金 日 成

わが党の歩んだ道と当面の課題について
 ―北朝鮮共産党咸鏡南道委員会拡大委員会でおこなった演説―
1946年4月20日 

 私はまず、わが党の歩んできた道について簡単に触れておきたいと思います。

 私はこれまで、わが党の政治路線と組織路線についてたびたび説明しており、それは北朝鮮共産党中央組織委員会の決定書に明記されています。しかしいまだに、現段階におけるわが党の政治路線と組織路線について正しく理解していない人がいるようです。

 民主主義人民共和国の樹立、日本帝国主義の残滓の一掃、民主主義民族統一戦線の結成、共産党の強化、これらが現在の我々の基本的主張です。

 このことから、わが党の最も重要な課題は、共産党の勢力を拡大し、北朝鮮に強固な民主基地を築くことです。道党委員会の報告の趣旨も党のこの任務を踏まえたものであり、その実行を目的にしています。

 わが国が38度線を境に南北に分断されていることは、祖国の民主的発展にとって大きな障害となっています。わが党の基本的主張を貫く闘争において、このような情勢を慎重に考慮しなければなりません。

 もし、我々が北朝鮮の有利な条件を十分に利用できないならば、南朝鮮の民主化の実現は極めて困難になるでしょう。

 しかし、我々が、国土と人口の半分を占める北朝鮮で党の勢力を強化し、強固な民主基地を築くならば、全朝鮮の民主化を実現することができます。

 我々は、北朝鮮共産党中央組織委員会を創設した後、すべての活動を計画的に、段階を踏んでおこない、活動で多くの成果をおさめました。

 それでは、我々がこれまでおこなった活動はどのようなものでしょうか。

 我々は、各地に人民委員会を設け、中央行政機関である北朝鮮臨時人民委員会を組織しました。南朝鮮とは違って、北朝鮮では朝鮮人の手によって人民の政権が組織されました。

 解放後、短い期間に北朝鮮で達成されたすべての成果は、朝鮮人が十分に国を治め、民主主義的独立国家を建設できることを明白に示しています。

 次に、我々は、広範な大衆団体の結成に力を傾けました。

 労働組合、農民組合、女性同盟、青年団体などを組織し、現在では300万近くの大衆をわが党のまわりに結集しています。これは、民主基地の構築を可能にする有力な勢力です。

 我々は、各地に人民政権機関と大衆団体を組織したばかりでなく、民主党と新民党の組織を援助して民主主義民族統一戦線の強固な基礎を築きました。我々は、このような活動を今年の2月までにおこないました。

 その後、わが国の民主基地がいかに強固なものであり、いかに立派に整えられているかを確認する機会がきました。この民主基地が、どのように試練を乗り越えたかを見ることにしましょう。

 第1に、我々は、北朝鮮臨時人民委員会を組織し、11カ条の民主的当面課題を発表しました。我々は、北朝鮮臨時人民委員会が示した課題を実現するため、親日派、民族反逆者をはじめ、反動勢力を排除し、封建的搾取制度を一掃する闘争に着手しました。

 こうして、3・1運動27周年記念日に全国的に大々的な大衆デモがおこなわれ、広範な人民大衆が北朝鮮臨時人民委員会の施政方針を熱烈に支持しました。

 第2に、歴史的な土地改革の勝利を上げることができます。

 3月5日に発布された土地改革法令は、地主、親日派、民族反逆者をはじめ、反動勢力の地盤である農村の封建的土地所有関係を一掃する課題を示しました。党は、この課題を実践する闘争で大きな勝利を勝ち取りました。

 これらの闘争で、我々は経験を積み教訓をくみ取り、党の力を確かめました。我々は、北朝鮮に強固な民主的基盤が築かれていること、朝鮮革命を指導しているわが党が弱くないということを確認しました。過大評価は許されませんが、わが党の勢力が拡大されたことは確かであります。北朝鮮で民主主義の基礎が固められており、反動分子の政治的・経済的土台が崩壊していることは、わが党の活動が段階を追って健全に発展していることを示しています。

 8・15解放直後、わが党は、まだ幼く闘争経験が乏しいうえに階級構成上の欠陥もあったため、党内は複雑そのものでした。

 各地方の党組織に対する統一的指導がなされず、国際革命運動との連係も不十分な状態にありました。

 8・15解放前に朝鮮の共産主義者は、統一的なマルクス・レーニン主義党をもたず、多くは各地で分散的に活動しました。そのため、一人あるいは数人を中心に分派が形成されて、自由勝手に、思い思いに行動するようになりました。

 解放直後、わが党を創立するとき、分派的傾向をもった者、分派分子、投機分子らが党に入ってきたため、党は思想上の統一を保つことも、大衆のなかに深く根を下ろすこともできませんでした。そのため、党から不純な要素を除去すべき課題が提起されました。

 党は、北朝鮮共産党中央組織委員会第3回拡大執行委員会の決定にもとづいて、党員証の交付と党員審査をおこない、党の強化で大きな成果をおさめました。党は、党員審査を通して1400余名の不純分子を除名しました。このように、わが党は質的に強化されたばかりでなく、労働者、農民のなかから多くの中核分子を入党させ、数の上でも拡大されました。審査直前の党員総数は4530名にすぎませんでしたが、現在わが党は2万6000余名の党員を擁しています。

 党の階級構成もかなり改善されました。党は、労働者、農民のなかに深く根を下ろすようになりました。

 党は階級構成の改善を図るとともに、党の規律を強化するため積極的にたたかいました。我々は党員の自由勝手な行動に断固反対し、党内には上の党員と下の党員がないこと、すべての党員は党に対し平等な権利と義務をもつこと、党は必ず民主主義中央集権制の原則にもとづくべきであることを強調し続けてきました。こうして、党の組織的・思想的統一を勝ち取るための闘争で基本的な成果をおさめました。

 モスクワ3国外相会談の決定を支持する運動と20カ条政綱の発表は、わが党の思想的統一に少なからず資するところがありました。20カ条政綱は、闘争の方向を明確に知らなかった人民に進路を示したばかりでなく、党員に党の政治路線をより具体的に理解させました。

 このように、わが党を強化し、北朝鮮に民主基地を創設する課題は立派に実現されています。

 我々は、今度の土地改革を通して党の影響力が農村に深く浸透していることをはっきり知ることができました。同時に、人民委員会に対する党の指導に欠陥があるため、人民委員会がまだ強固でないことを発見しました。このような欠陥を速やかに是正しなければなりません。

 次に、わが党に提起されているいくつかの当面の課題について述べることにします。

 まず、全力を尽くして土地改革の勝利を固めなければなりません。

 我々は、いかにして土地改革で勝利することができたのでしょうか。土地改革は、農民の切実な要求と長年の宿願にかなったものでした。そして、我々には土地改革を実施できる政治勢力が備わっていました。労働者と農民の同盟と民主主義民族統一戦線が結成された状況のもとで土地改革を実施したため、反動勢力は団結した民主勢力に圧倒されてあえて反抗することができませんでした。

 土地改革を実施するために、我々はかなり前から強力な宣伝活動を展開してきました。特に、優秀な労働者たちを農村に派遣して活動させることによって、実際の闘争を通して労働者と農民の同盟を強化しました。

 農村委員会の積極的な活動も、土地改革の勝利をもたらした重要な要因の一つです。

 このような要因によって、我々は土地改革で偉大な勝利をおさめました。

 この勝利を固めることは、我々の当面する最も重要な課題です。農村では、革命の敵である地主の経済的基盤は一掃されました。しかし、我々が適切な対策を立てず地主を放置するならば、彼らは奪われた土地を取り戻すために襲いかかるということを忘れてはなりません。したがって我々は、警戒心を高め、勝利におごることなく、粘り強くたたかい続けなければなりません。

 我々がさらに前進するためには、まず、わが党の欠点を知らなければなりません。党活動における最大の欠陥は、党員の政治的訓練が足りず、大衆団体に対する指導が弱く、人民委員会内の親日分子を追放する活動を十分におこなっていないことです。

 私は、北朝鮮共産党中央組織委員会第6回拡大執行委員会で、この問題について強調しました。

 党の力を強化するためには、土地改革を実施する過程で熱心に活動した積極分子をわが党に多く入党させなければなりません。こうして、すべての集落にもれなくわが党の細胞を組織して、土地改革の成果を守らなければなりません。

 いま反動分子は、「土地をもらったからといって喜ぶな。土地を奪われたからといって悲しむな」と言って、悪宣伝をしています。我々は春耕と種まきに党の全力を集中し、反動分子のこの悪宣伝を粉砕しなければなりません。作付けさえ済ませれば、農民はさらに自信をもつようになるでしょう。農民は種をまき、草を取り、収穫をすれば、土地の主人になったという認識を新たにすることでしょう。

 人民委員会は、民主建設を妨げ反動的行為を働く親日派と民族反逆者を一掃するたたかいを引き続き徹底的に進めなければなりません。これとともに、政権機関でわが党が独断的に行動するようなことがないよう常に戒めるべきです。民主的政党と合作することはもちろん、無所属も包容して民主主義民族統一戦線をさらに強化すべきです。

 次に、党活動を強化すべきです。

 何よりもまず、党員は、警戒心を高めなければなりません。勝利におごって気を緩めてはなりません。党の規律を強化し、大衆工作を巧みにおこない、警戒心を高めなければなりません。

 党員が大衆に対する指導を誤れば、極めて重大な結果を招きます。戦闘における軍隊の勝敗が指揮官の指揮に大きくかかっているように、大衆運動の成敗は指導的役割を果たす党員の大衆工作が正しくおこなわれるかどうかにかかっています。

 党員は思想・理論水準と活動水準を高めるために、マルクス・レーニン主義を絶えず学ばなければなりません。特に、幹部は、人一倍熱心に学ばなければなりません。党の教育活動を強化するために、党員訓練所、党学校、党夜間学習会を設け、討論会や会読会の運営を正常化することが必要です。党組織が教育活動をなおざりにし、党員がマルクス・レーニン主義の学習を怠るならば、党は大衆を正しく指導することができません。

 党活動の強化において、セクト主義的思想の悪影響を一掃することが特に重要です。朝鮮共産主義運動の長い間の悪弊となっていたセクト主義を一掃するために強くたたかわなければなりません。セクト主義は、党の統一と団結を切り崩し、労働運動を破壊する有害な思想です。それは、マルクス・レーニン主義とは無縁のブルジョア思想です。

 咸鏡南道には、解放前多くの小グループ形態の運動があったし、分派が勝手に活動した習性が残っているため、分派的傾向が濃厚です。党の利益のうえに個人の利益をおく栄達主義者は分派になりやすいものです。党員はいかなる場合にも、党の利益に個人の利益を服従させなければなりません。そうしてこそ、党の強固な統一を保つことができるのです。

 党の組織規律を無視し、会議では発言せず陰であげつらうのは「自由主義」的傾向の現れです。この「自由主義」がこうずれば分派的傾向に走るようになります。したがって、党は「自由主義」を許してはならず、常にセクト主義的傾向を警戒し、徹底した思想闘争によって、こうした反党的思想を根こそぎにしなければなりません。

 咸鏡南道の党組織が、欠陥を改め、党の路線を貫徹するならば、今後の活動で大きな発展を遂げることができるものと確信します。
 出典:サイト「わが民族同士」 参照:『金日成著作集』2巻

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