金 日 成

保安幹部訓練所の当面の課題
 −保安幹部訓練所第2所将校会議でおこなった演説−
1947年1月15日 

 今日、我々は保安幹部訓練所第二所に来て、規律が厳格で、全員が学習と訓練に励んでいるのを見て喜びにたえません。党中央は、創設後間もないこの訓練所が多くの仕事をなし遂げたことを高く評価します。

 私はこれから、保安幹部訓練所がなすべきいくつかの当面の課題について述べたいと思います。

 こんにち、わが国の情勢は非常に緊迫しています。南朝鮮を占領したアメリカ帝国主義者は、わが国を南北に分断して南朝鮮を完全な植民地にし、ひいては全朝鮮を侵略しようと企んでいます。アメリカ帝国主義侵略者は、民主主義自主独立国家の建設をめざす朝鮮人民のたたかいを躍起になって妨害しています。アメリカ帝国主義者の忠実な手先李承晩売国奴一味は、アメリカ帝国主義者の積極的な後押しのもとに、地主や資本家の息子たちと旧日本軍の将校をつとめた者たちを中心にかいらい軍をつくり、血をもって勝ち取った朝鮮革命の獲得物を抹殺しようと露骨に策動しています。

 祖国のこのような情勢は、我々に革命的警戒心をさらに高め、敵の侵略から祖国と人民を守る万全の態勢を整えることを求めています。我々は一日も早く強力な人民の正規軍を創建して、敵の侵略から祖国と人民を守り、民主主義自主独立国家の建設で朝鮮人民が達成した成果をかたく守らなければなりません。

 祖国と人民を守り、党の革命的武力を建設するうえで、保安幹部訓練所の強化は非常に重要な意義をもちます。

 保安幹部訓練所は、人民の真の武力であり、今後創建される人民軍の中核部隊であります。保安幹部訓練所は、帝国主義の侵略から祖国と人民を守護し、今後創建される人民軍の中核を育てる重要な任務を担っています。今後人民軍が創建されれば、数多くの愛国的青年が入隊してくるでしょう。そのときには、保安幹部訓練所で軍事・政治訓練を受けた軍人が、新たに組織される部隊で中核的な役割を果たし、兵士を教育しなければなりません。

 保安幹部訓練所がその重大な任務を立派に遂行するためには、部隊を速やかに整備し、軍人の政治・思想教育を強化すべきであります。

 革命軍の第一の優位性は、軍人の政治的・思想的自覚が高い点にあります。わが軍人は、祖国と人民のために戦うという高度の革命的自覚をもってすすんで入隊した立派な青年たちです。保安幹部訓練所では、軍人の政治・思想教育を強化し、彼らを政治的、思想的に鍛えられた頼もしい祖国防衛者、熱烈な革命戦士に育成しなければなりません。

 軍人を政治的、思想的に鍛えるためには、文化部の役割をさらに高めるべきです。

 文化部は、何よりもまず、軍人に党の路線と政策を解説し、浸透させる活動をおこなわなければなりません。これは、軍人を政治的、思想的に武装させる第一歩であります。文化部の活動家は、軍人のなかに入り、党の路線と政策を解説し、浸透させるばかりでなく、扇動員を教育して、彼らが常に軍人に党政策を浸透させる活動を活発におこなうようにすべきです。わが国で実施された土地改革をはじめ、民主改革の成果と意義、わが国社会制度の本質と優位性、人民経済復興建設の成果などをもって扇動員にしばしば講習をおこなえば、彼らはそれを軍人に常に解説し、浸透させることができるでしょう。文化部は部隊内に党政策を浸透させる体系を確立し、各時期に党がうちだす路線と政策を軍人にとどこおりなく正確に解説し、浸透させることによって、すべての軍人に党政策の本質とその正しさを明確に認識させ、彼らを党の革命思想で武装させるべきです。

 党政策教育とあわせて、抗日遊撃隊員の不屈の革命精神で軍人を教育すべきです。軍人に抗日革命烈士が日本帝国主義とどのように戦ったかを教えれば、彼らも革命烈士たちのように戦おうとする革命意欲に燃え、革命課題を忠実に遂行するようになるでしょう。保安幹部訓練所の幹部のなかには、かつて抗日遊撃隊で戦った人が多数いますので、文化部では組織活動を正しくおこない、彼らが軍人に、抗日遊撃隊員が艱難辛苦に耐えながら日本帝国主義と戦った当時の話を語って聞かせ、すべての軍人が抗日闘士の不屈の革命精神を見習うようにしなければなりません。

 文化部は、軍人に南朝鮮の情勢や国際情勢についても、そのつど知らせるべきです。

 軍人の思想教育は、朝鮮革命の任務に即しておこなうべきです。かつて抗日武装闘争期に我々は、朝鮮から日本帝国主義者を駆逐し、その手先である地主や買弁資本家を打倒して、搾取のない社会を建設するために戦わなければならないとう内容で隊員を教育しました。言いかえれば、主体性のある思想教育をおこないました。文化部は、軍人に解放された祖国に民主主義自主独立国家を速やかに建設すべきであること、強力な人民の正規軍をつくるべきであること、この革命課題の遂行で軍隊の任務が極めて重いこと、軍人は軍事・政治訓練に励み祖国防衛の任務を立派に遂行できるよう速やかに準備すべきであることなどを明確に教えなければなりません。

 思想教育はまた、軍人各人の水準と特質に合うようにおこなうべきです。かつて抗日遊撃隊では、隊員の水準に応じて、文字を知らない隊員には文字を教え、階級的自覚の低い隊員には階級的境遇を悟らせることから始め、知識があり階級的自覚が強い隊員には最初から高い水準の教育をおこないました。こうして、すべての隊員を政治的、思想的に鍛えて、敵と勇敢にたたかえるようにしました。諸君も青年軍人の教育をこのような方法でおこなうべきです。

 建国室は、軍人の思想教育と大衆文化教育の重要な場所です。建国室を充実させ、これを中心に各区分隊で思想教育を活発におこなうべきです。建国室には、朝鮮人民の愛国的闘争に関する資料、特に、抗日遊撃隊の英雄的闘争に関する資料を多くそろえ、それをもって軍人を教育すべきです。そうすれば軍人を愛国主義思想と不屈の革命精神で武装させることができます。これと同時に、建国室では、わが国の悠久な歴史と輝かしい文化、祖国の資源と民主祖国建設の成果を見せる資料もそろえなければなりません。このような資料は、軍人を愛国主義思想で教育するうえに大きく役立ちます。

 さらに、建国室では、新聞や雑誌をはじめ、多くの本と娯楽施設もそろえ、軍人たちが来て本を読み、歌も歌いながら文化的に楽しく休息できるようにすべきです。

 文化部は、部隊の民主青年同盟組織に対する指導を強化し、民青組織が青年軍人の思想教育を力強くすすめるようにすべきです。

 次に軍事訓練を強化しなければなりません。

 軍人は、祖国の防衛に献身する高度の革命的自覚をもっています。いうまでもなくこれは良いことです。しかし、そうした思想的自覚だけでは、党から受けた革命任務を円滑に遂行することができません。軍人は高度の革命的自覚をもつとともに、近代的な軍事科学と技術を身につけなければなりません。知識は力であります。

 訓練所では、戦闘訓練をさらに強化し、すべての軍人が短時日内に先進的軍事科学・技術と戦法を習得するようにすべきであります。すでに部隊の編制も基本的に終わり、部隊の全力を戦闘訓練に集中できるはずです。当面、冬期戦闘訓練に力を集中し、訓練課題を高い水準で立派に遂行しなければなりません。特に、射撃術を高める訓練をつみ、将校と兵士全員が百発百中の名射手にならなければなりません。

 保安幹部訓練所のすべての軍人が、自分の武器と戦闘技術機材に精通し、戦闘任務を立派に遂行するために専門技術を高める訓練に励むべきです。

 まず砲兵訓練を強化すべきです。わが党は、解放された祖国と人民を防衛するために、砲兵に立派な大砲と戦闘技術機材を与えました。砲兵は砲撃訓練に励み、大砲と戦闘技術機材に早く精通して名砲手にならなければなりません。

 いかに威力のある大砲といえども、それを扱う砲兵の射撃術が低ければ威力を発揮することができません。射撃術がすぐれていれば大砲の威力を発揮し多くの敵を掃滅することができます。大砲は歩兵銃のように単独で撃つのではなく、数人の砲手が協力して発射するため一人だけがすぐれていてもいけません。砲撃訓練を重ね、すべての砲手が指揮官の号令に従って一人の手足のごとく一致した動作がとれるように熟練しなければなりません。また、大砲をわが国の地形に効果的に使用できるよう、曲射と直射訓練を多くおこなわなければなりません。

 通信兵も専門分野の訓練を強化して自分の戦闘技術機材に早く精通し、部隊の指揮通信を迅速かつ正確に保障できる高度の技術を身につけなければなりません。

 自動車運転手は運転技術をさらに高め、看護婦は傷病兵の看護法を早く習得すべきです。

 わが国には、まだ軍事専門家が多くありません。訓練生は学習と訓練、特に専門技術を向上させる訓練に励み、全員が早く有能な軍事幹部に、軍事専門家にならなければなりません。

 講義では、視聴覚教材を多く利用すべきです。十回説明するよりも視聴覚教材を直接見せることが理解の助けとなります。これから将校と下士官の役割を高め、訓練機材や視聴覚教材を多くつくって広く利用しなければなりません。

 軍人の武器と戦闘技術機材は、抗日革命烈士の赤い血と朝鮮人民の血と汗がにじんだ祖国と人民の貴い財宝です。したがって、すべての軍人は、常に武器と戦闘技術機材を瞳のように大切にすべきです。猟師もよい獲物を得るために常に自分の銃をきちんと手入れします。訓練所では兵器庫をよく整備し、すべての軍人が常に武器と戦闘技術機材をきれいに手入れして、いつでも使えるようにしておかなければなりません。

 規律は、部隊の戦闘力強化の基本であります。規律がなければ軍隊を維持することができず、敵に勝つこともできません。人間が大気内でのみ生きることができるように、軍隊は規律があってはじめて維持できます。規律のない軍隊は、軍隊とは言えません。保安幹部訓練所では、部隊に厳格な規律と秩序を確立しなければなりません。

 革命軍である我々の軍隊の規律は、帝国主義雇用軍の規律とは根本的に異なります。南朝鮮の李承晩かいらい一味も軍隊をつくりましたが、そのかいらい軍の規律は強圧的な規律であります。南朝鮮かいらい軍の上層部は、旧日本軍の将校や警察官をやった者、地主や資本家の息子らであり、兵士は勤労人民の子弟であるために上下の関係は階級的に対立しています。したがって、将校は兵士たちを自分の目的に利用するために強圧的な規律を適用しなければならないのです。しかし、我々の軍隊の規律は革命軍の規律であり、自覚的な規律であります。すべての軍人が祖国と人民のために生命をささげる覚悟で進んで軍隊に入ってきただけに、我々の軍隊には、ただ自覚的な規律があるだけです。我々の軍隊が強いのもここに原因があります。自覚的規律をもつ軍隊のみが、鉄のような軍隊、百戦百勝の軍隊となるのです。

 訓練所では、軍人に我々の軍隊の規律の本質を深く学ばせ、彼らがすべての活動と日常生活において、規定と教範を自覚的に守るようにしなければなりません。

 軍人のなかには、初めて集団生活をする人が多いので、最初から定められた日課表に従い、規定と教範どおりに生活するのは難しいでしょう。したがって、指揮官は、集団生活を通じ実地動作で具体的に教え、新隊員がしだいに規律生活に慣れるようにしなければなりません。木を曲げるときに火にあぶって少しずつ曲げれば折れないで曲がるし、また元に戻らなくなります。規律と秩序もこのような方法で確立していくべきです。訓練所では、特に新兵に正しい規律生活をおこなうよう始めから原則的に教育しなければなりません。

 部隊に厳格な規律と秩序を確立するうえで指揮官が率先垂範することは極めて重要であります。指揮官は、自分の一挙一動が兵士たちの生活の鑑になるということを忘れず、軍事規定と教範どおり活動し、規律の遵守において模範となるべきです。指揮官は、命令を明確に下さなければなりません。例をあげれば、兵士をある場所に派遣する場合、目的地、行き帰りの道筋、帰って報告する時間を具体的に指示しなければなりません。そうすれば、兵士は確信をもって行動することができるし、規律に違反することなく任務を正確に遂行することができます。

 次に上下間、同志相互間の革命的団結を強化しなければなりません。

 我々の軍隊は、抗日闘士を根幹とし、労働者、農民のすぐれた息子、娘で組織された人民の軍隊、革命の軍隊です。

 革命軍隊の指揮官と兵士は、すべて革命の同志であり、戦友であります。保安幹部訓練所の軍人は、すべて、解放前には、日本帝国主義植民地支配のもとで虐げられ搾取された人たちであり、解放と同時に国の主人として祖国を守るために進んで軍隊に入った愛国的青年たちです。したがって、指揮官と兵士は、かたく団結して与えられた革命の任務を遂行しなければなりません。

 上下間、同志相互間の革命的団結を強化するためには、まず指揮官が兵士をいたわり、父母のように彼らの日常生活を見守らなければなりません。将校は、兵士の被服や寝食にいたるまで常に関心を払い、隘路や不便な点はないかと心を配り、問題があれば即時解決すべきであります。例えば、訓練を終えた兵士の靴がぬれていたなら、将校はそれを乾かしてやるべきです。将校は、このように兵士たちの忠僕にならなければなりません。

 いま我々は、かつて抗日遊撃隊員が山で戦ったときとは比較にならないほど有利な状況にあります。我々には、党と人民政権があり、国の豊富な地下資源を十分開発し、なんでも思うままにつくって使う自由があります。党と国家は、軍人の生活を保障するためなら何も惜しみません。訓練所の幹部は、所与の条件を十分に利用して、兵舎、食堂、教室などを早く整備し軍人の生活を安定させ、学習と訓練、生活において不便がないようにすべきです。特に、給養部門担当者の役割を高め、軍服を適時に配り、食事の質も改善し軍人がいつでも入浴や散髪ができるようにしなければなりません。患者の治療も手ぬかりなくおこなうべきです。

 訓練所の周辺には多くの住民がいます。軍人は、彼らを常に礼儀正しく接し尊敬し、全力を尽くして、その生命財産を保護しなければなりません。諸君は人民の軍隊であるから、人民には限りなく忠実で、敵とは獅子のように勇敢に戦わなければなりません。すべての軍人が、実際の行動をもって我々の軍隊が人民の軍隊であることを示し、人民が人民軍を肉親のように愛し援護するようにならなければなりません。人民の積極的な支持を受け、人民と渾然一体となったとき、我々の軍隊は不敗の武力となるでしょう。

 革命の道は、決して平坦ではありません。今後、諸君の活動と生活には、数多くの隘路と難関がありうると思います。まだ、我々には軍隊の運営に必要な条件が完備しておらず、国の経済的土台も構築の過程にあります。訓練所の幹部は、かたい決心のもとに愛国的青年の尽きない力と創造的知恵を引き出して、隘路と難関を勇敢に克服し、生活条件もさらに整え、いっそう訓練も重ねなければなりません。しかし、わが国の現状で十分に解決できる問題も耐え忍べというのではありません。国家で解決できる問題は、その都度、提起して解決してもらうようにすべきです。

 私は諸君がこれまでに達成した成果におごることなく、ひきつづき努力して、保安幹部訓練所に課せられた革命課題を立派になし遂げるよう望みます。
                                              
出典:『金日成著作集』3巻 

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