金 日 成

中央保安幹部学校の任務
―中央保安幹部学校の教職員、学生への談話― 
1947年4月25日 

 学校を見て回りましたが、清潔によく整備されています。学習条件も十分に備わっており建物もよい方です。教職員と学生の皆さんは学校を整備するのに多くの努力を払いました。

 私はきょう皆さんに、中央保安幹部学校の教育事業で提起されるいくつかの課題について述べたいと思います。

 こんにちの朝鮮の情勢は非常に複雑です。南朝鮮を占領したアメリカ帝国主義者は、民主勢力に対する弾圧を強化する一方、一握りの反動勢力を糾合して、その地盤を固め、全朝鮮を植民地に、アジア侵略の前哨基地に変えようと狂奔しています。アメリカ帝国主義の古い忠僕である売国奴李承晩一味は、アメリカ帝国主義の植民地従属化政策に積極的に追随しながら、反民族的売国行為をいっそう露骨化しています。

 こんにちのわが国のこのような複雑な情勢は、祖国と人民を守る強力な人民の正規軍を早急に創建することを求めています。我々は強力な近代的正規軍を創建して、人民政権と人民の新しい生活をしっかり守らなければなりません。

 この歴史的課題の遂行において、中央保安幹部学校は大変重要な任務を担っています。

 この学校の基本的任務は、やがて創建される人民の武力である人民軍の根幹となる幹部を育成することです。この学校の学生は、今後創建される人民軍の根幹となり、指揮官とならなければなりません。したがって、この学校は、人民軍の幹部源泉部隊だと言えます。

 中央保安幹部学校では、正規軍の歩兵や砲兵、工兵をはじめ、各部門の有能な指揮官を早急に多数育成しなければなりません。

 ここでは、新しい指揮官を多数育成するとともに、保安幹部訓練所の幹部のうち、この学校で学べなかった人たちを交代で順次もれなく教育すべきです。一言でいって中央保安幹部学校は、人民軍指揮官の母校にならなければなりません。

 中央保安幹部学校の教職員、学生は、学校が担っているこのような使命と任務をしっかり認識し、革命任務を立派に遂行するために極力努力すべきです。

 有能な指揮官を多数育成するためには何よりもまず、学校の教育事業を改善しなければなりません。

 軍事教育はあくまで、わが国の実情に即しておこなうべきです。そうしなければ立派な指揮官を育成することができません。ところが現在多くの場合、外国の軍事学校の教材を翻訳してほとんどそのまま使っているため、わが国の実情に合わないものが少なくありません。

 大砲にしても、平地の多い国では平射砲が多く使われますが、山岳の多いわが国では平射砲より曲射砲が多く必要です。現在使用している歩兵銃も長く重いため朝鮮人の体質に合いません。したがって、外国の軍事規定や教材を教条主義的に取り入れるべきではありません。

 教育におけるこのような偏向を早急に是正しなければなりません。もちろん、これまで正規軍を教育した経験がないので、多くの規定や教材を全部一度に新しくつくることは困難でしょう。したがって、当分の間外国のものも使用し、一つひとつ経験を積みながらよいものは参考にし、そうでないものはわが国の実情に合うように漸次改めるべきです。そうして、わが国の実情に合った軍事規定や教材、つまり朝鮮の軍隊の規定や教材をつくって使わなければなりません。

 軍事規定は軍人の行動上の統一を期する規準となるだけに、改正する場合は学校で慎重に討議し、上部に提出して承認を受けるようにしなければなりません。各部隊では、一つの軍事用語でも勝手に変えてはなりません。軍事学の研究過程で意見を異にする問題があれば、中央保安幹部学校に提起して解決するようにすべきです。

 今後大砲や歩兵銃も、朝鮮の地形や朝鮮人の体質に適したものをつくらなければなりません。

 中央保安幹部学校では、すべての軍事科目の授業内容を検討し、学生にわが国の実情に合うものを教える原則にもとづいて教育綱領を作成しなければなりません。

 軍事教育では、視覚教材を多く利用することが大切です。視覚教材を利用するのは、非常にすぐれた教育方法です。視覚教材を利用すれば教員の講義にも便利であり、学生が講義内容を理解するうえでも大きな助けとなります。ことに学生のなかには、これまで勉学の機会がなかった人が多いだけに、彼らに講義内容を生々しく早くのみ込ませるために視覚教材が切実に必要です。学校では、授業内容に関する多様な視覚教材をつくり、広く利用すべきです。

 学生は卒業後、小隊や中隊を受け持って兵士を教えることになるのですから、学校では理論とともに実際の動作訓練を多くおこない、熟練させなければなりません。

 何よりも射撃訓練を十分おこなうべきです。

 軍人は、誰もが射撃にたけていなければなりません。軍隊がどんなに多く、すぐれた武器で装備されたとしても、射撃が上手でなければ、そのような軍隊は戦闘で勝てません。軍人は、すべて射撃術を向上させるために絶えず努力すべきです。

 射撃術を向上させるためには、射撃訓練を効果的におこなわなければなりません。学校では射撃場や練兵場の設備を十分に整え、規定と教範に従って射撃訓練をいっそう強化すべきです。

 射撃訓練では、最初は依託物に拠って正確に照準し撃発する方法を教え、それに熟達したらいろいろな地形地物を巧みに利用し正確に射撃する方法を教えるべきです。こうして、すべての学生が、どんな状況下でも命中させる名射手にならなければなりません。教員と学生は、すぐれた射撃法を引き続き研究しなければなりません。

 射撃訓練に励むとともに、工兵訓練も十分おこなわなければなりません。

 工兵は、戦闘で重要な役割を担当します。したがって、工兵学は、軍事学校の重要科目の一つになっています。工兵は、攻撃では鍵の役割を担い、防御では錠前の役割を果たすと言えます。

 工兵は、遊撃戦でも正規戦でも必要です。抗日武装闘争期にも工兵が必要でした。もちろん、当時は工兵の兵種を別に設けませんでしたが、誰もが爆破や築造をおこない、工兵の役割を遂行しました。現代戦における工兵の役割はさらに大きいと言えます。

 中央保安幹部学校では、次期から工兵編制をさらに増やし、工兵訓練をいっそう強化すべきです。工兵学の研究や工兵訓練も、必ずわが国の地形の特徴を念頭においておこなうべきです。

 工兵訓練では、特に爆破訓練を巧みにおこなわなければなりません。爆破は、破壊ばかりでなく建設にも切実に必要です。戦争では塹壕や交通壕を掘り、トーチカも築かなければならず、多くの築造物工事もしなければなりません。ところが、わが国の山岳地帯は少し掘るとすぐに石場なので、シャベルとツルハシだけでは多くの築造工事を短時間に完成することができません。したがって、築造工事を円滑におこなうためには、爆破しなければなりません。爆薬を使えば、人力をそれほど使わなくても多くの築造物を容易につくることができ、軍事行動上最も重要な時間を適確に保障することができます。学校では、異なる地形と状況下で少量の火薬で多くのものを爆破する方法を研究し、築造工事に広く適用するようにしなければなりません。

 工兵訓練では理論教育とともに、実習を多くおこなうことが重要です。学校では、すべての学生が爆破計算や装薬、点火もおこない、隠蔽場所の選択訓練も多く積み、実際の動作に熟練するようにすべきです。爆破実習は必要なものをすべて備えたうえで慎重におこなわなければなりません。最初から実物で訓練するのでなく、木製の模型爆薬で訓練を積み、なれてから実物の爆薬を用いるのが安全でしょう。実物で訓練する場合は、爆薬を惜しまず規定量を用いて学生が正確な爆破法を学べるようにすべきです。

 工兵学は、他の科目と違って計算や公式が多いので、学ぶにつれてますます難しくなります。したがって、皆さんは、はじめから真剣に取り組み、その日学んだものはその日のうちに完全に消化して次に進むようにすべきです。学生のなかには、これまで数学を学べなかった人がいるので、数学のできる学生が彼らを支援する活動も組織すべきです。

 学生は勉強だけでなく、サッカーやバレーボールなど各種スポーツをすべてこなせるようにならなければなりません。そして、何ごとにもたけた指揮官にならなければ兵士たちととけあうことができず、軍人を立派に教育することもできません。

 次に、軍事規律をさらに強化しなければなりません。軍隊に規律がなければ戦いで勝利できないばかりか、軍隊を維持することもできません。鉄の規律のある軍隊だけが強力な戦闘力を所有し、百戦百勝できるのです。したがって、学校ではすべての学生が軍事規定を厳守し、軍事規律に違反したり秩序を乱すようなことが絶対にあってはなりません。特にこの学校は、正規軍の根幹を育成する教育機関であるため、全員が厳格な規律のなかで鍛えられなければなりません。

 次に、武器をよく管理しなければなりません。

 武器は軍人の生命です。軍人は、武器をもって国と人民を守り、敵を掃滅します。したがって、軍人は常に武器を瞳のように大切にし、よく管理しなければなりません。

 とりわけ、この学校の学生は今後指揮官になる人たちなのですから、武器の正しい扱い方に完全に習熟しなければなりません。学校では、武器庫を完備し、武器を軍事規定どおり正しく管理すべきです。そうすれば、彼らが部隊に配属されても、軍人をそのように教育することができます。

 有能な指揮官になるためには、軍事面だけでなく、政治的、思想的にもしっかり準備しなければなりません。したがって、学校では学生の政治・思想教育を十分におこない、彼らを不屈の革命家に、立派な政治活動家に育成しなければなりません。

 学校では政治教育を立派におこない、学生をマルクス・レーニン主義理論とわが党の革命思想で武装させるべきです。特に、彼らの意識に残っている日本帝国主義の古い思想の残滓を一掃し、祖国と人民を愛する愛国主義思想で武装させなければなりません。

 学生を政治的、思想的に準備させるうえで、建国室を立派に整え、効果的に活用することが極めて重要です。建国室は、会議や学習、文化活動をおこなう学生の立派な教育の場です。この学校には、絵も上手で文才にたけた学生が多いようですが、建国室をきちんと整備して立派に運営すべきです。建国室はあまりはでに飾らずに、朝鮮人の感情に合った高尚な色彩にすべきです。建国室に外国人の肖像をいくつもかけてありますが、なぜわが国の偉人のものは一つもないのですか。これでは、学生を愛国主義思想で教育することができません。建国室には、祖国と人民のために勇敢に戦った朝鮮人民の闘争史料を多く備えておくべきです。

 学生にわが国の歴史と人民の輝かしい革命伝統をよく教えなければなりません。侵略者に抗して勇敢に戦った朝鮮人民の愛国的な闘争史料、なかでも抗日武装闘争当時、革命烈士が生命を賭して戦った革命伝統の史料を多く学ばせて、学生を真の愛国主義と革命思想で武装させ、抗日革命烈士のように革命にあくまで忠実な革命家に育成しなければなりません。

 学生は、教員からも学び、建国室でも学び、絶えず学ばなければなりません。知識がなければ立派な民族幹部になれません。皆さんは政治知識にも明るく、先進的な軍事科学にも精通した立派な民族幹部に、有能な軍事指揮官にならなければなりません。

 学生は、自分が革命家になるだけでなく、故郷の父母、親戚、友人たちにもよい影響を与え、彼らが建国事業に極力参加するように導くべきです。

 皆さんは祖国と人民のためにすすんで入隊し、学校でも多くのことを学んだので革命的な自覚が高い水準にあります。しかし、皆さんの父母は、皆さんのように自覚が高いと見ることはできません。もちろん、朝鮮の多くの親が祖国のために一人息子や末息子までためらいなく軍隊に送り出しましたが、おそらく寝てもさめても息子は無事だろうか、病気ではないだろうかと案じているはずです。家では息子から朝夕便りがあっても多いとは思わないでしょう。したがって、皆さんは家族にたびたび手紙を書いて安否も問い、革命家の家庭にふさわしく生活するように諭し、家族全員が村の模範になるようにすべきです。

 自分の家族だけでなく故郷の友人や民青員たちにもしばしば手紙を書き、彼らが人民政権を支持し富強な自主独立国家建設の先頭に立つよう、革命的な影響を与えることが大切です。これも重要な政治活動の一つです。

 学校では、面会に来る人にもよい影響を与えるようにすべきです。現在学校には面会室もないようですが、早くそれをつくるべきです。抗日武装闘争当時は、面会室をつくって面会するなど考えられないことでしたが、現在ではそれができない理由はありません。革命家だからといって、家族と面会してはいけないという法はありません。今は、昔と事情が変わったのですから面会室も立派につくり、家族との面会に不便がないようにし、よい影響を受けて帰るようにすべきです。

 軍人は父母兄弟や故郷を愛し、それを忘れてはなりません。我々が革命をおこなう目的がほかにあるのではありません。革命は、父母兄弟、祖国と人民のためにおこなうのです。父母兄弟、それに故郷を愛する気持ちが大きければ、愛国心もさらに熱烈なものになるのです。

 かつて、険しい山並みを越えながら武装闘争を展開したとき、我々は、常に父母兄弟、故郷や祖国を思いつつ戦いました。抗日遊撃隊員は、日本侵略者と地主、資本家に抑圧され搾取されている父母や妻子、故郷の人びと、そして侵略者に踏みにじられた祖国を思い、あらゆる難関を克服して日本帝国主義侵略軍と戦って勝利しました。

 次に、下士官とりわけ分隊長の役割を高めなければなりません。

 分隊長は、隊員たちと直接生活をともにする末端の指揮官です。したがって、分隊長がその役割を十分に果たすときはじめて、分隊を立派な集団につくることができるのです。分隊長が自分の役割を十分に果たさなければ全分隊が立ち後れることになります。分隊長の責任はこのように重いのです。

 分隊長は、政治・思想生活や学習、訓練、規律生活などすべての面で常に模範となるべきであり、隊員の鑑とならなければなりません。分隊長が他人より熱心に学習し規律もよく守り、あらゆる面で先頭に立ってこそ、隊員の学習も助け、隊員に規律の厳守と正しい日常生活を要求することができます。

 分隊長がその役割を立派に果たすためにはまた、分隊の構成状態をよく把握していなければなりません。分隊長は、各隊員の出生地、入隊前の職業、知識程度、性格上の特徴などすべて知っているべきです。それに誰がどの科目を好み、どの科目がきらいなのか、苦手な科目とその理由などすべて知っていなければなりません。そうすることによって、各隊員の特質に即した教育ができ、日常生活を正しく指導できるのです。

 学生の学習に対する責任は教員や学生だけでなく、分隊長も負うべきです。分隊長は、隊員の学習に常に関心を払い、必要な支援を与えてすべての学生が優秀な成績で卒業できるようにすべきです。分隊長はまた、隊員の日常生活に常に深い関心を払い、困っている問題があればいち早く解決してやらなければなりません。

 学生が熱心に学び訓練に励むようにするには、給養活動が十分にゆきとどかなければなりません。学校では学生の健康と日常生活に深い関心を払い、健康な身体でなんの不便もなく学習と訓練に励めるようにすべきです。

 何よりも学生の健康管理に十分留意し、病人が一人も出ないようにしなければなりません。軍医所では徹底した病気の予防をおこない、健康検診もしばしば行って病人を早く治療しなければなりません。

 食事の質を高め、学生の好みに合った給食をしなければなりません。ここは海も近いので鮮魚にも不自由しないでしょう。冬は、食堂内の適温を保ち、学生が暖かい食堂であついご飯とスープが取れるようにすべきです。

 学生に上質のノートをつくってやるべきです。今使っているノートはインクがにじみますが、いくら紙不足でも、この学校の学生にはインクのにじまない上質のノートをつくってやらなければなりません。そうしないと彼らが学校で学んだものを部隊にいって兵士たちに教えることができません。

 党と国家は、正規軍の指揮官の育成のためには何も惜しみません。教育と日常生活で困難な問題があればためらうことなく提起し、そのつど解決してもらうようにすべきです。

 私は、すべての教職員、学生が中央保安幹部学校の任務を肝に銘じ、今後の教育事業において新たな革新を起こすよう期待します。
 出典:サイト「わが民族同士」 参照:『金日成著作集』3巻

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