金 日 成

北朝鮮共産党各級党組織の活動について
北朝鮮共産党中央組織委員会第3回拡大執行委員会でおこなった報告
−1945年12月17日−


 みなさん!

 朝鮮人民は英雄的なソ連赤軍の援助のもとに、祖国の領土から日本帝国主義者を追い出し、自由と独立をかちとりました。解放された朝鮮人民には、明るい前途が開かれました。

 我々は偉大なソ連人民と赤軍とスターリンが、我々に与えた兄弟的な援助をいつまでも忘れないでしょう。

 赤軍が朝鮮に進駐したときから、北朝鮮では共産党が組織されはじめました。解放後3か月のあいだに共産党は、組織活動の分野で少なからぬ仕事をしました。その間、共産党は急速に成長し、現在ではその隊列に4530名の党員を擁するようになりました。

 道・市・郡党委員会が組織され、多くの地方に党細胞が組織されました。いま共産党は、5つの機関紙をもっています。そして党員は、北朝鮮の現政治情勢を基本的に正しく理解しています。多くの党委員会は既に、初期にみられたような極左的な誤りを克服しています。

 しかし、北朝鮮共産党の各級党組織は、活動のなかで少なからぬ成果をおさめた反面、いまなお重大な欠陥をもっています。その欠陥は、まず党の組織活動にはっきりあらわれています。党は、まだ組織的に完全には形成されていません。

 党員の統計が正確に整理されておらず、党員に唯一党員証が交付されていません。

 党委員会は、まだ優秀な活動家でかためられておらず、多くの工場、企業所および農村にはまだ党組織がつくられていません。

 地方党組織では入党手続きが確立されていないため、党隊列に親日分子やその他の敵対分子が潜入しています。これらの敵対分子は、大衆のなかで我が党の権威をおとし、党の統一を切り崩そうと策動しています。ところが、一般党員だけでなく、党の指導機関にも、このような連中がいます。

 例えば、陽徳(ヤンドク)郡党委員会書記の金某は、日本帝国主義の支配当時、その郡の警察署で巡査部長を勤めた者でありますが、それが、いまは党組織を「指導」しています。陽徳郡人民委員会委員長の権某は、解放前に、その郡で親日団体の「一進会」の会長をやっていた者であるのに、いまは「共産党員」になりすましています。こういう実例は、ほかにもたくさんあります。

 これらの事実は、共産党の隊列が親日分子の侵害を受けていることを示しています。


 1 党の階級構成を改善することについて

 現在、共産党の階級構成は、次のとおりであります。

   労働者…………………………………………30%
   農  民…………………………………………34%
   インテリ、商人、その他 ………………………36%

 この数字から我々は、党が健全に発展していないことを知ることができます。党は、主として農民とインテリで構成されています。そういうわけで、党は真の労働者階級の党になっていません。こういう階級構成をもつ党は、労働者階級の意思と要求を完全に実行することはできないでしょう。

 スターリンは次のように述べています。「党は、まず労働者階級の前衛部隊でなければならない。党は、必ず労働者階級のすべての優秀な分子と、かれらの経験、かれらの革命性、プロレタリアートの大業にたいするかれらのかぎりない献身性を自己のなかに吸収しなければならない」 我々は、こういう原則に立って活動しませんでした。

 我が党に、農民とインテリが多く、労働者が少ない原因はなんでしょうか。その原因は、次のようなところにあります。

 第1に、党委員会と党活動家は、労働者階級との緊密を連係をもたず、かれらにたいする活動を正しくおこなっていません。党活動家は、労働者のなかに入ろうとはせず、労働者が訪ねてくるのを待っています。

 第2に、多くの工場、企業所に、まだ党の細胞が組織されていません。

 第3に、入党を希望する労働者は、必ず1年以上の党歴をもつ入党推薦人がなければならないという規定があるため、大きな困難につきあたっています。これは、入党を希望する労働者に人為的な制限を加えるものであります。

 我々は、このような現象をこれ以上許すことができません。我々は、主として労働者と都市や農村の先進的な勤労者が入党できるように、党勢拡大の方向を改めなければなりません。


 2 党の統一と規律を強めることについて

 党組織の活動で、いま一つの大きな欠陥は、党の統一が強固でなく、規律が乱れていることです。これは、共産党の精神と組織原則に反するものです。

 黄海(ファンヘ)道、平安(ピョンアン)北道、咸鏡(ハムギョン)南道の党組織の内部に、各種のグループが発生しましたが、これは、党の統一を弱め、その権威をきずつけるたいへん危険な現象です。

 一部の地方党委員会では、中央組織委員会の指示を無視するか、または忠実に実行していません。こうしてかれらは、党の民主集中制の原則に甚だしく違反し、党内規律を弱めています。

 一部の道党委員会は、自己の活動と党組織の活動について中央組織委員会に定期的に報告することを義務とみなしていません。中央組織委員会で活動しているある同志を咸鏡南道に派遣したところ、道党委員会がかれを受け入れなかった事実さえあります。この道では、何回も中央組織委員会の指示があったにもかかわらず、いまだに共産青年同盟を民主青年同盟に改組していません。

 中央組織委員会の指示を無視する一部の道党委員会のこうした行動は、マルクス主義党の組織原則と相容れない自由主義的な行動とみなすほかありません。かつてレーニンは、「(略)共産党は、それが最も徹底した中央集権制で組織され、党内に軍事規律に近い鉄の規律が支配し、その党中央が党員の全面的な信頼を受け、広範な権限をもっている厳格で権威ある機関となっている、そのような場合にのみ、自己の義務を果たすことができるであろう」、「誰であれ、いささかでもプロレタリアートの党の鉄の規律を弱めようとする(特に、プロレタリアートの独裁の時期に)者は、事実上プロレタリアートに背いてブルジョアジーを助けるものである」と述べています。多くの活動家が、レーニンのこの言葉を忘れています。

 我々は、党内に潜入した少なからぬ親日分子が、我が党を切り崩すためにあらゆる策動をおこないうることを、片時も忘れてはなりません。

 我々が強力で権威のある共産党をもつことを望むならば、必ず全力を尽くして党内の規律を強め、党の統一を保つためにたたかわなければなりません。


 3 大衆との結びつきを強めることについて

 現在、我が党には労働者党員の数が非常に少ないが、これは党と大衆との結びつきが弱いためであります。

 党機関は大衆のなかで組織活動と教育活動を十分おこなっておらず、幹部は工場、企業所、炭鉱、農村へ入っていきません。したがって、かれらは地方の実情にうとく、大衆の動きを知りません。その結果、新義州(シンイジュ)では、民族社会主義者にそそのかされた中学生たちが、武装して道党委員会を襲撃するという不祥事が発生し、また、他の地方でもこれに似た事件が起こりました。

 共産党員は、生産企業所の復旧、鉄道運輸の整備、農産物の拠出など、北朝鮮の政治・経済生活の各分野における当面の課題を解決するために、大衆を積極的に動員することができませんでした。党の幹部は、工場へいって労働者と話しあい、かれらの要求に耳を傾け、国の現状について労働者たちに解説し、かれらの仕事のうえの隘路を解決し、具体的な課題を示すことを自分の任務であるとは考えていません。

 もし、大衆のなかに入らず、事務室にばかりすわっているならば、我々は大衆を獲得することはできず、人民はついてこないでしょう。そして、我々は人民大衆から浮き上がってしまうでしょう。たえず大衆との結びつきを強めないならば、また大衆の声に耳を傾け、大衆を教えるだけでなく大衆から学ぼうとしないならば、労働者階級の党である共産党が、全勤労大衆を導く能力をそなえた真の大衆的な党にはなれないでしょう。

 党が、常に広範な勤労大衆に接近し、かれらとの密接な結びつきを保つならば、その党は百戦百勝するでしょう。反対に、もし党が大衆から遊離し、官僚主義のとりこになるならば、その党は力を失い、没落してしまうでしょう。スターリンは、次のように述べています。「ボリシェビキは、かれらが広範な人民大衆との結びつきを保つ限り、必勝不敗であることは一つの定則だといえる。反対にボリシェビキが大衆から遊離し、大衆との結びつきを失い、官僚主義のさびがつくならば、かれらは直ちにすべての力を失い、かかしになってしまうであろう」 一部の党活動家はこの基本的な要求を実行しておらず、多くの地方党組織はこれを無視しています。


 4 職業同盟にたいする指導について

 党の指導機関は、職業同盟の指導にあまり関心を払っていません。その結果、職業同盟は、工場、企業所を復旧し操業させ、労働生産性を向上させ、労働規律を強めるための活動に労働者、技術者、事務員を十分動員していません。

 道党委員会と市党委員会が、職業同盟にたいする指導を過小評価していたため、職業同盟内では多くの非党員が指導的な地位をしめるようになり、職業同盟員のなかで共産党員は極めて少ない数をしめるようになりました。

 一部の職業同盟委員会は、管理当局の活動に援助を与えるのではなく、かえって管理当局の企業運営を妨げています。例をあげると、寺洞(サドン)のある生産企業所(そこには職業同盟がある)では、労働者が党員の「指導」のもとに、不法な要求を出してストライキに似たものを起こし、支配人と技師を殴打するまでにいたりました。賃金が日本帝国主義支配当時より高いにもかかわらず、労働者は賃金の引上げを強要しました。国の経済状態が賃金を大幅に引き上げる可能性を与えていないことを理解しなければなりません。賃金を大幅に引き上げるためには、すべての生産企業所を急速に整備して操業させ、労働生産性を向上させなければならないのです。

 我々は職業同盟を指導するにあたって、人民経済発展の長期的な利益を考慮せずに、労働者の当面の生活改善問題だけに関心を集中してはなりません。職業同盟が、人民経済の復興建設に、勤労者の愛国的熱意と創造的な積極性を引き出すようにすることが重要です。このようにして、勤労者の生活を着実に向上させることができるのです。

 党は普通の組織ではなく、労働者階級の最高形態の組織であり、労働者階級の他のすべての組織を指導する組織です。スターリンは、職業同盟とその他の大衆団体にたいする共産党の指導について、次のように述べています。「問題は、ただこれらの組織に入っている党員が、疑いもなく権威のある人たちでこれらの非党組織がその活動でプロレタリアートの党と接近し、また自発的に党の政治的指導を受け入れるように、説得するすべての対策を講ずることにある」 スターリンのこの言葉は、職業同盟にたいする党活動の指針となるべきです。

 一部の人は、職業同盟にたいする指導は、共産党のおこなうべきことではなく、職業同盟が党の指導のもとで活動する必要はないと主張しています。これはマルクス・レーニン主義に甚だしく背く見解です。我々は、このような正しくない傾向とは容赦なくたたかわなければなりません。


 5 幹部養成と党勢配置について

 我が共産党は若い党なので、実際の活動で点検され、鍛えられた幹部が非常に不足しています。

 これらの数少ない幹部でさえ、すべてがよく仕事をし、人民の利益のために献身しているわけではありません。共産党員である一部の幹部は、高い地位ばかり欲しがって仕事に熱を入れず、自己修養をおこたり、地位を利用して私利私欲をむさぼっています。例えば、平安北道の保安部長は妾を数名もかこっている堕落分子で、家を何軒も手に入れ、没収した日本人の財産を途方もなくたくさん横領しました。この事実を知った我々はもちろん、かれを直ちに罷免しました。

 我々のなかには、下部へいって働くようにといえばそれを拒み、下部で働くことを恥だと思っている党員もいます。

 我が党の一部幹部の大きな欠陥の一つは、幹部事業の原則に従って人材を選抜し、配置するのではなく、友人関係、親戚関係によって人材を選抜し配置することです。そういう幹部は、親戚や友人を自分のまわりにおこうと奔走しています。

 このように我々には、幹部が少ないだけでなく、現職の幹部もまだ非常に水準が低いのです。それにもかかわらず、道党委員会は幹部の養成と教育に深い注意を払わず、幹部を配置した後、なんの援助も与えていません。

 我々は、スターリンの人材についての次のような言葉を常に記憶すべきです。「実践のなかで点検された正しい政治路線が樹立された後は、党の幹部が党的および国家的指導の決定的な力となる。正しい政治路線をもつこと、これはもちろん第一義的なことであり、また最も重要なことである。しかし、それだけではまだ足りない。正しい政治路線は、公布するためではなく、実践するために必要なのである。ところが、正しい政治路線を実践するには党の政治路線を理解し、それを自分自身の路線として受け入れ、それを実践する決意をもち、それを実践することができ、またそれにたいして責任をもち、それを擁護し、そのためにたたかう能力のある、そのような幹部、そのような人物が要求される。そうでなければ、正しい政治路線も机上の空文に終わるおそれがある」

 我々は、幹部を養成し正しく配置し、実際の活動を通じて教育し、かれらの活動を点検し適時に援助し、幹部についての正確な統計活動をおこなわなければなりません。

 いま、我々には、有能な新聞関係の働き手が非常に不足しています。そのため、党機関紙の活動は極めて不十分であり、党の路線を解説宣伝する任務は正しく遂行されていません。

 党中央組織委員会は、幹部の不足を打開し、その水準を高めるために、幹部の育成と教育を必ず強化しなければなりません。


 6 党員証の交付と党員統計について

 道党委員会と市党委員会の活動における大きな欠陥は、党組織および党員についての正確な統計がないことです。正確に定められた党員登録および統計様式がなく、党員にたいする月別統計ができていません。

 党員は、いまだに唯一党員証をもっていません。これは、敵対分子が党員証を偽造して党員をよそおう危険をつくりだしています。今度、中央組織委員会は、唯一党員証をつくりました。遠からずそれを党員に交付するつもりです。党員に党員証を交付するとき、それが敵対分子の手に入らないように警戒心を高めなければなりません。党員証を交付する際、党員を点検し、党に潜入した異分子を党から追放しなくてはなりません。


 7 統一戦線問題について

 我が党は、民主的諸政党との統一戦線を結成する活動を満足におこなっていません。一部の人は、党と人民に提起された重大な問題を友党と協力して解決しようとせず、不必要な摩擦を起こしています。これは、民主的政党、大衆団体との統一戦線を結成するうえで大きな障害となっています。

 地方では、共産党員が民主的政党の党員に反対し、民主的政党の党員が共産党員に反対する行為がまれではありません。我々は、このような現象を見逃すわけにはいきません。

 なぜ、我々に統一戦線が必要なのでしょうか。それは、全人民を団結させ国内の政治・経済生活を速やかにととのえ、祖国を統一した民主的な独立国家に建設するために必要なのです。共産党は、単独でこの偉大な事業を遂行することはできません。国内のすべての民主的な政党、大衆団体および全人民との団結なしには、統一した民主主義的独立国家建設の大業を達成することができません。

 みなさん!

 北朝鮮共産党組織の活動にあらわれた誤りと欠陥は、なにに起因するものでしょうか。それは、党中央組織委員会の活動が不十分であったことに起因します。

 それでは、これらすべての欠陥を取り除くことができるでしょうか。もちろん取り除くことができます。我々の活動の欠陥を取り除くためには、まず我が党の統一を保ち、党内に鉄の規律を確立するためにたたかわなければなりません。これなくしては、我々は、なにごともなしえず、我が党を不敗の党に強化することはできません。


 8 我々の課題

 それでは、我が党に提起されている当面の課題はなんでしょうか。

 第1に、現段階における我が党の政治路線は、すべての民主的な政党、大衆団体との連合にもとづいて、祖国に統一的民主主義政権を樹立し、北朝鮮を統一された民主主義的独立国家建設の強力な民主基地にかえることであります。したがって、一方では北朝鮮の政治・経済・文化生活を急速に民主化するたたかいに都市と農村の勤労大衆を立ち上からせ、他方では南北朝鮮のすべての民主的な政党、大衆団体との統一戦線を結成し、それをあらゆる面から強化しなければなりません。

 第2に、党員証の交付を慎重に進めなければなりません。党員証の交付は、政治的に大きな意義をもっています。党員証は、確実に入党した党員だけに与えるべきです。党員証の交付を単純な技術的な仕事とみることなく、党を強化する活動とみなし、党活動に弊害を及ぼす反動分子、栄達主義分子、その他の不純分子を党から取り除く政治活動とみなさなければなりません。

 第3に、正路新聞社の機構を拡張し、そこに有能な働き手を派遣して新聞の質的向上をはかり、その部数を5万部にまで増やすと同時に、日刊にすべきであります。こうして、我が党の新聞が集団的な宣伝者、組織者となるようにしなければなりません。

 第4に、党勢拡大を正しく調整しなければなりません。都市や農村の最もすぐれた勤労者、特に、先進的な労働者を党に受け入れるべきです。

 第5に、党員統計での無秩序な現象を一掃しなければなりません。各党組織では月別の党員統計および総括制度を実施し、党員に党員証を正しく保管させなければなりません。

 第6に、工場、企業所に党細胞を組織し、それを組織的に強化しなければなりません。

 第7に、党機関は、党幹部の養成、配置、教育に特別の関心を払うべきであり、道、市、郡、面級の党幹部を養成する党学校や講習所を設けなければなりません。

 第8に、各道、市、郡、面の党委員会では、共産党の当面の課題にかんする問題をもって、党代表者会議を開くべきであります。

 私は、我が党組織が、以上のような課題を成功裏になし遂げるものと確信します。

出典:「金日成著作集」1巻


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