金 日 成

当面の情勢の要請に即して分散活動を果敢に展開しよう
安図県花拉子での朝鮮人民革命軍軍事・政治幹部会議でおこなった演説 
1940年4月3日

 皆さん!

 我々は、昨年の秋から白頭山東北部の広い地域で展開した大部隊旋回作戦によって、日本帝国主義侵略者に甚大な政治的・軍事的打撃を与えました。

 周知のように、日本帝国主義は、昨年9月、吉林に新たに「討伐司令部」を設置し、関東軍と「満州国」軍をはじめ、数十万の兵力を動員して朝鮮人民革命軍に対する「討伐」を強行しました。彼らは、「討伐司令部」の管下に地区「討伐隊」を編制し、山間僻地にまで兵力を投入して我々の密営を包囲、襲撃しようと執拗に食い下がりました。

 我々は、日本帝国主義の動きに対処して、白頭山東北部の広大な地域を大部隊で遊動しながら、至るところで敵に打撃を与えました。敵が人民革命軍部隊を包囲しようと押し寄せてくるときは、大胆に敵の虚を衝いてすばやくその場を去り、敵が思いも及ばない地域に迅速に移動してそこの敵を叩きました。

 この冬、我々は人民革命軍部隊に対する「討伐」を成功させようと狂奔していた日本帝国主義の「討伐」軍主力を安図、和竜一帯に釘付けにし、秘密コースをたどって不意に敦化の奥地に進出し、六棵松と夾信子の敵を討って、そこをひそかに去り、敵が敦化の奥地に兵力を集中して朝鮮人民革命軍の行方を捜し回っているときに、白石灘で軍事・政治学習をおこないました。そして、敵が白石灘密営をつきとめて攻め寄せてきたときには、再び豆満江沿岸に進出し、大馬鹿溝や紅旗河で敵に壊滅的な打撃を加え、「包囲掃討作戦」の企図を粉砕しました。

 朝鮮人民革命軍部隊が、この冬、「常勝部隊」「討伐の王者」をもって自任していた前田部隊をはじめ、日本軍の精鋭部隊を撃滅し、敵を戦慄させたことは、朝鮮人民革命軍の政治的・思想的優越性と巧みな遊撃戦術を示威するものとなりました。

 我々は、日本帝国主義を相手どる武装闘争において、常に戦闘力を最大限に温存し敵を絶えず攻撃、弱体化させることを遊撃戦の基本原則とし、敵の弱点を衝いて彼らを守勢に追い込み、主導権を確実に握ることで勝利の一途を歩んできました。

 我々は、反日人民遊撃隊の創建後、豆満江沿岸一帯の遊撃根拠地で日本帝国主義の「焦土化戦術」や攻囲作戦に備えて、根拠地を足場にした積極的な防御と敵背撹乱作戦を密接に組み合わせる戦術を用いて敵の企図を粉砕しました。白頭山西南部で活動した時期とこの冬季作戦のときも、敵の「すきぐし戦術」や「長距離追撃戦術」、密営「包囲掃討戦」などあらゆる「討伐」策動に対処して大部隊活動と小部隊活動を取り合わせたり、秘密のコースをたどったりする大部隊旋回作戦など、さまざまな戦術と戦法を遊撃戦の要請に即して活用することで、敵の企図を成功裏に粉砕し勝利をおさめました。

 こんにち、我々には大部隊旋回作戦の成果を強固にし、新たな情勢の要請に即して闘争方針を立て、武装闘争を引き続き主動的に発展させるべき任務が課されています。

 当面の情勢は、日本帝国主義の「討伐」策動と新たな侵略戦争の企図によってかつてなく緊迫しており、朝鮮人民革命軍各部隊の行く手には厳しい難関が横たわっています。

 朝鮮人民革命軍に対する「冬季討伐」作戦で恥ずべき惨敗を喫した日本帝国主義は、敗北を埋め合わせて面子を立てるため「東南部治安粛正特別工作」期間を延長し、朝鮮人民革命軍に対して空前の大規模「討伐」攻勢を強行しています。

 敵は、朝鮮人民革命軍主力部隊が活動している白頭山東北部一円におびただしい数の日本軍精鋭部隊と「満州国」軍、警察隊を増強配置し、飛行機まで動員して安図を中心とする白頭山東北部の山々や谷間を血眼になってくまなく捜索しています。

 日本帝国主義侵略者は、これまで採用してきた地区担当制を基本とする「長距離追撃戦術」や「要点配置戦術」など、さまざまな「討伐」戦術にいわゆる「遊撃戦術」まで取り入れて、朝鮮人民革命軍に対する集中「討伐」を企てています。さらに、白頭山東北部の険しい谷間にまで道路を敷き、軍用電話線を引くなど軍事施設工事を懸命に進めています。

 このような状況のもとで、日本帝国主義の「東南部治安粛正特別工作」を最終的に粉砕し、朝鮮革命を引き続き粘り強く前進させるために、朝鮮人民革命軍は分散活動に移行する必要があります。変化した状況を考慮せずに、従前どおり大部隊で敵と戦うならば、それは無謀な軍事行動にほかなりません。もし、そういうことにでもなれば、我々の兵力は無益な損失を被る恐れがあります。朝鮮人民革命軍部隊が分散活動に移行すれば、集中した日本軍兵力を分散、弱体化させて革命勢力を温存、拡大することができ、また、白頭山周辺の北部国境一帯を掌握して武装闘争を国内へ拡大する戦略的方針を貫くこともできます。

 分散活動を成功裏に展開するためには、まず、隊伍の編制を合理的におこなわなければなりません。

 これまで、人民革命軍の隊伍は白頭山東北部における旋回作戦の要請から大部隊に編制されていましたが、これからは分散活動の要請に即して、白頭山東北部と白頭山周辺の北部国境一帯を連隊別に担当させ、中隊を単位にして活動できるように編制すべきです。

 分散活動を成功裏に展開するためには、また、多様な遊撃戦術と戦法を縦横に駆使しなければなりません。

 これまでの経験は、いくら数的に優勢な敵の攻撃に直面しても、状況と地形上の特性に即して遊撃戦術と戦法を正しく活用すれば、常に主導権を握って勝利が得られることを示しています。

 現在の状況からして、分散活動をするにあたって重要なのは、連続打撃戦術を活用することです。敵が一定の要地ごとに分担して陣取っている状況のもとでは、敵の駐屯地や軍事施設を相次いで奇襲し、敵に息つく暇を与えてはなりません。そのようにして、敵を疲労困ぱいさせて無力化し、彼らが掌握している地域を堅持できないようにさせるべきです。

 分散活動では、反復打撃戦術も採用すべきです。敵の巣窟に一度打撃を加えるだけにとどまらず、打撃を受けた敵が、もう攻めて来ないだろうと思い気を緩めているときに再び打撃を加え、敵を不安と恐怖に震え上がらせることです。

 分散活動では、敵のいくつかの拠点を同時に打撃する戦術も採用する必要があります。敵の数カ所の拠点を、同時またはほとんど同じ時間に叩いて、敵軍相互間の支援を不可能にし、孤立無援の状態に陥れて掃滅すべきです。

 連続打撃、反復打撃、同時打撃の戦術は、敵の手足を縛りつけ、極度の不安と疲労、守勢に陥れて本来の行動目的を放棄させ、身動きできなくする効果的な方法です。

 朝鮮人民革命軍部隊は、新たな戦術と戦法を縦横に駆使し、敵を守勢に追い込んで掃滅すると同時に、白頭山周辺の北部国境一帯をしっかり掌握して、武装闘争の影響を国内に絶えず拡大していかなければなりません。

 人民との連係を緊密にすることは、分散活動を成功裏におこなうための必須の要件です。

 これまで、我々が敵とのたたかいで勝利をおさめることができた力の源は、人民との血縁的な連係を強めたところにあります。現在、日本帝国主義が厳しい警戒網を敷いて人民革命軍と人民の連係を断ち切ろうと悪辣に策動しているため、人民との血縁的な連係の強化には格別な関心を払わなければなりません。

 日本帝国主義は、朝鮮人民革命軍と人民の連係を断ち、朝鮮人民革命軍のよりどころをなくそうと、山間地帯から都市の周辺に至るすべての農村地域の「集団部落」を「連邦組織」に組み込み、住民地域に武装警察隊、武装自衛団を配置して一段と警備を厳重にしています。日本帝国主義は昨年の未までに、朝鮮人民革命軍の経済的封鎖に必要と思われるほとんどすべての地域に「集団部落」を設置し、食糧の取り締りをさらに強化して、塩などを少しでも余分に持っていれば「共匪内通者」と決めつけて処罰しています。

 こうした状況のなかで、朝鮮人民革命軍部隊が分散活動に移行して各地で敵の要衝を襲い、打撃を加えるためには、人民との連係をいっそう緊密にして、その支援を受けなければなりません。人民革命軍部隊が、人民から食糧や衣類、医薬品などの給養物資や敵軍の情報が得られなければ、戦闘の勝利は望めません。

 朝鮮人民革命軍の指揮官と隊員は、敵の策動がますます悪辣さと狡猾さを増している状況下で、人民大衆を頼りとしなくては一歩も前進できないことを肝に銘じ、人民との連係の緊密化に格別の関心を払うべきです。

 人民革命軍の指揮官と隊員は、まず、人民のなかに深く入って朝鮮革命勝利の必然性と日本帝国主義の滅亡の不可避性を認識させる大衆教宣活動と、破壊された革命組織を立て直し拡大する活動を力強く展開しなければなりません。このようにして、人民がいかなる厳しい環境のなかでも勝利の信念を失わず、人民革命軍を積極的に支援し、人民革命軍との緊密な連係を保つよう導いていかなければなりません。

 人民との連係を強めるうえで重要なのは、また、朝鮮人民革命軍の指揮官と隊員のあいだに革命的な対民衆規律を確立することです。朝鮮人民革命軍のすべての指揮官と隊員は、人民の生命、財産にいささかの損失も与えてはならず、いつ、どこにあっても人民を兄弟のように愛し助けなければなりません。そのようにして、人民の軍隊としての政治的・道徳的品格を余すところなく示し、人民が朝鮮人民革命軍を心から信頼し、反日聖戦に身を賭して立ち上がるようにさせるべきです。

 こんにち、我々に課されている新たな革命任務と現情勢は、我々がいつにもまして革命勝利の確固たる信念を抱いて刻苦奮闘することを求めています。

 我々はこれまで10年近くもの間、零下40度の酷寒と8月の炎天にもめげず、白頭山の峻嶺を乗り越えながら祖国の独立と人民の自由と解放のために血戦を繰り広げてきました。我々がこの間に歩んできた道のりは、一日平均5里とみても2万里近くの長征を遂げたことになります。しかし、我々は革命の最終的な勝利のために、朝鮮から日本帝国主義を追い出して祖国の解放と独立を達成するために、この先も数万里を踏破する覚悟でいなければなりません。この途上で我々の行く手を遮る難関を突破し、最終的な勝利をおさめるためには、革命勝利への揺るぎない信念をもってたたかっていかなければなりません。

 一陽来復の春が巡ってくるように、我々がこの難局を乗り切れば、必ず勝利の日を迎えることができます。我々はみな、革命の勝利を確信して、あらゆる難関と試練を切り抜け、いささかも動揺することなく、革命の旗を最後まで守りとおさなければなりません。

 朝鮮人民革命軍のすべての指揮官と隊員は、新しいものは勝利し古いものは必ず滅亡するという社会発展の法則を体得し、朝鮮革命の路線と戦略戦術で武装すべきです。同時に、祖国と人民を熱烈に愛し、敵とは勇猛果敢にたたかう気風を身につけるべきです。あわせて、革命同志を限りなく愛し大切にする革命的同志愛と道義も深く身につけなければなりません。

 いま、我々は、明確な闘争目的と正確な戦略戦術をもって日本帝国主義とたたかっています。朝鮮人民革命軍は、敵とたたかって勝てる力をもっており、それは今後さらに強大になるでしょう。

 私は、朝鮮人民革命軍のすべての指揮官と隊員が勝利の信念を固め、当面の難局を打開するために分散活動を積極的に展開して、日本帝国主義の「東南部治安粛正特別工作」を最終的に粉砕し、輝かしい勝利をおさめるものと確信します。
                                                
出典:『金日成全集』1巻

<注釈>-「一陽来復の春が巡って」 読みは「いちよう‐らいふく」。『広辞苑第6版』によると意味を次のように記している。
 ①陰がきわまって陽がかえってくること。陰暦11月または冬至の称。②冬が去り春が来ること。③悪い事ばかりあったのがようやく回復して善い方に向いてくること。


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