金 日 成

教育部門のいくつかの課題について
 ―北朝鮮臨時人民委員会第4回会議でおこなった演説―
1946年3月6日 

 こんにち、我々には教育事業を早急に発展させるべき重要な課題が提起されています。

 周知のように教育事業は、国と民族の将来にかかわる極めて重要な事業です。教育事業を発展させなくては、未来の主人公である新しい世代の育成も、民族幹部問題の解決も不可能であり、したがって、富強な民主主義的自主独立国家の建設も、民族の繁栄も期待できません。それゆえ、北朝鮮臨時人民委員会は教育事業の改善に深い関心を払わなければなりません。

 私は、これから教育部門のいくつかの課題について述べることにします。

 第1に、教員養成事業に力を傾けなければなりません。

 教育機関を正しく運営し、新しい世代を立派に教育するためにはまず、教員の問題を解決しなければなりません。いくら多くの学校を建設し正しい教育体系を立てても、教員の問題を解決せずには教育事業を発展させ、新しい世代を立派に育てることができません。

 我々には教員が非常に不足しており、現職教員の実力も極めて低い状態にあります。そのため、現在各級学校では児童・生徒の教育が正しくおこなわれていません。

 これは、日本帝国主義植民地支配の悪結果です。日本帝国主義者が朝鮮で植民地的奴隷教育政策を実施したため、わが国には、かつて教員を務めた人が非常に少ないばかりでなく、その水準も低く、また教員になれるだけの知識を所有している人も多くありません。

 このような実情において緊急な課題は、早急に有能な教員を多数養成することです。

 まず、現職教員を再教育すべきです。彼らは、そのほとんどが日本帝国主義の教育機関に服務した人たちであり、したがって、彼らには日本帝国主義植民地奴隷教育の影響が多分に残っています。彼らを再教育して新しい民主朝鮮の真の人民の教員に育てなければなりません。

 現職教員を再教育する一方、新規に教員を養成する対策を講じるべきです。労働者、農民をはじめ、勤労人民の子弟で、教員陣容を拡大、強化すべきです。こうして、その質的構成を次第に改善し、各級学校に必要な教員を補充しなければなりません。

 教員を早急に養成するために当面、教員養成所を設ける必要があります。一日も早く教員養成所を設立し、一定の知識水準のある堅実な人を選抜して教員に養成すべきです。将来は専門の教員養成学校も設立すべきです。

 教員問題を早急に解決するからといって、教員をおざなりに養成してはなりません。教員をいかに養成するかは、新しい世代の教育の成果を左右する極めて慎重な問題です。教員を立派に養成しなければ、正しい教育をおこない、新しい世代を新しい祖国建設の担い手に育成することはできません。我々は、教員養成事業に力を傾け、新しい世代の教育と建国事業に積極的に寄与する進歩的な教員を多数養成しなければなりません。

 教員養成事業を円滑におこなうためには、教員養成機関の役割を高めなければなりません。教員養成機関は、研修生の日本帝国主義思想の悪影響を一掃し、彼らに民主主義思想をしっかりと植えつけるために努力すべきです。また、研修生たちに現実に即した先進的な科学知識を学ばせ、特にわが国に関する知識を十分に教えるべきです。こうして、政治・思想的に、科学・理論的に準備を整えた教員を多数養成して、新しい世代の教育に支障をきたすことのないようにすべきです。

 第2に、教育機関から反動分子を徹底的に除去すべきです。

 今、一部の教育機関には、人民政権に反対し、国の民主的発展を妨げる反動分子がいます。彼らは、民主的教育制度に反対し、古い教育制度を温存しようとしており、教員と生徒を唆して人民政権の施策に反対させようとしています。教育機関から反動分子を追放しなくては、日本帝国主義奴隷教育の悪影響を抜き去り、民主教育を成功裏に実施することはできません。

 人民政権機関は、教員陣容の純潔を保持することに深い関心を払うべきです。教員のあいだに現れるあらゆる不健全な思想要素と強くたたかう一方、各級学校の教員を検討し、教育機関に潜入した反動分子を早急に追放しなければなりません。そして今後、教員陣容に不純分子、異分子が潜入できないよう徹底した対策を立てるべきです。

 第3に、児童・生徒の学習条件を十分に整えるべきです。

 学習に必要な物質的条件を整えなければ、児童・生徒は十分に学習することができません。

 もちろん、現状では学習条件を十分に整えるうえで多くの難関があります。しかし、新しい世代のためには何物をも惜しまず、学習に支障のないよう、すべてを優先的に保障しなければなりません。教科書を早急に編修すべきです。現在、教科書が十分に整っていないため、教員の講義と児童・生徒の学習に多くの支障をきたしています。教科書がなくては、教育の統一性を保ち、教育要綱を滞りなく実行し、児童・生徒の成績を高めることができません。

 教科書の編修で重要なのは、新しい民主朝鮮建設の要請とわが国の実情を正しく反映させることです。建国事業の要請とわが国の実情に反して教科書を編修したり、外国のものを機械的に翻訳してつくるならば、それは何の役にも立ちません。教科書は必ず、わが国の実情に合うように、わが国のすべての事柄を正しく解く方向で編修すべきです。このように教科書が編修されれば、児童・生徒に新しい祖国の建設に役立つ生きた知識を与え、わが国に対する正しい知識を授けることができます。

 教科書の編修とともに、鉛筆、ノートなどの学用品を十分に保障すべきです。今、学用品が足りないため、児童・生徒の学習に不便を与えています。学用品を大量に生産する対策を早急に講じなければなりません。

 机、椅子など各種の教具・校具も十分に提供すべきです。

 第4に、教育機関は今年度の卒業学級の生徒を早く社会に進出させなければなりません。

 民族幹部が少ないため、いま国の経済、文化の復興、発展と新しい民主朝鮮の建設に大きな支障をきたしています。わが国の現状は、卒業生が一日も早く社会に進出することを切実に求めています。したがって、各級学校は、今年度の卒業学級の生徒を早く卒業させるべきです。

 各級学校は、卒業学級の教育に深い関心を払って充実した教育をおこなうべきです。こうして、課程案を速やかに済ませ、予定より繰り上げて卒業させなければなりません。

 第5に、教育機関に対する指導を強化すべきです。

 教育事業を発展させるうえで重要なのは、学校に対する指導を強化することです。教育機関を正しく指導しなくては、新しい民主的教育制度を確立し、人民政権の教育方針を正しく実行することができません。

 人民政権機関は、教育事業を発展させることが第一の課題であることを深く認識し、常に各級学校の実状を把握して指導しなければなりません。こうして、教育分野から日本帝国主義植民地奴隷教育の悪影響を一掃し、学校の強固な物質的土台を築き、教員の役割を高めて、教育事業を成功裏に保障しなければなりません。

 教育事業を発展させるためには、特に教育機関に対する中央の指導を強化しなければなりません。教育事業を地方政権機関に任せきりにせず、中央でも常に指導と統制をおこなうべきです。

 教育機関に対する中央の指導を強化するといっても、国家が各級学校をすべて掌握し指導することはできません。中央は、全般的教育事業を指導する一方、一部の学校を掌握して指導すべきです。今後いくつかの重要な学校は中央が直轄すべきです。

 こうすれば民族幹部を計画的に立派に育成することができ、すぐれた教育経験を創造して全国に普及することができます。

 第6に、人民教育制度を確立し、勤労人民の子弟をすべて教育しなければなりません。

 今我々が建設している新しい民主朝鮮は人民のための国であり、我々の政権は人民の政権です。したがって、我々の教育は人民に奉仕する教育となるべきであり、勤労人民の子弟のための教育となるべきです。

 日本帝国主義植民地支配時代には、労働者、農民の子弟は学びたくても学べず、無知と蒙昧のなかにつきおとされていました。

 かつて、学ぶ権利を奪われ、学ぶことのできなかった労働者、農民の子弟をすべて就学させるべきです。

 そのためには、国の民主的発展に合わせて人民教育制度を確立し、各級学校を多く新設し、生活の困難な家庭の子弟が学べる実質的な条件を整えるべきです。我々は今後、全般的な義務教育を実施できるよう今から十分に準備を整えるべきです。

 もちろん、これは困難な課題です。しかし、我々が努力を尽くせば、この課題は十分遂行することができます。

 人民政権機関は、新しい世代の教育を立派におこなうため積極的に努力し、すべての青少年が各級学校に通えるようにし、先進的科学知識と技術を十分に学べるようにすべきです。

 次に、きょうの会議で討議された他の問題について簡単に述べておきます。

 我々は、きょうの会議で北朝鮮臨時人民委員会の構成に関する規定を採択しました。この規定には、中央政権機関としての北朝鮮臨時人民委員会の組織構成、機能と役割、当面の課題が定められています。北朝鮮臨時人民委員会のすべての委員と各部署の責任者は、この規定を厳守し、実行に移すべきであり、とくに北朝鮮臨時人民委員会の当面の課題を正しく遂行するため積極的に努力すべきです。

 きょう、司法局、裁判所、検察所の構成と職務に関する基本原則も討議されましたが、これは大きな意義をもっています。この基本原則の制定は、かつて日本帝国主義者が朝鮮で植民地支配を維持し、人民を苛酷に抑圧、搾取するためにつくった古い司法制度の残滓を一掃し、新しい民主朝鮮の建設と人民の利益に奉仕する民主的司法制度を確立するための重大な措置であります。

 司法機関を真の人民の活動家で固めて、人民のために忠実に奉仕するようにさせるべきです。それとともに、わが国の実情に適した民主的な新しい法令と規定の制定を急がなければなりません。

 人民政権の活動を強化するために、北朝鮮臨時人民委員会に総務部、企画部、宣伝部などの部署を新設すべきです。総務部は北朝鮮臨時人民委員会の全般的な活動を保障し、活動家の生活の面倒を見る仕事と幹部事業を担当し、企画部は国家のすべての事業を計画化し、国家の統計を掌握する活動をおこなうべきです。そして宣伝部は、人民大衆に広く国家の政策を宣伝し、民主主義思想の教育をおこなうべきです。

 新設部署の活動家の陣容を強化しなければなりません。こうして、すべての部署が早く活動体系を確立し、任務を正しく遂行していくようにすべきです。
出典:サイト「わが民族同士」 参照:『金日成著作集』2巻 

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