金 日 成

国営工業をいかに発展させ、企業をどう運営すべきか
―国営企業の支配人、技術者への談話― 
1948年1月25日 

 私は、皆さんが提起した問題を中心に今年国営工業をいかに発展させ、企業をどう運営すベきかについて述べようと思います。

 まず、我々が自力で解決できるものは、あくまで自力で解決するよう努力しなければなりません。

 我々は、1947年度の人民経済計画を成功裏に完遂した経験にもとづいて、民族工業を自主的に発展させることができるという自信をいっそう強くしました。もちろん、これからも必要とする外国の援助は受けるべきですが、我々は他人に依存しようとばかりせず、自力で民族経済を復興発展させ、富強な祖国を建設しようという確固たる決意を持たなくてはなりません。

 今年は、工場を完全に復旧し、工業生産を日本帝国主義支配当時の水準にまで引き上げなければなりません。そして、生産を量的にばかり伸ばそうとせず、その質的構成を次第に改善することにも留意すべきです。かつての日本帝国主義の支配当時のように、国内の豊富な原料を採取して外国に売るべきではなく、それをすべて国内で加工し、完成品を生産する方向へ進まなければなりません。最も大きな隘路の一つである原油の問題は貿易を通じて解決し、精油は元山石油工場を今年中に復旧して生産を始めなければなりません。

 人民の所有となった工場での生産の目的は、人民大衆の需要を円滑に満たすことにあります。工場を早急に復旧整備し、新しい工場を建てて国の経済的基盤を強化し、人民の生活向上に必要な物資をより多く生産しなければなりません。それと同時に人民が使って余るものは、貿易を通じて必要な商品と替えてくるべきです。

 建設で、あと先の順序を正しく決めることは極めて重要です。わが国は立ち後れ、破壊された経済を引き継いだので、建設しなければならないものが非常にたくさんあります。しかし、1日や2日でそれをすべて建設することは不可能ですから、より緊要なものからさきに建設するよりほかありません。一面ばかりを見て全体を見なかったり、今日のことばかり考えて明日のことを忘れたりしてはなりません。必ず人民経済全般と国の発展展望を考慮して、建設におけるあと先の順序を厳密に決め、資金と技術と労働力を緊急な建設対象に集中しなければなりません。

 そして、初めから近代的で立派なものばかり建設しようとしてもいけません。何年か後にすべきことを、今直ちにしようとするのは正しい態度ではありません。建設ではなやかな飾りつけや最新式の設備ばかり求める傾向とたたかわなければなりません。あくまでも、わが国の実状に適した経済建設をすべきであり、少ない資金と資材で緊急なものから充実した建設を進めなければなりません。

 工場、企業で生産を正常化し、計画を必ず実行しなければなりません。そのためには、あらかじめ資材を整え、労働力を正しく配置するのも重要ですが、機械・設備を適時に点検し補修して手際よく操作し、事故を防止するのが何よりも重要です。ノルマの遂行に汲々として、機械を酷使して事故を起こしたり機械の寿命を縮めるのは国家財産を破壊する行為と違うところがなく、生産に莫大な支障をきたすことになります。

 次に、資金を円滑に保障する方策について述べましょう。

 第1に、企業の流動資金をさらに速く回転させる対策を講じなければなりません。これまで、この面に対して非常に関心が足りませんでした。工場、企業で必要以上の資材を受け取って倉庫に寝かせておいたり、生産した製品を手ばやく販売せずに滞貨させるようなことがないようにし、資金を速く回転させ、同じ資金でより多く建設し、生産するように努力すべきです。

 第2に、重工業にだけ資金を割り当てようとせず、軽工業にも多くの資金を回し、生活必需品の生産を早急に増大させなければなりません。軽工業工場をさらに増設もし、あらゆるところで潜在力をことごとく動員して消費物資をより多く生産しなければなりません。これは、資金の速やかな回収と確保に有利であるばかりでなく、勤労人民の生活上の需要を満たすためにも切実に必要なことです。地方からの報告を聞いたり、直接出かけていって見たところによると、北朝鮮人民の需要は日を追って急増しています。とりわけ、土地の主人となり、農業で成果を収めている農民は、織物や家具、改良農具、住宅建築用の資材などを多く求めています。我々は増大する農民の需要を満たすことによって、彼らに民主主義制度の優越性を確信させるとともに、経済建設に必要な資金を積極的に吸収すべきです。

 第3に、地下に埋蔵されている金やその他の非鉄金属を大いに採掘しなければなりません。金やその他の非鉄金属さえあれば、いつどこからでも、必要な設備や物資は何でも買い入れることができます。富強な自主独立国家を建設している我々の時代に、金を掘り出して使わず、いつ使おうというのでしょうか。

 今は、この貴重な地下資源をそのまま地中に埋もれさせておく時ではありません。

 わが国には、技術人材が非常に少ないので、工場、企業で技術者の力と才能を十分発揮させることは重要な問題です。技術者に煩雑な事務を任せずに、研究活動や創意考案ができる条件をつくってやるべきです。また、技術者を行政管理の部署に引き止めておかずに生産現場で働くようにし、現場で労働者と協力して技術を発展させるよう彼らを積極的に助けるべきです。

 昨年、技術者たちは、多くの貴重な創意考案を出し、技術の発展に大きく寄与しました。しかし、まだまだ技術者の創意に富んだ努力が足りません。私は、技術者たちが今後いっそう発奮することを望み、産業の発展にさらに大きな貢献をするよう期待するものです。

 すべての工場、企業で技術学習と技能伝習を正しくおこなう必要があります。いまだに、工場では技術学習体系が確立されておらず、極めて散漫におこなわれています。こうした欠点をなくして技術教育体系を早急に確立し、技術者たちの水準と労働者の技能水準を系統的に向上させなければなりません。

 人民経済計画の遂行で最も重要な問題の一つは、労働力の配置を改善することです。ところが、今工場、企業ではこれがうまくいっていません。

 咸鏡北道のある炭鉱では、生産課題の遂行のために労働生産性を向上させようとはせず、労働者のあたま数ばかりやたらに増やしました。その結果、国家の労働行政にはもちろん、石炭の原価引下げにも大きな支障をきたしました。どの工場、企業を問わず、こういうことを見過ごすべきではなく、労働力を合理的に配置し、労働生産性の向上に第一義的な関心を払わなければなりません。

 企業の従業員のうち事務員がまだ多くの比重を占めています。

 事務を極力簡素化し、不必要な人員を整理し、非生産労働力を生産労働力に回す対策を早急に立てることが必要です。煩雑な行政上の報告や統計報告などを簡素化することについては、あとで別途に指示するつもりです。

 おおまかに計算してみても、国家的に労働力の配置を合理化し、生産組織を改善すれば、現在の国営企業の労働者数を10〜15%減らしてもなお生産を約50%増大させることができ、そこから浮く労働力を新しく建設する工場に回すことができます。

 原価を引き下げるためには、労働生産性の向上とともに国家財産の浪費と強くたたかい、資材と資金を極力節約しなければなりません。生産物の原価を引き下げれば企業の収益を高め、勤労者に商品をより安く供給できるということを労働者によく理解させなければなりません。誰よりも労働者が創意を発揮し、工場のすべての従業員が潜在力をすべて動員すれば、生産物の原価を引き下げ、生産でより大きな成果を収めることができます。

 今度の北朝鮮人民委員会決定第104号を確実に実行し、国家的見地から厚生事業を正しくおこなうべきです。労働者の生活にこまかく気を配り、必要な品物をそのつど供給し、あらゆる便宜を図るのは、企業支配人の最も重要な任務の一つです。この活動を立派におこなう支配人であってこそ、労働者の厚い信任を得、彼らの熱意と創意を発揮させて生産計画を成功裏に遂行することができるのです。しかし、労働者、事務員の生活に必要な物資を供給するからといって、国家の資金で悪徳商人から商品を買い入れるような行為をしてはなりません。

 労働者、技術者、事務員を、彼ら自身が国家と企業の主人であるという精神で教育することが重要です。ある所では一部の労働者や幹部が、自分自身が企業の主人であることを忘れ、むやみに賃金を上げるよう要求していますが、それは誤った考えであることを諭してやるべきです。国営企業においては機械設備も、資材も、また生産された製品もすべてが人民のものであり、労働者のものです。生産したものをすべて労働者の収入に回して消費してしまえば、生産を続けることも拡大することもできないので、労働者は生産したものの一部分を賃金として受け取っているだけです。ここでは、生産を拡大するのも結局は労働者のためであり、人民の将来の生活向上のためです。したがって、より多くの賃金をもらうためには生産をさらに上げるべきであり、生産が上がりさえすれば、いくらでも立派な生活ができることを労働者によく理解させなければなりません。

 現在わが国はまだ困難な状態にありますから、分に過ぎた生活をしようとするのは誤っています。国家と企業にゆとりができれば、労働者、技術者、事務員の収入もおのずから増え、暮らしも急速に改善されるでしょう。

 また労働者、技術者、事務員に、今我々は敵との厳しい闘争の中で祖国を建設しているということを認識させ、常に高度の警戒心を堅持するようにしなければなりません。敵は、すきさえあれば人民の財産を破壊し、経済建設を破綻させようと狙っています。このような敵の悪辣な陰謀を粉砕し、我々の企業をしっかりと守るために、工場内の秩序と規律を確立し、すべての幹部と労働者が警戒心を最大限に高めるようにしなければなりません。

 最後に述べたいことは、産業建設で企業の支配人は、軍隊の連隊長と同じような役割を果たさなければならないということです。皆さんは、企業の指揮官であり、国家的に重大な責任を担っています。もちろん、支配人は工場内の党組織や社会団体との緊密な協力のもとに企業を管理、運営すべきですが、生産の結果に対する責任は、結局は皆さんにあることを忘れてはなりません。

 私は、国営企業の支配人である皆さんが、すべての仕事を着実に責任を持って指導し、国家百年の大計を立てるという信念と栄誉感を持って活動するよう期待するものです。
 出典:サイト「わが民族同士」 参照:『金日成著作集』4巻

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