金 日 成

人民委員の役割を高めることについて
 ―平安南道人民委員会第30回会議でおこなった演説―
1946年11月13日 

 人民委員の皆さん!

 この会議には、平安南道の人民各階層の代表が参加しました。

 私は、人民の代表として選出された人民委員の皆さんに熱烈なお祝いの挨拶を送ります。

 我々は数日前、全人民の積極的な参加のもとに、道・市・郡人民委員会の委員選挙を成功裏に実施しました。民主選挙によって組織された各級人民委員会は、労働者、農民、事務員、教育者、文化人、商人、企業家、宗教家など各階層の広範な人民の代表が参加している真の人民政権機関です。このような政権機関の樹立は、5000年の朝鮮の歴史において初めてのことであります。私は皆さんとともに、わが国における初の民主選挙を通じて樹立された人民政権機関である真の人民委員会に栄光をささげます。

 朝鮮人民は、民主選挙の勝利によって自分の望む政権がいかなる形態のものであるかを全世界の人民に明白に示しました。

 今度の選挙で立証されたように、全朝鮮人民はアメリカ式のブルジョア独裁政権を欲していません。朝鮮人民の求める政権形態は、各階層の広範な人民大衆がもれなく参加し、彼らの利益を代表する真の人民政権であります。人民委員会こそは、全朝鮮人民の意思に合致する政権形態であり、朝鮮の民主主義的完全自主独立を可能にする政権形態であります。

 今アメリカ帝国主義者と反動分子は、朝鮮人民の意思に背く反人民的な政権をつくりあげようと悪辣に策動しています。彼らは、限られた資本家や特定の人だけが政権に参加しなければならないかのように主張しています。

 こんにち、アメリカ帝国主義者は、侵略的野望を実現するためにわが国に反動政権を樹立しようとしています。彼らは、各階層の広範な人民の代表が朝鮮臨時政府に参加するようになれば、わが国を植民地化することができないことを知っているので、幾人かの反動分子を代表する政権を樹立しようと策動しているのです。

 朝鮮に反動政権を樹立しようとするアメリカ帝国主義とその手先のあらゆる策動は、民主選挙を通じて人民から完全に排撃されました。我々は、今度の選挙を成功裏に実施して真の人民政権機関である人民委員会を法的に固めることにより、朝鮮の植民地化を企むアメリカ帝国主義者の反動的な陰謀を粉砕し、彼らに大きな打撃を与えました。民主選挙の勝利によって人民政権を強化した結果、わが国は多くの民主国家と肩を並べて世界の民主主義的発展と平和をめざすたたかいに積極的に寄与することができるようになりました。

 しかし、北朝鮮で民主改革を実施し人民委員会を法的に強化したからといって、すべての問題が解決されたわけでは決してありません。これまで朝鮮人民が民主課題の遂行で収めた成果は、国の完全な自主独立を勝ち取る基礎を築いたにすぎません。我々は、今後これにもとづいて全人民が幸福に、豊かに暮らせる国を建設しなければなりません。

 富強な民主主義的自主独立国家を建設するためには、人民政権をさらに強化し、民主建設をさらに力強く推進しなければなりません。そのためには、人民委員の役割を必ず高めなければなりません。すべての人民委員は、自己の重い任務を正しく遂行するために全力を尽くさなければなりません。

 人民委員は、人民政権が人民のための正しい政策を樹立するよう努力しなければなりません。

 人民委員会は、人民の政権機関です。朝鮮人民は、この1年間の生活体験を通じて人民委員会が自己の利益の擁護者であることを十分に知り、人民政権に運命のすべてを託しています。したがって、人民委員会は当然、全人民が裕福に暮らせる正しい政策を樹立しなければなりません。

 真に人民的な政策を樹立するためには、人民が何を求め、何をなそうとしているかを知り、各階層人民大衆の意思を十分に受け入れなければなりません。人民の意思を正しく反映させた政策であってこそ人民的なものとなり、大衆がそれを容易に受け入れて確実に実行することができます。我々が今度の歴史的な初の民主選挙で偉大な勝利を勝ち取ることができたのも、この選挙が、各政党、大衆団体に結集している広範な大衆の要求を正しく反映させたからです。

 人民委員がその役割を十分に果たすためには、大衆のなかに入らなければなりません。人民委員は常に広範な大衆のなかに入って、彼らの声に耳を傾け、そのつど人民の要求を知らなければなりません。もし、人民委員が人民大衆の声を知らず、幾人かが裏部屋でとり交わす話や、何かの「主義」学説、誰かの著作から書き写したものを意見として提出するならば、それは現実と人民大衆の意思に背く空理空論となり、人民政権の政策の樹立には何の助けにもならないでしょう。

 人民委員は、自分の活動を人民大衆が注視していることを銘記し、工場と鉱山、都市と農村、平坦部と山間部を問わず人民の住んでいるところであればどこでも訪ねて行って、各階層の広範な大衆の声を聞き、人民委員会に伝えるべきです。労働者、農民の委員は、広範な労働者、農民のなかで立派な意見を集め、女性委員は女性のなかで、文化人、宗教家の委員は文化人と宗教家のなかで立派な意見を集め、それを人民委員会に持ち寄って討議すべきです。こうして、人民のための正しい政策が立てられるようにしなければなりません。

 しかし、人民委員が大衆の意思を聞くということで、個別的な人の意見を何の分析も加えずに受け入れてはなりません。大衆のなかには、まだ我々の民主路線について正しい理解をもっていない人もいます。もし、人民委員が彼らの意見だけを聞き、それを大衆の意思であると思うならば、活動において大きな誤りを犯すようになります。したがって、人民委員は、大衆の意見に対し、その正否を正しく識別し、誤った意見は受け入れないようにすべきです。

 しかし、誤った意見を出す人をすべて疑い、排斥してはなりません。もちろん、人民政権の活動を妨げるために故意に事実を歪曲した意見を出す者とはたたかうべきですが、民主路線に対する理解が不十分なところから誤った意見を出す人に対しては教育しなければなりません。人民委員は、人民に民主路線の本質とその正しさを十分に説明し、彼らにすべての問題を正しく認識させるべきです。

 人民委員は、人民政権の政策が正しく作成されるよう努力する一方、人民政権の政策を実行するため積極的にたたかわなければなりません。

 人民政権の政策は、人民の意思を正確に反映させて正しく作成された後は、人民大衆自身によって実行されなければなりません。我々がいかに立派な政策を打ち出しても、それが実行されず机上の空論になるならば何の役にも立ちません。

 人民政権の政策を正しく実行するためには、まずそれを、大衆に十分に浸透させなければなりません。人民委員は、人民政権のすべての政策を十分に把握するばかりでなく、それを広範な人民大衆に広く宣伝しなければなりません。こうして、全人民が人民政権のあらゆる施策を明確に知り、それを自分自身のものとして受け止めるようにすべきです。

 人民委員は、人民政権の政策実行の先頭に立たなければなりません。人民委員は、広範な人民大衆を人民政権の法令、決定、指示の実行に奮い立たせて、民主建設が成功裏に推進されるようにすべきです。

 人民委員がその役割を十分に果たすためには、人民大衆から学ぶ正しい作風を身につけるべきです。

 封建社会や資本主義社会の官吏は、人民の上に立って命令や号令をかけ、人民大衆に頼ろうとしませんが、人民委員は人民の利益のためにたたかう人たちなのですから、決して、そのような行動をしてはなりません。活動家は、旧社会の支配機関の官僚のように行動すべきではなく、人民のなかに入って彼らから学ぶべきです。

 人民大衆は活動家のように実務に通じておらず、文章をよく書けないかもしれませんが、最も賢明で知恵深く、誰よりも物事の正否を立派に識別することができます。したがって、常に人民大衆は正義感と知恵と力をもっているのです。活動家が広範な人民のなかに入って彼らにすべてをたずね、学ぶべき理由がここにあるのです。

 人民委員は、常に人民大衆から学ぶために努力しなければなりません。特に、労働者、農民から国家に対する忠実性、祖国と民族を熱烈に愛する心を学ぶべきです。また、労働の結実である国家と人民の財産を大事にし、国の経済管理を立派におこなう労働者、農民の気高い品性を見習うことが大切です。人民委員は、人民大衆から謙虚に学ぶ気風を打ち立て、人民にしっかりと頼ってあらゆる活動をおこなうべきです。

 人民委員は、不正行為とたたかわなければなりません。働かずに遊んで暮らす傾向、国家と人民の財産を大事にせず横領、浪費する行為など、さまざまの誤った傾向に反対しなければなりません。特に、人民政権機関の活動家のあいだで人民の忠僕らしく働かず月給めあてに仕事をする腐敗、堕落した傾向がないか関心を向け、不正行為と強くたたかってそのつど是正させなければなりません。

 人民委員は、人民大衆から学び、不正行為とたたかうとともに、人民大衆を教育しなければなりません。こうすることなしには、人民委員は人民政権の正しい路線に沿って活動し、真の人民の忠僕になることができません。

 次に、当面のいくつかの課題について述べることにします。

 現在我々の最も重大な課題の一つは、農業現物税の徴収を円滑におこなうことです。

 農業現物税を遅滞なく徴収しなくては、国の食糧問題を解決することができません。今、世界的に食糧難に見舞われているため、外国から食糧を輸入することもできません。こうした状況にあって、我々は、あくまでみずから収穫した穀物で国の食糧問題を解決しなければなりません。農民から農業現物税を徴収できなければ、労働者、事務員、学生に食糧を円滑に供給できないのはもちろん、1947年に予定している産業の復興も不可能になるでしょう。

 それゆえ現在、北朝鮮における最大の政治問題の一つは食糧政策です。したがって、人民委員の最も重要な活動の一つは、国家の食糧政策を正しく実行するため積極的にたたかうことです。人民委員は、国の食糧問題を解決するため農業現物税の徴収に全力を尽くすべきです。

 農業現物税の徴収で注意すべきことは、農業現物税制に規定された量を正確に徴収することです。農業現物税の徴収は規定の量より多くしても少なくしてもいけません。農業現物税は、収穫の25%だけ正確に徴収することです。

 農業現物税を遅滞なく徴収するためには、農業現物税完納熱誠隊運動を繰り広げる必要があります。この運動を展開することはすでに決定されているのですが、仕事の手配りが綿密になされていません。この運動に綿密に取り組めば、農業現物税の徴収を順調に進めることができます。人民委員は、農民のなかに入って農業現物税完納熱誠隊運動を正しく組織し、農業現物税を遅滞なく納めるよう宣伝活動を強化すべきです。こうして、農民が農業現物税を速やかに完納して、愛国的熱意を発揮するようにすべきです。

 人民政権機関は、産業の復興に力を注ぐべきであります。

 産業の復興は、富強な自主独立国家建設の基礎であり、人民の生活向上のカギであります。富強な祖国を建設し、人民に幸せな生活を享受させるためには、産業を復興して生産を増大させなければなりません。

 現在、わが国の産業は極めて貧弱であり、新しい朝鮮の建設と人民の生活に必要な物資をいくらも生産できないありさまです。そのため、民主建設でもっと収められるはずの成果を収めることができないだけでなく、労働者、事務員に賃金を多く支払うことができず、人民に生活必需品を十分に供給することができません。

 一日も早く産業を復興し、生産を増大させるためには、すべての労働者、事務員が、主人らしく熱心に働かなければなりません。労働者、事務員のなかには、まだ国の主人であるということをよく認識していない人がいます。一部の人は、自分が工場と企業の主人であり、鉄道の主人であり、銀行の主人であることを知らず、いまなお他人に雇われた人のような気持ちで働いています。そのため、労働生産性を高めることができず、国家の貴重な財産を大事にせず浪費しています。

 我々は、労働者、事務員に、国の主人、工場の主人として国と自分自身のために働いているということを明確に認識させ、彼らが自分の家で自分の仕事をするように、任された仕事を誠実におこなうようにすべきです。すべての労働者、事務員が、主人としての自覚をもって生産過程でのあらゆる障害と難関を勇敢に克服し、生産を高めるため積極的にたたかうように導かなければなりません。

 親日派、民族反逆者の罪業を徹底的に暴露し、糾弾しなければなりません。

 南朝鮮の李承晩一味は、国と民族を裏切った民族反逆者です。

 かつて、朝鮮の真の愛国者が国の独立のために武器をとって日本帝国主義と血みどろのたたかいを繰り広げていたとき、李承晩一味は海外で「独立運動」を看板に寄金を集めては私腹を肥やし、国と民族を売り渡す犯罪行為を働きました。解放後も同じです。李承晩一味はこの1年間、南朝鮮で党派争いと民族の分裂に熱をあげ、アメリカ軍政当局に積極的に追従して民主学園を閉鎖し、多くの愛国者と人民を検挙、投獄、虐殺するという許しがたい野蛮行為を働きました。

 李承晩一味は、北朝鮮にも破壊・謀略分子を送り込み、民主建設を破壊しようとあらゆる手段と方法を用いてきました。ひいては、彼らは、製材工場に放火し、北朝鮮臨時人民委員会の幹部の子どもを殺害するという野蛮行為まで働いています。今度の選挙でも李承晩一味は、北朝鮮にいる幾人かの反動的な牧師を唆して民主選挙を破綻させようと策動しました。しかし、人民と進歩的な牧師は、反動的な牧師に追従せず、民主選挙に積極的に参加しました。

 このように、李承晩一味はこれまで国のために尽くしたことは何もなく、彼らのしたことは民族を裏切り人民の敵として行動したこと以外にありません。これまでの事実は、彼らがどのような道を歩んでいるかを示しています。李承晩一味は、民主主義に反対し、朝鮮の完全な自主独立を妨げ、人民を再び帝国主義の植民地奴隷にする道を歩んでいます。

 我々は、人民に親日派、民族反逆者の反人民的罪業をはっきり知らせ、彼らに反対するたたかいに人民大衆を積極的に奮起させるべきです。全人民が固く団結し、積極的にたたかうならば、反動派のあらゆる陰謀を粉砕し、朝鮮に民主主義的完全自主独立国家を成功裏に建設することができるでしょう。

 人民委員の皆さん!

 朝鮮の領土の半分である北朝鮮には、すでに真の民主政権が深く根をおろしています。これは、すでに我々の勝利を証明してくれるものです。我々の勝利はいかなる力によっても崩すことはできません。我々はこれまでの成果を踏まえて、統一的な民主主義中央政府を樹立するたたかいを強力に展開すべきであります。

 私は、皆さんが自己の栄えある任務を深く認識し、人民委員としての役割を高めることによって、人民政権の強化と民主建設の促進に大いに寄与するよう期待します。
出典:サイト「わが民族同士」 参照:『金日成著作集』2巻 

ページのトップ


inserted by FC2 system