金 日 成

必勝の信念をもって祖国解放の偉業をなし遂げよう
汪清県夾皮溝での朝鮮人民革命軍小部隊責任者会議でおこなった演説 
1941年7月28日

 我々が祖国解放の大事を成功裏に迎えるという小哈爾巴嶺会議の方針に従い、小部隊活動を展開してからほぼ1年が過ぎました。

 その間、人民革命軍の小部隊とグループは、朝鮮と満州の広い地域でさまざまな政治・軍事活動を展開して多くの大衆組織を結成し、各階層の広範な人民の革命に対する自覚を一段と高めさせることができました。そして、敵の後方を撹乱し、敵に甚大な政治的・軍事的打撃を与え、人民に革命勝利の信念を抱かせることができました。小部隊活動の過程で、人民革命軍の指揮官と兵士は、多くの貴重な経験を積み、必勝の信念をいっそう深く抱くようになりました。

 小哈爾巳嶺会議以後、国際情勢には新たな変化が起こりました。去る4月にソ連と日本のあいだで中立条約が締結され、6月22日にはファシズム・ドイツがソ連を侵攻しました。

 これに関連して、一部の人のあいだには革命の前途を不透明なものと考え、信念を失って動揺する傾向があらわれています。こうした偏向を一日も早く克服せずには、祖国解放をめざす闘争を力強く展開することはできません。

 現在、あらわれているこうした偏向を正すためには、朝鮮人民革命軍の兵士と人民大衆に現情勢を正しく認識させなければなりません。

 何よりもまず、ドイツのソ連侵攻にかかわる情勢の展望についてはっきり認識すべきで
す。

 周知のように、ファシズム・ドイツは、世界制覇の野望を抱いて大兵力を動員し、不意にソ連に対する武力侵攻に出ました。ソ連に対する不意打ちによって戦線で一時的に優位を占めたドイツは、戦果を引き続き拡大しようと狂奔しています。そのために、ソ連は極めて困難な状況に直面するようになりました。

 しかし、ソ連人民と赤軍は、ソ連共産党の指導のもとで遠からず不利な状況を打開し、戦局を有利に変えるでしょう。

 ソ連人民と赤軍がそうできるのは何よりも、ソ連人民が現在おこなっている祖国防衛戦争の目的と性格をはっきり認識しているからです。社会主義国家のソ連がおこなっている戦争は、ファシズム・ドイツの侵略から自国の領土と人民を守り、社会主義革命の獲得物を守るための正義の戦争です。

 これとは反対に、ファシズム・ドイツの強行している戦争は、社会主義国家であるソ連とその他のヨーロッパ諸国を彼らの植民地にし、ひいては全世界を制覇し従属させようとする侵略的な不正義の戦争です。

 ソ連人民と赤軍は、戦争の正義の性格とその目的の正当さを自覚しているがゆえに、無比の勇敢さと献身性を発揮してたたかうことができるのです。これは、当面の難局を打開し、戦争を最終的勝利へと導くことのできる重要な条件となります。

 ソ連人民と赤軍が、当面の難局を打開し、戦局を有利に変えられる重要な条件は、彼らが社会主義制度の優越性を実際の体験を通じて深く自覚していることにもあります。

 これまでの戦争進行過程が示しているように、ソ連人民と赤軍は、10月社会主義革命後の社会主義制度下における20余年間の生活体験を通じて、この制度こそがソビエト国家を強力な経済力と国防力を有する国に変え、人民の福祉を限りなく増進させる、世界で最も優れた制度であることを認識し、この制度を熱烈に愛し、この制度を死守するためにすべてをささげています。これは、ソ連人民と赤軍が遠からず不利な戦局を有利に変え、ファシズム・ドイツ軍を打ち負かすことのできる最も重要な要因の一つとなっています。

 各国の労働者階級をはじめ、世界の反帝・平和勢力は、ソ連人民の正義の闘争に呼応してヒトラー・ドイツ・ファシズムの侵略に反対し、ソ連人民を各方面から支援しています。ソ連を擁護する闘争は、世界的規模でさらに拡大していくでしょう。世界の反ファッショ勢力は、日増しに強化され、結局はファシズムを地球から葬り去ってしまうでしょう。

 例え、ファシズム・ドイツが、現在はソ連を席巻するかのように狂奔していても、遠からず滅亡の泥沼に陥るでしょう。

 我々はまた、ソ日中立条約に関しても正しい認識をもつべきです。

 一部の人は、ソ日中立条約が締結されたという情報を聞いて、ソ日関係に何か根本的な変化でも生じたかのように思っていますが、それは非常に誤った考えです。ソ連と日本が中立条約を締結したからといって、決して、それがソ連と日本帝国主義との「和解」の成立や、社会主義国家であるソ連と帝国主義国家である日本とのあいだの矛盾の解消を意味するものではありません。

 日本がソ連と中立条約を締結したのは、ソ連に対する侵略的野望を覆い隠し、北方でソ連の勢力を牽制することにより、彼らが東南アジア諸国を侵略して必要な戦略資源を確保するのに有利な条件と時間を得るためです。では、ソ連が日本と中立条約を締結した目的はどこにあるでしょうか。ソ連は、西洋と東洋にあるドイツと日本の帝国主義ファシズム国家が世界制覇の侵略的野望を実現するため狂奔している状況のもとで、可能な限りこのファシズム国家から同時に侵攻されることのないようにするとの戦略的意図と目的をもっているのです。

 これまでの他国に対する日本帝国主義の野獣じみた侵略策動からして、ファシズム・ドイツ侵略者が前もって準備して不意にソ連を攻撃したように、日本帝国主義者もソ連に対する武力侵略を準備しておいて、彼らに有利な機会が到来すれば強盗さながらの侵略戦争を引き起こす恐れがあります。現在、日本帝国主義は、関東軍兵力を増強する一方、日本本土と朝鮮に駐屯していた軍隊までソ満国境一帯に配置しています。したがって、我々は、ソ日中立条約の締結によってソ日間の根本的な矛盾関係が解消されることはないということを明確に認識する必要があります。

 皆さん!

 ソ独戦争の見通しからしても、ソ日中立条約の幕裏で日本帝国主義の策動によって先鋭化しているソ日間の矛盾からしても、全般的情勢は抗日革命戦争の最終的勝利をめざす我々の闘争に有利に変化、発展しています。

 現在、日本帝国主義者が、東南アジアに侵略の触手を伸ばして米・英帝国主義国家の利権を侵していることで、日本帝国主義と米・英帝国主義間の矛盾は急激に先鋭化し、衝突前夜に至っています。もし、日本帝国主義者が、太平洋上へと戦争を拡大していくならば、彼らはさらに抜き差しならぬ苦境に立たされるでしょう。日本帝国主義侵略者は、中国の広い戦線から東南アジアを経て太平洋に至る膨大な戦線に投入する兵力源をもっておらず、原油、鋼鉄、ゴムなどの戦略物資を調達することができません。

 日本帝国主義者は、侵略戦争の拡大に伴って急増する戦争物資を調達するため、必ず自国人民に対する搾取と弾圧を強化するようになり、これとともに労働者階級をはじめ、広範な人民の反戦運動と革命的進出はさらに強まるはずです。

 現在、日本帝国主義は、戦争の拡大に伴って増大する軍事費を朝鮮人民に負担させ、朝鮮人民の最後の血の一滴まで搾り出すため、あらゆる手段と方法を尽くしています。日本帝国主義者の戦争策動が強化され、抑圧と略奪が激しくなればなるほど、朝鮮人民の反日感情はさらに燃え上がり、朝鮮人民が全人民的な反日抗戦に決起し得る有利な革命情勢はより早く熟することでしょう。

 日本帝国主義者の無謀な侵略戦争の拡大は、植民地従属諸国人民の反日民族解放運動と世界平和愛好人民の反戦運動をさらに高揚させ、結局は日本帝国主義の滅亡を促すことになるでしょう。

 皆さん!

 現情勢は、我々に革命の旗をいっそう高く掲げて祖国解放を達成するため、革命的信念と高い思想的覚悟を抱き、いささかも動揺することなく果敢にたたかうことを求めています。

 祖国解放の偉業を早めるためには、何よりも革命勝利の確たる信念を抱かなければなりません。

 革命勝利への確たる信念のない者は、突きあたる隘路と難関を克服することはできず、革命的節操をあくまで守り通すこともできません。

 革命勝利の確たる信念を抱くうえで、科学的な世界観を確立し、社会発展の法則を正しく認識することは極めて重要な意義があります。

 帝国主義はその世代を生き尽くした古い勢力ですが、社会主義・共産主義は未来を代表する先進的な勢力です。帝国主義が滅亡し、社会主義・共産主義が勝利するのは動かしがたい歴史発展の法則です。

 すべての指揮官と兵士は、マルクス・レーニン主義の学習を強化し、資本主義滅亡の不可避性と社会主義・共産主義勝利の必然性について明確に認識しなければなりません。

 いまの厳しい情勢のもとでみずからの力を強く信じることが、革命勝利の確たる信念を抱くうえで提起される根本的問題となっています。

 我々がこれまでの長い闘争の過程で実際に体験したように、革命闘争においてみずからの力を信じなければ、厳しい試練の時期に困難を克服できずに動揺するようになり、しまいには背信の道へと転落しかねません。

 これは、ソ日中立条約の締結直後、事大主義思想に毒された一部の者のあいだに思想的に動揺する傾向があらわれた事実によって実証されています。例え、部分的な傾向ではあっても、革命的世界観が確立しておらず、みずからの力で革命を遂行しようという確固たる意志のないことに起因するものであって、人民革命軍隊列内では決して見過ごすことのできないことです。

 大国の援助を受けなければ、革命で勝利し奪われた祖国を取り戻すことができないと思うのは、事大依存思想です。事大主義思想は、かつて、革命の前進を阻む重大な悪結果を招き、朝鮮民族に計り知れない苦い教訓を残しました。事大主義者は、自分の力を信じず他人に頼り、困難かつ複雑な情勢となれば思想的に動揺し、革命の前途を悲観し、しまいには敗北主義にとらわれて背信と反逆の道へと転落するようになります。

 もちろん、我々は、世界のすべての進歩的人民、特にソ連人民との連帯を強めて彼らの支持を受けるべきであり、これは革命勝利の重要な条件となります。しかし、他人の支援のみを期待し、みずからの力で闘争の前途を開拓していかなければ、革命闘争で勝利することはできません。世界のすべての進歩的人民、特にソ連人民との国際的連帯を強め、彼らの支持を受けるうえでも、みずからが政治的、思想的に準備できていなければなりません。そうしてこそ、他国の支援も革命勝利のために効果的に利用することができるのです。

 我々は、朝鮮革命の主人は我々自身であるという革命的自覚と、みずからの力で万難を排して朝鮮革命を達成することができるという確たる信念を抱くべきです。

 現在、我々には、朝鮮革命の運命を担って立つ不敗の革命勢力が整っています。

 10年間の抗日武装闘争の炎のなかで朝鮮革命を指導する中核的勢力が整い、武装闘争の豊かな経験を積んだ朝鮮人民革命軍が健在しているのですから、革命情勢が熟するに伴って全朝鮮人民を奮い立たせるならば、十分、我々の力で国の独立を達成することができます。

 到来する革命的大事変を主動的に迎えるためにしっかりと準備することは、祖国解放の歴史的偉業を早めるうえで提起されている重要な課題の一つです。

 昨年におこなわれた小哈爾巴嶺会議でも強調したように、到来する革命的大事変を成功裏に迎えるためには、革命勢力をしっかりと準備しなければなりません。

 革命勢力の強化は、現情勢のもとで日本帝国主義の狂気じみた攻勢を撃退し、祖国解放の大事を早めるために提起されている差し迫った重要な問題です。

 革命勢力の準備において重要なのは、人民革命軍のすべての指揮官と兵士が、日本帝国主義侵略者を撃滅する最後の決戦の時期に、広範な大衆を全人民的抗争へと奮い起こせるよう、みずからをしっかりと準備することです。

 すべての指揮官と兵士は、政治・理論水準を絶えず高め、人民大衆を手際よく奮い立たせることのできる有能な政治活動家にならなければなりません。そして、遊撃戦術をさらにしっかりと習得し、現代戦に必要な軍事技術知識と指揮能力を身につけなければなりません。小部隊とグループ活動をおこなっている指揮官は、可能なすべての条件を利用して兵士のあいだで政治学習を優先させ、それに軍事学習を合わせることを原則に、軍事・政治学習を着実におこなうことが大切です。また、戦術訓練をはじめ、すべての訓練は、わが国の地形条件を十分に研究し、それにもとづいて実施しなければなりません。このようにして、すべての兵士を革命偉業に限りなく忠実な不屈の闘士に、有能な政治活動家、軍事指揮官に育て上げるべきです。

 到来する大事変を主動的に迎えるうえで重要なのは、また、人民革命軍の小部隊とグループの活動をさらに強化することです。

 小部隊とグループの活動は、政治活動を基本にし、これに軍事活動を正しく組み合わせておこなわなければなりません。

 小部隊とグループは、広範な反日勢力を結束する政治活動を強化すべきです。

 現情勢はいつにもまして政治活動を強化して、広範な大衆を教育し目覚めさせ、革命の側に引き入れることで、彼らを日本帝国主義との最後の決戦に向けてしっかりと備えさせることを切実に求めています。

 現在、広範な反日勢力を結束する大衆政治活動は、敵の厳しい警戒と監視、狡猾な策動が続くなかでおこなわれざるを得ません。ですから、政治工作グループは、敵の蠢動に対処して革命的警戒心を高め、各階層の大衆を大胆に教育し結束しなければなりません。

 政治工作グループの構成員は、巧みな大衆工作方法を習得し、大衆のなかに深く入って人民に国際・国内情勢を正しく認識させるとともに、革命的意識を高めさせ、祖国解放の信念を抱かせるべきです。

 政治工作員は、労働者、農民をはじめ、青年学生、知識人、プチブル、良心的な民族資本家、宗教家など広範な反日大衆を組織的に結束するために努力しなければなりません。特に、反日意識の強い青壮年を結束する活動に力を入れるべきです。いま、反日闘争を覚悟した青壮年が我々の隊伍に加わろうと各方面で努力していることから、これに合わせて、彼らを組織的に結束し、反日闘争へと導くべきです。

 小部隊とグループは、政治活動を強化すると同時に、軍事活動も引き続き強力に展開していかなければなりません。

 軍事活動を強力に展開し続けてこそ、敵に連続的な打撃を与え、人民大衆に勝利の信念を抱かせ、政治活動に有利な条件を整えることができるのです。日本帝国主義を打倒する戦闘であれば、例え、小規模のものであっても、それは人民に祖国解放の希望を与える火種となるでしょう。

 小部隊は、遊撃戦の基本的な要求に沿って、敵との無謀な衝突を避け、具体的な策略と準備にもとづいて敵背撹乱作戦を猛烈に展開し、至るところで敵の軍需物資輸送路、軍需物資補給基地、警察署と敵の機関を襲撃掃討することにより、敵に連続的な打撃を与え、人民に祖国解放の信念を抱かせなければなりません。

 祖国解放作戦準備を着実におこなうためには、偵察活動を強化することが重要です。

 偵察は、すべての戦闘行動に先行させるべき工程であり、戦闘の勝利を保障するための重要な条件の一つです。偵察を確実におこなうことは遊撃闘争の全期間にわたって常に重要なこととして提起されますが、祖国解放作戦という最後の決戦を準備しているこんにちでは、特に重要な問題として提起されています。偵察活動を上手に巧妙な方法で活発に展開して常に敵情を具体的かつ正確に把握してこそ、祖国解放作戦計画を正しく立て、祖国解放の偉業を成功裏に実現することができます。

 小部隊およびグループは、国境一帯と国内の重要な軍事的要衝で、巧みで多様な方法で敵の兵力配置、港湾、飛行場をはじめ、軍事施設と敵軍の動静などに対する偵察活動を強化すべきです。

 皆さん!

 横暴なファッショ勢力の侵略戦争拡大策動は全世界を戦争の惨禍に追い込んでいますが、それはファッショ侵略者自身の滅亡を促し、反ファッショ勢力と朝鮮革命の勝利を早める結果をもたらすでしょう。

 ともに必勝の信念をもって、敵撃滅の意気込み高く日本帝国主義侵略者との決戦に決起するため万端の準備を整えましょう。
                                                
出典:『金日成全集』1巻


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