金 日 成

我々は、今年なにをなし、いかに働くべきか
 江界郡各政党・大衆団体活動者会議でおこなった演説
−1948年1月12日− 


 私は、みなさんが解放後、民主改革のための闘争に積極的に参加し、特に昨年は、我が国の歴史上はじめての人民経済計画を勝利のうちに完遂したことを熱烈に祝うとともに、新年の1948年に、より大きな勝利をかちとる決意をかためていることにたいし心から敬意を表します。

 周知のように、北朝鮮で朝鮮人民は実に偉大な業績をつみあげました。ことに、1947年に経済建設で大きな成果をおさめました。我々は、民主改革の勝利をさらにかため、国の自主的な民族経済の基盤をきずくために、昨年はじめて人民経済計画を作成して、それを完遂し、ひきつづき新しい勝利をめざして前進しています。

 朝鮮人民は、他の国で何十年かかってもできなかったことを、解放後わずか2年余りのあいだになし遂げました。北朝鮮での民主改革の勝利と新しい生活の建設で人民がおさめた輝かしい成果は、全世界に広く知れわたり、東方諸国の人民を励ます模範となっています。こうして、朝鮮民族は自力で十分政治的、経済的に独立をなし遂げ、輝かしい文化をもつ富強な国を建設し、世界の先進諸国の人民と肩をならべて堂々と前進できる民族であることを内外に示しました。

 これは、朝鮮民族が36年に及ぶ日本帝国主義の暴虐な支配のもとでも滅びずに生きつづけ、祖国を忘れず、自国の歴史を守りとおしてきたことを物語っています、それはまた、このようなすぐれた民族性と祖国愛をもって積極的にたたかうならば、朝鮮民族は立派に自主独立を達成し、いかなる侵略者にも踏みにじられないということを示しています。

 周知のように、日本帝国主義者が朝鮮でおこなった政治は悪辣を極めたものでした。かれらは、朝鮮人民を抑えつけるだけ抑え、朝鮮人民のすべてのものを奪いつくし、朝鮮の歴史と文化、言語を抹殺しようとしたばかりか、ついには祖先を冒涜して朝鮮人の姓氏までも変えさせました。そしてかれらは、朝鮮人の教育の道を閉ざし、科学と技術の習得を妨げました。普通の民族だったら、そういう迫害と抑圧を受ければ、おそらく永久に滅んだことでしょう。

 しかし、朝鮮人民は、屈服せずに自国の歴史と民族の精気を大切に守り、自国の文化を愛し、母国語を捨てませんでした。朝鮮人民は、あらゆる機会を利用して、一つでも多く学ぼうと努力し、あらゆる困難をのりこえて民族再生の日を迎えるためにたたかいました。それゆえに、解放されたその日から朝鮮人民は少しもあわてることなく、北朝鮮で真の民主独立国家の建設に着手しました。我々は、母国語で立派にラジオ放送をおこない、新聞や書籍・教科書を発行し、若い世代に朝鮮歴史を教え、自力で大学を運営し、民族幹部を大量に養成しています。

 日本帝国主義者は朝鮮から追い出されるとき、自分らがいなければ朝鮮の産業、運輸はすべて麻痺状態に陥るだろうとあざけりました。しかし我々は、直ちに工場を操業し、汽車を走らせました。日本帝国主義の支配当時は、日本人の下でせいぜい缶焚きしかできなかった17、8歳の火手が、いまでは機関士となって急行列車を運転しています。興南(フンナム)肥料工場、南浦(ナンポ)製錬所、黄海(ファンヘ)製鉄所、城津(ソンジン)製鋼所、水豊(スプン)発電所などの大きな工場、企業所が復旧して正常に操業しており、昨年度の計画をすべて完遂しました。

 これらのことは、もちろん容易になし遂げられたものではありません。このような成果は、解放された朝鮮人民の団結した力、気高い愛国的熱意、万難を克服する不撓不屈の忍耐力、尽きない探究力と創意性によって達成することができたのであります。

 反動派は、我々の計画をとうてい実現不可能な夢だとあざわらい、また我々の一部にも、計画にたいして疑惑をいだく人がいました。しかし、朝鮮人民は、高度の愛国的熱意と創造的積極性を発揮して、いったん決心したことを立派にやりとおしました。これは本当に誇るに足ることであります。これは、朝鮮人民は自治能力がないから25年間の国際的後見制のもとにおかれるべきだと言ったフーバーをはじめとするアメリカ帝国主義者と、その手先にたいする最も力のある回答であり、反撃であります。

 こうして我々は、朝鮮民族がすぐれた民族であり、いかなる侵略者も再び朝鮮民族を征服することはできないし、朝鮮民族は独立できるばかりでなく、富強で先進的な民主朝鮮を建設できるということを深く確信し、限りない民族的誇りをもつようになりました。

 ところがアメリカ帝国主義者は、朝鮮民族が過去長いあいだ、日本帝国主義の植民地奴隷となっていたため、これを再び奴隷化することができるものと思い込んでいます。我々は、それがいかに愚かな妄想であるかをかれらに思い知らせる必要があります。

 こんにちの朝鮮人民は、過去の李朝封建時代の朝鮮人民ではありません。朝鮮人民は、日本帝国主義の虐政のもとでも屈することなく外来侵略者とねばりづよくたたかい、特に解放後は、国の主人となり、自分の進むべき道にたいして確固不動の信念をもっている人民です。さらに朝鮮人民は、北朝鮮での民主改革の勝利と経済建設の成果を通じて祖国の自主独立をかちとることのできる強固な土台をもち、自力でみずからの問題をすべて立派に解決できるという民族的自尊心と勝利にたいする確固たる信念をもつようになりました。このような民族を滅ぼす力は、この世にありません。

 人民の解放闘争において、このような民族的自尊心と信念は極めて貴いものです。これをもたない民族は滅びても、民族の誇りと勝利への信念をもっている民族は不敗であります。

 我々が日本帝国主義の侵略を受け、また我々自身の力で日本帝国主義を駆逐できなかったのはなぜでしょうか。それはなによりも過去に、我々に民族的自尊心と信念が足りず、人民の自覚と団結力が弱かったためです。

 しかし、解放後2年余りのあいだに、朝鮮人民はめざめ、鍛えられ、その力は比べようもなく成長し、民族的自尊心と信念はかつてなく強まりました。長期にわたる日本帝国主義の植民地支配の結果、抑えつけられ、踏みにじられていた朝鮮民族の誇りと自尊心は、解放後新しい生活創造のたたかいのなかでよみがえり、日を追って強まりつつあります。これは金銭では得られないものであり、全くかけがえのない最も貴いものです。これは、今後、朝鮮民族がいっそう強くなり、我が国がいっそう隆盛発展するゆるぎない保障であります。

 朝鮮民族は、二度と過去のような屈辱的な境遇に陥ってはなりません。朝鮮民族はすでにそのような境遇から完全に脱し、祖国の自主独立と繁栄のために不屈のたたかいをくりひろげています。もし、侵略者が再び朝鮮を侵略しようと襲いかかるとしても、我々は全民族の団結した力で侵略者を撃退し、祖国の栄誉を守りぬく力と信念をもっています。

 こんにちの朝鮮民族は、自己の能力と使命を自覚した民族であり、もはやいかなる力をもってしても屈服させることも、蹂躙することもできない、たくましい民族です。特に北朝鮮人民は、自分の決心によって、みずからすべてを処理していく国の主人となり、自由で幸福な新しい生活の主人となりました。北朝鮮では、人民が重要産業と土地の主人となったばかりでなく、それを立派に管理運営して国の経済を急速に発展させており、誰もが豊かで強力な先進的独立国家建設のために才能と熱情のすべてを傾けています。

 ところが、南朝鮮はこれと全く異なる状態にあります。いま南朝鮮では、自国の主人役も果たせず他人の使い走りしかできない従属国の支配層がアメリカ帝国主義者にかつぎだされて、朝鮮を「独立」させると騒ぎ立てています。それが、ほかならぬ「国連臨時朝鮮委員団」であります。自国のことも満足に処理できず、他国に従属して自国人民を悲惨な状態に陥れているこの連中が、朝鮮にきていったい何ができるというのでしょうか。

 こんにち朝鮮問題は、朝鮮人民によってのみ解決できるのであり、朝鮮人民以外には誰もこれを解決する能力も、権利もありません。まして、「国連臨時朝鮮委員団」などが、朝鮮問題を解決することはとうていできません。朝鮮問題を解決できるのはアメリカでも、インドでも、シリアでもなく、ひとり朝鮮人民自身であります。朝鮮の問題は、朝鮮人民によって解決されるべきであり、この問題を立派に解決する者は我々をおいて他にいません。

 もともと「国連臨時朝鮮委員団」は、朝鮮問題を解決するために朝鮮にきたのではありません。かれらはただ、朝鮮を植民地化しようとするアメリカ帝国主義者の提燈持ちとして朝鮮にやってきたのです。つまり、いま南朝鮮でホッジが実施しているアメリカの総督統治を、別の形でさらに強化し永久化するための南朝鮮単独政府のでっちあげに手をかす目的できたのです。

 日本帝国主義の総督と、いまのホッジ総督に何の違いがありましょうか。違う点があるとすれば、日本の総督時代より人民の生活がさらに苦しくなり、弾圧がいっそう激しくなったことだけです。実に、何もかも悪いことばかり驚くほど増えました。監獄が増え、日本帝国主義の支配当時よりひどい、野蛮な迫害が愛国者や民主主義者に加えられています。供出もさらに過酷になっており、日本帝国主義の支配当時は供出をさせるとき警官がついてまわったものですが、いまは警官といっしょにテロ団までやってきて供出を強制しています。休業する工場が増え、失業者が増え、学校へ行けない子供や退学処分を受けた学生がいっそう増えました。民族反逆者と売国奴が増え、悪徳商人が増えました。

 そのため、人民は恐怖と飢えと寒さにおののいており、無権利と貧困にあえいでいます。それにもあきたらずアメリカ帝国主義者は、その植民地従属化政策をさらに強力におし進める目的のもとに、軍政庁の力だけでは足りず、国連の力をかりて「国連臨時朝鮮委員団」まで引き入れたのです。

 しかし、北朝鮮人民はもちろん、南朝鮮人民もそれにはだまされず、これに抗してあくまでたたかう決意にみちています。李承晩のようなごく少数の反動分子だけが人民の審判を恐れ、恥知らずにも外国軍撤退反対のスローガンをかかげて「国連臨時朝鮮委員団」を支持、歓迎していますが、これは全朝鮮人民の憤激をつのらせているだけです。

 朝鮮からソ米両軍が同時に撤退し、朝鮮民族に自己の運命をみずから決定する道を開こうというソ連代表スチコフ大将の声明は、現在、朝鮮民族が自主独立をなし遂げる最も早い道を示した正当かつ合理的な提案です。それにもかかわらず、反動派はなぜ必死になってこれに反対するのでしょうか。一握りの反動派は、かれらの主人であり保護者であるアメリカ軍が撤退すれば、たちまちその命運が尽きることは明らかなので、アメリカ帝国主義者にとりすがって生きのびようと外国軍の撤退に反対しているのです。またかれらは、南朝鮮だけでも切りはなして「ドル」に売り渡し、永久にアメリカ帝国主義に従属させてその下僕となるために、アメリカ帝国主義の朝鮮侵略の道具である「国連臨時朝鮮委員団」を歓迎しているのです。

 しかし、アメリカ帝国主義者とその手先である「国連臨時朝鮮委員団」のいかなる策動も、国内反動派のいかなる陰謀も、結局は失敗に終わるほかありません。それは、すでに自己の民族的優秀性を実証し、確固たる信念をもって自主独立の道を前進している朝鮮人民が、それにはだまされず、一体となって断固敵とたたかっているからです。

 こんにち、解放された北朝鮮の人民は生きがいのある幸福な生活を送っており、暮らしは日増しに向上しています。しかし我々は、三千里国土の半分がアメリカ帝国主義者に占領され、同じ祖先の血すじを引いた同胞、兄弟が抑圧と飢えに苦しんでいる痛ましい現実を片時も忘れることはできません。こうした状況のなかで、北朝鮮の人民が南朝鮮の兄弟の血みどろのたたかいに深く同情し、最も熱烈な声援を送るのは当然のことです。

 我々は今年も、南朝鮮人民がアメリカ帝国主義の侵略策動を粉砕し、その宿願を実現するため勇敢にたたかうものと確信します。

 北朝鮮人民は、祖国の完全な自主独立と統一のために民主基地をさらに強化し、経済建設でいっそう大きな成果をおさめなくてはなりません。

 それでは、今年、北朝鮮で遂行すべき具体的な任務はなんでしょうか。私はすでに新年の辞で、これについて述べましたが、みなさんにもう一度強調したいと思います。

 まず、生産をさらに増大させ人民生活をいっそう向上させることが重要です。もちろん、これまでにも人民経済が急速に復興し、人民生活が著しく改善されたのは確かです。しかし、決してこれに満足することはできず、また満足してはなりません。

 人民が権力を握り、経済の命脈を掌握している人民の国で、今後遂げるべき限りない隆盛発展と豊かで文化的な生活にてらしてみれば、これまでになし遂げたものはほんの手始めにすぎません。周知のように、北朝鮮では民主改革が勝利のうちに完遂されましたが、これは我々の社会を、今後より立派な住みよい社会に発展させる有利な条件をつくったにすぎません。また、1947年に経済建設で大きな成果をおさめましたが、これもやはり人民経済の発展と人民生活向上の第一歩にすぎません。一部の人は、「北朝鮮ではもう20か条の政綱が全部実現したから、この政綱は必要ないのではないか」と言っています。これは間違った考えです。もちろん、この政綱の各条項は法令として制定され、実生活に具現されていますが、まだそれに反する事実がすっかりなくなったわけではありません。我々は、この政綱の実行でおさめた成果をいっそう発展させるべきであり、それを全国的に実施するために力強くたたかわなければなりません。

 一言でいえば、これまでにおさめた勝利は大きいが、これで社会の改革と建設が終わったわけではありません。我々には、民主主義建設のより明るい道が開かれているにすぎません。我々はより明るい未来へ向かって、限りない発展の道を自信をもってひきつづき前進すべきであり、すべての事業を実質的に発展させていかなければなりません。

 例えば、北朝鮮ではすでに土地改革が勝利のうちに実施されました。だからといって、我が国の農業問題がすべて解決されたわけではありません。農業をさらに発展させるべきであり、そのために提起される問題を遅滞なく解決していかなければなりません。今後、農法を改善し、役牛をふやし、農具を改良してより多く供給し、灌漑工事をいっそう広範に進めなければなりません。私は、灌漑工事を強力におし進め、川の水をそのまま海へ流さずに田に引き入れるよう機会あるごとに強調してきましたが、これは本当に緊要な課題です。我が国には多くの水源と豊かな電力があり、モーターも自力でつくれるようになりました。こういう状況のなかで努力しさえすれば、畑を3倍も収量の多い水田にきりかえる事業を大々的にくりひろげることができます。

 産業国有化にしてもそうです。法令が発表され、日本帝国主義者が独占していた重要産業施設が人民の手に握られたからといって、産業問題がすべて解決されたわけではありません。破壊された工場を復旧し、新しい工場を建て、人民の所有となった産業を立派に管理運営して、生産を急速に増大させなければなりません。そうしてこそ、人民の新しい生活の建設がいっそう促進され、我が国が富強な民主主義的自主独立国家となり、全人民がいっそう幸福で豊かな生活を送れるようになるでしょう。

 いま、北朝鮮人民の生活は実に目ざましく向上しています。これは、日本帝国主義支配当時の朝鮮の勤労者の生活や、現在の南朝鮮人民の惨めな生活とは比べようもありません。しかし、これに満足してはいられません。国の主人となった人民は、より豊かで文化的な生活ができるし、また当然そうなるべきであります。人民を解放し、全人民に幸せで裕福な生活をさせるのが我々の目的であり、そうなってはじめて革命が完全に勝利したと言えます。

 また、我々は人民に裕福な生活をさせることによって、人民の支持を得ることができます。人民は、いつでも自分の自由と幸福を保障し、実際にその生活向上をはかる政権を支持するものです。我々の民主主義が人民の福祉を実質的に保障する条件のもとでのみ、それが資本主義国の「民主主義」と根本的に違うことが証明され、全朝鮮人民は「本当に我々の民主主義はすばらしい!」と言って、この民主主義の旗のもとにかたく団結するようになるでしょう。

 我々は口先だけで民主主義を唱えるのではなく、実践をもって真の民主主義を具現しなければなりません。我々と反動派との違いは、まさにここにあると言えます。南朝鮮の反動派は、人民になにも与えず、かえって人民から奪いとるばかりでありながら、口先では民主主義を叫んでいます。

 我々が人民のため、国のために膨大な事業をなし遂げた解放後2年余りのあいだに、反動派のやったことはなんでしょうか。「ドル」に国を売り渡し、人民を抑圧し、虐殺し、搾取して恐怖と飢えと寒さにおののかせたこと以外にいったい何があるでしょうか。だから、南朝鮮人民はかれらにだまされるどころか、ますます憤慨し、かれらを憎み、かれらに反対して立ち上がっているのです。

 しかし、我々のおこなっていることは、かれらとは正反対です。我々は、言葉よりも実践をもって人民に自由と幸福をもたらし、人民の生活をたえず向上させています。我々は、勤勉に実際の仕事をおこなっており、建設と生産に励んでいます。実践、これこそ最もよい宣伝方法であり、最も立派な政治であります。我々にとってなによりも大事なのは、実践であり、まさに、これを通じて人民を獲得し、革命の勝利をかちとることができるのです。

 我々は今年も、実践闘争を通じて生産を高め、人民生活を著しく向上させ、民主基地をいっそう強化しなければなりません。

 我々の最大の目標は、全朝鮮に富強な民主主義的自主独立国家を建設することです。ところで、それを実現するためには、北朝鮮で人民経済を急速に発展させて経済的基盤をいっそうかため、人民の生活を安定、向上させなければなりません。民主主義が勝利した北朝鮮の生活がどんなにすばらしいものであるかを、南朝鮮の人民に明確に示し、民主基地の威力を決定的に強化すれば、祖国の完全な自主独立の日を早めることができます。

 それでは、短期間のうちに経済の基盤を強化し人民生活を改善するためには、人民経済をどのような方向へ復興発展させるべきでしょうか。

 一部の人は、重工業のみを強調して、いま直ちに重工業主義をとるべきだという間違った主張をしています。もちろん、重工業を復興発展させることは重要です。重工業を発展させれば自主的な民族工業の基礎をきずき、人民生活を向1させる物質的条件をつくることができます。

 しかし、現在の我が国の状態で直ちに重工業を大々的に拡張するなり、重工業のみに力を傾けることはできません。当分のあいだは、既存の重工業部門の工場を復旧整備し、人民経済の発展に必要な原料と資材を生産供給する方向へ進むべきです。そして、全く基礎のない軽工業を新たにきずいて重工業とのつりあいをとり、また農業の発展を強力に促進しなければなりません。こうしてこそ、人民の生活を急速に安定、向上させ、経済建設で人民大衆の熱意と創意性をさらに高めることができます。

 このように、重工業の復興と国の経済的基盤の強化を軽視するのも誤りですが、重工業のみにかたよって人民生活を向上させる軽工業を創設しないならば、これもまた誤りであります。

 人民生活を向上させるためには、生産全般を急速に増大させ、生活必需品をより多くつくり、物価を系統的に引き下げなければなりません。都市、農村、鉱山、漁村のいたるところで増産闘争を強めるべきです。生産が高まり、良質の製品が多く生産されれば、それをもって生産をさらに拡大し、勤労者の生活を向上させることもでき、そのうちの一部を外国に輸出して我が国に緊要な品物を買い入れることもできます。いずれの部門を問わず、すべての工場、すべての勤労者が、自己に課された生産課題を超過完遂し、より多く生産するようにしなければなりません。

 なによりもまず、経済計画を正確に作成すべきです。正確な計画なしには、なにごとも正しくおこなうことができず、まして、人民の所有となった産業を発展させることはできません。各部門、各企業所では綿密に調査、検討した資料にもとづいて、実行可能な正確な計画を立てるようにすべきです。

 当地の活動家は、仕事のうえで計画性が足りず、経済計画の立て方をよく知らないのが欠点です。特に、消費組合の仕事に無計画な傾向が甚だしくあらわれています。自分の部門の実情にうとく、自分の仕事に精通していない活動家が少なくありませんが、そういうことでは計画を正確に立てることも、先を見通して仕事をおし進めることもできません。

 昔の人も、一日の計は朝にあり、一年の計は春にあると言ったものです。ここで春というのは、もちろん年の初めをさしています。新年を迎えてすでに半月がすぎたのに、いまだに今年の計画がはっきり立てられていないのはゆゆしいことです。1947年度の計画実行で得た教訓と仕事の長所と短所を詳細に検討したうえで、1948年度の計画を正確に立案すべきであり、各機関、企業所はもちろん、各個人にいたるまで具体的な計画をもって正常に仕事を進めるようにしなければなりません。

 経済計画は、互いに関連をもたせるべきであり、全国家的な立場からすべての条件を十分に考慮した現実的な計画とならなければなりません。同時に、計画は必ず発展的で積極的なものでなければなりません。現状維持の程度で満足するような、消極的な計画は不必要であり、我々の前進を妨げます。

 江界(カンゲ)郡の例をとれば、まず、ここには木材資源がいくらでもあるのに、なぜ材木をもっと生産し、それを利用していろいろな木材加工品を多く生産する計画をおりこまないのでしょうか。器でも、家具でも、事務室や学校で使う机や椅子でもよく、黒板でもよいと思います。こういったものを多くつくって適当な値段で売れば、人民の需要がみたされ、企業所の収益や労働者の収入も増え、どんなによいでしょう。ところが、郡人民委員会では、国営企業所でそういう製品を多く生産するように指導もせず、個人企業家にそれをすすめようともしていません。そういう簡単な消費物資は、消費組合で生産してもよく、個人の労力と資金を出し合い、適当な形態の企業を運営して生産してもよいでしょう。私営商人や企業家も投機にばかり目を向けずに、正当な方法で商業や企業を経営すべきときがきました。

 また、こんなによい地帯で、なぜ牧畜や養蚕を発展させる計画を立てないのでしょうか。牛はいうまでもなく、豚、羊、蚕など、いくらでも飼うことができます。こうすれば、畜力をもっと利用することができるし、栄養価の高い副食物や皮革など日用品の原料も多く得られ、人民生活に緊要な絹の原料もたくさん得られるから全く申し分ありません。こんなに有益なことをおこなわないというほうはないでしょう。

 各農家でもやはり、今年はどんな作物をどういうふうにつくり、どういう穀物をどれくらい生産し、家畜は何頭ぐらい、どのように飼い、木綿は何反ほど織るべきか、という明確な計画を立てて農業や副業を営むようにすべきです。集落全体としても、畑は新たにどのくらい開墾し、灌漑工事はどのようにおこない、肥料はいつどれくらい交換し、種子は互いに融通し合ってどのように解決するか、畜力はどう利用すべきかなどについて具体的な計画を立てなければなりません。

 里・面・郡人民委員会と政党、大衆団体その他の各機関でも、すべて活動計画を正確に立て、すべてのことを秩序ただしく進めるべきであります。このように、下部から上部にいたるまで、すべての機関、企業所と各人が正確な計画を立て、高い愛国的熱意と創意性を発揮してそれを超過実行するならば、必ず新たな勝利をかちとることができるでしょう。

 我々にとって不可能なこと、できないことなどはありません。このように自信をもって熱心に働くならば、いっそう驚くべき成果がもたらされるでしょう。反動派が勝手に騒ぎたてるなら騒がせておきましょう。後日、誰がどういうことをしたかを総括すれば、そのときには世間の人々が、人民の偉大な業績と敵の重大な罪悪についてもう一度驚くようになるでしょう。

 今年、我々が遂行すべき重要課題は、増産と同時に節約をすることであります。いくら増産しても、一方でやたらに浪費してしまえば、増産したかいがありません。ことに、すべてがまだ豊かでない我が国の実状にてらして、節約し質素な生活をすることは国家的に極めて重要な意義をもっています。国家機関から各家庭にいたるまで、あらゆるところで節約し質素に暮らす気風を確立しなければなりません。

 国家の財産を愛護し、いっさいの不必要な支出や浪費と強くたたかうのはもちろん、個人生活でもいたずらに浪費することがないようにすべきです。これからは、機関や団体で宴会をたびたび催すのもやめるべきであり、個人の家でもなにかにつけて祝宴を設けたり、特に冠婚葬祭などで浪費したりする習慣を断然なくすべきです。

 そして、国家資金を有効に使うようにしなければなりません。我々は建設を始めていくらもたっておらず、本当に大きな建設はこれからだと言えます。ところがいまだに方々で、いたずらに国家と人民の資金を浪費することが少なくありません。なんとかの記念碑だの、記念塔だのといって数十万円(ウォン)ずつかけて建設しては、また落成式だのなんだのといって酒をふるまう「式」をおこなっています。こういう悪習は一日も早く一掃すべきであり、すべての資金を国家と人民の利益のために、無駄なく大切に使う規律を確立しなければなりません。

 朝鮮人には、知らなくても知っているふりをし、なくてもあるふりをする癖がまだ残っていますが、これは大変困ったことです。いまの実状では、木綿の服にわらじばきでも悪くありません。ところが人民学校の生徒までが、洋服にゴム靴でなければ学校へ行けないものと思っています。また、いたるところに飲屋がありますが、こういうのも少し整理したほうがよいでしょう。

 節約して生産を増やし、勤労者の生活をさらに早く改善する余地はまだまだたくさんあります。一銭の金でも、わずかな資材でも大切にし、節約したすべてのものを富強な祖国建設にふり向けなければなりません。これは我々の崇高な義務であり、これがまさに建国思想であります。すべての人民がこの思想で武装し、建国の大業にすべての予備と可能性を引き出してこそ、北朝鮮の民主基地をいっそう強化し、朝鮮民族の宿願である祖国の完全な自主独立と民主主義的統一を速やかに実現することができます。

 我々は、北朝鮮で経済建設を立派に進めるとともに、南朝鮮人民を積極的に声援し、北朝鮮でのような民主主義を全朝鮮に実現するためにたたかわなければなりません。南北朝鮮の全人民がかたく団結し、英雄的な闘争をくりひろげてこそ、アメリカ帝国主義者と国内の反動派をしりぞけ、最後の勝利をかちとることができます。

 いま我々は、この大業の遂行で大きな意義をもつ仕事を進めていますが、朝鮮臨時憲法の制定が、まさにそれであります。北朝鮮人民のかちとった民主的な新生活を反映した憲法を、全朝鮮人民の憲法とし、人民が真の主人となる民主主義的独立国家の建設を最終的に実現するため、こぞって決起しなければなりません。

 勝利は、必ず朝鮮人民のものであります。こんにち、我々には勝利をかちとれるすべての条件がそなわっています。我々には、団結した民主勢力があり、真の人民政権があります。また、高い民族的誇りと燃えるような祖国愛があり、確固たる勝利の信念があります。我々は、民主改革の遂行と経済建設で多くの経験をつみ、すでに少なからぬ幹部を養成しました。我々にはまた、偉大なソ連の強力な支持と私心のない援助があります。いかなる者もこのような人民を屈服させることはできないし、アメリカ帝国主義者とその手先である「国連臨時朝鮮委員団」や国内反動派がいかにあがこうとも、朝鮮人民の進む道を絶対にさえぎることはできません。侵略者が朝鮮から追い出され、反動的な売国奴一味が人民の審判を受け、朝鮮が統一され、自主独立する日は必ずくるでしょう。

 みな力をあわせて、新たな勝利に向かって力強く前進しましょう!

出典:『金日成著作集』4巻


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