金 日 成

すべての力を戦争勝利のために
全朝鮮人民への放送演説
−1950年6月26日−


全朝鮮人民への放送演説をおこなう金日成主席
1950年6月26日

 親愛な同胞のみなさん!

 愛する兄弟姉妹のみなさん!

 人民軍の将校、下士官、兵士諸君!

 共和国南半部で活動しているパルチザン諸君!

 私は朝鮮民主主義人民共和国政府を代表して、みなさんに次のように訴えます。

 売国奴李承晩かいらい政府の軍隊は、6月25日、38度線の全域にわたって共和国北半部にたいする全面的な攻撃を開始しました。勇敢な共和国警備隊は敵の侵攻を迎えうって激戦を展開し、李承晩軍の攻撃を挫折させました。

 朝鮮民主主義人民共和国政府は現情勢を検討し、人民軍に断固たる反撃戦を開始して敵の武力を掃討せよ、と命令しました。人民軍は共和国政府の命令によって、敵を38度線以北の地域から撃退し、38度線以南の地域へ10〜15キロメートル前進しました。人民軍は甕津(オンジン)、延安(ヨンアン)、開城(ケソン)、白川(ペチョン)などの各都市と多くの村落を解放しました。

 我が国のすべての愛国的人民は平和的方法で祖国を統一するために全力を尽くしてきたにもかかわらず、売国奴李承晩一味は人民に背き、同胞同士の内乱を引き起こしました。

 広く知られているように、必死になって祖国の平和的統一に反対する李承晩一味は、以前から内乱の準備を進めてきました。かれらは南朝鮮人民の膏血をしぼり、軍備の拡張と後方の準備に狂奔しました。かれらは、前代未聞のテロ暴圧によって、南朝鮮のすべての民主的な政党、大衆団体を非合法化し、愛国的で進歩的な人士を逮捕、投獄、虐殺し、李承晩の反動体制にたいするささいな不満の表現にたいしても厳しい弾圧を加えました。祖国の独立と自由、民主主義のためにたたかった数十万もの朝鮮人民のすぐれた息子や娘たちが、敵によって投獄され虐殺されました。

 李承晩一味は内乱挑発の陰謀をおおい隠すために、たえず38度線で衝突事件を引き起こし、人民を常時不安におとしいれ、これらの挑発的な衝突事件の責任を朝鮮民主主義人民共和国に転嫁しようと策しました。李承晩一味は、いわゆる「北伐」を準備する過程で、アメリカ帝国主義者の指示に従い、朝鮮人民の不倶戴天の敵、日本軍国主義者と結託することさえためらいませんでした。

 売国奴李承晩一味は、我が国の南半部を植民地、軍事戦略基地としてアメリカ帝国主義者に売り渡し、南半部の経済をアメリカ独占資本家の支配にゆだねました。

 アメリカ帝国主義者は南半部の経済命脈を奪い取り、民族経済を余すところなく破綻させました。アメリカ帝国主義者は、我が国で切実に必要とする米穀とタングステン、黒鉛など多くの天然資源を略奪しています。南朝鮮の中小企業家と商人は、アメリカの資本に抑えられ、破産を余儀なくされています。祖国の南半部では大部分の工場、製造所が閉鎖され、失業者は数百万にのぼっており、農民はいまなお土地を得ることもできず、農業は年とともに衰退しています。南朝鮮人民は、塗炭の苦しみにさいなまれ飢えにあえいでいます。

 親愛な同胞のみなさん!

 朝鮮民主主義人民共和国政府は我が国のすべての愛国的・民主的政党、大衆団体および全人民とともに、同胞同士の内乱と流血の惨禍をさけ、平和的方法による祖国の統一のためにあらゆる努力を傾けてきました。既に、1948年4月の南北朝鮮諸政党・大衆団体代表者連席会議で、祖国の平和的統一のための最初の試みがなされました。

 しかし、売国奴李承晩一味はこの試みを破綻させ、アメリカ帝国主義者とその侵略道具である「国連臨時朝鮮委員団」の指示のもとに1948年5月10日、南朝鮮単独選挙をでっちあげ、我が国の北半部にたいする武力侵攻の準備を強化しました。

 祖国の平和的統一と完全独立を達成するために、昨年6月、祖国戦線のもとに結集した南北朝鮮の72の愛国的政党、大衆団体は総選挙を実施する方法によって、我が国を平和的に統一するよう提案しました。全朝鮮人民がこの提案を熱烈に支持したにもかかわらず、反逆者李承晩一味はこの提案も拒否しました。

 祖国統一民主主義戦線は全人民の意思を反映して、1950年6月7日、かさねて祖国の平和的統一を促進するための方策を提案しました。しかし反逆者李承晩一味は、平和的な祖国統一促進についての祖国戦線の提案を支持する人々を反逆者とみなすとして、その提案の実現をも破綻させました。

 1950年6月19日、朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議常任委員会は、民主的政党、大衆団体の要望にもとづいて、祖国の統一独立と民主的な発展にたいする不屈の意志を表明するとともに、朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議と南朝鮮の「国会」を連合して単一の全朝鮮立法機関にする方法によって、祖国の平和的統一を実現するよう提案しました。

 反逆者李承晩一味は、祖国を平和的に統一しようという全朝鮮人民の一致した願いと、我々の正当な誠意ある提案にたいし、内乱の挑発をもってこたえました。

 この反逆者一味は、かれらが引き起こした同胞同士の内乱でどのような目的を達成しようとしているのでしょうか。

 反逆者李承晩一味は同胞同士が殺しあう戦争によって、南半部を支配している反人民的、反動的な支配制度を共和国北半部にまでおしひろげようとしており、朝鮮人民のかちとった民主改革の成果を奪いとろうとしているのです。

 李承晩反動一味は、共和国北半部で実施された無償没収と無償分配の原則による土地改革の結果、土地の主人となった農民から土地をとりあげて再び地主の手にかえし、北半部の人民がかちとったすべての民主的な自由と権利を奪おうとしています。かれらは、我が国をアメリカ帝国主義の植民地に変え、全朝鮮人民をアメリカ帝国主義の奴隷にしようとしています。

 親愛な兄弟姉妹のみなさん!

 祖国と人民には大きな危機が迫っています。

 朝鮮人民は、李承晩一味に反対するこの戦争で、朝鮮民主主義人民共和国とその憲法を守りぬき、南半部に樹立された売国的かいらい政権を打倒して祖国の南半部を反逆者李承晩一味の反動的な支配から解放し、人民政権である人民委員会を南半部に復活させ、朝鮮民主主義人民共和国の旗のもとに祖国統一の大業を完成しなければなりません。

 売国奴李承晩一味が引き起こした内乱に反対する我々の戦争は、祖国の統一と独立、自由と民主主義のための正義の戦争であります。

 全朝鮮人民は、再び外国帝国主義者の奴隷になることを欲しないならば、李承晩売国「政権」を打倒し、その軍隊を粉砕する救国闘争に決起しなければなりません。我々はいかなる犠牲もいとわず、必ず最後の勝利をかちとらなければなりません。

 全朝鮮人民は、反逆者李承晩一味の背後にいるアメリカ帝国主義者の一挙一動を、常にするどく監視し、警戒心を高めるべきであります。

 人民軍は、共和国北半部の民主改革の成果をかたく守り、南半部の同胞を反動的な支配から解放し、人民共和国の旗のもとに祖国を統一するための正義の戦いで、勇敢さと献身性を発揮しなければなりません。

 人民軍の将校、下士官、兵士は、人民のなかから生まれました。人民軍は、朝鮮人民のすぐれた息子や娘たちで組織された朝鮮人民の武力であります。人民軍は祖国と人民を愛する精神で教育、訓練され、近代的な精鋭兵器で装備されており、祖国と人民の利益のために生命をささげて戦う気高い愛国主義精神で武装しています。全人民軍将兵は、祖国と人民のために最後の血の一滴までささげて戦わなければなりません。

 共和国北半部の人民はすべての活動を戦時体制にきりかえ、短期間に敵を掃討するために、すべての力を戦争勝利のためにささげなければなりません。人民軍にたいする全人民的な援護活動を組織し、人民軍部隊をひきつづき増員、補充し、前線へのいっさいの必需品と軍需品の緊急輸送を保障し、負傷兵にたいするあたたかい親切な救護活動を組織しなければなりません。

 前線の勝利を保障するために人民軍の後方を鉄壁のようにかためるべきであります。

 後方では、逃避分子やデマをまきちらす者などと容赦なくたたかい、スパイ、破壊分子を摘発、一掃する活動を機敏に組織しなければなりません。敵は狡猾で陰険であるため、あらゆる手を尽くしてデマをまきちらそうとするでしょう。人民はこのような敵の悪質な扇動に乗せられてはならず、共和国の権力機関は敵を利する反逆者を容赦なく処断しなければなりません。

 共和国北半部の労働者、技術者、事務員は、工場、製造所、交通運輸、逓信機関などを敵の侵害から守り、生産計画と各自に課されたすべての任務を忠実に実行し、前線の要請に敏速にこたえなければなりません。

 共和国北半部の農民は、農産物をさらに増産して人民軍に必要な食糧を十分に供給し、戦争勝利のために全力を尽くして人民軍を援助すべきであります。

 共和国南半部の男女パルチザンは遊撃戦をさらに激しく、いっそう勇敢に展開し、遊撃隊に広範な人民大衆を参加させて解放区を創設、拡大しなければなりません。パルチザンは敵の後方で敵を攻撃、掃討し、敵の参謀部を襲撃し、鉄道、道路、橋梁や電信電話線などを切断、破壊し、あらゆる手段を尽くして敵の前線と後方の連絡を断ち、いたるところで反逆者を処断し、人民の政権機関である人民委員会を復活し、人民軍の作戦に積極的に協力しなければなりません。

 共和国南半部の同胞は、李承晩かいらい政府の命令や指示に服従することなく、その実行をサボタージュし、敵の後方組織を混乱に陥れなければなりません。

 南半部の労働者はいたるところでストライキや暴動を起こし、敗走する敵の破壊から工場、製造所、鉱山、鉄道その他各自の職場を守り、戦争の勝利を保障するために人民軍を積極的に援助すべきであります。

 南半部の農民は敵に食糧を渡してはならず、今年の農作物の取入れを手ぬかりなくおこない、パルチザン活動に積極的に参加し、人民軍に各種の協力と援護を惜しみなく与えるべきであります。

 南半部の中小企業家と商人は、李承晩「政権」に反対し人民軍部隊を援助することによって、アメリカ独占資本への従属から我が国の民族経済を救う闘争に協力すべきであります。

 南半部の文化人、インテリは、祖国の統一と自由のために、また民族文化の発展条件をかちとるために反逆者李承晩一味に反対する戦争に積極的に協力すべきであります。人民大衆のなかで反逆者李承晩一味の罪悪を徹底的に暴露し、大衆的な暴動を組織する扇動者の役割を果たさなければなりません。

 南朝鮮かいらい政府の「国防軍」将兵諸君!

 諸君の敵は、まさに売国奴李承晩一味であります。諸君は、祖国と人民のために機を逸することなく銃口を反逆者李承晩一味に向けなければなりません。

 諸君は人民軍とパルチザンの側に加わり、祖国の統一と自由をめざす全人民の闘争に協力しなければなりません。諸君は朝鮮人民の敵に反対して立ち上がり、祖国の自由と独立のために戦う栄誉ある闘士の隊列に加わるべきであります。

 親愛な同胞、兄弟姉妹のみなさん!

 反逆者李承晩一味の武力とその警察制度を速やかに撃滅、掃討するために、朝鮮民主主義人民共和国政府のまわりにかたく団結するよう、全朝鮮人民に訴えます。

 人類の歴史は、自由と独立をめざす戦いに死を賭して立ち上がった人民は、常に勝利することを教えています。我々の戦いは正義の戦いであります。勝利は必ず朝鮮人民の側に輝くでしょう。祖国と人民のための我々の正義の戦いは、必ず勝利するものと私は確信します。

 祖国を統一すべきときはきました。勝利への確固たる信念をもって勇敢に前進しましょう。

 すべての力を人民軍と前線の援助にささげよ!

 すべての力を敵の撃滅、掃討に向けよ!

 全人民的な正義の戦争に総決起した朝鮮人民万歳!

 朝鮮民主主義人民共和国万歳!

 勝利をめざして前進しよう!

出典:「金日成著作集」6巻


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