金 日 成

民主主義民族統一戦線委員会を結成するために
―北朝鮮の民主政党・大衆団体代表者会議でおこなった報告― 
1946年7月22日 

 諸先生ならびに同志のみなさん!

 解放後、朝鮮人民は北朝鮮で偉大な歴史的意義をもつ民主改革を遂行しました。各民主政党と大衆団体の共同の努力によって、北朝鮮には今後、統一的な民主朝鮮建設の強固な土台が築かれました。

 特に、朝鮮問題に関するモスクワ3国外相会議の決定が発表されて以来、北朝鮮の民主勢力は急速に強化され、数百万の大衆が民主的政党、大衆団体に結集しました。主な大衆団体の名称と加入者数は次のとおりです。

   職業同盟 ───────── 35万名
   農民同盟 ──────── 180余万名
   民主青年同盟 ────── 約100万名
   女性同盟 ────────  60余万名
   芸術連盟 ────────   1万余名

 我々は、北朝鮮で民主政党、大衆団体の広範な統一戦線にもとづいて、真の人民の政権である北朝鮮臨時人民委員会を樹立しました。

 北朝鮮臨時人民委員会は、最初の偉大な課題として、数世紀にわたってわが国の社会発展を停滞させ阻害してきた封建的土地所有と封建的搾取関係をなくして、「土地は耕作する者のみが所有する」という原則にもとづき、土地を農民に分与する土地改革を実施しました。全人民とすべての政党、大衆団体が参加して果敢に実施した土地改革は、朝鮮の民主化と人民経済発展の広い道を開き、親日派、民族反逆者の社会的・経済的基盤を覆しました。

 長い間の日本帝国主義の植民地略奪と破壊のために停滞状態にあった産業・運輸施設はすべて正常状態に回復し、土地の主人となった農民は、食糧増産闘争を力強く展開しています。

 これにとどまらず、北朝鮮臨時人民委員会は、植民地的搾取の残りかすをなくし、労働者、事務員の労働条件と物質的状態を根本的に改善するため民主的労働法令を発布して、それを実施しています。労働法令の実施は、労働に対する植民地的・封建的抑圧と搾取は一掃し、労働者階級に民主的解放をもたらしました。こうして、労働者、事務員の労働条件と生活を改善し、産業を復興させる条件が整いました。

 ついで制定された農業現物税制は、かつて日本帝国主義支配当時の農民に対するあらゆる過酷な雑税をなくし、農民の物質・文化生活を急速に向上させ、農村における土地改革の勝利をさらにかためられるようにしました。農業現物税制の実施は、農民を農業増産と国家建設に積極的に参加させ、農村に活気をもたらしました。こうして農民は、北朝鮮臨時人民委員会が徹底して彼らの利益と全人民の利益を擁護する政権であることを深く認識するようになりました。

 北朝鮮では、民族文化も他の部門と同じく、速やかに発展しています。過去、日本帝国主義に奉仕した教育・文化機関が、こんにちでは全的にわが民族の利益に奉仕する人民的教育・文化機関に改編され、民主的内容をもつ新しい民族文化が発展し始めました。

 その間、我々は、中央と各地方に人民教育機関と民族幹部を養成する各種の学校および講習所を設け、多くの成人学校を開設しました。現在中央で運営されている学校だけでも中央政治幹部学校、保安幹部学校をはじめ、4、5校を超します。また総合大学を創設し、16校の中等専門学校を新設する準備を進めています。我々は遠からず、新しい教育を受けた数千名の有能な民族幹部を建国戦線に送り出せるようになるはずです。

 このほかにも、図書館、クラブ、劇場、新聞社、出版社などの文化施設が増設されており、科学者、芸術家その他多くのインテリが北朝鮮臨時人民委員会の施策を支持して新しい朝鮮の民主主義的民族文化の建設に全力を尽くしています。

 これらの事実は、北朝鮮で民主的改革と経済・文化建設が成功裏に進められ、新しい民主朝鮮の策源地がしっかりとかためられていることを明白に示しています。

 しかし、我々はこれまでの成果に満足することはできません。今後さらに多くのことをなすべきであり、以前より大きな障害と難関を克服し、必ず富強な統一的民主主義独立国家を建設すべきであります。そのためには、さらにかたく団結し、さらに勇敢に、さらにたくましくたたかわなければなりません。

 さきにソウルで開催されたソ米共同委員会の活動が中止されたことは、朝鮮のすべての愛国者と政治活動家に政治的警戒心をさらに高めることを求めています。ソ米共同委員会の活動の中止とその後の南朝鮮の事態は、弱小民族に対するアメリカ帝国主義者の伝統的な植民地化政策と朝鮮に対する野望を内外にさらけ出しました。親日派、民族反逆者の頭目李承晩一味は、世界反動の元凶であるアメリカ帝国主義と結託し、朝鮮の民族独立と民主的発展の保証を約したモスクワ3国外相会議の決定を卑劣な方法で反対し、民主主義朝鮮臨時政府の樹立を各方面から妨げています。

 しかしこんにち、世界は民主主義の方向に発展しています。ファシスト・ドイツのくびきから解放されたヨーロッパ諸国の人民は、内外のあらゆる反動派の陰謀を粉砕して民主的な人民政権を樹立し、国家再建の事業を力強く推し進めています。そのうえ、東方でも中国のような大きな国の人民が帝国主義と国内の反動勢力を撃破し、祖国の自由と解放を勝ち取るために勇敢にたたかっています。一言でいって、世界は自由と民族の独立、民主主義の旗のもとに前進し発展しています。

 朝鮮問題もやはりその旗のもとに、全世界が進む道に沿って解決されるであろうし、また、当然そのように解決されるべきであります。朝鮮人民は、帝国主義者のいかなる侵略の陰謀も許さず、同時に李承晩のような民族反逆者のいかなる売国策動も徹底的に粉砕するでありましょう。

 こんにち、朝鮮の歩むべき道は、歴史の歯車を逆転させようとする反民族的、反人民的、反民主的な道ではなく、民族の完全独立の道、新しい民主的発展の道、歴史を前進させる道であります。これは、朝鮮人民が解放後北朝鮮で実践した新しい民主朝鮮建設の道であり、統一的民主主義臨時政府を打ち立てる道であります。

 各政党、大衆団体の指導者のみなさん!

 我々はこの正しい道に沿って、わが民族の歴史的宿願を実現し、朝鮮の完全な民主主義的自主独立を達成すべきであります。

 この偉大な課題の遂行において最も重要なのは、各民主政党、大衆団体の強固な統一団結と緊密な協力であります。

 もちろん、我々はその間、各政党、大衆団体の民主主義的統一戦線にもとづいて多くの活動を遂行してきました。しかし、これに満足することはできません。我々は新しい民主朝鮮を建設するため、さらに緊密に協力し、家族のようにかたく団結し、民主主義民族統一戦線の旗のもとに全朝鮮人民を結束すべきであります。それは、とりもなおさず統一的民主主義朝鮮臨時政府を早急に樹立する方策であり、朝鮮の完全自主独立と民主的発展のための最も重要な裏付けであります。

 我々がきょう、ここに集まって民主主義民族統一戦線委員会を結成する基本的な目的もここにあります。

 我々は、民主主義民族統一戦線委員会を組織してこそ、全人民を導きアメリカ帝国主義とその手先李承晩売国奴一味との闘争を統一的かつ強力に推し進めることができでしょう。この闘争を通じてこそ、統一的な民主主義臨時政府を樹立し、新しい朝鮮の完全な民主主義的自主独立を実現することができるでしょう。

 我々は、民主主義民族統一戦線委員会の活動を通じて各階層人民の愛国的民主勢力を広く立ち上がらせ、すべての政党、大衆団体のより緊密な協力と統一行動を実現して、北朝鮮の民主基地をかたく築くでありましょう。

 こんにち、新しい民主朝鮮建設の課題は、特定な政党の力ではなく、すべての民主的政党、大衆団体の共同の努力と団結した闘争によってのみ達成することができます。我々は政治闘争や経済・文化建設において、連帯責任を負う立場で努力することなしには成果を上げることができません。

 民主主義臨時政府の樹立に際して我々が発表した20カ条政綱は、当然、民主主義民族統一戦線委員会の共同の綱領となるべきであり、我々のすべての活動はそれを指針として展開しなければなりません。

 20カ条政綱の正しさは現実を通じてはっきりと証明され、政綱に示された課題はいま北朝鮮で実現しつつあります。新しい朝鮮を建設し、朝鮮を民主主義の方向に発展させるためには、20カ条政綱に示された路線を貫かなければなりません。統一的民主主義臨時政府も当然、20カ条政綱にもとづいて樹立されるべきであります。これもやはり、すべての政党、大衆団体と全人民の共同の努力によってのみ実現できます。

 人民委員会をより強化するためにも、各政党、大衆団体の共同の協議機関が切実に求められています。我々は当然、共同で責任を負って互いに協力し、一丸となって努力を傾け人民の政権を強化すべきです。

 こんにち我々には、民主主義民族統一戦線にもとづいた人民委員会の活動を強化すべき重要な任務が提起されています。民主主義民族統一戦線委員会は最大の関心と誠意を尽くして、人民委員会の活動を援助しなければなりません。

 各政党、大衆団体の代表者が協力し、緊密に常時問題を討議し処理するために、各自の活動を有機的に結びつける組織体が必要であり、現在の事態はその結成を切実に求めています。その組織体は南朝鮮人民に影響を与え、そこでも北朝鮮と同様の民主改革の早急な実施を励ますうえで大きな役割を果たすでありましょう。

 こんにちまで、各政党、大衆団体の代表者は必要に応じて随時集まって討議したのみで、一つの組織体としての常設的協議機関はありませんでした。もちろん、民主主義民族統一戦線にもとづいて人民委員会が創建されましたが、それはあくまで政権機関であって各政党、大衆団体の協議機関ではありません。

 以上の必要性から、私はきょう、各政党、大衆団体の指導者が集まったこの会議で、民主主義民族統一戦線中央委員会を結成することを提案します。そして、道、市、郡に至るまで民主主義民族統一戦線の各級委員会を結成する必要があると認めます。

 民主主義民族統一戦線委員会は、特定の政党がぎゅうじるべきではなく、すべての政党が同等の立場で同等の権利をもって協議する機関となるべきです。したがって、その議長の職責は、各政党の責任者が輪番制で受け持つことを提案します。
                                               
出典:『金日成著作集』2巻 

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