金 日 成

祖国光復会の組織を早急に拡大しよう
長白県黒瞎子溝密営での朝鮮人民革命軍
軍事・政治幹部および政治工作員会議でおこなった演説 
1936年10月7日

 皆さん!

 この2月に開かれた南湖頭会議では、抗日武装闘争を国内に拡大、発展させて朝鮮革命の一大高揚を起こす新たな戦略的方針を採択しました。

 我々は、南湖頭会議の方針に従って国境地帯に進出する過程で、白頭山一帯に新たな秘密根拠地を設置し、この5月には朝鮮民族史上、全民族を一つに結集する初の統一戦線組織体である祖国光復会を創立しました。

 我々が祖国光復会の創立を宣言してから半年近くになります。その間、各地に派遣された政治工作員と人民革命軍の隊員は、敵の厳重な監視のもとでも広範な人民のなかに入って積極的な組織・政治活動をおこないながら祖国光復会の創立宣言と10大綱領を広く説明、浸透させ、長白、撫松などの鴨緑江沿岸の国境一帯に祖国光復会の下部組織を多数設けました。この過程を通じて、祖国光復会の下部組織を国内外の広い地域に拡大し得る中核陣容を整え、貴重な政治活動経験も積みました。

 現在、我々には既におさめた成果を固める一方、南湖頭会議と東崗会議の方針に従って、祖国光復会の組織を全国的、全民族的範囲で速やかに拡大すべき重大な任務が課されています。

 祖国光復会組織の早急な拡大は、朝鮮人民革命軍部隊が国境一帯と国内へ進出して軍事・政治活動をたゆみなく展開するための大衆的地盤を強固に築き、全人民を祖国光復戦線に結集して反革命勢力に対する革命勢力の優勢を保障することによって、日本帝国主義侵略者を打倒して祖国解放の歴史的偉業を促進するうえで特に重要な意義があります。

 現在、朝鮮人民に対する日本帝国主義侵略者の抑圧と略奪が強化されるにつれて、革命の社会的・階級的地盤は日増しに拡大しています。ごく少数の反動勢力を除く各階層の広範な大衆は、階級的立場や政治的見解は相異なっても、日本帝国主義に反対し民族的解放を達成するという点では利害をともにしています。特に、祖国光復会創立という感激的な情報に接した各階層の人民は、祖国解放の限りない熱情に燃えて反日闘争に広く立ち上がっています。労働者、農民、青年学生をはじめ、各階層の人民は、日本帝国主義者の弾圧と略奪に抗してストやサボタージュ、争議などさまざまな闘争を展開しています。こうした情勢は、労働者、農民はいうまでもなく、各階層の広範な大衆を祖国光復会の組織に結集させて反日闘争をいっそう力強く展開することを求めています。

 我々は、全民族の団結した力で日本帝国主義の植民地支配を覆し、祖国解放の偉業をなし遂げるために祖国光復会の組織を全国的、全民族的範囲で早急に拡大していかなければなりません。

 祖国光復会の組織を拡大するうえで重要なのは、広い地域に下部組織を設け、それに対する指導体系を確立することです。

 まず、鴨緑江沿岸の長白一帯へと祖国光復会の組織を拡大し、強固にしなければなりません。そうすれば、そこを足場にして国内の広い地域と満州一帯の朝鮮人居住地域へと祖国光復会の組織を急速に拡大し、反日民族統一戦線運動全般を強化、発展させることができます。

 長白一帯は、住民構成や地域的特性からして、祖国光復会の組織を国内各地に拡大するうえで拠点としての役割を果たす有利な条件を備えています。まず、この一帯は、住民のほとんどが朝鮮人であり、独立運動に参加したり、その影響を受けた人たちが大勢住んでいます。さらに国内に隣接しているため、我々が、鴨緑江、豆満江沿岸の広い地域と国内各地を行き来しながら祖国光復会の組織を拡大する組織・政治活動をおこなうには有利な地域です。ですから、何よりもまず長白一帯で祖国光復会の組織を拡大し、強固にすることに関心を払わなければなりません。

 祖国光復会の組織を国内に拡大しなければなりません。

 祖国光復会の組織を国内各地に拡大するためには、鴨緑江沿岸の甲山(カプサン)地区と新乫坡(シンガルパ)を中心とする三水(サムス)地区、豊山地区に力を入れなければなりません。甲山地区は白頭山根拠地に近いため、我々の指導を適時に受けられるだけでなく、そこの住民は以前から革命的影響を多く受けてきました。甲山地区には、我々と連係を取るために全国各地からやってきた人たちが大勢住んでいます。新乫坡を中心とする三水地区や豊山地区は、国内の革命組織と適時に連絡を取れるだけでなく、特に北部朝鮮の産業地帯とも地理的に近いことから、赴戦嶺(プジョンリョン)山脈や狼林(ランリム)山脈を利用して東海岸一帯と国内各地に祖国光復会の組織を拡大するうえで有利な条件を備えています。

 我々は、甲山、恵山、新乫坡、三水、豊山から始めて次第に清津、咸興、元山さらにはソウル、釜山に至る全国の都市と農村、漁村に祖国光復会の下部組織を早急に設けなければなりません。

 朝鮮人が多く住んでいる満州の広い地域にも、祖国光復会の組織を拡大することが必要です。東満州一帯をはじめ、満州に住む朝鮮同胞は、日本帝国主義者のために懐かしい故郷をあとにして異国に移り、民族的蔑視と階級的抑圧、搾取を受けているため反日感情が強く、祖国解放への熱望が非常に高まっています。我々は、和竜、延吉、安図、汪清、琿春、臨江、濛江など、朝鮮人が住んでいる満州の広い地域に祖国光復会の下部組織を設け、早急に拡大していかなければなりません。

 祖国光復会の拡大に伴い、それに対する指導体系を確立しなければなりません。そうしなければ、祖国光復会のすべての組織を統一的指導のもとに動く組織にすることも、新たな対象や地域に組織を円滑に拡大することもできません。

 祖国光復会の規約に定められているとおり、祖国光復会の末端組織として分会を、その上に支会、区会、県会などを設置しなければなりません。そして、その名称もそれぞれの地域の特性を考慮して、祖国光復会とするほか、民族解放同盟や反日同盟または他の名称にすることもできるでしょう。祖国光復会の組織はその名称はまちまちでも、唯一の指導体系のもとで活動し、下部組織は上部組織に、少数は多数に服従する厳格な規律を確立しなければなりません。

 広範な大衆を祖国光復会の下部組織に固く結集させなければなりません。

 祖国光復会の下部組織に朝鮮革命の基本階級である労働者と農民を受け入れて、組織的に結束することに深い関心を払わなければなりません。

 労働者と農民は、朝鮮革命の主力部隊であり、統一戦線運動においても主要な勢力です。ですから、祖国光復会の組織に労働者、農民を広く受け入れ、彼らが祖国光復会の中核としての役割を果たすよう導いていかなければなりません。こうしてこそ、祖国光復会の組織を健全な土台のうえで拡大させていくことができるのです。

 労働者や農民ばかりでなく、日本帝国主義に反対するプチブル、青年学生、知識人、民族主義者、良心的な宗教家や民族資本家を祖国光復会の組織に結集させる組織・政治活動も展開しなければなりません。

 我々の当面の闘争目的は、民族の団結した力で日本帝国主義の植民地支配を覆して祖国を解放することですから、各階層の大衆を組織的に結束させるにあたっては、日本帝国主義に反対するか否か、ということを一つの基準とすべきです。例え、階級的立場や政治的見解は異なっても、日本帝国主義に反対し、祖国の解放と民族の独立を願う人であるなら、当人が民族主義者であれ宗教家であれこだわることなく大胆に信頼して祖国光復会の組織に受け入れるべきです。長白一帯や豊山、甲山などの北部朝鮮一帯には、天道教徒が多数住んでいますが、彼らを祖国光復会の組織に結集させることは、広範な大衆を祖国解放戦線に奮起させるうえで極めて重要な意義があります。

 天道教中央の上層部の大半は、地主、有産階級出身の知識分子や民族改良主義者であり、広範な下層の教徒に無抵抗主義を説く一方、日本帝国主義と結託する道をたどっています。下層の教徒も、日本帝国主義の悪宣伝によって共産主義者に対して正しい認識をもっていません。しかし、彼らは上層部とは異なり、祖国の解放と民族的独立を切願しています。ですから、我々は日本帝国主義と結託した上層部は徹底的に孤立させ、下層の教徒はよく説得して祖国光復会の組織に積極的に受け入れるようにしなければなりません。政治工作員と人民革命軍の隊員は、下層の教徒のあいだで天道教に対する日本帝国主義の弾圧行為を暴露する一方、かつての教徒の愛国闘争や朝鮮人民革命軍の戦闘成果の話を聞かせてやり、祖国光復会の創立宣言と10大綱領をわかりやすく説明して、彼らが共産主義者に対して正しい認識をもって祖国解放戦線に合流するよう導いていかなければなりません。

 各階層の広範な大衆を祖国光復会の下部組織に結集するにあたって戒めるべき点は、信頼できない人をみだりに受け入れたり、あるいは厳選するとかいって、当然受け入れるべき人を疑いの目で見て排斥するような偏向に走ってはならないということです。我々は、誰が味方で、誰が日本帝国主義と結託した敵であるかをはっきり見極めて、反日的傾向のあるすべての愛国勢力を最大限に結集し、親日派、民族反逆者、日本帝国主義の手先を大衆から徹底的に孤立させ、祖国光復会の組織に異分子や回し者が潜り込めないようにすべきです。

 祖国光復会の下部組織を速やかに拡大するためには、大衆政治活動を強力に展開しなければなりません。

 大衆政治活動は、大衆を結集するために優先させるべき活動です。

 政治工作員と人民革命軍の隊員は、広範な人民のなかに入り、彼らに祖国光復会の創立宣言と10大綱領を説明し、浸透させなければなりません。祖国光復会の創立宣言と10大綱領には、全朝鮮民族が一致団結して反日戦に総決起することで、日本帝国主義の植民地支配体制を覆して祖国解放の偉業を達成し、富強な民主的自主独立国家を樹立する基本的課題が示されています。祖国光復会の10大綱領は、広範な人民が革命勝利の確信をもって最後まで日本帝国主義とたたかう覚悟を固めるうえで大きな作用を果たします。

 政治工作員と人民革命軍の隊員はまた、広範な人民に日本帝国主義の植民地政策の反動的本質と狡猾さをはっきり認識させて、彼らが反日闘争に積極的に立ち上がるよう導いていかなければなりません。

 大衆政治活動は、対象の特性と具体的な実情に即して多様な方法でおこなわなければなりません。

 人々の階級的立場や意識水準が異なり、また、政治活動のおこなわれる環境や実情もさまざまなため、大衆政治活動が千編一律であっては成果は望めません。政治工作員は、課された革命任務と、その時々の環境や条件、対象の特性に応じて説明と対話、講演、演劇公演など多様な方法で大衆の心の琴線に触れるような大衆政治活動をしなければなりません。

 皆さんも承知のとおり、我々が濠江にとどまっていたころ、『ある自衛団員の運命』という劇を公演して大衆を大いに感動させたことがあります。我々は公演を通じて、過酷な日本帝国主義植民地支配のもとで生活苦にあえぐ朝鮮人民の悲惨な境遇と日本帝国主義の横暴と蛮行をリアルに描写し、そのような境遇から脱して自由に生きるためには、誰もがこぞって立ち上がって日本帝国主義に反対してたたかわなければならない、ということを強く訴えました。公演が終わると、観客のなかから2人の青年が舞台に駆け上がり、自分たちは日本帝国主義の手先を務める「自衛団」に入ることはできない、と言って、その場で朝鮮人民革命軍への入隊を志願しました。すると、大勢の青年がそれに共鳴しました。これは、大衆の胸を打つ大衆政治活動がいかに大きな力を発揮するかを示す一つの好例です。

 祖国光復会の下部組織を拡大する活動は、敵を制圧し、朝鮮人民革命軍の威力を示す軍事活動と密接に結びつけておこなわなければなりません。

 朝鮮人民革命軍の白頭山地区への進出に慌てふためいた日本帝国主義者はいま、関東軍や満州国軍の大兵力を動員して人民革命軍に対する「討伐」攻勢を強めています。敵はこの4月、「満州国治安粛正計画大綱」なるものをつくって、いわゆる「治安」保障の美名のもとに大兵力を朝鮮人民革命軍の「討伐」に集中させる一方、我々の革命的影響が国内におよぶのを防ぐためあらゆる策をめぐらしています。このような状況のもとで、祖国光復会の下部組織を順調に拡大するためには、より積極的で絶妙な軍事活動によって敵を制圧し、朝鮮人民革命軍の威力を示さなければなりません。これは、祖国光復会の組織を拡大、強化する有利な条件を整え、彼我の力関係を革命の側に有利に変えるうえで重要な作用を果たします。

 我々は、この9月の大徳水ならびに小徳水戦闘で、朝鮮人民革命軍の国内進出と人民への我々の革命的影響を血眼になって防ごうとする日本軍馨に甚大な打撃を加えることによって、人民革命軍の威力を示し、人民に革命勝利の信念を抱かせ、革命勢力の強化に有利な条件を整えることができました。

 部隊のすべての指揮官は、課された革命任務を心に銘記し、現情勢に即して絶妙な遊撃戦術を駆使して、日本帝国主義侵略者に政治的・軍事的敗北を負わせなければなりません。

 祖国光復会の下部組織を拡大することは、マルクス・レーニン主義党創立の大衆的基盤を築く活動でもあります。党創立の組織的根幹をしっかりと固め、共産主義隊伍の思想的純潔と一致を保ち、また大衆的基盤をしっかり築くことは、党創立の準備において非常に重要な問題です。祖国光復会の組織が、大衆のなかに深く根をおろし、広範な大衆を結束することは、強力な革命的党創立の必須の条件であり、また、党の創立後にも党を強化、発展させる確固たる裏づけとなるものです。我々は、祖国光復会の下部組織を拡大する過程を通じて党創立の大衆的基盤をしっかりと築いていかなければなりません。

 祖国光復会の下部組織を円滑に拡大するためには、政治工作員と人民革命軍の隊員の役割を向上させなければなりません。

 政治工作員と人民革命軍の隊員は、単に日本帝国主義者とたたかう革命軍の戦闘員であるだけでなく、広範な人民大衆の利益と念願を実現するためにたたかう共産主義的闘士であり、人民を革命勝利のために立ち上がらせる組織者、宣伝者です。

 政治工作員と人民革命軍の隊員が、人民を革命勝利のために立ち上がらせる組織者、宣伝者としての役割を全うするためには、まず、マルクス・レーニン主義思想と朝鮮革命の路線と方針で武装し、それを確固たる信念としなければなりません。そして、各階層の大衆に対する活動においては、常に慎重を期し、大衆のあいだで提起される問題を手際よく処理する大衆工作方法を身につけなければなりません。同時に、いつ、いかなる場合でも、革命的警戒心を高め、任務遂行の際には、秘密を厳守しなければなりません。

 私は、皆さんが革命勝利の揺るぎない信念と百折不撓の闘争精神をもって、祖国光復会組織を速やかに拡大するために大いに奮闘するであろうことを信じてやみません。
出典:『金日成全集』1巻


<注釈>-天道教 19世紀中葉、朝鮮に起こった民族宗教。「人間すなわち天」という“人乃天”の思想を基本教理とする。


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