金 日 成

祖国統一民主主義戦線の結成について
北朝鮮労働党中央委員会第6回会議でおこなった報告 
1949年6月11日

 同志の皆さん!

 最近、新聞紙上を通じて広く報道されているように、去る5月12日、南朝鮮労働党、民主独立党、朝鮮人民共和党、勤労人民党、南朝鮮青友党、社会民主党、南朝鮮民主女性同盟、朝鮮労働組合全国評議会など南朝鮮の8つの政党、大衆団体は、連名で祖国統一民主主義戦線の結成を北朝鮮民主主義民族統一戦線中央委員会に提案してきました。

 我々は、この提案が時宜にかなったものであり、また、わが党が一貫して主張してきた極めて重要な問題であるので、党中央委員会政治委員会でこの問題を討議し、その結成に向けて積極的に努力することにしました。党中央委員会政治委員会は、祖国統一民主主義戦線の結成準備を民戦を通じて進めてきました。

 北朝鮮民主主義民族統一戦線中央委員会は、北朝鮮の各政党、大衆団体との合意のもとに5月25日、平壌で祖国統一民主主義戦線結成準備委員会第1回会議を開くことを南朝鮮の政党、大衆団体に呼びかけました。これにこたえて南朝鮮の民主政党、大衆団体は、祖国統一民主主義戦線結成準備委員会に参加する代表を平壌に派遣してきました。こうして先月25日、平壌では南北朝鮮の51の政党、大衆団体の代表68名の参加のもとに祖国統一民主主義戦線結成準備委員会第1回会議が開催されました。会議では、祖国統一民主主義戦線結成準備委員会を構成してその活動内容を討議し、祖国統一民主主義戦線への参加を望む愛国的な政党、大衆団体は、いつでも準備委員会に代表を派遣できることに決定しました。第1回会議についで、この6月7日に開かれた第2回会議では、祖国統一民主主義戦線結成大会を来る6月25日に平壌で開催することを決定し、それを南北朝鮮の政党、大衆団体に知らせました。現在、南北朝鮮の53の政党、大衆団体代表の共同の努力によって、祖国統一民主主義戦線結成大会の準備は成功裏に進められています。

 では、祖国統一民主主義戦線を結成する理由はどこにあるのでしょうか。

 周知のように、祖国が日本帝国主義の植民地支配から解放されてから4年近くになりますが、わが国はまだ統一されず、38度線を境にした分断状態がつづいています。

 国土の分断は、民主主義自主独立国家の建設と祖国の将来の発展を大きく妨げています。特に、アメリカ帝国主義の南朝鮮占領は、南朝鮮人民に日本帝国主義の植民地支配時期に劣らない苦痛と不幸をもたらしています。

 アメリカ帝国主義者は、解放後、日本帝国主義にかわって南朝鮮を占領した当初から、民族分裂政策と植民地従属化政策を実施しました。

 アメリカ帝国主義は、南朝鮮に上陸すると、軍政を布いて愛国的な民主勢力を過酷に弾圧する一方、親日派、民族反逆者で植民地支配の基盤を築くために狂奔しました。彼らは、モスクワ3国外相会議の決定を実行するためのソ米共同委員会を故意に破綻させ、不法にも朝鮮問題を国連総会に上程し、投票機械をあやつって「国連臨時朝鮮委員団」を組織しました。アメリカ帝国主義は、全朝鮮人民の強い反対をよそに、「国連臨時朝鮮委員団」の監視下で南朝鮮での「単選」を強行し、李承晩をかしらとする手先たちの集団で「大韓民国政府」をつくりました。

 「大韓民国政府」は、アメリカ帝国主義の指示によって動く徹底したかいらい政府であり、組織以来アメリカ帝国主義の植民地従属化政策を忠実に実行し、反民族的売国行為を公然とおこなってきました。最近、かいらい李承晩一味は、アメリカと「軍事協定」を結ぶというふれこみで、趙炳玉をアメリカに派遣して祖国と民族を売り渡す密談をおこなうと同時に、アメリカ軍の南朝鮮駐留を哀願しています。

 アメリカ帝国主義とかいらい李承晩一味の野蛮な支配のもとで、南朝鮮人民は初歩的な民主的権利と自由まで奪われ、人間以下の迫害と蔑視を受けています。アメリカ帝国主義の差し金のもとに、かいらい李承晩一味は各種の悪法をつくって民主的政党、大衆団体の活動を弾圧し、愛国的な人民を手当たりしだいに検挙、投獄、虐殺しています。かいらい李承晩一味の弾圧によって、南朝鮮で合法的に活動していた愛国的な政党、大衆団体は地下に追いやられ、民主的な出版物と出版機関は強制的に廃刊させられ、閉鎖されました。かいらい李承晩一味は1948年1月から10月までのあいだに、実に13万6360名の罪のない人民を検挙、投獄し、昨年4月3日から今年の3月末までの1年近くのあいだに、済州島だけでも3万余名の人民を虐殺し、2万余戸の農家と295の部落を焼き払いました。南朝鮮の民主勢力と人民に対するアメリカ帝国主義とかいらい李承晩一味の弾圧と虐殺行為は日増しに凶暴化しています。

 南朝鮮の民族経済は、余すところなく破綻し、人民生活は悪化の一途をたどっています。アメリカ帝国主義者は、南朝鮮の経済命脈を掌握し、原料や資源の略奪をほしいままにしています。そのうえ、彼らは「敵産払下げ」の名目で南朝鮮の工場、企業所を手当たりしだいに破壊し、工場設備を解体してもち去っています。南朝鮮の工業生産はひきつづき減退し、物価が騰貴し、労働者は職場を失って路頭にさ迷っています。現在、南朝鮮の失業者と破産者は300万に達しています。

 朝鮮の穀倉地帯とうたわれた南朝鮮農村は荒廃化し、農民は封建的土地所有関係に縛られ、依然として地主の抑圧と搾取を受けています。解放前に比べ南朝鮮の耕地面積は数10万ヘクタールも減少し、穀物収穫高は80%以下に減りました。南朝鮮農民は,高率の小作料と強制供出、強制穀物買上げによって生活の道をたたれています。

アメリカ帝国主義とかいらい李承晩一味は、南朝鮮人民に対するファッショ的弾圧と搾取を強化しているばかりでなく、共和国北半部を侵略する戦争準備に狂奔しています。アメリカ帝国主義者の指示でかいらい李承晩一味は、青壮年を強制徴集してかいらい軍を増強し、アメリカから膨大な軍需物資をもち込んでおり、このために増加する軍事費を人民に負担させ、人民生活をさらに悪化させています。

 我々は、南朝鮮同胞の不幸と苦痛を腕をこまぬいて見ていることはできません。一日も早く塗炭の苦しみをなめている南朝鮮人民を救わなければなりません。

 こんにち、共和国北半部には、祖国を統一し破壊された南朝鮮経済を復興し、南朝鮮人民を救うことのできる強固な物質的土台が築かれています。しかし、共和国北半部に築かれた経済的土台は、アメリカ帝国主義の南朝鮮占領と人為的障壁である38度線のために、南朝鮮経済の復興と塗炭の苦しみをなめている南朝鮮人民の救援に役立っていません。

 アメリカ帝国主義の植民地従属化政策と、かいらい李承晩一味の反民族的売国行為によって朝鮮に生じた重大な政治情勢は、アメリカ帝国主義者の侵略策動と内政干渉に反対し、アメリカ軍を祖国の領土から駆逐し、売国奴、かいらい李承晩一味を打倒し、南半部人民を救うべき歴史的課題を我々に提起しています。この課題を遂行するためには、すべての愛国勢力を総結集し、全民族が一つにかたく団結すべきです。いかなる民族も一つにかたく団結すれば強力な民族となり、分裂すれば亡国の民となる運命を免れません。朝鮮民族がかたく団結してたたかうならば、十分に自力で祖国統一の大業を達成することができます。

 我々は、人民の団結した力によって、重大な民族的課題を立派に遂行したよい経験をもっています。かつて、日本帝国主義者が朝鮮人民に対するファッショ的弾圧と植民地的略奪を強化した時期に、我々は抗日の旗のもとに各階層の人民を結集し、反日闘争を力強く展開して祖国解放の歴史的大業を達成しました。解放後、日本帝国主義および封建主義の残りかすを一掃し、国の民主的発展を保障する課題も、国家と民主主義を愛する各階層人民の団結した力によって遂行しました。アメリカ帝国主義者とその手先、かいらい李承晩一味の「単選単政」策動によって、祖国と民族に重大な情勢が生じたときにも、南北朝鮮の各政党、大衆団体と全人民は団結して民族あげての闘争をくりひろげ、朝鮮民主主義人民共和国を創建しました。我々は、こうした闘争を通して、例え、政見や信教、思想や主義、主張に違いがあるにしても、民族的な課題の遂行に当たっては互いに理解し団結することができ、団結してたたかうならば必ず勝利するという貴い経験を得ました。これは、祖国統一の旗のもとに、南北朝鮮の広範な愛国勢力を結集するための極めて貴重な下地であります。

 祖国を愛し、統一を願う愛国的人民、特に、南北朝鮮の進歩的な政党、大衆団体を一つの民主勢力に総結集するためには、祖国統一民主主義戦線を結成しなければなりません。特に、わが国に唯一の合法的政府である朝鮮民主主義人民共和国政府が樹立された現在、南北朝鮮の進歩的な政党、大衆団体を総結集する祖国統一民主主義戦線を結成する問題は、これ以上遅らせることのできない緊切な問題であります。それで、わが党は、祖国統一民主主義戦線の結成を主張してきました。

 祖国統一民主主義戦線の結成は、各階層人民の宿望にこたえるものであります。こんにち、全朝鮮人民は、祖国の完全な独立を待望しており、祖国の統一が実現するものと確信しています。国土の保全と祖国の統一に対するこうした熱望と確信をもって、祖国統一民主主義戦線結成準備委員会に数十の政党、大衆団体が参加し、南朝鮮からひきつづき代表が到着しています。

 やがて結成される祖国統一民主主義戦線は、全朝鮮の愛国的な民主政党、大衆団体の力を総結集する統一戦線となるでありましょう。したがって、祖国統一民主主義戦線の結成は、朝鮮民族の全民族的な救国対策であると同時に、朝鮮人民の団結した力の示威となるものであります。

 祖国統一民主主義戦線は、国土の保全と祖国の統一をめざしてたたかう愛国的な民主政党、大衆団体が自発性の原則にもとづいて参加する組織となるべきです。いかなる政党、大衆団体も、祖国統一民主主義戦線から独自の活動に干渉を受けたり、反対に祖国統一民主主義戦線の活動を独占したりしてはなりません。祖国統一民主主義戦線に参加する各政党、大衆団体は、独自性を保って活動し、共同の目的実現のためにかたく団結し、緊密に協力し合うべきです。

 祖国統一民主主義戦線は、祖国の統一と完全な独立を達成し、日本帝国主義および封建主義の残りかすを一掃し、国の民主的発展を保障し、民族経済と民族文化を復興発展させ、人民生活を向上させることを闘争目標にかかげ、その実現のために積極的にたたかうべきであります。
 アメリカ帝国主義の南朝鮮占領とかいらい李承晩一味の反民族的売国行為は、祖国統一の基本的障害であります。祖国統一民主主義戦線は、南朝鮮からアメリカ軍を撤退させ、アメリカ帝国主義の侵略道具である「国連朝鮮委員団」を駆逐する闘争に全民族を立ち上がらせるべきです。それと同時に、かいらい李承晩一味をはじめ、民族反逆者を打倒するたたかいを果敢に展開すべきであります。

 祖国統一民主主義戦線は、アメリカ帝国主義者とかいらい李承晩一味によって拘禁された愛国的民主人士を釈放させ、南朝鮮における民主的政党、大衆団体の自由な活動をかちとるためにたたかうべきです。

 朝鮮民主主義人民共和国は、全民族の利益を擁護し代表する政権であります。祖国統一民主主義戦線は、共和国政府を支持し、その活動に積極的に協力すべきであります。

 祖国統一民主主義戦線は、共和国北半部で達成された民主改革の成果をかため、南朝鮮で民主改革を実施するためにたたかうべきであります。

 わが党は、祖国統一民主主義戦線の結成にとどまらず、結成後、その強化発展のためにも主動的で積極的な役割を果たすべきです。わが党は、祖国統一民主主義戦線のなかで独自性を堅持しつつ、他の政党、大衆団体と共同の目的を実現するために、かたく団結し、緊密に協力しなければなりません。当面して、祖国統一民主主義戦線結成準備委員会に参加して活動中のわが党の党員の役割を高め、祖国統一民主主義戦線の綱領と宣言文が人民の利益に合うように作成され、結成大会の準備が順調にはかどるようにすべきです。

 各級党組織は、全党員と人民に祖国統一民主主義戦線結成の重要性と意義を明確に認識させ、この活動の成功のために積極的に努力するようにすべきであります。

 最後に私は、祖国統一民主主義戦線を結成するというわが党の方針の正しさを重ねて強調し、祖国統一民主主義戦線結成準備委員会の決定にもとづいて、来る6月25日に開催される祖国統一民主主義戦線結成大会に、わが党が80名の代表を選出して派遣することを提案します。
                                               
出典:『金日成著作集』5巻


ページのトップ


inserted by FC2 system