金 日 成

白頭山東北部を拠点にして軍事・政治活動を
強力に展開するために
安図県大溝での朝鮮人民革命軍軍事・政治幹部会議でおこなった演説 
1939年5月24日

 皆さん!

 このたび、我々は国内に進出して茂山(ムサン)地区戦闘を成功裏におこないました。

 我々は、日本帝国主義が「鉄壁」の陣と豪語していた国境警備陣を突破して祖国に進出し、白昼、赤旗をなびかせながら敵の「甲茂(カプム)警備道路」を歩武堂々と行軍し、新四洞(シンサドン)、新開拓(シンゲチョク)一帯で軍事・政治活動を積極的に展開しました。引き続き大紅湍(テホンダン)原で、朝鮮人民革命軍を「包囲掃滅」しようと狂奔していた敵を一撃のもとに掃討することで、「無敵皇軍」の「神話」を見事に粉砕し、朝鮮人民革命軍の不敗の威力を誇示しました。

 このたびの茂山地区での戦闘は、国内人民の反日闘争気勢をいっそう鼓舞し、革命運動を一段と高揚させるうえで、大きな影響を与えた実に意義深い戦闘でした。

 最近、強盗・日本帝国主義は、「国家総動員法」という史上例のない悪法をつくり出して朝鮮人民の膏血を過酷に搾っており、「朝鮮防共協会」などの諜報謀略機構をつくって、さ細な反日的要素も容赦なく弾圧しています。のみならず、祖国解放に対する朝鮮人民の信念と希望をそぐために、この冬、朝鮮人民革命軍が長白奥地の深い雪のなかで全員凍え死に、飢え死にしたというデマまで飛ばしました。

 日本帝国主義の狂気じみた暴圧と悪宣伝によって、朝鮮人民は祖国の前途をいたく憂え、恐怖と不安のうちに過ごしていました。

 まさに、このような時に、我々は、茂山地区で大胆な軍事・政治活動を展開することで、祖国の同胞に朝鮮人民革命軍は、なお、健在であり、日本帝国主義侵略者と勇敢に戦って勝利しているということを誇示し、再び祖国解放を確信させて勇気づけ、彼らを反日闘争に力強く立ち上がらせました。

 茂山地区一帯における朝鮮人民革命軍主力部隊の軍事・政治活動は、日本帝国主義が対ソ侵略を目的にソ連国境一帯に配置していた兵力まで「後方の安全」に向けざるを得なくすることで、ソ連を擁護するうえでも大いに寄与しました。

 実に、大部隊によって果敢に展開した茂山地区での戦闘は、朝鮮人民の革命闘争を高揚させるうえでも、さらには、隣国の革命闘争を支援するうえでも大きな意義をもつ作戦でした。

 こんにち、我々には、国内進攻作戦でおさめた成果を強固にして発展させ、朝鮮革命を引き続き高揚へと導くべき重大な課題が提起されています。

 現段階において朝鮮革命を高揚させるためには、朝鮮人民革命軍部隊が白頭山東北部に闘争の舞台を拡大して、軍事・政治活動を強力に展開する積極的な対策を講じなければなりません。

 我々が、白頭山東北部を拠点にして軍事・政治活動を展開する主要目的は、白頭山西南部一帯でおさめた成果と経験を踏まえて、白頭山東北部一帯にいま一つの強力な革命のとりでを築き、豆満江沿岸の北部朝鮮一帯はもとより、全国的な範囲で祖国解放戦線により多くの大衆を結集させて革命闘争の火の手を激しく煽ることにあります。

 そこで、我々はこの春に開かれた北大頂子会議で、大部隊による国内進攻作戦に次いで白頭山東北部に闘争の舞台を移す方針を採択したのです。

 白頭山東北部は、自然地理的にも、住民の構成からしても、我々が朝鮮革命を高揚へと導くうえで極めて有利な条件を備えています。この地域は、地理上、豆満江沿岸の国境地帯と接しており、ことに白頭山根拠地と険しい山々が連なっているため、遊撃活動をおこなうにも、国内に入って祖国の同胞に革命的影響を与えるうえでも極めて有利です。この地域は、また、我々が武装闘争の初期に遊撃区を設置して活動したところなので、住民の構成も良好です。この地域には、祖国光復会やその他の革命組織に参加ないし関係している目覚めた大衆や、かつて独立軍に参加していまもなお節を曲げずにいる人が少なくありません。それに安図、和竜県に接している国境地域には、水力発電所工事の労働者や林業労働者が多く集まっています。このような住民の構成状態は、政治工作員が大衆のなかに深く入り、国内の人民に革命的影響を与えて革命組織の拡大を力強く進めるうえで非常に有利な条件となっています。

 我々が、白頭山東北部を拠点にして軍事・政治活動を展開することは、現情勢の要求でもあります。

 長白地域や鴨緑江沿岸など白頭山西南部の広い地域における我々の積極的な軍事・政治活動と、人民の反日闘争の盛り上がりに恐れをなした日本帝国主義は、朝鮮人民革命軍部隊の「掃滅」を図って「精鋭」師団と多数の満州国軍部隊、それに民間武力まで白頭山西南部一帯に集中させています。このような状況のもとで、我々が日本帝国主義の大軍と正面衝突するならば、無益な犠牲を払うのはもちろん、苦労してつくり上げた革命組織も損失を被りかねません。したがって、敵が白頭山の西南部一帯に兵力を集中しているときに、朝鮮人民革命軍部隊が主動的に白頭山の東北部一帯に闘争の舞台を拡大して軍事・政治活動を強力に展開することは、敵を混乱に陥れ、守勢に追い込んで大きな打撃を加え、さらに、わが部隊の戦闘力を温存し拡大しながら革命組織の被害も防ぎ、我々の革命勢力全般を各方面から拡大し強化する主動的な措置となります。

 このように、白頭山東北部への闘争の舞台の拡大は、朝鮮革命を引き続き高揚へと導く革命発展の要求の見地からしても、日本帝国主義の「討伐」攻勢が悪辣に強行されている情勢の要求に照らしても、至極正当かつ積極的な措置であると言えます。

 白頭山東北部一帯に闘争の舞台を拡大し、軍事・政治活動を展開するうえで何よりも重要なのは、この地域に朝鮮人民革命軍が足場として活動しうる根拠地、拠点をしっかり築くことです。新設する根拠地は、固定した密営形式の根拠地ではなく、状況の変化に応じて迅速に移動できる臨時密営の形にすべきです。このような根拠地は、国内への行き来に便利であり、白頭山地区の根拠地と連絡を取れるところに設置すべきです。新たに設ける革命根拠地は、我々の小部隊と政治工作員が白頭山東北部ばかりでなく白頭山西南部、ひいては狼林山脈や咸鏡山脈をつたって国内に深く入って活動できる拠点とならなければなりません。

 我々は、白頭山東北部を根拠地として兵力を連隊級規模に組み分け、それぞれの地域で集中と分散、移動戦術などを巧みに採用しながら、至るところで敵を制圧し、掃滅すべきです。朝鮮人民革命軍部隊は、敵に息つくひまも与えず連続攻勢に出て、敵の兵員や後方基地、軍需輸送路に絶えず打撃を加えるべきです。

 次に、白頭山東北部と豆満江沿岸の北部朝鮮地帯へと祖国光復会やその他の革命組織を拡大し、広範な大衆を結集する組織・政治活動を力強く進めて、彼らを反日反戦闘争に極力参加させるようにしなければなりません。

 白頭山東北部と北部朝鮮地帯に政治工作員と政治工作グループを派遣して、彼らが敵の弾圧によって組織ルートが絶たれ、身を隠している人を早急に探し出して組織に結束させ、さらに労働者、農民をはじめ、各階層の大衆を祖国光復会など、さまざまな革命組織に積極的に受け入れるようにすべきです。特に国内の茂山、延社(ヨンサ)地区を足場として、北部朝鮮一帯と国内の奥深くへと革命組織を拡大する活動を強力に展開すべきです。そうすることで、安図、和竜、延吉などの白頭山東北部の広大な地域と北部朝鮮一帯に強力な地下組織網が張りめぐらされるようにしなければなりません。

 悪辣さを増す日本帝国主義者の策動に対処して、政治工作員と政治工作グループの活動は、武装した護衛がしっかりと守ってやるべきです。

 いま、日本帝国主義は、朝鮮人民革命軍部隊と政治工作員の活発な活動に不安を抱いて、集団部落の統制を強化し、国境警備に兵力を集中しています。彼らは、集団部落の防備を固めるかたわら、部落ごとにスパイ網を張りめぐらしており、「戸口調査」や「指紋制度」を強化し、通行人の検問や検査を徹底的におこなっています。このような状況のなかで、政治工作員が従前のように村へ入って長く留まりながら地下活動をおこなうことは難しくなりました。ですから、政治工作員や政治工作グループは、有利な密林のなかに秘密連絡場所を定め、武装した小部隊の護衛のもとで絶えず移動しながら大衆政治活動を機動的におこなわなければなりません。

 革命組織の拡大と大衆の自覚にもとづいて、広範な大衆を日本帝国主義者の侵略戦争の拡大に反対する闘争へと積極的に立ち上がらせるべきです。

 政治工作員は、工場、鉱山、伐採場、鉄道、道路、水力発電所工事現場などの労働者のなかに入り、彼らを日本帝国主義と侵略戦争に反対する闘争に積極的に立ち上がらせるべきです。特に、豆満江沿岸の北部朝鮮一帯に派遣される政治工作員は、労働者のあいだで、日本帝国主義が大陸侵略戦争に必要な軍需物資の輸送のために進めている白茂線鉄道敷設工事と、着工を急いでいる西頭水水力発電所工事を遅延、破綻させるたたかいを展開すべきです。そのようにして、日本帝国主義の大陸侵略戦争の拡大に打撃を与えなければなりません。

 我々は、中国人民とソ連人民のたたかいを積極的に支援すべきです。

 中国人民との反帝共同戦線をいっそう強固にし、ソ連人民のたたかいを極力支援することは、我々共産主義者の気高い国際主義的義務です。

 我々は、日本帝国主義が全中国を占領するために狂奔している状況のもとで、これまでと同様、今後とも中国人民との戦闘的団結をいっそう固め、中国人武装部隊と連合して敵の背後を衝き、中国人民の革命闘争を極力支援しなければなりません。

 我々は、国際主義の旗を高く掲げ、ソ連人民のたたかいを武力をもって力強く支援すべきです。日本帝国主義は、ノモンハン一帯に侵略兵力を集中して、モンゴルに対して武力攻撃を強行していますが、これは日本帝国主義がモンゴルを占領し、ひいてはソ連の極東地方をも占拠しようとする野望をさらけだしたものです。我々は、白頭山東北部一帯で、対ソ侵略をめざす日本帝国主義の兵力の移動と軍需物資の輸送を破綻させ、敵の後方を撹乱する軍事活動を猛烈に展開して、ソ連に対する日本帝国主義の侵略企図を阻止、破綻させ、ソ連を極力擁護すべきです。

 私は、朝鮮人民革命軍のすべての指揮官と隊員が無比の勇敢さと犠牲的精神を発揮し、白頭山東北部一帯で軍事・政治活動を強力に展開することで、朝鮮革命を引き続き高揚へと導いていくであろうと確信します。
                                               
出典:『金日成全集』1巻


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