金 日 成

革命軍隊を建設するために
―保安幹部訓練所第1所第1分所の軍人への談話― 
1946年10月7日 

 これまで皆さんは訓練所を建設するために大変苦労しました。家庭を一つ整えるのも容易なことでないのに、まして数千人が集団生活をする訓練所を建設するのですから骨が折れたはずであり、困難な点も少なくなかったでしょう。しかし、皆さんは解放前日本帝国主義者の迫害を受けたことを思い、一日も早く朝鮮人民の真の軍隊を建設するためにあらゆる困難に耐え、それにうちかちました。これは実に立派なことであり、正しい行動です。私は、皆さんのこれまでの成果を非常にうれしく思います。

 きょう、私は真の革命武力を建設するために、保安幹部訓練所に提起されるいくつかの課題について皆さんに述べたいと思います。

 革命軍隊の建設で最も重要な問題は、軍人を政治的、思想的に武装させることです。保安幹部訓練所はまず、青年軍人の頭にある日本帝国主義思想の残滓を一掃し、彼らをマルクス・レーニン主義の思想、わが党の革命思想でしっかり武装させなければなりません。

 周知のように、朝鮮は長い間日本帝国主義の植民地になっていました。かつて、朝鮮青年は、日本帝国主義者の悪辣な反動的宣伝をいやというほど聞かされ、日本帝国主義軍隊や巡査の暴虐な行為を多く目撃しました。日本帝国主義者は敗退しましたが、人々の頭に染み込んだあくどい日本帝国主義思想の残滓はまだなくなっていません。日本帝国主義思想の残滓をそのままにしていては、新しい社会建設の担い手になることはできません。

 特に、武器を手にして革命を守り、敵とたたかうべき軍人にとって、日本帝国主義思想の残滓を一掃することは切実に必要です。

 訓練所は、青年軍人の頭にある日本帝国主義思想の残滓を一掃する闘争を力強く展開しなければなりません。日本帝国主義の思想は、青年の頭に長年にわたって植えつけられたものであるため、その残滓を一朝一夕に取り除くことはできません。古い思想の残滓は会議や演説だけでなくせるものではありません。したがって訓練所では、政治・思想教育を強化するとともに、思想闘争をたゆみなくおこなわなければなりません。古い思想の残滓をなくすためには、幹部が模範を示して軍人にそれを見習わせることが大切です。百言を弄するより実際の模範を示す方が軍人の教育に有益です。

 次に、軍民の結びつきをいっそう強めなければなりません。

 革命軍隊が強敵を打ち破ることのできる力の源は、人民の支持を受けることにあります。かつて、抗日遊撃隊が厳しい状況で強盗日本帝国主義とたたかって勝利することができたのも、人民に支持され愛されたからです。人民と固く団結し、人民に積極的に支持され愛される軍隊は、いかなる敵とたたかっても勝利することができます。

 ところが、皆さんにはまだ、人民を愛し人民の財産を大事にする精神が欠けています。皆さんは今度の水道工事で農民の畑を掘り返しましたが、そういうことでは人民との結びつきを強めることができません。例え、シャベル一杯の土であっても、どこにでもある土だと考えてはいけません。農民がどれほど土地を大事にしているかを知るべきです。もし、土を使う必要があって畑を掘らなければならないようなときには、あらかじめ農民と相談し、許しを得てから作業をおこなうべきです。訓練所では水道工事が終わり次第、畑をもととおり整理すべきです。

 我々の軍隊は、いつどこにあっても人民の生命と財産を保護し、人民の利益を擁護することを鉄則とすべきです。労働者、農民の子弟である皆さんが人民の利益を尊重しないなら、誰が彼らの利益を尊重するというのでしょうか。軍人はまた、人民を自分の親のように考えて心から尊敬し、彼らが困っているときには力をかし、知らないことがあれば教える人民の真の息子、娘となり、忠僕となるべきです。こうして、軍人と人民の血縁的つながりを深めなければなりません。

 上下一致は、革命軍隊固有の品性であり、革命軍隊の本質的優越性の一つです。革命軍隊は、指揮官と兵士大衆の階級的立場や闘争目的が同じであるために、上級と下級が思想、意志のうえで固く団結しています。かつて、抗日遊撃隊は、上級と下級が真の革命的信義にもとづいて完全に一致団結していました。抗日遊撃隊では、指揮官は隊員を革命同志として、真の戦友としていたわり、隊員は指揮官を革命先輩として尊敬し心から慕いました。

 抗日遊撃隊は、このように上級と下級が鉄の統一をなし、すべての隊員が渾然一体となっていたために、15年もの長い年月、日本帝国主義とたたかって勝利することができたのです。

 我々がやがて創建する軍隊は、このような貴い伝統を受け継いだ革命軍隊です。言いかえれば、我々は抗日遊撃隊の伝統を継承して帝国主義の侵略から祖国と人民を防衛し、朝鮮革命を武力をもって支える真の人民の軍隊を創建しようというのです。したがって、我々の軍隊では、上下一致の気風が確立されていなければなりません。

 軍隊での上下一致を保障するためには、まず指揮官が熱い同志愛をもって兵士の日常の生活や活動に対して配慮しなければなりません。我々の軍隊では、教育や日常生活において、帝国主義軍隊のように指揮官が兵士をどなりつけ殴打するといったようなことが絶対にあってはなりません。

 また指揮官が規律の確立を理由に、命令一つで押し付けようとしてはなりません。もし、軍人が食事をするときに、指揮官が「5分内に食べること」「食事終わり、とか起立」と言うならば、それは日本帝国主義軍隊のやり方と変わりありません。我々は、革命軍隊である我々の軍隊の性格に即して規律を確立しなければなりません。

 初めて軍隊生活、集団生活をする青年たちなのですから、なかには動作が鈍く集団的行動に歩調を合わせることのできない人や、多少立ち後れる人もあるはずです。指揮官はそういう隊員を頭から怒鳴りつけようとせず、彼らの生活にどんな難点があるのかを調べて必要なことは解決し、知らないことは親切に教えるべきです。朝、起床が遅い隊員がいれば、指揮官はまず昨夜彼にどんなことがあったのか、どんな考えごとをして眠れなかったのか、寝床の具合が悪くはないか、病気ではないか、家族から心配事でも伝えてきたのではないかなど、わが子を気遣う親の気持ちになって親切に調べ、面倒を見なければなりません。

 親は子どもをどんなに可愛がって育てるでしょうか。親は食事のときでも子どもにつきそって、水を飲みなさい、お腹をこわすからよく噛んで食べなさい、喉がつかえないように気をつけてと、やさしく諭し、温かく見守ります。指揮官は、常に、このような親の気持ちで隊員を愛さなければなりません。そうしてこそ、上下間、同志間に真の団結が生まれ、自覚的な規律を確立することができるのです。

 集団生活では、日課を正しく組むことが非常に大切です。隊員のなかには、工場で昼夜交替の作業をしていた青年労働者もいれば、比較的時間観念のうすい農村青年もおり、夜、横になって読書をするくせのある青年など、さまざまな青年がいます。したがって、指揮官は日課を正しく組んで、すべての軍人が過去の習慣を捨てて早く集団生活に慣れるようにしなければなりません。

 日課では、隊員に食事の時間を十分に与え、休息時間、新聞や本を読む時間、家族に手紙を書く時間も組むべきです。また、訓練を厳しくしながらも、十分な睡眠時間を与えるべきです。そして、日課には内外の情勢を解説する時間もなければなりません。訓練所ではこういう方向で早く日課表を組み、それをきちんと実行するようにすべきです。

 分所の幹部は、わが子を育てる親の気持ちになって常に軍人と会い、人民軍を組織する目的を教え、立派に教育して彼らをすべて革命軍隊の真の中核に育てなければなりません。

 次に、訓練所をきちんと整備すべきです。

 さきほど訓練所を見て回わったところ、まだ野外に釜をかけて炊事をしており、寝室も粗末なものです。軍人たちは、家にいたときには温かい部屋で眠り、熱いみそ汁で食事をとっていた人たちなのに、このような生活をさせてはいけません。早く訓練所をきちんと整備し、軍人の生活条件を十分に整えるべきです。

 まず、食堂を早急に整え、軍人の食生活を改善すべきです。炊事道具も十分にそろえ、食卓もきちんとしたものを備えるべきです。長い食卓にしないで、4、5人が向き合って食事できるよう小さくした方がよいでしょう。4、5人がいつも向き合って食事をすれば、誰がどんな食べ物を好み、ご飯を多く食べるのか、誰がしょっぱいものを好み、誰が辛いものを好むかといったこともすっかり知ることができます。このように食べ物の好みを知り、勧め合いながら食事をするうちに、初めて会った人たちも家族のようにうちとけて親しくなるでしょう。

 訓練所では、軍人に調理法も教えるべきです。そうして、いまやっているように大根をぶつ切りにしてみそ汁を炊くようなことをなくし、みそ汁の具をほどよく入れ、味つけをうまくして、おいしい食べ物をつくるようにしなければなりません。そして、雑穀の代わりに白米の供給を増やし、肉や油も十分に供給して食事の質を高めるべきです。

 兵舎をきれいに整えるべきです。皆さんはいま時間がないといって、カンナもよくかけていない生木で寝台を作っていますが、そういうことではいけません。かつて、我々は、山のなかで日本帝国主義とたたかったときにもそうはしませんでした。

 今は過去とは比べようもない好条件に恵まれているのに、いい加減なやり方をしてはいけません。大事な隊員に粗末な寝床をあてがってはならず、指一本けがをさせるようなこともないようにすべきです。

 指揮官は、兵舎の寝台を一つ作ることにも細かく気を配り、外観もよく丈夫な寝台を作るようにすべきです。寝台は長く一列に置かずに、上段で2人、下段で2人が休めるよう2段にする方がよいでしょう。そうすれば、寝相の悪い隊員も他人の妨げにならず、掃除をするときにも簡単に持ち運びができます。

 寝台の前には、隊員が腰かけて休めるように椅子を据え付け、その下に書物などを入れる引き出しも作るべきです。寝台も立派に作り、部屋もよくしつらえて軍人が訓練から帰って温かいところで不自由なく明朗な生活ができるようにしなければなりません。

 洗面所、浴場、洗濯場などの衛生施設も生活に便利なように清潔に整えるべきです。

 講義室、模範講習室、訓練機材をよく整え、射撃場、戦術訓練場、体育訓練場の設備も早急に具備すべきです。そして、建国室と講堂を早く立派に整え、政治・文化生活も活発におこなえるようにすべきです。

 軍人に対する給養物資の供給も円滑におこなうべきです。訓練所では、速やかに給養物資供給体系を立て、訓練所の活動と軍人の生活に必要なすべての物資をそのつど計画的に供給すべきです。道党委員会と道人民委員会の幹部も、訓練所の幹部としばしば会って軍人の生活問題について相談し、必要な問題は解決してやるべきです。道党委員長と道人民委員長が訓練所へ行って軍人の生活状況を調べ、困っている問題を解決してやるのがよいでしょう。軍人は、わが党と人民政権の守り手なのですから、党と政権機関は責任をもって彼らを援助すべき義務があります。わが国の青年は、すべて聡明で、才能があり、はつらつとしています。訓練所では、こうした立派な青年を政治的、思想的にしっかり武装させ、軍事技術的に十分準備させて、二度と侵略者がわが国に入り込んで人民を抑圧し搾取できないように、祖国と人民をしっかり守るようにすべきです。

 皆さんは常に、かつてわが国がどのような状態にあったのか、朝鮮人民が一日も早く強力な正規軍をもつ堂々とした民族になることをどれほど渇望しているかを忘れずに、革命軍隊の建設のために全力を尽くさなければなりません。
出典:サイト「わが民族同士」 参照:『金日成著作集』2巻 

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