金 日 成

北朝鮮労働党の創立と南朝鮮労働党の創建問題について
 −1946年9月26日−


 共産党と新民党を合同して、朝鮮勤労大衆の利益を代表し擁護する労働党を創立したことは、こんにちの朝鮮人民の政治生活において最も重大な出来事である。この偉大な出来事は大きな社会的関心を呼びおこし、全人民の注目を集めた。

 我々は、北朝鮮において勤労大衆の統一的な党を創立する事業を勝利のうちになし遂げた。

 しかし南朝鮮では、党の合同と統一に反対する者たちの分裂行動によって、真に党の合同のためにたたかっている人たちの活動が妨げられ、党の合同はいまだに実現をみていない。党の合同に反対する者たちの分裂行動は、右翼反動陣営からの援助を受けている。

 予想したように、反動勢力は民主的な勤労者諸政党の合同を破綻させるために総動員されている。アメリカ帝国主義者とその手先一味は、民主政党の内部にスパイを送り込んで「反対派」をつくらせ、無原則な論争と分派的な派閥争いを引き起こして民主勢力を分裂させようとしている。

 分派分子の罪悪行為は、解放運動の最も貴重な時間を浪費させ、反動勢力に有利な条件をつくりだしている。これがまさに、南朝鮮で党の合同を遅延させている根本的原因である。

 我々は、南朝鮮において党の合同が妨げられている事実を断じて見逃すべきではなく、また分派分子の二面主義的態度も許すことはできない。それは、全朝鮮民主勢力の統一と団結のみが真に新しい民主朝鮮建設の前提条件となり、我が国の政治、経済、文化の発展をもたらす最も重要な裏付けとなるからである。

 我々はこの問題を正しく認識し、政治的に正しく評価してはじめて、勝利をおさめることができるのである。そのためには、次の諸問題を正しく把握しなければならない。

 1) 朝鮮人民が日本帝国主義の奴隷的くびきから解放された後の1年間に、北朝鮮と南朝鮮でどういうことが起こっており、その相違点はなにか。

 2) 勤労人民の諸政党が単一的な労働党に合同し、すべての勤労人民が一致団結することがなぜ、現段階の我が国の政治生活において最も重大かつ不可避的なものであり、またこれ以上遅延させてはならない任務となるのか。

 統一された労働党の任務はなにか。

 3) 統一に反対している者たちはなにを望み、朝鮮人民をどこへ導こうとするのか。

 4) 結局、現段階における当面の任務はなにか。




 朝鮮が日本帝国主義の植民地支配から解放されてすでに1年になる。この短い期間に北朝鮮では、政治・経済・文化生活において偉大な変革がなし遂げられた。

 我々はこの1年間に偉大な民主改革を実現し、朝鮮を真に民主主義の方向へ発展させ、人民共和国を建設するための強固な土台をきずきあげた。

 権力を手中におさめた朝鮮人民は、かつて我が国の歴史上、どの時代にももちえなかった民主的権利と自由を享有するようになった。それは、全人民が政治生活に積極的に参加している点にもあらわれており、また人民委員会委員の社会的出身階級構成にもはっきりあらわれている。

 現在、北朝鮮で活動している人民委員会委員の出身階級構成は次のとおりである。

   労働者………………………………………………………… 5.7%
   農  民………………………………………………………71.8%
   事務員…………………………………………………………15.8%
   手工業者……………………………………………………… 2.1%
   商  人……………………………………………………… 4.6%

 このように、広範な人民大衆の代表で構成された人民委員会は、人民との密接な結びつきを保ち、かれらの利益を保障するためにたたかっている。人民委員会のすべての政策と活動は、なによりもまず我が国の民主的発展と広範な人民大衆の福祉増進を目的としている。

 人民委員会は、その政策の実行にあたって、各政党、大衆団体のかたい団結と民主主義的統一戦線をよりどころにしている。この統一戦線には600余万の各階層の人民が参加している。これは、北朝鮮全住民のうち成人のほとんど全部を包括するものである。

 北朝鮮の人民は、遠からず民主的な選挙法にもとづいて人民委員会の委員を選挙することになる。このたびの選挙は、人民政権とそのまわりに結集した民主勢力をいっそう拡大強化するであろう。

 このように、人民委員会は広範な人民大衆をよりどころにして樹立され、北朝鮮全人民の政治的熱意を高めて、新しい民主朝鮮の建設事業にかれらを積極的に参加させている。

 すでに今年3月、北朝鮮の農村では生産関係を根本的に変革する土地改革が実施された。土地改革の結果、朝鮮で最も反動的な階級である地主階級は決定的打撃を受け、その経済的土台は一掃された。農民は、封建的搾取と抑圧から解放され、長いあいだの念願であった土地の主人となった。農民は、人民委員会が無償で分け与えた土地を自分の所有として耕作するばかりでなく、日本帝国主義支配当時の過重な供出制度や過酷な雑税からも解放され、収穫の25%だけを現物税として納め、残りは各自が自由に処分できるようになった。こうして、農民の生産意欲はかつてなく高まり、長いあいだ停滞していた我が国の農業は急速な発展の道を歩むようになった。

 さる八月、北朝鮮臨時人民委員会は、日本帝国主義と親日派、民族反逆者の所有となっていた産業・運輸・逓信施設および銀行を国有化する法令を発布した。これによって我々は、民主的な完全独立国家建設の物質的土台となる経済の根幹を民族の所有に、全人民の所有に変えた。

 今年の6月、北朝鮮臨時人民委員会は、労働法令を発布して労働者と事務員にたいする過酷な植民地的搾取をなくし、8時間労働制と社会保険制を実施した。また、我が国の歴史上はじめて、婦人に男子と同等の社会的権利を保障する法令が制定された。

 北朝鮮臨時人民委員会はまた、過去の植民地的奴隷教育制度を撤廃して民主的教育体系を樹立し、民族文化と芸術を急速に復興発展させる対策を講じた。

 昨年、2387の小学校と91の中学校で男女の学生が学び、今年になって新たに126の中学校が増設された。この数字は、日本帝国主義の支配当時に比べて学校数がはるかに増えたことを示している。そればかりでなく、日本帝国主義の支配当時には1つの大学もなかった北朝鮮に、解放後わずか1年のあいだに人民の総合大学が創立され、いまはまた教員大学と医科大学が創設されつつあり、重要な工場を中心に、30にのぼる各種の技術専門学校が新設されている。すべての学校では朝鮮語で教育しており、すでに50余種の教科書が朝鮮語で編さん発行された。

  成人を文盲状態から解放し、かれらに普通教育を施すために、昨年8000余の成人学校が開設された。このほか北朝鮮では、83の劇場と映画館が運営されており、717の図書室が新設され、30余種の新聞が発行されている。

  人民委員会は、人民大衆の物質・文化生活を向上させ、かれらの政治的権利を保障するために大きな事業をなし遂げた。北朝鮮では民主的諸政党と職業同盟、農民同盟、青年同盟、女性同盟、芸術連盟などの大衆団体が組織され、人民大衆が自由に政治生活に参加するようになった。人民にはあらゆる政治的権利が確保され、言論、出版、集会、結社の自由が完全に保障されている。
 
 偉大な民主改革の実施によって、北朝鮮の社会的・経済的基礎と各階級、階層の境遇は根本的に変わった。

 産業国有化法令の実施によって、日本帝国主義の植民地支配の根源は一掃され、日本帝国主義と結託していた民族反逆者の経済的基盤が剥奪された。土地を没収された地主は、階級として永久に一掃された。

 このように、日本帝国主義と結託して朝鮮人民を抑圧し、搾取していたすべての勢力が経済的基盤を奪われ、政治的に一掃された。

 これとともに人民委員会は、民族資本家の所有を保護し、個人企業家、商人の経営活動を奨励する。人民委員会は、民主改革を支持し、人民の生活改善のために奉仕しようとするすべての企業家、商人に工業や商業などの重要な経済部門に参加する可能性を与え、かれらを各方面から援助している。こうすることによって我々は、企業家、商人の自由な企業活動を保障するとともに、民族経済を発展させるためにあらゆる資本を動員し、利用している。

 日本帝国主義支配のもとで、最も野蛮な搾取を受けてきた朝鮮の労働者階級は、こんにち人民の所有となった国家企業所で働く権利をもち、自国の人民と社会のために働くようになった。労働者は、国家政治生活に参加するすべての権利と可能性をもつようになった。我が労働者階級は、北朝鮮民主勢力の中核をなしており、その組織性と政治的・思想的水準は急速に高まっている。

 農民も地主の封建的搾取から解放され、自分の所有となった土地で自由に働けるようになった。土地の主人となった農民は、民主主義独立国家の建設に積極的に参加しており、かれらの政治的熱意はいっそう高まっている。

 インテリの境遇も変わった。インテリの圧倒的多数が、すべての勤労人民とかたく団結するようになった。いまでは、インテリは以前のように日本帝国主義や搾取者に奉仕するのではなく、国家と民族と勤労人民のために忠実に奉仕している。かれらは、国家と人民の利益を自分自身の利益とみなしている。これは、インテリの見解や理念が変わったことを示すものであり、かれらが祖国と人民のためにすべてをささげて働く決意をもっていることを示している。

 これらの変化は、労働者、農民、勤労インテリの政治的団結をいちだんと強めた。労働者、農民、勤労インテリの団結した力は、新しい朝鮮建設の闘争で民主主義民族統一戦線の基礎となり、同時に、共産党と新民党を合同して勤労大衆の統一的党をつくるうえでも確固不動の基礎となった。

 両党の合同による労働党の創立は、我が国の民主勢力を拡大強化し、民主建設を促進するうえで大きな歴史的意義をもっている。

 党とは、一定の階級の利益を守り、その要求と指向を実現するためにたたかう、階級の前衛部隊である。共産党は、労働者階級の前衛部隊として労働者階級の利益を代表してたたかってきた。新民党は主として、農民と勤労インテリの利益を擁護する政党として活動した。このように、共産党と新民党は、それぞれ異なる階級の利益を代表していたにもかかわらず、組織された当初から共通の綱領をかかげてたたかった。これは、労働者、農民、勤労インテリがすべて働く大衆であり、その利害関係が一致していることによって説明される。

 労働者階級は、土地改革の遂行を積極的に支援した。それは、封建的小作制度を一掃して農民を地主の従属から解放してこそ、農業の急速な発展が可能であり、また農業の発展なしには、産業の発展も、祖国の富強発展と人足の福祉増進の実現も不可能であることをかれらがよく知っていたからである。

 農民は、産業国有化法令や労働法令を積極的に支持した。それは、かれらが日本植民地支配の経済的基盤と過酷な植民地的強制労働の残りかすを取り除かなければ産業を発展させることができず、そうなれば結局、農業を発展させることもできないということを知っていたからである。

 インテリも、民主改革の実施が自己の死活的な利益と全く一致することを知るようになり、したがってそれに深い関心をもって参加した。

 このように、労働者、農民、勤労インテリの共通の利害関係は、共産党と新民党の共通の目的と任務を規定し、祖国の独立と民主化をめざす両党の共同闘争の基礎となった。それゆえ両党は、ともに人民委員会を積極的に支持し、土地改革、産業国有化をはじめとする民主改革の実施のために共同でたたかってきた。

 このような両党の共通性と共通の利害関係によって、両党は統一的な労働党に合同することになった。

 今後、民主主義運動がさらに成果をおさめ、我々の社会が発展すればするほど労働者、農民、勤労インテリの団結は強まり、両党の合同によって創立された労働党の統一と団結はいっそう強まるであろう。このように労働党の創立は、勤労人民の統一と団結を強め、我が国をさらに発展させるうえで大きな歴史的・政治的意義をもつ出来事である。労働党は、朝鮮の勤労大衆、すなわち労働者、農民、勤労インテリの前衛部隊として、全人民を祖国の完全な自主独立と民主主義の終局的勝利へ導くであろう。

 しかし我が党は、我が国における唯一の党ではない。そこで他の諸政党、他の階級との相互関係にかんする問題が提起される。

 我が党は、青友党の民主的要求を積極的に支持し、同一歩調でともに進むため、かれらと緊密に協力している。青友党は、たとえ宗教的な特徴はもっていても、朝鮮の独立と民主主義のために我が党と手をたずさえて進むことができる。

 一部のインテリと商人、企業家の利益を代表する民主党にたいしても、我が党はこの党の民主的綱領を支持するであろう。我々は、人民経済の急速な復興のために民族資本家の企業活動を奨励し、商人、企業家を民主建設に極力引き入れている。

 このように我が党は、すべての民主的政党と団結して共同闘争を展開してきたし、また展開している。我々は、青友党および民主党の党員といっそう緊密な連係を保って、民主主義の旗のもとにかれらとさらにかたく団結し、ひきつづき民主主義民族統一戦線を拡大強化しなければならない。

 いま、我が党には、重大かつ複雑な課題が提起されている。この課題を立派に実現するためには、なによりもまず党合同の成果をかため、歴史の浅い我が党を組織的にも、思想的にも強化しなければならない。

 我々は、必ず党の路線と戦略的・戦術的方針を全党員に深く浸透させ、全党を科学的なマルクス・レーニン主義理論と徹底した革命思想で武装させなければならない。そうしてすべての党員が、人民の自由と幸福のために最も勇敢にたたかう自覚をもった革命闘士となるようにし、労働党をすべての愛国的民主勢力の鉄の中核部隊につくりあげなければならない。




 南朝鮮の実情は、北朝鮮とは根本的に異なっている。そこでは、アメリカ軍政当局がすべての権力を握って朝鮮人民を抑圧しており、民主改革の実施などは想像すらできない。

 一部の人たちは、南朝鮮が北朝鮮に比べて、ただ後れているだけだと考えている。これは、南朝鮮も民主主義の道を歩んではいるが、北朝鮮よりいくぶんか緩慢に進んでいるだけだという、全く誤った考えである。実際は、北朝鮮が民主的発展の道を進んでいるのに反して、南朝鮮は全く別の道を進んでいるのである。

 民主主義か否かを区別する基準は、人民が国家管理に参加できるかどうかにある。ところが南朝鮮の人民は、政治に参加する権利を奪われている。かれらは初歩的な、最小限の民主的権利すらもっていない。

 解放直後、南朝鮮人民が組織した人民委員会は、無視されたばかりでなく、解散させられ、その活動家たちは検挙、投獄されている。政治活動の自由を奪われた民主的諸政党は地下に潜らざるをえなくなった。

 民主的諸政党のなかでも、祖国の自由・独立と勤労人民の幸福のために最も頑強にたたかっているのは共産党である。これは、良心的な朝鮮人の誰もが認めている厳然たる事実である。ところが、朝鮮の民主主義的自主独立を妨げるアメリカ帝国主義者とその手先は、南朝鮮共産党にたいしてどういう態度をとってきており、また現にとっているのか。かれらは、共産党の幹部や党員を大量に検挙、投獄、虐殺し、その機関紙『解放日報』を廃刊させた。反動分子らは、人民大衆のなかで共産党の権威を傷つけるために、「紙幣偽造事件」とその公判をでっちあげ、また「左右合作」の陰謀をめぐらし、共産党を孤立させようとしている。

 共産党員だけでなく、人民党や新民党の党員も弾圧と迫害を受けている。反動分子は、人民党の党首・呂運亨(リョウンヒョン)氏に迫害を加え、ひいては強盗さながらの暴力によってかれを殺害しようとした。

 反動分子は、民主的出版物を停刊させ、多くの民主的政党の党員を逮捕し、テロ団をつくって白昼街頭で愛国者を殺害するなどの蛮行を働いている。反動分子らのテロ行為は、日増しにつのっており、民主勢力にたいする弾圧はますます横暴になっている。

 特に、労働者階級にたいする迫害はその極に達している。さる8月15日の光州(コンジュ)惨殺事件を見よ! 8.15慶祝大衆集会に参加するため、光州市に向かって行進していた和順(ホスン)炭鉱の労働者1000余名は、アメリカの戦車、飛行機、機関銃、銃剣に襲われ、1人の死亡者と109名の重軽傷者をだした。なんと悲惨な事実ではないか! 全民族の厳しい糾弾を受けている敵のこのような蛮行は、数十、数百件にのぼっている。これがまさに李承晩一味の「民主主義の秩序」であり、これがアメリカ人の言いふらしている朝鮮にたいする「人道主義的後援」なのである。

 南朝鮮では、土地問題が全く解決されていない。農民は、日本帝国主義の支配当時と同様に地主の過酷な搾取を受けており、さまざまの過重な雑税と供出制度のために苦しめられている。変化があったとすれば、日本人地主の所有地が朝鮮人大地主の手に移っただけのことであり、日本帝国主義の「東洋拓殖会社」がアメリカ帝国主義の「新韓公社」に変わっただけのことである。

 労働法令の実施はおろか、労働者は以前よりいっそう過酷な搾取を受けており、失業と飢えにあえいでいる。日本帝国主義者と民族反逆者の所有となっていた産業施設は、国有化されるどころか、かえって日帝の手先や悪徳業者の貪欲な金儲けの手段となっている。

 婦人は解放されるどころか、形容しがたい暗たんたる境遇におかれている。

 これらすべての事実は、南朝鮮では北朝鮮と全く異なる事態がくりひろげられていることを証明している。北朝鮮では人民のための民主主義の土台がしっかりときずかれているのに反し、南朝鮮ではアメリカ軍政当局の露骨な援助のもとに、逆賊李承晩一味が反人民的・反民主的政策を公然と実施している。かれらは、「民主主義」の看板をかかげて、事実上、全朝鮮人民を抑圧する反動的支配機構の樹立を企んでいる。

 このような重大な情勢のもとで、我が民族と全動労人民の果たすべき主な任務は、一にも統一であり、二にも統一である。

 それでは、我々の主張する統一はどのような統一なのか。統一についての主張はいろいろあるが、我々の主張する統一は勤労大衆の利益、すなわち労働者、農民、勤労インテリの利益に立った統一である。この正しい原則にもとづいてのみ、真の統一がありうる。

 これに反し、アメリカ軍政当局の指図のもとに南朝鮮反動一味の企む「左右合作」とか、あるいは左翼陣営内の右派分子が売国的右翼勢力とぐるになって形成しようとする「統一」は、いずれも勤労大衆の利益と全人民の利益に背く反人民的な「統一」である。そのような「統一」は、反動派の活動を助長する「統一」である。我々はこのような「統一」を必要としない。

 真の民主主義者は、このような「統一」をでっちあげようとする試みにたいして妥協することなくたたかわなければならない。なぜなら、そのような「統一」は、民主勢力を弱め、反動勢力に力をかし、朝鮮の民主化を阻むからである。

 民主的政党内に潜入した分派分子や反党分子らは、自己の主張する「統一」が祖国と人民のためのものであるかのように言い張っているが、それは事実上勤労大衆を分裂させ、アメリカ帝国主義者と反逆者一味を助ける利敵行為である。

 我々は、労働者、農民、勤労インテリの民主的要求を保障しうる勤労大衆の統一を要求している。すべての民主主義者は、勤労大衆の利益を擁護する統一のために断固たたかうべきである。

 北朝鮮で共産党と新民党が合同して労働党に発展した事実は、南朝鮮においてもそのような党の合同運動を起こすよう影響を与えた。この運動の発起者は人民党の指導部であり、かれらは率先して共産党と新民党に党の合同を申し入れた。この運動が発起されてすでに1か月以上たったが、いまなお進展していない。

 南朝鮮の広範な勤労大衆は、統一の必要を自覚し、それを強く要求している。例えば、南朝鮮の多くの大衆団体が、勤労者諸政党の統一を要求する決定を採択している。全評と全農が採択した決定には、両団体に加わっているすべての同盟員が、党の合同を全面的に支持すると述べている。そのほかにも、文化芸術連盟中央委員会、全国婦女同盟、協同組合委員会、民主青年同盟などが発表した共同声明書にも、統一に反対し分裂工作に終始している者たちを糾弾し、3党合同にたいする全面的な支持を強調している。

 共産党、人民党、新民党の下級機関の幹部と全党員は、3党合同の必要を理解し、その早急な実現のため積極的に進出している。

 このように、大衆的におこっている党合同運動は大きな意義をもっている。この運動は、3党の合同が現段階における最も切実な問題であり、広範な大衆の一致した要求であることを示している。すべての民主主義者は、当然、大衆のこうした要求に関心を払うべきである。

 その間南朝鮮では、党合同準備委員会が組織され、党合同にかんする綱領草案を作成し発表した。その綱領は、民主的綱領であり、原則的に正しい綱領である。我々はその綱領に絶対賛成である。

 それにもかかわらず、党合同の問題はいまだに解決されておらず、すべての情勢から見て、それは相当遅れるきざしが見える。なにがこの重大な課題の解決を妨げているのか。

 それは、アメリカ軍政当局の支持を得ている反動分子の敵対活動と破壊陰謀によって生じた難関である。アメリカ軍政当局のさしがねのもとに、反動分子らは党の合同を破綻させるため必死になってあがいている。かれらは、南朝鮮の左翼民主政党、大衆団体の指導者に野獣じみた迫害を加えており、進歩的な出版物を手当たりしだいに停刊または廃刊にしている。

 これと同時に、党の合同を妨げている他の主要な原因は、合同しようとする党の内部で策動している反党分子の分派的行動である。南朝鮮共産党中央委員会内に反党派が発生した。この派に属する6名の反党分子は、党の合同には賛成するが、党を合同する問題は必ず党大会の承認を受けなければならないと主張している。かれらは、党大会の承認をへない党の合同は、党の民主主義的原則に反するものだと言い張っている。かれらは、なにを根拠にして、党の民主主義的原則に反するといっているのであろうか。

 北朝鮮では、党の合同はおおよそ次のような過程を経ておこなわれた。すなわち、党の合同にかんする問題を、まず新民党中央委員会で決定し、次に共産党中央委員会で決定した。その後、両党中央委員会拡大連席会議で党合同の問題を討議、決定し、労働党の綱領、規約草案と党合同にかんする声明書を両党の下級党組織の討議にかけた。下級党組織での討議をへて、道、市、郡の党代表者会議で労働党創立大会に参加する代表を選出した。こうして、両党の代表からなる労働党創立大会で両党の合同が最終的におこなわれた。

 反党分派分子は、問題のこのような解決方式を民主主義的原則にもとるとみなすのだろうか。

 もしも、反党派が、大衆と緊密に結びつき、大衆の意見に深い関心を払ったならば、かれらは重大な反党的過ちをおかさなかったであろう。反党派が、本当に民主的原則をよく知っており、それを尊重するならば、どうして南朝鮮の反動的で険悪な情勢のもとで機を逸せず、時間をのはさず、早急な党の合同を待望している党員や勤労大衆の要求を聞き入れないのか。これは、分派分子があまりにも大衆から離脱していることを証明するものである。それゆえ、かれらの反党行為は、それが意識的であると無意識的であるとにかかわらず、結局は党の合同自体に反対することであり、反動分子の分裂工作に手をかすことである。

 反党派のこのような行動は、疑いもなく純然たる栄達主義から出たものである。ところで栄達主義は、反動を助け、勤労大衆の党を内部から崩壊させる。それゆえ、南朝鮮共産党中央委員会が、反党分子らを除名したのは正しい措置である。そうしなければ、革命の隊列は四分五裂するであろう。

 これと似た反党分子らが、人民党や新民党の内部にもいる。各党内の分派分子は、かれらの派閥仲間を互いに訪ねまわって、単独に「労働党」をでっちあげようとさえ試みている。

 しかし、分派分子らが詭弁と奸計と策動をもっていかにあがいても、かれらが組織しようとする党は勤労大衆のための戦闘的な党にはなりえず、ただ右翼反動派、反逆者と妥協した党になるほかない。

 分派分子は、「統一」にかんする綱領と「労働党」組織にかんする綱領まで作成したという。しかし、反党分子の綱領がいかに粉飾をこらしたものであっても、かれらが反動派を助け、自己の卑劣な目的を追求しているにすぎないという事実をおおいかくすことはできない。

 分派分子は、多数に反対して無原則な行動をとる少数の分裂主義者の末路が、結局は売国奴と人民の敵の側に寝返ることになるということを忘れているようである。

 また民主政党内の一部の党員は、党合同の必要を原則的に正しく把握していないために党の合同に支障を与えている。例えば一部の分子は、このたびの党合同は一時的で、暫定的なものであると主張している。いったいかれらは、どのような暫定性について云々しているのだろうか。これは、極めて正しくない見解である。

 いかなる党も、自己の永遠な存在を望むことはできない。なぜなら党は、党のための党ではなく、一定の階級の目的を実現するために必要な武器であるからである。

 そして、共産党と人民党と新民党が、共通の目的をもつ勤労人民の党であることは、誰にも明らかである。朝鮮の勤労大衆は、いま、どのような目的のもとにたたかっているのだろうか。それは最短期間に、朝鮮の統一的民主主義臨時政府を樹立することであり、南朝鮮でも北朝鮮で実施されたような徹底した民主改革を実現することであり、すでにかちとった民主主義の勝利を拡大強化し、朝鮮人民の要求する富強な民主主義的完全自主独立国家を建設することである。また、この闘争で勝利した後も、勤労人民はみなひとしく、よりよい未来のためにたたかわなければならない。朝鮮の労働者、農民、勤労インテリのこのような歴史的偉業とかれらの共通の利害関係から、勤労大衆の諸政党の共通の任務が規定され、それらの党の合同と統一の可能性が生まれ、必要性が生まれるのである。それにもかかわらず、どうして勤労人民の諸政党の合同を一時的で暫定的なものと言えるだろうか。

 また一部の人は、政党の綱領がそれぞれ違っているので統一は不可能だという。

 それでは、人民党の綱領と右翼反動政党の綱領は合致するとでもいうのであろうか。そうではない。人民党の綱領は、右翼反動政党の綱領と全く異なっており、根本的に対立するものである。それにもかかわらず、一部の連中が勤労大衆の政党の合同問題は棚上げにして、「左右合作」なるものを主張し、協議までおこなっているのは、なにを意味するのだろうか。綱領が根本的に異なり、共通性のない反動政党との合作は可能だと言いながら、綱領のうえで共通性のある民主的政党の合同が不可能だというのは、どういうわけであろうか。そういうことを言っている連中の意図は、一言でいって、民主的左翼陣営から離脱し、反人民的で反民主的右翼反動陣営に投じようということにほかならない。

 もちろん民主的政党のあいだに、綱領のうえで多少の違いがあるのは事実である。しかし、それらの政党の綱領には共通し一致する点の方が多いのである。この共通点は、共通の敵に反対してともにたたかい、同一の目的達成のために一つに団結する可能性を与える。共通の目的と共同の利益にもとづく勤労者諸政党の統一を速やかに実現し、反動分子とたたかって勝利するか、それとも、ばらばらになって分散的に活動し敵に惨敗をこうむるか、この問いにたいしては、誰しも異口同音に、ただ党の合同だけが問題を解決する唯一の正しい道であると答えるであろう。

 勤労大衆の利益に忠実なすべての民主主義者は、反動勢力の陰謀と妨害を克服し、栄達主義分子や私利私欲におぼれた者、派閥分子らの分裂行動を暴露、粉砕し、まだ党の合同について正しい認識をもっていない一部の党員を説得し、一致団結して党の合同を短時日のうちに完成すべきである。


*    *     *

 団結は勝利をもたらし、分裂は敗北を意味する。勤労大衆が一つに結集し、すべての民主勢力が団結すれば、朝鮮の民主主義的自主独立の達成は早められる。

 勤労大衆の統一的党の創立は、民主勢力の拡大強化を促進し、民主主義の勝利を保障する決定的な裏付けとなる。共産党と新民党の合同を短期間に、勝利のうちに実現した北朝鮮の経験がこれを確証している。

 すべての力を、南朝鮮における勤労大衆の団結と大衆的な党創立のための闘争に集中しよう!

 勝利は、統一と民族独立と民主主義を指向する朝鮮人民のものである。こぞって勝利をめざし、確信をもって前進しよう!
出典:『金日成著作集』2巻

 

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