金 日 成

民戦の当面のいくつかの任務について
 ―北朝鮮民主主義民族統一戦線中央委員会第8回会議でおこなった演説―
1946年12月26日 
1 民主主義民族統一戦線をさらに強化するために

 これまで北朝鮮では、各政党、大衆団体の協力と共同闘争によって、民主改革がすべて順調に、成功裏に遂行されました。

 我々は、民主主義民族統一戦線に結集した広範な愛国的勢力を立ち上がらせ、北朝鮮に新しい民主朝鮮建設の強固な土台を築いたと言えます。

 朝鮮に関するモスクワ3国外相会議の決定が発表されてからすでに1年が過ぎました。しかし、朝鮮問題はいまだに解決されず、この決定にもとづいて開催されたソ米共同委員会の活動は破綻しました。

 この責任は誰にあるのでしょうか。それは、言うまでもなくアメリカの反動派とその庇護のもとに売国的・反民族的行為をこととする南朝鮮の反動分子にあります。解放後、急速に成長した民主勢力の予想外の強大さに驚いた内外の反動派は、このままでは彼らの足場がなくなり、民主勢力が将来樹立される臨時政府で絶対多数を占めることは確定的なので、彼らの勢力を再編成して愛国的民主勢力に対抗しようと、故意にソ米共同委員会を決裂させたのです。

 周知のようにソ米共同委員会の決裂後、アメリカ軍政当局とその指図によって動く南朝鮮の反動分子は、民主勢力を分裂させるため卑劣な行動を取り続けています。彼らは、一方では南朝鮮で民戦傘下の各政党、大衆団体と愛国的人士に対し未曾有のテロ、迫害、虐殺を公然と強行し、民主的出版機関を強制的に閉鎖しており、他方では民主陣営内部にスパイ、破壊・謀略分子とえせ民主主義者を潜入させています。アメリカと南朝鮮の反動派は、こうした手先を新民党や人民党はもちろん、共産党にも潜入させ、進歩的民主政党を内部から切り崩そうとし、特に党の合同を妨げようと陰謀をこらしました。

 反動派は、南朝鮮ばかりでなく北朝鮮の各政党、大衆団体にもスパイ、破壊・謀略分子とえせ民主主義者を送り込み、民戦を分裂させ、民主勢力を弱体化させようと画策しています。事態は極めて重大であり、我々はこれに対し警戒心を強めなければなりません。

 さきに前民主党咸鏡南道委員長の金某は、公然と人民委員会に反対して労働党に挑戦し、民族統一戦線を破壊しようと企てました。咸鏡南道と江原道では、地主への土地の返還と、土地改革のやり直しを主張する民主党員もいました。平安北道竜川郡では、民主党青年部を単独で組織し、民青を分裂させようとした事実があり、南市では一部の民主党員が穀物買上げに反対して「不売同盟」を組織したことさえあります。こうした事実は、決して偶然な出来事だとは言えません。

 民主勢力の統一を弱め、民主建設の破綻を企む民主党員は、事実上朝鮮民主党の指導を受けているのでなく、南朝鮮の韓国民主党の指導を受けているのです。我々は、こうした事実を決して見過ごすことはできません。

 このように、民主勢力に対する敵の分裂・破壊策動が公然化している実情に照らし、富強な民主祖国建設の光栄ある使命を担う民主主義民族統一戦線を強化することはこんにち、極めて重大な課題となっています。

 それでは民戦を強化するためには、どうすべきでしょうか。

 まず我々の内部に潜入したスパイ、破壊・謀略分子やえせ民主主義者、団結した我々の隊伍を分裂させようとする者を民主政党、大衆団体から摘発し、除去するたたかいを強力に展開しなければなりません。誰であれ、民主主義民族統一戦線の破壊を企む者は民族の敵であり、人民の敵であります。したがって、彼らをいっときも許さず、直ちに広範な大衆闘争を繰り広げて暴露、排除しなければなりません。

 この会議で特に強調したいのは、各政党がそれぞれ自党の党員のなかで民主主義民族統一戦線に対する教育宣伝活動をさらに強化しなければならないということです。民戦がどうして必要であり、民戦の当面の課題は何であり、民戦を強化するためにはどうすべきかについて、中央の幹部はもちろん、すべての党員が深く認識するよう教育することが大切です。

 次に指摘したいのは、各政党は他の政党から除名された者をやたらに入党させてはならないということです。北朝鮮のすべての政党は民主的な政党です。このような民主政党から除名された者は結局、民主主義に背き人民政権の施策に反対した者だと言えます。彼らを他の民主政党が入党させるというのは統一戦線の活動に有害であり、また彼らを入党させてよい結果が得られるはずはありません。

 次に強調したいのは、すべての民主政党が大衆団体を強化する活動に積極的に協力しようということです。ある政党には、大衆団体を分裂させるために暗躍している者がいます。

 北朝鮮では労働者階級をはじめ、勤労者の広範な大衆の組織として、職業同盟、農民同盟、民主青年同盟、女性同盟などが結成され、建国偉業に積極的に参加しています。こうした大衆団体を強化し、その役割を高めることはすべての民主政党の共同の関心事となるべきです。それにもかかわらず、ある政党には、偏狭で不純な意図から自党の影響下に別の大衆団体を組織しようとする傾向があります。

 これは、李承晩、曹晩植などがやることです。南朝鮮には労働者階級の統一的な大衆団体として全評が活動しているにもかかわらず、アメリカ帝国主義者と国内の反動派は「大韓労総」のような反動的団体を組織したし、曹晩植はさきに北朝鮮で統一的な青年団体として民青を結成する際に口先では賛成しながら、民主党内に青年部を別個に組織して青年運動を分裂させようと画策しました。こうした分裂策動は、民族と人民の敵に有利であるだけで、民主建設に大きな害悪を及ぼす容認しがたい行動であります。

 民族分裂政策は、すべての帝国主義者が常に用いる政策です。

 現在南朝鮮でアメリカ帝国主義者がこうした民族分裂政策を実施しており、朝鮮の反動分子はアメリカの手先となって民族の利益を売り渡すために狂奔しています。我々は、こうした反逆者を徹底的に孤立させ、アメリカ帝国主義の陰険な民族分裂政策を断固粉砕し、特に北朝鮮で民主的大衆団体の統一を破壊しようとする些細な動きも即刻暴露、粉砕すべきです。

 我々の進路は、一つであり、目標も一つであります。にもかかわらず、どうして大衆団体を分裂させる必要があるでしょうか。もし、分裂を図る者がいるならば、それは民主主義とは縁もゆかりもない別の思想をもった異分子に違いなく、それを許すことは絶対にできません。すべての人が、民主的大衆団体を分裂させ統一戦線を切り崩そうとする企てに反対し、断固とたたかうべきであります。

 最後にもう一言指摘したいのは、各民主政党の政治スローガンを統一させることです。現在街頭にはり出されているスローガンを見ると、各政党がそれぞれ自党をアピールするスローガンがかなりありますが、それは不当なことです。もちろん、各政党が党内で自党の万歳を唱えるのもよく、自党の独自のスローガンを掲げることもできるし、独自の思想教育をおこなうことも必要でしょう。しかし、人民大衆を対象にした一般的な政治スローガンは、必ず民戦や人民委員会の承認を得て統一的に打ち出すようにすべきだと思います。


2 建国思想総動員運動について

 建国思想総動員運動は、こんにち、朝鮮人民が富強な新しい朝鮮の建設において適時に正しく提起した最も適切な運動であります。

 この運動は、決して2、3のスローガンを唱え、アジテーションをおこなうことで終わる運動ではなく、すべての人を実際の行動で民主祖国の建設に献身させる実践的運動であります。もちろん、宣伝・鼓舞活動は強化すべきですが、実践が伴わなくてはこの運動は何の成果も期待することはできません。

 まず、当面した日常的課題を遂行することから建国思想を実践に移すことが大切です。労働者、事務員は「その日の仕事は、その日のうちになし遂げよう!」というスローガンから実践すべきです。8時間労働制だからといって、時間つぶしをして退勤するのではなく、その日の仕事と計画はその日のうちになし遂げる気風を確立すべきです。すべての活動家と勤労者が与えられた任務を責任をもって遂行すれば、建国偉業が成功裏に促されることは疑いありません。

 資金を節約し、国家の物資を大切にするためにも建国思想が切実に必要です。口先では節約について強調していますが、まだ随所に浪費行為が見られます。不要な人員を整理しようということがしばしば言われても、定員外の事務員が時間をもてあまして机の前で居眠りをしており、不要な機関や団体が国家の建物を占めていることが少なくありません。すべての機関、団体が、それぞれ道、市、郡の事務所を別に設け、多くの専従活動家をおいています。多くの活動家は、これを正しくないと言いながらも、自分からすすんで是正しようとはしていません。

 国家財産を横領、着服し私腹を肥やす者を追放しようというスローガンが至るところにはり出されており、実際に各機関では汚職・浪費分子や官僚主義者、怠慢分子を多く追放しています。これもいいのですが、それよりも彼らを建国偉業に献身する働き手に改造することがさらに重要です。

 自分の誤りを反省し、「私は建国思想が欠けていたため誤りを犯したが、これからは新しい人間に生まれかわって、祖国と人民のために献身的に働くつもりだ」と言う人がどうして少ないのでしょうか。これは要するに教育活動が活発におこなわれず、建国思想運動が大衆化されていないためだと言えます。

 今、わが国では建国思想総動員運動がおこなわれてはいますが、まだ主に幹部のあいだで進められているだけで、広範な大衆のあいだには広がっておらず、大衆全体の運動になっていません。これでは、新しい民族的気風を確立することはできません。

 建国思想総動員運動は、全人民の運動となってこそ、大きな成果を収めることができるのです。


3 穀物買上げと食糧の配給について

 穀物の買上げは当面の重要な課題の一つです。ところが、初期にはこの仕事に多少欠陥があったことを指摘せざるを得ません。

 まず、消費組合がすべての農家に買上げ量を均一に割り当てたのが間違いでした。現物税を納入した後に食糧のゆとりがあるかないか、多いか少ないかを詳しく調べずに頭からすべての農家に均一に買上げ量を割り当てるのは正しくない活動方法であり、これでは買上げがスムーズにおこなわれるはずがありません。そして、穀物の買上げを強制的におこなおうとする傾向もやはり正しくありません。穀物の買上げは強制的にではなく、あくまでも農民の自発的な意思にもとづいておこなうべきことです。

 だからといって、穀物の買上げを中止せよというのではなく、むしろ積極的におこなうべきです。穀物の買上げで初期に見られた偏向を克服し、農民の余剰穀物を工業商品と交換する方法、宣伝活動を通じて農民の自発的熱意と愛国心に訴える方法でこの仕事を強力に推進しなければなりません。

 それとともに、勤労者に対する食糧配給を公正に、定期的におこない、配給の対象を無原則に増やしたり、国家の穀物を着服することがないよう厳しく取り締まることです。

 食糧の配給は、国家機関の公務員や国営企業の労働者、事務員にだけおこなうべきです。もし、日本帝国主義支配時代のように強制供出で農民の穀物を残らず徴収するならば、労働者、事務員ばかりでなく、全市民に食糧を配給することができるでしょう。しかし、今我々は、農民から収穫の25%に当たる農業現物税を徴収しているにすぎないため、すべての人に配給をおこなうことはできません。こうした状況にあって、国家機関の公務員と国営企業の従業員にのみ食糧の配給をおこなうのは当然なことです。

 例えば、都市の私営企業家、商人は、国営工場の労働者、事務員に比べ数十倍の収入を得ています。そのような人にどうして国営企業の従業員と同一価格で食糧を配給することができるでしょうか。それでなくとも、彼らは市場価格で食糧をいくらでも買うことができます。また、国営工場の労働者であっても籍を置くだけで働かずに配給を受けようとする不まじめな者には食糧を配給してはなりません。そして、不要な機関、団体や過度に増大した機構定員を廃止あるいは縮小するよう、食糧による統制を実施するのがよいでしょう。いずれにしても、祖国と人民のために誠実に働く人だけに貴重な国家の食糧が配給されるようにすべきです。

 私は、民主主義民族統一戦線傘下のすべての政党、大衆団体が固く団結し、緊密に協力して、民戦に提起されている当面の任務を立派に遂行し、ともに新しい民主朝鮮建設の促進に貢献するよう望みます。
出典:サイト「わが民族同士」 参照:『金日成著作集』2巻

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