金 日 成

平壌学院の開院式を祝って
―平壌学院開院式でおこなった演説― 
1946年2月23日 

 皆さん!

 きょう我々は、全朝鮮人民が解放された祖国に自由な民主主義的自主独立国家を建設するため全民族的な闘争を繰り広げているなかで、今後新しい祖国の建設と朝鮮人民の革命的正規軍の建設に寄与すべき初の中央幹部養成機関である平壌学院の開院式をおこなうことになりました。

 私は、この意義深い日を迎え、困苦欠乏に耐えて学院創立の準備に誠意をもって尽力した平壌学院の幹部と学生の皆さんに熱烈な祝賀と感謝の意を表するものです。

 平壌学院は、国家建設に切実に必要な幹部、特に、革命的正規軍の建設に必要な軍事・政治幹部の養成を目的に創立されました。

 新しい国家建設のためには多くの元手が必要です。資金や物資、幹部などがなくてはならないのです。特に、建国事業に寄与する多くの幹部がいなくてはなりません。幹部は新しい祖国建設の最も重要な元手です。「幹部がすべてを決定する」という真理は、我々の長年にわたる闘争の過程でその正しさが実証されています。立派な幹部さえいれば、いかなる問題でも解決できるのです。

 朝鮮人民が民主主義的自主独立国家を建設するためには、民族幹部がいなくてはなりません。こんにち、新しい祖国の建設に立ち上がった朝鮮人民には非常に多くの仕事が提起されています。したがって、政治、経済、軍事などすべての部門で求められているのは幹部です。ところが今、我々には政治幹部、経済幹部、軍事幹部、そして、科学・教育・文化・芸術部門の幹部が極めて不足しています。これは、かつて日本帝国主義者が朝鮮人を無知蒙昧の状態に陥れ、過酷に抑圧し搾取するため、思うように読み書きを習えなくし、技術を習得することも妨げたからです。

 新しい朝鮮を建設するためには、みずからの軍隊をもたなければなりません。みずからの軍隊なしには、完全な自主独立国家になることはできません。それで、わが党は、正規軍を創建するための軍事・政治幹部を養成する目的で、すでに昨年の11月、この平壌学院を創設して、今年の年頭から授業を始め、こうして開院式をおこなう運びになったのです。

 これまで我々に、このような民族幹部を養成する学院があったでしょうか。ありませんでした。解放された朝鮮の青年は、これから思う存分学ぶことができるようになりました。

 今後、平壌学院では建国事業に貢献する立派な人材を育て、この学院を母体にして各種の軍事学校を増設しなければなりません。そのためには、平壌学院を順次拡張して各軍種、兵種部門の幹部を養成する体系も立てることが必要です。航空隊も自力で建設すべきです。

 平壌学院は、近く創建する正規軍の先駆けだと言えます。すでに皆さんが隊伍を組んで街頭行進をしているのを見て、多くの人が「われらの軍隊」だと言って非常に喜んでいるそうですが、これは、人民が自分の軍隊をもつことをいかに渇望しているかを物語るものです。

 周知のように朝鮮人民が最初の革命軍隊をもったのは、朝鮮の共産主義者が武器をとって抗日武装闘争を始めたときからです。1930年代の初頭に創建された抗日遊撃隊は、朝鮮人民の真の軍隊であり、マルクス・レーニン主義的革命の軍隊でした。平壌学院の院長をはじめ、学院の責任幹部たちは、我々とともに武器をとって日本帝国主義とたたかった人たちです。抗日遊撃隊員は、不抜の革命思想で武装し、すぐれた戦法と軍事技術を所有していました。したがって、すべての学生は、抗日革命の先輩に学び、彼らの模範に見習って立派な幹部にならなければなりません。

 いま学生の皆さんは、我々のおこなっている革命はいかなるものであり、朝鮮革命は将来どのように発展するのかという問題を知りたがっているそうですが、これについて若干述べましょう。

 皆さんがこのような問題を知りたがり、また活発に論争するのはよいことです。特に、平壌学院は軍事・政治学校であり、学生は卒業後すべて政治幹部や軍事幹部になる人なのですから、そのような問題を十分理解することが大切です。皆さんは、これからもこのような政治問題の学習を大いにおこない、論争をたたかわせ、疑問になる点はただして明確な認識をもたなければなりません。

 それでは、我々は現在どのような革命をしているのでしょうか。

 我々の方針は、いますぐ朝鮮に共産主義社会を建設しようというのではありません。それに、いますぐ共産主義を建設するというのは不可能なことです。解放直後、ある人たちは、朝鮮に直ちに共産主義を建設すべきであり、またそれが可能だとして朝鮮革命は社会主義革命だと宣伝しました。彼らは、朝鮮の社会・経済状態や当面の政治情勢が分からず、社会の発展段階さえよく知らない人たちです。

 もちろん、いますぐ共産主義を建設することができればそれにこしたことはありません。共産主義は、人類の最高の理想であり、働く人たちがすべて幸せに暮らせる最もすばらしい社会です。しかし、共産主義社会を建設するというのは容易なことでないばかりか、革命の段階を無視して共産主義を建設することもできないのです。したがって、わが国にいますぐ共産主義を建設するという方針を打ち出してはならないのです。

 かつて、日本帝国主義者が、朝鮮人に共産主義に対するあくどい反動的宣伝をしたため、現在かなりの朝鮮人は共産主義についてよく知らず、なかには共産主義が悪いものとばかり思っている人がおり、また共産主義をきらっている人もいます。こうした実情で、我々がいま共産主義を建設しようというスローガンを掲げたとしても、大衆の支持を受けることはできません。

 共産党がいますぐ朝鮮に共産主義を建設しようというスローガンを掲げないのは、このように多くの人がまだ共産主義についてよく知らないばかりでなく、わが国の社会・経済状態からして、当面はそのようなスローガンが妥当でないからです。

 わが国は、過去36年間、日本帝国主義者の植民地であったし、歴史的に朝鮮では封建勢力が優勢でした。日本帝国主義者はすでに朝鮮から駆逐されましたが、その忠実な手先である親日派、民族反逆者、民主主義に反対する反動分子はまだ一掃されていません。かつて、農民をあくどく搾取し抑圧した地主はそのまま残っており、悪質な親日派の資本家もまだ残っています。したがって、何よりもまず政治、経済、文化の各分野で日本帝国主義の悪影響を一掃し、日本帝国主義と地主の土地を奪って耕作する農民に無償で分け与え、山林を国有化しなければなりません。それとともに、日本帝国主義と民族反逆者が所有していたすべての工場、企業と鉄道運輸、逓信、銀行、商業、文化機関を没収して国有化しなければなりません。こうした活動を正しくおこなわなくては、日本帝国主義の残存勢力を一掃し、封建勢力を排除することができません。もし、我々がこんにち、このような方針を提起せず、またこのような課題を先に解決しないならば、わが国を民主主義的自主独立国家に発展させることはできません。

 このように、我々は現在、日本帝国主義の残存勢力と封建勢力を打倒する民主主義革命をおこなっています。このような革命をおこなった後でなければ、社会主義・共産主義を建設することはできません。そうすることなしに、いますぐ共産主義を建設することは不可能です。

 もちろん、共産党は共産主義建設を最高綱領としているので、将来必ず朝鮮に共産主義を建設する決意で活動していることは確かです。しかし、当面はそれを広く宣伝していません。

 こんにち、共産党の方針は、朝鮮から日本帝国主義の残存勢力を一掃し、土地改革や8時間労働制の実施をはじめ、さまざまな民主的措置を講じ、民主主義的自主独立国家の建設にすべての人を積極的に参加させ、新しい国づくりを立派におこなうことです。

 皆さんは、朝鮮革命に対する共産党のこのような方針を十分認識し、富強な新しい国家建設に全力を尽くすべきです。そして、我々がいまどのような革命をおこない、人民が何をなすべきかについて、可能な機会をすべて利用して広く人民に宣伝し、特に、学院周辺の農民によく説明しなければなりません。

 私は、これから皆さんの果たすべきいくつかの課題について述べることにします。

 何よりも、皆さんは将来、人民軍の幹部になる人たちなのですから、人民に忠実に奉仕する闘士にならなければなりません。

 かつて日本帝国主義者とたたかったとき、抗日遊撃隊は人民の利益のためにたたかい、人民の積極的な支持を受けたので、あの困難な環境のもとでも15年間も遊撃闘争を続けることができたのです。皆さんは、抗日遊撃隊のこのような模範に見習い、いついかなるときにも人民の利益を重んじ、人民の生命と財産を守るため積極的にたたかい、いかなる場合にも絶対に人民から遊離することなく、大衆に謙虚に学ばなければなりません。

 次に、すべての学生が軍事・政治学習をしっかりおこなわなければなりません。皆さんはすべて労働者や農民の子弟であり、解放前には学ぶことができませんでした。一部の人が多少学んだという学問も日本のものであったので、現在の民主独立国家の建設には役立ちません。我々がいま学んでいる学問はすべて人民のための学問であり、新しい朝鮮建設のための学問です。これから皆さんはこのような学問を学ぶべきです。皆さんは学びに学んでさらに学ばなければなりません。

 それでは具体的に、何をいかに学ぶべきでしょうか。「理論を実際の生活と結びつけ、学んだことを実践に移そう」、これが平壌学院の教育方針です。

 過去、先祖たちが書堂(塾)で数年間、あるいは数十年間学んだという『論語』『孟子』や日本帝国主義支配当時に学んだ学問は、すべて事大主義を植えつける学問であり、封建社会と日本帝国主義に奉仕するためのものでした。今ではそのような学問は使い道がありません。今は、新しい民主朝鮮の建設に貢献できる学問を学ばなければなりません。平壌学院ではこのような教育方針にもとづいて、学生に政治と軍事を教えるべきです。

 革命軍隊の軍人になるためには、革命思想で武装しなければならず、それにもとづいて三つの点を備えなければなりません。それは、第1に体力、第2に射撃、第3に戦術です。そして、軍隊の政治活動家になるためには、軍事知識とともに豊かな政治理論を身につけなければなりません。したがって、皆さんは政治学習と軍事学習をともにしっかりとおこなわなければなりません。政治学習には励むが軍事学習はおろそかにするとか、逆に軍事学習には励むが政治学習はしないといったようなことがあってはなりません。政治と軍事を兼備して初めて、革命軍隊の立派な幹部になれるのです。

 今後、学院では政治教育と軍事教育を密接に結びつけておこなうべきです。政治を抜きにした軍事や、軍事を抜きにした政治は、いずれも我々には何の役にも立ちません。政治と軍事は不可分の統一をなしています。

 政治学習を通しては、日本帝国主義と封建主義の残りかすを一掃し、新しい祖国の建設のために断固としてたたかう不撓不屈の闘争精神とマルクス・レーニン主義の革命思想で武装しなければなりません。また、敵を憎み、祖国を熱烈に愛する愛国主義思想をしっかり身につけ、民族的自負を高め、すべてを自力でやれるという自信を培うことによって、かつて他人に抑圧されて自分の力と才能を信じようとしなかった奴隷根性を清算しなければなりません。

 政治学習を通して思想鍛練を強化し、愛国心と民族的自負を培うならば、革命に対する意欲も生まれ、すぐれた戦法と巧みな射撃術を身につけるため努力するようになるはずです。したがって、平壌学院の共産党組織と民青組織は、学生に対する思想教育を強めることに特別の関心を払わなければなりません。

 教練では、現代的戦法と射撃術の練磨に深い関心を向けるべきです。訓練で汗を多く流せば、戦場で血を多く流さずにすみます。教練では理論学習もある程度おこなうべきですが、実際の動作をより多く学ぶべきです。特に、朝鮮には山が多いので、山地訓練を多くおこない、山岳地帯に適した戦法を学び、山岳地帯での射撃術を高めなければなりません。

 軍人は、百発百中の射撃術を身につけることが何よりも重要です。射撃術を高める特別な秘訣というものはありません。射撃を巧みにおこなうためには、階級敵への敵愾心を抱き、射撃訓練、特に、照準練習を多くおこない、自分の武器の性能に精通し、自信をもたなければなりません。射撃するときは標的を単なる目標だと思わず、敵の喉笛と思って撃つべきです。そうすれば間違いなく命中します。皆さんが運動場のわきに標的板を多く立てておいたのは非常によいことです。朝夕暇を見ては常に照準練習をおこない、早急に射撃術を高めるべきです。

 現在皆さんがもっている銃はそれほどよいものではありません。しかし、それは抗日遊撃隊員たちが命をかけて日本帝国主義者から奪ったものです。我々が抗日武装闘争を始めたときは、そんな武器さえなかったので、1丁の銃を手に入れるために多くの革命家が血を流さなければなりませんでした。将来はもっとよい武器がもてるようになるでしょうが、今は抗日烈士の血のにじんだその武器を自分の瞳のように愛護し、訓練に励んで、1発で敵を撃ち倒せるようにならなくてはなりません。

 隊列訓練と体育も大いにおこなうべきです。新しい朝鮮の建設に寄与するためには、体が丈夫でなくてはなりません。隊列訓練は、軍隊の規律を強化し、正規軍の風格を備え、体を鍛えるうえで重要な意義をもちます。特に、軍隊は隊列訓練をよくおこなわなくては軍隊らしくなりません。かつて、我々は山で遊撃闘争をしたときにも隊列訓練をよくしたものです。

 次に、軍事規律を強化すべきです。規律は、軍隊の生命であり、戦闘力の源です。したがって軍隊の戦闘力を強化するためには、軍隊内に厳格な革命的規律を確立しなくてはなりません。

 過去の日本帝国主義軍隊の規律は強圧的な規律でしたが、抗日遊撃隊の規律は革命的で自覚的な規律でした。遊撃隊の規律は極めて厳格なものでしたが、上級の者は下級の者を愛し、下級の者は上級の者を尊敬し、互いに助けいたわり合う美しい同志的関係が支配していました。抗日遊撃隊が小兵力で日本帝国主義侵略軍とたたかって勝つことができた不敗の力の源はここにあるのです。学院でも抗日遊撃隊のようにすべてが所定の規律に絶対服従し、それをみずから守る厳格で自覚的な軍事規律を打ち立てなければなりません。

 学院のすべての教職員、学生は、学院を文化的に整備するために努力すべきです。新しい朝鮮の文化を建設する事業も建国事業の重要な一部分です。皆さんは、建国室の運営とか壁新聞やスローガンの掲示をはじめ、各種の大衆文化活動を活発におこなうべきです。そうして、今後平壌と地方でこの学院の模範に見習うようにすべきです。私は、皆さんが平壌学院を最も文化的に整え、規律正しく生活し、全国の模範になることを望みます。

 また、皆さんは常に革命的警戒心を高めなければなりません。今、反動分子は、各地で我々の民主建設事業を破壊しようと悪辣に策動しています。平安南道人民委員会委員長の地位を占めた曹晩植はそうした反動分子であり、李承晩の手下です。彼は、朝鮮問題に関するモスクワ3国外相会談の決定が発表されると正体を現して、我々に公然と反対しました。また、南朝鮮に入り込んだアメリカ帝国主義侵略者とその手先李承晩一味は、北朝鮮にスパイ・謀略分子を送り込み、殺人・放火・破壊行為を悪辣に強行しています。今、我々のまわりにどんな敵対分子が潜んでいるかわかりません。我々は常に警戒心を高めて、反動分子とスパイ・謀略分子を時を逸せず摘発し一掃しなければなりません。

 最後に、学院の共産党組織を強化し、共産党員の前衛的役割を高めるべきです。特に、分派の温床である地方主義、家族主義、アナーキズム的自由主義思想をはじめ、ブルジョア的・小ブルジョア的思想毒素と断固たたかい、党の組織的・思想的統一を強めなければなりません。党組織は、党員が前衛的役割を果たすよう正しく指導し、軍事・政治学習と軍務生活で模範的な人を入党させて党勢を絶えず拡大していくべきです。

 党と人民は、平壌学院の学生に非常に大きな期待をかけています。

 私は、皆さんが祖国と人民に対して担っている重大な責任を強く自覚し、新しい朝鮮の建設に積極的に寄与する忠実な軍事・政治幹部になるよう期待します。
 出典:サイト「わが民族同士」 参照:『金日成著作集』2巻

ページのトップ


inserted by FC2 system