金 日 成

国営企業の計画的な管理、運営のために
 ―各道人民委員会産業部長および国営企業支配人会議でおこなった演説―
1946年12月3日 

 朝鮮が日本帝国主義の植民地支配から解放されて1年余の短い期間に、人民の政権である北朝鮮臨時人民委員会は全人民の積極的な支持のもとに、土地改革をはじめ、産業国有化、労働法令、男女平等権法令などの民主改革を実施しました。

 こうして、現段階において基本的意義をもつ民主的課題は成功裏に遂行され、北朝鮮には民主祖国建設の基礎が築かれました。

 特に、去る11月3日に実施された初の民主選挙は、人民政権をさらに強化し、民主改革の勝利を強固なものにしました。

 祖国の自主独立と富強、発展を保障するうえで何よりも重要な課題は、人民経済を速やかに復興、発展させ、自立的民族経済の基礎を築くことです。民族経済の強固な土台を築くことなしには、富強な民主主義的独立国家を建設することも、人民の生活を向上させることもできません。

 周知のように、わが国の経済は長い間、日本帝国主義に従属させられ、過酷な植民地的略奪を受けました。その結果、我々は極めて立ち後れ奇形的な、しかも破壊された経済をもって新しい民主朝鮮の建設に取りかかりました。わが国は、まだ立ち後れた農業国であり、人民経済における工業の発展水準は極めて低い状態にあります。

 わが国が経済的に独立し、あらゆる面で先進国に追いつくためには、工業の立ち後れをなくし、国内で必要な各種の製品を自力で十分に生産できる自立的工業を建設しなければなりません。

 工業を発展させなくては、農業を含む人民経済の各部門を全般的に速やかに発展させることはできません。

 我々の当面の課題は、民主改革の成果を踏まえて人民経済を復旧し、特に、工業を改造し発展させることです。ところが、工業を復興、発展させるには、さまざまな難関と障害があります。

 工業建設における難関は、何よりも工業の植民地的跛行性と奇形性です。

 我々が日本帝国主義から引き継いだ工業は、朝鮮の経済発展と人民の生活向上のために開発され建設されたものではなく、もっぱら日本帝国主義植民地略奪者の利益のために、日本経済の従属物として建設されたものです。したがって、工業の構成そのものが極めて跛行的で奇形的です。重工業が比較的大きな比重を占めているとはいえ、そのほとんどは天然資源を採取する工業であり、機械製作工業をはじめ、一連の重要な部門が欠けています。特に軽工業は、極めて貧弱な状態にあります。

 そして、工業各部門間はもちろん、同一部門工程間の連係も極めて微弱です。そのうえいまなお国が分断されているため、工業の跛行性と奇形性はさらに甚だしくなっています。

 工業の復興、発展に必要な原料と資材が非常に不足していることも重大な難関の一つです。

 元来、わが国は天然資源の豊かな国です。しかし、日本帝国主義が朝鮮の天然資源を手当たり次第に略奪し、採取した資源をすべて日本に搬出したため、解放後、我々にはさしあたり使う原料や資材もとぼしく、それさえこの1年の間にほとんど使い果たしてしまいました。その結果、現在我々には、原料、資材、燃料が不足しています。特に、有煙炭、なかでも粘結炭が非常に不足しているため、随所で隘路にぶつかっています。特に、多くの工場、鉱山、炭鉱の施設が破壊されたため、原料、資材の不足を国内の生産で補うのも極めて困難です。

 次に、技術者や熟練労働者の少ないのが、経済建設における最大の難関の一つです。

 日本帝国主義者は、朝鮮で悪辣な植民地的奴隷教育を実施し、朝鮮人に技術を学ばせませんでした。その結果、現在わが国には、科学者、技術者が少なく、技能労働者さえ極めて少ないありさまです。わが国には、自然科学、技術科学部門の専門家ばかりでなく、工業を管理、運営する経済専門家も極めて少ないのです。そのため、このような各部門の技術者、専門家と各部門の基本生産工程を担当する熟練労働者を多く養成することがこんにち、最も切実な問題の一つとなっています。

 これとともに、我々は、工業の復興建設で資金の不足を感じています。民間資本が少ないのはもちろん、国営企業の運営に必要な国家資金も不足しています。したがって、国家の蓄積を増やし、国のあらゆる資金源を積極的に探求して工業を発展させるための資金問題を解決することは極めて重要な課題であります。

 上に述べたように、工業の復興建設には多くの難関と困難な条件がありますが、決して落胆してはなりません。我々に人民政権があり、重要産業が国有化された状況にあって、全人民が高度の熱意と創意を発揮するならば、いかなる難関も克服し、工業を短期間内に復興、発展させ、建国の大業を成功裏に推進することができます。

 経済建設の難関を克服するうえで決定的な意義をもつのは、広範な人民大衆のあいだで建国思想を呼び起こすことです。ところが、まだ活動家のなかには、富強な新しい民主朝鮮を建設するために力と知恵を尽くして献身的に働く気風が確立されていません。現在国営企業の従業員のなかには、自分が工場の主人であるということを十分に認識していない人がかなりあり、ひいては国家と人民の財産を侵す怠慢分子さえいます。我々は、愛国的熱意と建国思想を高度に発揮してこそ、あらゆる難関を克服し、民族経済の復興、発展を保障することができることを認識すべきです。

 建国思想総動員運動は、民主建国事業を推し進める強力な要因であります。したがって、すべての人が常に建国思想をいかに発揮しているかをみずから点検し、互いに同志的な批判もおこなうようにし、建国思想総動員運動を積極的に展開すべきです。

 人民経済を急速に復興、発展させるためには、国有化された産業を計画的に発展させ、国営企業を計画的に管理、運営することが重要です。人民経済を計画的に発展させ、特に、国営工業の計画的管理運営体系を確立すれば、あらゆる困難な条件を克服し、経済建設を推し進め、富強な統一的民主国家を創建する強固な土台を築くことができます。

 我々は、全人民の所有となった国営産業の計画的な発展に重点を置きながら、民間資本も大いに活用すべきです。こうして、国営企業と民営企業を密接に結びつけ、国営産業を速やかに拡大するとともに、民営企業も奨励すべきです。

 私は今度、産業局が提出した1947年度の生産計画と資金計画草案がこのような方向にもとづいておよそ正しく作成されたものと認め、それを遂行するためにすべての部門、すべての企業の皆さんが積極的に努力するよう望みます。

 国営企業を計画的に正しく管理、運営するためには何よりも、国有化された産業部門に作用する経済法則と企業管理運営の諸原則を正しく認識しなければなりません。そうすれば、国営企業を正しく運営し、その優越性を十分に発揮させることができます。

 国営企業は、生産および経営実態に対する具体的な統計なしにはとうてい計画的に運営することができません。設備、資材、資金、労働力に対する正確な統計資料をもち、客観的現実を詳しく知ってこそ、正しい計画を立てることができ、綿密で具体的な計画があってはじめて企業を計画的に運営することができるのです。したがって、すべての企業で経営計算と統計報告体系を立てることが緊急な課題となっています。

 国営企業の計画的な管理、運営で基本となるのは、独立採算制を正しく実施することです。

 生産が第一義的であるからといって、採算を軽視してはなりません。もちろん、人民の所有となった国営企業を経営するのですから、資本主義的企業とは経営の目的や原則が全く異なります。資本主義的企業は労働者を搾取して利潤を得ることを目的としていますが、国営企業では搾取というものはありえず、勤労者の福祉のために生産を増大させることを目的としています。しかし、非能率的で不合理な経営をおこなって損失をもたらすならば、国家の財政的負担が大きくなり、結局は全人民の福祉向上に悪影響を及ぼすことになります。したがって、労働生産性を高め、原料や資材を節約し、製品の原価を系統的に引き下げることによって、各国営企業が収益性を高め、より多くの国家的蓄積を保障すべきです。

 私は国営企業の支配人の皆さんが、今度下達される国家計画課題にもとづいて、自分の企業の具体的な生産計画と財政計画を正しく立て、すべての潜在力と可能性を引き出し計画を超過遂行することで、工業の拡大、発展と勤労者の福祉向上に極力寄与することを望みます。

 企業管理での重要な問題の一つは、厳格な財産管理制度を確立し、賃金の支払いを滞りなくおこなうことです。

 一部の活動家のなかには、口先では、人民の工場、人民の財産について云々しながらも、民主建設を妨げる悪徳商人と結託して国営企業の財産を勝手に処理し、私腹をこやす行為があらわれています。こうした国家の財産をかすめとる行為は、こんにちの我々の制度では許すことのできない反人民的行為であります。こうした行為をおこなう者は、国営企業財産管理令に照らして相応の処罰を受けるべきです。

 また一部の従業員のなかには、労働法令の根本精神をはき違え、少し働いて多くの賃金をもらおうとする傾向があります。誰でも自分のおこなった労働の量と質にもとづいて報酬を受けるべきであって、少し働いて多く働いた人と同じ賃金をもらおうとするのは容認できません。

 賃金支払いにおける均一主義は間違っており、これは排撃すべきです。

 部門別、職種別に作業基準量を科学的に定め、それを超過遂行した労働者にはより多くの報酬を支払う原則を立てるべきです。

 また企業の支配人は、これまでのような無秩序で無計画な労力組織方法を改め、具体的な計画のもとに労力配置と作業の手配りを合理的におこない、労働規律を強化して、すべての工場、企業で労力の浪費をなくし、怠け者が一人も出ないようにすべきです。

 最後に私は、国営企業の管理、運営に当たっている皆さんの責任が極めて重大であることを強調したいと思います。

 皆さんは、国家から全人民の所有であり、民主朝鮮建設の重要な命脈である国営企業を管理、運営する責任を負わされています。皆さんが国営企業を計画的に正しく管理、運営すれば、民族経済は速やかに復興、発展し、富強で統一的な民主主義的自主独立国家の建設を促すことができます。したがって、皆さんはその重大な任務を遂行するために全力を尽くさなければなりません。

 私は、国営企業の支配人という大きな栄誉を担っている皆さんが、北朝鮮臨時人民委員会のすべての施策を積極的に支持し、すべての労働者、技術者の熱意と創造力を正しくくみ上げて、わが国初の人民経済計画である1947年度の計画を立派に超過完遂するものと確信します。
出典:サイト「わが民族同士」 参照:『金日成著作集』2巻 

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