親愛なる朔州郡民の皆さん！
私は、民主主義自主独立国家の建設のために献身している朔州郡の同胞、兄弟姉妹の皆さんに深い敬意を表します。
私は、以前から朝鮮の宝である水豊発電所と青水カーバイド工場を訪ねたいと思っていましたが、いろいろな事情で今日になってそれが実現しました。
今日、私は当地を訪ね、雄大な水豊発電所と新しい祖国の建設のために闘っている皆さんの雄々しい姿を見て、民主主義は必ず勝利し、朝鮮人民は自力で十分に民主主義自主独立国家を建設できるという信念を固くしました。
かつて朝鮮人民は、日本帝国主義の植民地支配のもとで苛酷な搾取と抑圧を受け、奴隷の生活をしましたが、今は堂々たる国の主人となりました。北朝鮮では、工場、企業が人民の所有となり、あらゆる財貨が人民の幸福のために利用されるようになりました。水豊発電所も人民の財産となり、朝鮮人民は今この発電所の主人として自力でこれを管理、運営しています。
水豊発電所は、朝鮮人民の最大の財貨の一つであり、民主朝鮮建設の重要な動力基地です。この発電所は、民主国家建設の重要な物質的基礎となっています。水豊発電所を円滑に管理、運営して電力生産を増大させれば、工場では新しい朝鮮の建設と人民の物質・文化生活の向上に必要な製品を多く生産することができます。これを考えるとき、沸き上がる勇気と興奮を抑えることができません。
私はこうした感激と興奮をおぼえながら、皆さんに内外の情勢と今後のいくつかの課題について簡単に述べたいと思います。
こんにちの世界情勢は、第２次世界大戦以前とは異なっています。西方でヨーロッパ全土を征服しようと企てたファシズム・ドイツと、東方で朝鮮と満州を併呑し、全中国と東南アジア諸国を掌中におさめようとした日本帝国主義はすでに敗退し、世界は戦争を終わらせて平和な生活に入りました。こんにち世界の平和と民主勢力は、日増しに拡大、強化され、いかなる帝国主義列強も弱小国を意のままに侵略することができなくなりました。
朝鮮人民は、ファシズムの圧制から解放された東ヨーロッパ諸国の人民と同様、解放後民主的発展の道を歩み、世界の民主愛好諸国人民と同列に並んで前進するために闘っています。
このように、人民大衆が民主主義と自由と平和を求めているこんにち、世界には東方と西方を問わず、いまなおファシストの残存勢力があり、彼らは帝国主義侵略国家と結託して全世界の民主主義的発展を妨げています。例えば、ヨーロッパのギリシアなどでは、イギリス反動層に操られた反動勢力が新たに台頭して新興民主勢力を抑圧しています。アジアでも中国の蒋介石一味がアメリカ反動層に唆されて民主勢力に反対する国内戦争を起こし、第２次世界大戦が終わってから１年を経たこんにちでも、中国人民は戦禍を被っています。
それでは、わが国の情勢はどうでしょうか。
解放後、北朝鮮では真の人民の政権である人民委員会が樹立され、民主的な政党、大衆団体が組織されて日増しに強化されています。北朝鮮では民主主義的自主独立国家を建設し、わが国を世界の民主主義国家と同等の地位に立たせる土台を築く民主改革が順調に実施されています。その結果、政治、経済をはじめ、あらゆる分野で親日派、民族反逆者が一掃されており、封建的後進性と日本帝国主義植民地支配の残滓が一掃されつつあります。来たる11月３日には、民主選挙を通じて人民自身が自分の意思にもとづいて、人民の利益を代表する人民委員を選出することになります。
しかし、同じ同胞が暮らしている南朝鮮では、これとは逆の事態が生じています。南朝鮮では、アメリカ軍政庁の策動によって、日本の手先をはじめ、反動分子が依然として勢力をふるっています。アメリカ帝国主義者と親日派、親米派、民族反逆者は、南朝鮮で真の愛国者や人民を日本帝国主義支配当時以上に苛酷に弾圧し、南朝鮮を李朝封建時代のような暗黒の社会に変えています。
皆さん！ 見てください。アメリカ帝国主義者とその手先は、南朝鮮で人民の政権である人民委員会を抹殺し、形容しがたい方法で人民を弾圧したあげく、８・１５光州惨殺事件、荷衣島事件、それにまた、最近、大邱事件を起こして数多くの労働者、農民を戦車や飛行機で威嚇し、銃剣で虐殺しています。また彼らは、人民の言論、出版、集会、結社の自由を奪い、進歩的な新聞を廃刊させ、民主的な愛国人士を手当たり次第に逮捕、投獄しています。そのうえアメリカ帝国主義者は、ソ米共同委員会で、過去日本帝国主義者が所有していた朝鮮人民の血と汗の結晶である工場、鉱山、企業をすべて朝鮮人民に移管するのではなく、それを戦利品として分け合おうとソ連側に提案しました。ソ連側は、アメリカ帝国主義のこの主張に断固反対しました。これが、ソ米共同委員会を休会に追い込んだ原因の一つです。現在アメリカ帝国主義者は、日本帝国主義侵略者が所有していた「東洋拓殖会社」を「新韓公社」と改称する方法で南朝鮮の経済を掌握し、日本帝国主義に代わって南朝鮮の労働者、農民、勤労インテリを苛酷に搾取しています。
南朝鮮人民は、アメリカ帝国主義のこうした搾取と抑圧に耐えかねて闘争に決起しました。釜山からソウルに至る南朝鮮全域で、鉄道部門をはじめ、ほとんどすべての部門の労働者がゼネストを決行しています。
このように、北朝鮮では人民が国の主人、工場の主人となり、民主建設が着実に進められているのに反し、南朝鮮ではアメリカ帝国主義者とその手先の反動的策動によって人民が苛酷に抑圧され、彼らの民主的要求は無残に踏みにじられています。
こうした情勢のもとで、どのような課題が我々に提起されているのでしょうか。
我々は、全朝鮮の民主的根拠地である北朝鮮に強固な民主主義の土台を築かなければなりません。北朝鮮の民主主義の土台を強化せずには、アメリカ帝国主義とその手先の策動を粉砕して民主主義的発展を成し遂げることはできず、統一政府を立てて富強な民主主義自主独立国家を建設することもできません。
民主主義の土台を強化するためには、第１に、全人民が北朝鮮臨時人民委員会のまわりに固く団結しなければなりません。
我々の建国事業は、決して少人数の力でなし遂げられるものではありません。それは、全人民が一致団結することによってのみ可能なのです。
北朝鮮臨時人民委員会は、人民の自由と幸福のために闘う真の人民の政権であります。北朝鮮臨時人民委員会のまわりに固く団結することは、全朝鮮人民の願いである民主主義人民共和国樹立の確固たる保証であります。全人民は、北朝鮮臨時人民委員会を積極的に支持し、そのまわりに固く団結し、その法令や決定の実行を徹底させなければなりません。
北朝鮮の人民は、今度の選挙を通じて初めて国家の政治に直接参与することになります。我々は今度の民主選挙が、人民に民主主義の勝利の信念を鼓吹し、彼らを建国事業に積極的に参加させ、人民政権を強化し大衆をそのまわりに固く結集する重要な契機となるようにすべきです。
今度わが国で初めて制定された選挙法は、一般、平等、直接の原則にもとづき、秘密投票の方法で選挙をおこなうことを規定した、最も進歩的で民主主義的な選挙法です。この選挙法によって親日派、民族反逆者、精神病者を除き、財産や知識の有無、老弱男女を問わずすべての公民が選挙に参加できるようになり、また人民の代表者として選出される権利をもつことになりました。今度の選挙では、各政党が互いに当選を競うのではなく、人民の利益を代表する人をひとしく支持して選挙をおこなうことになります。
来たる11月３日は、朝鮮人民が政治的権利を行使する意義深い祝日です。皆さんは、人民の代表の選挙に熱心に参加し、もれなく投票すべきです。
全人民は、朝鮮全域で政権を人民委員会に委譲し、民主改革を実施するために闘わなければなりません。
土地改革法令、労働法令、男女平等権法令、産業国有化法令、農業現物税制、民主的選挙法などは、いずれも朝鮮に完全な自主独立国家を建設するうえで極めて重要な意義をもちます。我々は全人民の団結力で北朝鮮と同様に、南朝鮮でもこうした民主的法令が速やかに実施されるよう闘い、またそのために闘っている南朝鮮人民に惜しみない精神的・物質的援助を与えるべきです。
第２に、国の経済的土台を強化するために努力しなければなりません。
わが国は、まだ経済的に困難な状態にあります。我々は、解放後の１年間に、日本帝国主義者が破壊した工場、企業を復旧し、国の経済を発展させる闘いを展開して少なからぬ成果をおさめましたが、国家の経済的土台はまだ微弱です。民主主義の土台を強化し、富強な新しい朝鮮を建設するためには、経済の発展に力を注ぎ、国の経済的土台を強固に築かなければなりません。
労働者、農民、進歩的知識人をはじめ、すべての勤労者は、全力を尽くして国の経済を復興、発展させなければなりません。
労働者は、技術者と協力して日本帝国主義者が破壊した工場、企業を一日も早く完全に復旧し、衣服や靴など各種の製品を大量に生産し、発達した工業を建設するために闘わなければなりません。農民は、農業生産を高め現物税をいちはやく納めて、労働者、事務員の食糧を責任をもって保障すべきです。
現在、我々がおこなっているすべての生産は、日本帝国主義者やアメリカ帝国主義者など外国人のためでなく、朝鮮人のためのものとなるべきであり、富強な新しい朝鮮建設のためのものとならなければなりません。我々は、一日も早く民族経済を発展させて富強な祖国を建設し、人民の生活を向上させ、全人民がひとしく幸せに暮らせるよう積極的に闘うべきです。
このような闘いを通じて人民の革命的熱意を高め、彼らを民主的政治生活に積極的に参加させなければなりません。こうしてこそ、民主勢力を強化し、民族統一戦線の旗のもとに民主的課題を早急に遂行することができるのです。
第３に、反動分子の策動に警戒心を強めなければなりません。
アメリカ反動層とその手先李承晩一味は、南朝鮮で人民の民主的活動を弾圧し、テロ団を組織して愛国的な人民を虐殺しているばかりでなく、北朝鮮にまでスパイ、破壊・謀略分子を送り込んで民主朝鮮の建設をめざす人民の闘争を妨げようと策動しています。彼らは、北朝鮮の民主政党・大衆団体と人民委員会にスパイを潜入させており、破壊・謀略分子を動員してテロを強行し、工場に放火しています。敵の蛮行によって北朝鮮臨時人民委員会のある幹部の子どもたちが殺害され、鉄道工場と満浦製材工場が全焼しました。彼らは、新しい朝鮮建設の重要な動力基地である水豊発電所も破壊しようと策動するでしょう。皆さん、もし、水豊発電所が敵に破壊されればどういうことになるでしょうか。我々は、絶対に水豊発電所を敵に破壊させてはなりません。
全人民は、一致団結し、警戒心を強めて反動分子の一挙一動を鋭く見守り、民主主義自主独立国家の建設を破壊しようとする敵をみずからの力で徹底的に撃退すべきです。
私は、皆さんが新しい民主朝鮮の建設をめざす闘いで、さらに大きな成果をおさめるよう期待します。
＜注釈＞−荷衣島事件 1946年８月２日、全羅南道務安郡荷衣島でアメリカ帝国主義者とその手先が、土地略奪、穀物収奪に反対し土地問題の民主的解決を要求して決起した農民に銃火を浴びせて多数の死傷者をだした事件。
−大邱事件 1946年10月１日、慶尚北道大邱で「米よこせ！」と叫んでデモをおこなう数万の労働者、学生、市民に、アメリカ帝国主義侵略軍とかいらい武装警察隊が銃火を浴びせた大虐殺事件。
