとしました。しかしそれは、簡単に成功することはできませんでした。人民軍は、ソウル市民と人民義勇軍の支援のもとに、優勢な敵の攻撃を14日間も阻止して、無比の愛国的献身性と英雄主義の模範を示しました。

 敵は、他の前線一帯でも優位をしめました。

 このような情勢に直面し、人民軍は戦略的後退を余儀なくされました。前線には重大な事態が生じました。敵は38度線を越え、以北地域に侵攻しています。

 アジアの平和と安全を大きく脅かしながら朝鮮の38度線以北地域に侵攻しているアメリカ帝国主義者は、朝鮮問題の平和的解決を目的とするソ連政府のいま一つの提案も拒否しました。国連総会でソ連代表の提出した提案は、軍事行動の中止、朝鮮の領土からの外国軍隊の撤退、南北朝鮮を通じた全般的自由選挙による朝鮮の平和的統一の実現を予見したものでした。この提案は、朝鮮人民の利益に全的にかなうものです。しかし、アメリカ帝国主義者は、彼らの意のままになる投票機械を利用し、ソ連政府のこの提案さえ拒否し、強盗さながらの略奪戦争をつづけています。

 アメリカ帝国主義者は、朝鮮に対する武力侵略を拡大しつつ、凶悪な反人民的略奪行為をますます強化しており、朝鮮人民ばかりでなく全アジア人民の最も凶悪な敵としての正体をあますところなく露呈しています。

 祖国の自由、独立と子孫の幸福のために、再び植民地奴隷とならないために、朝鮮人民がアメリカ帝国主義侵略者に反対しておこなっている戦争は、最も崇高な正義の戦争であります。

 歴史が示しているように、祖国の自由と独立をめざす人民の偉大な戦いは、平坦な道ではありません。この過程には、成果もあれば一時的な失敗もあります。ソ連人民の闘争経験から、そのような実例を見ることができます。10月社会主義大革命後、アメリカ、イギリス、フランスなどの帝国主義武力干渉者は、幼いソビエト共和国に侵攻し、その抹殺をはかりました。当時、包囲網を狭めてロシア中央を圧縮し武力干渉者は勝利は間近にあると信じました。しかしソ連人民は、帝国主義連合勢力に反対する困難な戦いで、武力干渉者を退けて勝利者となり、ソビエト祖国の自由と独立を守りぬきました。

 中国人民の戦いからも、そのような例を見出すことができます。帝国主義者と中国反動派は、祖国の自由と独立をめざす中国人民の抗争を鎮圧できるものと考えました。しかし中国人民は、結局、国内反動と帝国主義侵略勢力を撃破し、革命の勝利をかちとりました。

 滅亡の運命にある帝国主義は、歴史の歯車を逆転させようと狂奔するものです。彼らはロシアでそれを試みましたが、失敗しました。彼らは中国でも、やはりそれを試みましたが、成功しませんでした。いま帝国主義者は、朝鮮人民を奴隷化しようとしています。しかし、強盗アメリカ帝国主義の侵略計画は、今度も必ず惨めな失敗に終わらざるをえないでしょう。

 朝鮮人民は、アメリカ帝国主義侵略者に反対する苛烈な戦いで無比の勇敢さと英雄主義を発揮しています。こんにち、朝鮮人民が祖国の自由と独立をめざす正義の民族解放戦争に総決起し、無比の勇敢さと不屈の闘志を発揮しているのは、決して偶然の要因による一時的なものではありません。それは、朝鮮人民が長いあいだ日本帝国主義のもとで奴隷生活の苦汁を味わったため、二度と帝国主義者に国を奪われず、二度と亡国の民にはなるまいという確固たる民族的自覚をもっているためであり、外国帝国主義の侵略に反対する民族解放闘争を通じてのみ、祖国の自由と独立を達成し、自分白身と子孫の幸福と繁栄をなし遂げることができることを確信しているからです。

 祖国と人民の解放のためにすべてをささげる決意にみち、みずからの大業の正しさを確信している朝鮮人民は、いかなる困難や厳しい試練も勇敢に乗り越え、必ず輝かしい勝利をおさめるでしょう。こんにち、我々には、勝利の十分な条件が整っています。勝利は、必ず我々のものであります。

 3か月間の戦争は、朝鮮人民がいかに偉大を力をもっているかを立派に示しました。祖国の自由と独立、民主改革の成果を守るために、自分自身の幸福と明るい未来のために、二度と亡国の民の悲しみを味わわぬために、アメリカ帝国主義侵略者とその手先、売国奴李承晩一味に反対する戦いに立ち上がった朝鮮人民は、団結の威力と不屈の闘志を全世界にはっきりと示しました。

 親愛な同胞の皆さん!

 勇敢な人民軍将兵とパルチザン諸君!

 こんにち、わが国の直面した危機を打開し、侵略者を撃退し、祖国と人民の運命を救うために、不屈の闘志を発揮して力強く戦わなければなりません。

 人民軍将兵は、祖国の寸土をも死守し、都市と農村を守るために、最後の血の一滴までささげて勇敢に戦うべきであります。そして、父母兄弟を殺りくしたアメリカ帝国主義侵略者と反逆者李承晩一味に幾百倍もの報復を加え、既にかちとった民主改革の成果を守り抜かなければなりません。

 運輸・逓信部門の働き手は、輸送と通信事業を現情勢に即応して改編し、敵の爆撃で破壊された道路や鉄道を早急に復旧し、運輸・逓信手段を保護し、前線への各種物資の供給を正確に保障しなければなりません。労働者は、前線の補給を保障するため寸秒を惜しんで兵器と砲弾、銃弾をより多く生産しなければなりません。農民は、さらに多くの収穫をあげ、前線と後方に食糧を十分に供給し、取り入れた穀物を大切に保管し、現物税を遅滞なく納入しなければなりません。

 南朝鮮の農民は、実施された土地改革の成果を守り、祖国解放のためにアメリカ帝国主義侵略者とひきつづき勇敢に戦わなければなりません。

 すべての人民は、敵の背後を撹乱し、後退を余儀なくされたときには、物資と鉄道運輸手段を残らず移動させ、1台の機関車や車両、1粒の米も敵の手に渡してはなりません。

 被占領地域では、広範にパルチザン闘争を展開し、敵の指揮部に対する奇襲掃討、道路や橋梁など敵の補給線の切断と電信・電話施設など通信手段の破壊、敵の倉庫や軍需物資の焼却を断行すべきであります。

 すべての人民は、高度の警戒心をもって、わが後方に潜入したスパイ、破壊・謀略分子を残らず摘発処断するとともに、デマを流す者、卑怯者、逃避分子と妥協することなく戦うべきであります。

 すべての朝鮮人民は、祖国解放戦争の勝利をめざして全力を尽くし、人民軍をあらゆる面から極力援護しなければなりません。

 祖国の自由と独立をめざす朝鮮人民の戦いは、孤立無援ではありません。人民軍の全将兵と敵背後のパルチザン、そして、すべての朝鮮人民は、我々の偉大な戦いがソ連と中華人民共和国、人民民主主義諸国人民の大きな支持と援護を受け、すべての進歩的人民の一致した同情のなかで戦われていることを知るべきであります。

 こんにち、我々の最も重要な課題は、祖国の寸土をも血潮をもって死守し、敵に新たな決定的打撃を加えるため、すべての力を整えることであります。外国武力干渉者と李承晩一味を祖国の地から一挙に、そして永久に掃討しなければなりません。

 全朝鮮人民は、朝鮮民主主義人民共和国の旗、勝利の旗を高くかかげよう!

 英雄的朝鮮人民軍に栄光あれ!

 敵の背後で勇敢に戦うパルチザンに栄光あれ!

 祖国の自由と独立と栄誉のために、アメリカ帝国主義侵略者との戦いに立ち上がった英雄的朝鮮人民万歳!
                                               
出典:『金日成著作集』6巻


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