金 日 成

作家・芸術家の当面のいくつかの課題
 作家・芸術家におこなった訓辞
−1949年12月22日− 


 私はきょう、作家・芸術家の当面のいくつかの課題について述べようと思います。

 現在の内外情勢は複雑を極めています。国際舞台では、平和愛好民主勢力と帝国主義反動勢力間の闘争が激化しています。

 社会主義国ソ連と人民民主主義諸国の人民は、世界の平和と安全を守るため帝国主義の戦争策動に反対するたたかいを力強く展開しています。植民地主義者の抑圧と搾取に反対する民族解放闘争、資本の鉄鎖を断ちきるための労働運動は世界各国で激しくくりひろげられています。

 こんにち、帝国主義者は第2次世界大戦の歴史の教訓を忘れ、世界制覇を妄想して再び世界大戦を引き起こし、人類を新たな戦争の惨禍に陥れようと悪辣に策動しています。

 特に第2次世界大戦以後、帝国主義の旗頭として登場したアメリカ帝国主義は、その侵略的野望を遂げるため、国内人民にたいする搾取と略奪を強化する一方、新たな戦争挑発策動を公然とおこなっています。アメリカ帝国主義者は世界のいたるところに軍事基地をはりめぐらし、北大西洋同盟のような種々の軍事ブロックをつくり、追随国の反動派を糾合して侵略勢力を拡大しています。アメリカ帝国主義はまた、国際協定を踏みにじり、西ドイツと軍国主義日本を復活させており、人民民主主義諸国にスパイ、破壊・謀略分子を浸透させ、これらの諸国を内部から瓦解させようと画策しています。

 アメリカ帝国主義者は、国際労働運動や平和運動を過酷に弾圧しながら戦争と侵略を正当化するため、あらゆる宣伝手段を動員しています。

 これらの事実は、こんにち、帝国主義反動勢力が新たな戦争準備にどれほど狂奔しているかを示しています。

 アメリカ帝国主義者の新たな戦争挑発策動は、朝鮮においても露骨化しています。

 アメリカ帝国主義者は朝鮮を植民地化する野望を実現するため、南朝鮮で植民地支配を強化する一方、共和国北半部を侵略するための戦争準備を急いでいます。アメリカ帝国主義者と売国奴李承晩一味は、南朝鮮人民にたいするファッショ的弾圧と略奪をいつにもまして強化しており、南朝鮮に殺りく兵器をひきつづき持ち込み、38度線一帯で武力挑発策動をたえず強行しています。一口に言って、わが国の現情勢は、アメリカ帝国主義者と売国奴李承晩一味によって、いつ戦争が起こるかわからない状態にあります。

 当面の内外情勢は全人民に、常に緊張した動員態勢を堅持して生活し働くことを求めており、特に作家・芸術家に情勢の要請に即した文芸活動を強めるよう求めています。

 ところが現在、作家・芸術家は、そうした方向で創作活動をおこなっていません。少なからぬ作家・芸術家は、現情勢や当面の党の政策的要求を知らず、趣味本位の文芸活動をおこなっています。一部の作家・芸術家は、昔の封建支配層がロバにまたがり詩調を詠じて無為に歳月を送り、国を滅ぼした歴史の教訓を忘れて、風流韻事にふけっています。それは、かれらの最近の作品にあらわれています。作家・芸術家は、趣味本位にとらわれ、革命的内容のない詩歌を詠じ、美辞麗句で作品をつづろうとしてはなりません。どんな美辞麗句を弄しても、時代と人民の要請が反映されていない作品は無意味です。

 文学・芸術は、わが党の強力な政治思想教育手段の一つです。したがって、作家・芸術家は当然、わが党と人民の利益の擁護者、代弁者となり、人民を教育し共和国を死守する闘士とならなければなりません。

 作家・芸術家は、党の政策的要求と情勢の推移を正確にとらえ、それに即した文学・芸術活動をおこなうべきです。

 それでは、作家・芸術家の当面の重要な課題はなんでしょうか。

 第1に、作家・芸術家は、人民経済計画の遂行で英雄的偉勲を立てている労働者、農民をはじめ、勤労人民の闘争をテーマにした文学・芸術作品の創作に力を注がなければなりません。

 労働者、農民をはじめ、勤労人民の英雄的闘争を描くのは、文学・芸術の最も重要な任務です。勤労人民は、新しい民主朝鮮建設の主人公であります。富強な民主主義完全自主独立国家建設の大業を遂行するか否かは、もっぱら勤労人民をいかに立ち上がらせるかにかかっています。

 わが党のすべての政治思想教育手段は、勤労人民を建国大業の遂行へ奮い立たせるのに極力寄与し、勤労人民のために奉仕しなければなりません。文学・芸術も例外ではありません。文学・芸術は、新社会の建設をめざす勤労人民の誇らしいたたかいを描くことによって、建国大業の遂行へかれらを力強く奮い立たせ、勤労人民に忠実に奉仕すべきであります。

 現在、作家・芸術家は、建国大業の遂行に立ち上がった勤労人民のたたかいを描いた作品を多く創作しておらず、創作された作品も形象のレベルが極めて劣っています。少なからぬ作家・芸術家は、主に歴史をテーマにした作品の創作に偏り、躍動する現実をテーマにした作品創作にはあまり目を向けていません。もちろん、歴史物も創作すべきです。しかし、より重要なのは、こんにちのはりあいのある現実を反映した作品を多く創作することです。

 党の賢明な指導のもとに朝鮮人民は、解放後4年余りの短期間に、建国事業で偉大な成果を達成しました。

 朝鮮人民は、みずから人民政権を樹立し民主諸改革を実施して、北朝鮮に先進的な人民民主主義制度を確立し、祖国の統一独立の強固な民主基地をきずきあげました。

 昨年9月には、南北朝鮮の全人民が参加して、人民の政権である朝鮮民主主義人民共和国を創建しました。共和国の創建によって、朝鮮人民は歴史上はじめて堂々たる主権国家の公民となり、共和国の旗のもとに祖国の統一独立と新しい社会の建設をめざすたたかいを力強く展開できるようになりました。

 こんにち、全人民は共和国公民となった大きな誇りと自負をいだいて、共和国の隆盛のために全力を尽くしています。

 労働者階級は、2か年人民経済計画を期限前に完遂するたたかいを力強くくりひろげています。製鉄工業部門の労働者は、あらゆる難関を勇敢に克服して黄海(ホワンヘ)製鉄所の第1号溶鉱炉と清津(チョンジン)製鉄所の第2号コークス炉を完全に復旧し、大量の鉄とコークスを生産しており、機械工業部門の労働者は集団的な力と知恵を集めて創意考案をし、先進技術を導入して労働生産性を不断に向上させています。

 土地の主人となった農民は、より多くの穀物を生産するため愛国的増産運動を展開しています。黄海道載寧(チェリョン)郡の金済元(キムジェウォン)農民をはじめ、模範的な農民たちは、土地を改良し先進営農方法を取り入れて穀物の収穫をひきつづき高めています。農民は、農業を立派に営んで毎年豊作をもたらし、国の食糧問題を解決しました。

 人民の献身的な労働によって、2か年人民経済計画は順調に遂行されており、共和国北半部の民主基地はいちだんと強化されました。

 新しい社会建設の壮大なたたかいのなかで、多くの生産革新者があらわれています。かれらの偉勲は、後世に永く輝くでありましょう。

 2か年人民経済計画の期限前遂行と、新しい社会の建設をめざすたたかいにわき立つ現実そのものが、英雄叙事詩的な絵巻をなしています。作家・芸術家は、勤労者のこうした英雄的なたたかいを小説、詩、映画、演劇、舞踊、美術などの各種文学・芸術作品に立派に形象すべきです。

 勤労人民のたたかいをテーマとする文学・芸術作品の創作に当たって着目すべき問題は、勤労者の気高い精神的・道徳的風格を芸術的に描くことです。作家・芸術家は、勤労者の発揮している燃える愛国心と集団的英雄主義、かれらが抱いている労働にたいする栄誉と誇り、高度の増産意欲と革命的同志愛など、美しく気高い精神的・道徳的特質を巧みに描き出さなければなりません。つまり、朝鮮で起きている大きな社会経済的変革の原動力がなんであるかを、芸術的形象を通じて解明すべきです。それでこそ、文学・芸術作品が、勤労者を教育し、新しい社会の建設へと励ます有力な政治思想教育手段としての使命を果たすことができます。

 第2に、作家・芸術家は、社会の民主化と祖国統一のためにたたかう南半部人民をテーマにした作品を多く創作しなければなりません。

 現在、南半部の人民は、生存の権利と民主主義のために、国土保全と祖国統一のために、アメリカ帝国主義者とその手先に反対するたたかいを勇敢にくりひろげています。特に共和国創建後、南半部人民の反米救国闘争には新たな転換が起きています。南朝鮮の愛国的な青年と人民は、共和国北半部を希望の燈台として仰ぎ、武器をとって各地で遊撃闘争を展開し敵に甚大な打撃を与えています。かれらは、監獄も絞首台も恐れず犠牲精神を発揮してたたかっており、息を引きとる最期の瞬間にも「朝鮮完全自主独立万歳!」「朝鮮民主主義人民共和国万歳!」を高らかに叫んでいます。

 祖国統一と国土保全をめざす南半部人民の正義の救国闘争は、文学・芸術の立派な素材となり、それを作品に形象化することは、作家・芸術家の気高い義務であります。

 作家・芸術家は、南半部人民のたたかいを描いた作品を多く創作して、かれらを力強く励まし、北半部人民の愛国心と敵愾心を鼓吹して、全人民が南朝鮮の兄弟のたたかいを積極的に支援するようにしなければなりません。

 南半部人民のたたかいをテーマにした作品の創作において強調すべき重要な問題は、祖国と民族を熱烈に愛する、かれらの愛国主義精神を掘り下げて形象することです。南半部人民が血を流して勇敢にたたかっているのは、アメリカ帝国主義者とその手先を一掃し、朝鮮民主主義人民共和国のふところに抱かれて、北半部人民と同様の幸福な生活を享受したいという、かれらの一致した念願のあらわれであり、燃える愛国主義精神の発露であります。

 朝鮮人民は過去36年間も、日本帝国主義者に国を奪われ、亡国の民の苦しみを骨身にしみて体験しました。それゆえに、南半部人民は、二度と過去のような植民地的奴隷生活を繰り返さないため、アメリカ帝国主義侵略者と勇敢にたたかっているのです。

 作家・芸術家は、南半部の人民が祖国のためにすべてをささげてたたかっている生々しい姿を思想的、芸術的に立派に描くべきです。

 南半部人民のたたかいをテーマにした作品の創作において重要なのはまた、アメリカ帝国主義者の侵略的本質と侵略策動を暴くことによって、アメリカ帝国主義にたいする人民の強い敵愾心と憎悪心を呼び起こすことです。

 アメリカ帝国主義は、朝鮮人民の仇敵です。かれらは、100余年前から朝鮮にたいする侵略的野望をいだいてたえず侵略策動をおこなってきたし、解放後は日本帝国主義にかわって朝鮮の南半部を占領し、朝鮮人民を永久の植民地的奴隷にするため悪辣に策動しています。いまかれらは、南半部でファッショ的な植民地統治をおこない、朝鮮人民の財宝と財産を略奪し、数多くの愛国者と罪のない人民を手当たりしだいに検挙、投獄、虐殺しています。

 作家・芸術家は、作品を通して、アメリカ帝国主義者こそ最も狡猾で暴虐な略奪者であり、残忍非道な殺人鬼であることを赤裸々に暴かなければなりません。そして、人民がアメリカ帝国主義にたいしていささかの幻想や期待ももたず、かれらと強くたたかうようにすべきです。

 アメリカ帝国主義の侵略策動を暴くと同時に、その忠実な手先李承晩一味の売国的・反民族的行為についても人民によく知らせるべきです。

 南朝鮮人民のたたかいをテーマにした作品の創作において関心を払うべきいま一つの問題は、人民に確固たる勝利の信念をいだかせることです。

 こんにち、南半部人民がたたかっている敵は、帝国主義の元凶であるアメリカ帝国主義です。これを駆逐して祖国を統一するための南半部人民のたたかいの前途には、種々の難関が横たわっています。

 作家・芸術家は、作品を通して、祖国と民族を愛する南半部各階層の愛国的人民が反米救国統一戦線をかたく結成し、団結した力でたたかうならば必ず勝利するという確信をもたせなければなりません。

 作家・芸術家は、各種の文学・芸術手段を動員して、アメリカ帝国主義者が広めているブルジョア思想の毒素とアメリカ的生活様式の反動性、腐敗相をするどく暴き、人民を政治的、思想的にめざめさせるべきです。

 第3に、作家・芸術家は、人民武力である人民軍をテーマにした作品を多く創作しなければなりません。

 このような作品を多く創作することは、軍人と勤労者を教育し、人民軍の戦闘力を強化するうえで極めて大きな意義があります。特にこんにちわが国の緊迫した情勢は、人民軍をテーマにした文学・芸術作品を多く創作することを求めています。したがって、作家・芸術家は、このような作品の創作に大きな関心を払うべきです。

 人民軍をテーマにした作品の創作において重要なのは、なによりも人民軍の優位性をよく描くことです。

 人民軍は、抗日武装闘争期にきずかれた栄えある革命伝統を直接継承した軍隊であり、抗日闘士を根幹にして労働者、農民をはじめ、勤労人民のすぐれた子弟で組織された人民の軍隊です。

 人民軍は、少数特権階級の搾取制度を武力で擁護し、絶対多数の勤労人民を抑圧、搾取し、他国にたいする侵略を使命とする帝国主義国家の軍隊とは異なり、敵の侵害から祖国と人民を守り、人民民主主義制度と民主建設の成果を守る使命を担っています。作家・芸術家は、作品を通して帝国主義国家の軍隊に比べた人民軍の優位性をよく描くべきです。

 人民軍をテーマにした文学・芸術作品において、軍人の気高い戦闘精神を描くことがまた重要です。

 周知のように、人民軍は創建後まもないが、祖国の安全と人民の生命財産を守るために献身的にたたかっています。警備隊の勇士たちは、高山(コサン)峰、松嶽(ソンアク)山、銀波(ウンパ)山、国師(クッサ)峰戦闘をはじめ、38度境界線一帯の戦闘で集団的英雄主義と犠牲的精神を発揮して、敵の武力挑発策動をことごとく粉砕し、祖国の寸土を死守しています。警備隊の勇士たちは、共和国北半部地域に侵入して罪のない人民を虐殺し、家屋や財産を破壊、略奪していたかいらい軍の「白骨部隊」「虎林部隊」を完全に掃討しました。これは、抗日武装闘争の革命伝統を継承した警備隊勇士の高度の戦闘精神と、祖国と人民にたいする限りない忠実さのあらわれであります。

 作家・芸術家が、軍人のあいだで発揮されている高度の戦闘精神をその作品に描くならば、それは軍人に勝利の確信と勇気を与え、戦闘で新たな偉勲へと奮い立たせるのに大きく役立つでしょう。

 文学・芸術作品に、軍人と人民のあいだで高度に発揮されている気高い将兵一致、軍民一致の伝統的美風も立派に描くべきです。

 人民軍の軍人は、祖国と人民を守るため、すすんで武器をとった労働者、農民の子弟です。それゆえ、人民軍の将校と兵士は、すべて革命同志であり、戦友であり、かれらのあいだには常に戦闘的友誼とあつい革命的同志愛がみなぎっています。将校は兵士の日常生活をあつい同志愛をもって心を配り、兵士は将校を尊敬し心から慕っています。これは、人民軍の固有な美風です。

 こんにち、人民軍と人民のあいだの血の通ったつながりは、かつてなく強まっています。軍人は、人民の生命と財産を生命をとして守っており、人民は、軍人を自分の骨肉のように思い物心両面から援護しています。

 作家・芸術家は、軍人と人民のあいだで高度に発揮されているこうした将兵一致、軍民一致の美風を深く掘り下げて描くことによって、人民軍の戦闘力の強化と、軍隊と人民との血の通ったつながりの強化に大きく寄与すべきです。

 作家・芸術家が自己の重責を果たすためには、党の路線と政策で武装しなければなりません。

 党の路線と政策で武装したときにのみ、すべての事物と現象を政策的に正しく分析、判断でき、党の政策的要求に即して創作活動を立派におこなうことができます。

 作家・芸術家は、党の路線と政策の学習を強化して党の思想で武装し、政治的識見を不断に高めなければなりません。

 作家・芸術家は、創作的技量をさらに高めるべきです。いくら愛国的熱意があっても、創作的技量が低ければ、党と人民が求める立派な作品は創作できません。したがって、作家・芸術家は、政治、経済、文化、軍事など各部門の豊富な知識を所有し、文学・芸術にたいする研究を深めて創作的技量を決定的に高めなければなりません。

 作家・芸術家が現実のなかに深く浸透することは、立派な作品を創作するための重要な方途であります。現実のなかに入り、労働者、農民、軍人など人民大衆の生活を具体的に研究し、躍動する現実を体験することによって、人民大衆の心をとらえ、かれらに愛されるすぐれた文学・芸術作品を創作しなければなりません。

 私は、作家・芸術家が、以上の方向にそって、新年からすぐれた文学・芸術作品を多く創作し、大衆を教育し建国大業の遂行に寄与するものと確信します。

出典:『金日成著作集』5巻


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