金 日 成

真の人民の保安員になろう
―平壌市保安署員におこなった演説― 
1946年2月27日 

 これまで皆さんは、社会秩序を維持し、国家の財産と人民の生命、財産を守る困難かつ複雑な活動をおこなってきました。保安活動の経験がない皆さんにとっては、もちろん、仕事のうえで難関も多かったことと思います。しかし、皆さんはあらゆる困難を克服し、人民政権に反対する反動分子や社会秩序を乱す犯罪者との闘争で少なからぬ成果をおさめました。これは、皆さんが祖国と人民の利益のために積極的に努力したことを示すものです。

 平壌市保安署員のこれまでの活動には成果もありましたが、欠陥も少なからず現れました。一部の保安員は、反動分子や犯罪者の摘発を正しくおこなわなかったばかりか、日本警察の影響をなくすことができず、人民の利益を侵す行為もしました。

 皆さんは、保安機関に課されている重大な任務を正しく認識し、保安活動を強化し、真の人民の保安員になるために全力を尽くさなければなりません。

 保安員は第1に、反動分子との闘争に力を注がなければなりません。

 今、反動分子は、人民政権を破壊し、新しい祖国の建設を妨げようと狂奔しています。特に、南朝鮮にやってきたアメリカ反動派とその手先李承晩一味は、南朝鮮の民主勢力を抹殺しようと策動する一方、絶えず北朝鮮にスパイ、破壊・謀略分子を浸透させています。このような実状のもとで、反動分子との闘争を強化することなしには、我々の革命の成果を守り、新しい民主朝鮮を建設することはできません。

 保安員は、親日派、親米派、民族反逆者、地主、買弁資本家などあらゆる反動分子との闘争を強力に繰り広げ、彼らの陰謀策動をそのつど摘発、粉砕すべきです。

 次に、保安員は、一般犯罪者との闘争を強化しなければなりません。

 今、平壌市には、国家財産および人民の生命と財産を侵し、社会秩序を乱す各種の犯罪が少なからず発生しています。

 保安員は、国家財産を横領、窃取する者や詐欺師との闘争を強く繰り広げ、悪徳商人、高利貸し、酒の密造者を徹底的に取り締まらなければなりません。それとともに殺人、強盗、窃盗など人民の生命、財産を侵す者との闘争を強めなければなりません。

 特に、農民の牛を盗んで密殺する犯罪を一掃しなければなりません。今、悪い連中が平壌市周辺の農村から牛を盗んでは密殺するため、農民は非常に不安がっています。農村の役牛を屠殺して、農民の農作業はどうしろというのでしょうか。皆さんは、牛どろぼうをそのつど摘発し、牛の密殺を厳しく取り締まらなければなりません。

 保安員は、敵産の処理で不正行為が生じないよう特に、注意する必要があります。

 日本帝国主義者と親日派、民族反逆者が所有していた財産は、すべて人民の血と汗によってつくられたものです。保安員は、人民政権機関が敵産を残らず没収して正確に処理するようにし、それを横領、窃取する行為と容赦なくたたかわなければなりません。こうして、すべての敵産が国と人民の財産として、新しい朝鮮の建設と人民の生活の安定、向上に有効に使われるようにすべきです。

 保安員は、一般犯罪との闘争を強化し、国家財産および人民の生命と財産を極力保護し、社会秩序を確立して、建国事業と人民の生活に支障がないようにすべきです。

 保安員がこのような活動を立派におこなうためには、大衆を立ち上がらせなければなりません。反動分子や犯罪者との闘争は、保安機関の力だけでできるものではなく、広範な人民大衆の力によってのみ成功裏におこなうことができるのです。人民大衆が積極的に乗り出すならば、いかなる犯罪者も悪事を続けることはできず、摘発されるようになります。したがって、保安員は、常に人民のなかに入って彼らとの連係を強め、犯罪者との闘争に大衆を積極的に参加させなければなりません。

 保安員は、犯罪者との闘争を強化するとともに、犯罪の防止にも大きな力を注がなければなりません。皆さんは犯罪者の摘発にのみ没頭するのではなく、人民の生活にも関心を払い、彼らを正しく教育して、すべての人が違法行為を働かないようにすべきです。

 今、平壌には職がなくて街をさまよっている人、孤児や身寄りのない老人が少なくありません。これを放置するならば、彼らは安定した生活ができないばかりでなく、社会秩序を乱す恐れがあります。したがって、政権機関と連絡をとって職がなくて流浪している人を調査して職業を斡旋し、孤児や身寄りのない老人に安定した生活ができるよう対策を立てるべきです。

 保安員は、人民に法秩序を教え、自覚の低い人たちを民主主義思想で教育すべきです。そうすれば、人民が国家の法を遵守し、犯罪者との闘争に積極的に参加し、新しい祖国の建設を円滑に進めることができます。

 皆さんが保安機関の重大な課題を正しく遂行し、真の人民の保安員となるためには、活動で日本警察式のやり方を一掃し、人民的活動作風を身につけなければなりません。

 我々の保安機関は、人民のためにたたかう機関です。したがって、保安機関の活動家は、人民の利益を侵すとか、人民を怒鳴りつけ命令するようなことがあってはならず、必ず人民の忠僕にならなければなりません。

 今、一部の保安員は、人民に忠実に奉仕するのではなく、人民の利益を侵しており、人々を不法に検束し、殴打するという間違った行為をしています。そのような行為は、日本警察のそれと少しも異なるところがありません。人民の利益を侵し理由もなく人を殴打するのは、日本帝国主義の警察万能主義思想の現れであり、官僚的な作風です。

 かつて、日本帝国主義者は、各種のファッショ的悪法をつくって朝鮮人に「罪」をかぶせ、人民の生存の権利まで踏みにじる野蛮行為を働きました。日本警察は少しでも自分の気に入らなければ、罪のない朝鮮人を手当たり次第に逮捕、投獄し、野蛮な方法で拷問、虐殺しました。

 彼らは、人民を殴打し、人権を蹂躙しましたが、我々の保安員は絶対にそのようなことをしてはなりません。人民が国の主人になっているわが国では、人々の人格や名誉が尊重されており、したがって、保安機関にはそれを保護すべき義務があります。ところが、保安員がこれを忘れ、日本の憲兵や警察のような行動をするならば、人民は我々についてこようとしないでしょう。

 保安員はこのことを銘記し、常に人民の立場に立って活動しなければなりません。

 保安員が人民の忠僕として立派に活動するためには、敵と味方を識別できなければなりません。そうしなければ、味方を敵と見誤り、無実の人に害を与えるようなことになりかねません。

 したがって皆さんは、人々の階級的土台や過去と現在の生活を具体的に検討すべきです。ある人の問題が提起されたなら、彼が反動階級に属する者かどうか、日本帝国主義支配当時に何をしていたかを調べ、もし、日本帝国主義機関に奉仕した者なら日本帝国主義者のためにどんなことをしたか、朝鮮人にどんな態度を取ったかを調べなければなりません。そして現在、新しい朝鮮の建設に対しどのような立場と態度を取っているかも検討すべきです。こうして、民主朝鮮の建設を妨げる反動分子は徹底的に鎮圧し、罪のない人には絶対に手出ししないようにすることです。

 保安員は、人々を理由もなく逮捕、拘禁してはなりません。逮捕は必ず実際の証拠にもとづいておこなわなければなりません。ある人が悪質分子だという資料が提起されたからといって、むやみに逮捕、拘禁してはなりません。悪質分子が善良な人を陥れるために反動分子だと訴えたり、一部の人が個人的感情から事実を誇張して告発するようなこともあり得ます。したがって、保安員は、常に提供された資料を具体的に検討したうえで処理すべきです。

 また、個人的感情にとらわれて人の問題を扱ってはなりません。

 もし、保安員が原則的立場に立たず、個人的感情にとらわれて人の問題を扱うならば、罪のない人を誤って処理するようなことになりかねません。

 保安員は、人々を理由もなく逮捕してはならず、また殴打するようなこともいっさいなくすべきです。保安員は罪人を扱う場合にも、殴打する方法で問題を解明しようとしてはなりません。

 罪人に対して罪を犯した動機を具体的に調べ、犯罪行為の重大さをよく教えて、当人が自分の罪を深く反省し、二度とそのような罪を犯さないように導くべきです。

 保安機関の人権蹂躙行為をなくすためには、新しい法律を制定しなければなりません。

 日本人がつくった『六法全書』にあるような古い法律をそのまま用いることはできません。日本帝国主義の法律は、いずれも朝鮮人民を抑圧するためのものでした。

 我々には、人民のための法律がなくてはなりません。そうでなくては、犯罪との闘争も、人民の利益をしっかり守ることもできません。日本帝国主義植民地支配当時の悪法を一掃し、人民大衆の意思と利益に合う新しい法律を制定して、人民的で民主的な法秩序を確立すべきです。

 保安員は事件を扱うときばかりでなく、日ごろの行動でも日本警察の影響をなくすために努力しなくてはなりません。今一部の保安員は、日本の警官が使っていたサーベルを腰に下げて歩いているそうですが、これは間違っています。日本の警察は、朝鮮人を抑圧するためにサーベルを下げて威張って歩き回ったものですが、人民の保安員である皆さんがそのようなことをする必要がどこにあるのでしょうか。日本の警察のようにサーベルを下げて歩けば、人民は保安員を恐れて避けるようになり、日本警察の真似をしていると非難するでしょう。人民のために働く保安員はそのような行動をしてはなりません。

 保安員はどんな問題を処理する場合でも、まず最初に人民の利益を念頭におくべきです。いま保安員は、深夜、市内でよく発砲していますが、そういうことをしてはなりません。住民が寝入っている深夜に銃声を響かせては、彼らは安心して眠れません。保安員は、人民が安眠できるようにする責任が自分にあることを銘記し、夜間の取締りを徹底的におこないながらも、むやみに銃声を放つようなことはしてはなりません。

 保安機関の活動家は、人民の鑑となるべきです。困難な問題が提起されれば、生命を賭してでも解決にあたるべきであり、何事においても大衆の模範となるべきです。そして、常に身なりをきちんとし、礼儀正しく謙虚であるべきです。特に、保安員は物欲に目がくらんで人民の財産に手をつけたり、収賄行為をするようなことがあってはなりません。そうしてこそ、人民大衆に信頼され尊敬されるようになるのです。

 次に、保安員は、民主主義思想をしっかり身につけるべきです。

 保安員は先進思想を身につけなくては、反動分子との闘争を強く繰り広げ、新しい民主朝鮮建設の成果を守り、大衆を正しく教育することができません。

 保安員は、政治学習を強化して、わが党の路線と政策、人民政権の民主的施策を深く把握しなければなりません。同時に、日本帝国主義思想の影響を一掃するため積極的にたたかうべきです。こうして、人民大衆に忠実に奉仕する真の民主主義精神をもって働くべきです。

 次に重要なのは、保安員の隊伍の純潔を確固と保持することです。

 不純分子がいては、隊伍の思想、意志の統一が保てず、保安機関の重大な任務を円滑に遂行することもできません。

 保安機関は、隊伍内に潜む不純分子を除去し、敵対分子が潜入できないよう警戒心を高めるべきです。保安員としては階級的自覚が強く、民主主義思想を身につけた堅実な人を採用しなければなりません。そして、彼らが誤りを犯すことのないよう積極的に助力しなければなりません。

 最後に強調したいのは、革命的警戒心を高めることです。

 保安員は、これまでの成果に自己満足したり安逸をむさぼることなく、常に警戒心を高めなければなりません。

 最近、流言飛語や反動的デマが流布されていることに注意を向けなければなりません。それは、民心を惑わし、人民の安定した生活を妨げ、ひいては建国事業にも支障をきたす危険なことです。

 したがって、保安員は高度の警戒心をもって流言飛語や反動的デマを具体的に調べ、それを広める者をそのつど摘発すべきです。

 保安員は、秘密を厳守しなければなりません。今、敵は我々の秘密を探ろうと悪辣に策動しています。警戒心が鈍り、秘密を厳守しなければ国家の重大な機密が敵の手に入る恐れがあります。したがって、保安員は秘密厳守に努め、内部の秘密が絶対にもれないようにすべきです。

 国家の財産と人民の生命、財産を保護し、人民の権利と利益を擁護するためにたたかうのは決して容易なことではありません。皆さんは、活動の過程で多くの障害と難関に直面することでしょう。しかし、祖国と人民のために最後までたたかう決意をもって活動するならば、いかなる難関をも克服することができます。

 保安員は、いかなる悪条件や難関を前にしても動揺することなく、人民のために、富強な新しい祖国建設のために献身する革命的決意をもって、力強くたたかわなければなりません。

 私は、皆さんが自己に課された栄えある任務を立派に果たすために全力を尽くし、真の人民の保安員になることを望みます。
 出典:サイト「わが民族同士」 参照:『金日成著作集』2巻

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