金 日 成

革命の種を広大な地域に積極的にまきつけよう
 汪清県太平溝で朝鮮人民革命軍北満州遠征部隊の指揮官および隊員におこなった演説
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 皆さん!

 我々は、この3月に腰営口で開かれた軍事・政治幹部会議で、遊撃区を解散して広大な地域に進出し、武装闘争をいっそう積極的に進める方針を打ち出しました。

 遊撃区を解散して広大な地域に進出する方針は、解放地区形態の遊撃根拠地を拠点にして4、5年間、武装闘争を繰り広げる過程で朝鮮人民革命軍が豊富な政治的・軍事的経験を有する強力な武力に成長し、革命勢力が全般的に強化された状況下で、抗日武装闘争をいっそう拡大、発展させるという朝鮮革命発展の要請を反映させた積極的な措置です。またこの方針は、日本帝国主義者がいかなる代価を払ってでも遊撃区を抹殺しようと悪辣に策動している状況下で、革命勢力の損失を防ぎ、敵の企図を未然に粉砕するという情勢発展の要請を反映させた主動的かつ能動的な措置です。したがって、3月の軍事・政治部会議の方針は、至極当を得たものと言えます。

 朝鮮人民革命軍は、腰営口で示された方針に従って国内と南満州、北満州の広大な地域に進出し、革命の種を積極的にまきつけることで、我々の革命勢力をいっそう拡大、強化し、日本帝国主義侵略者に甚大な政治的・軍事的打撃を与えることでしょう。

 我々、主力部隊は、朝鮮人民革命軍の全部隊が広大な地域に進出する一環として、北満州への遠征を断行することになります。

 朝鮮人民革命軍主力部隊の北満州進出は、その一帯における大規模な軍事・政治活動によって武装闘争を拡大、強化する確固たる展望を開くであろうし、遊撃隊と反日勢力を圧殺して大陸侵略計画を実現しようと狂奔する日本帝国主義侵略者に甚大な打撃を加えるうえで新たな契機を開くことでしょう。

 では、我々が活動することになる北満州の情勢はどうでしょうか。

 いま、日本帝国主義侵略者は、満州を植民地化し、ひいては中国全土とソ連を侵略する兵站基地、「強固な後方」にするため、東満州一帯はもとより、北満州とソ満国境一帯にまで膨大な兵力と軍需物資を投入しており、抗日武装部隊に対する「討伐」をいつにもまして強化しています。昨年末から今年初めに至る間にも、彼らは、寧安、額穆、東寧県一帯で警察隊を大々的に増強し、関東軍第13旅団と満州国軍第9旅団をはじめ、おびただしい兵力を配置し、革命勢力の内部からの切り崩しを狙って北満州の各地に「移民団」に変装した軍人や、訓練を受けたスパイ、手先らを送り込みました。

 北満州一帯への日本帝国主義の兵力増強策動とスパイ派遣策動が、寧林線、林密線など北満州一帯に敷設される鉄道の完工とともにさらに激化するであろうことは目に見えています。

 このように北満州の情勢は、朝鮮人民革命軍の主力部隊が北満州に進出して反日闘争の火の手をさらに強く上げることを切実に求めています。

 我々には、広大な地域に進出して軍事・政治活動を果敢に展開しうる力が備わっています。朝鮮人民革命軍は、これまでの苦難に満ちた闘争のなかで軍事的、政治的に鍛えられ、豊かな戦闘経験を積み、武力も著しく成長し強化されました。朝鮮人民革命軍が人民から肉親のように愛され、物心両面の支持、声援を受けていることは、我々の力の源となっています。

 朝鮮人民革命軍の主力部隊が北満州に進出するのは、北満州の武装部隊の要請でもあります。

 周知のように、北満州一帯では、抗日武装部隊が組織されてまだ日が浅く、人民の革命的自覚もそれほど高くないため、東満州のように反日闘争は全般的な範囲にわたって活発に展開されていません。

 日本帝国主義は、北満州でも「民族協和」だの、「東洋平和の維持」だのと言って、中国人民との相容れない矛盾を「解消」して「平穏」と「和睦」を図ろうとしており、あたかも自分らがアジアの平和維持に何らかの「寄与」でもしているかのように嘘ぶいて人民の反日気勢を麻痺させようと策動しています。また、自分らに対する人民の反抗心を共産主義者に向けさせるため、反共宣伝を執拗に繰り広げています。日本帝国主義の蛮行を東満州の人民のように直接体験していない北満州の一部の大衆は、彼らの悪宣伝に乗せられて共産主義者と抗日武装部隊に対する誤った認識から抜け出せずにいます。

 こうした状況のなか、北満州の抗日武装部隊指揮部は、我々に北満州へ来て支援してくれるよう求めてきました。

 我々、主力部隊は、北満州一帯で反日闘争の火の手をさらに強く上げるという情勢の切実な要請とあわせて、北満州の抗日武装部隊から支援の要請を受けたことから、北満州への進出を断行することにしました。

 北満州一帯へ進出する我々の部隊には、実に困難かつ重大な任務が課されています。しかし、北満州一帯の抗日武装部隊との共同戦線を実現し、広範な大衆を革命的に目覚めさせて日本帝国主義侵略者とのたたかいに奮起させるならば、抗日武装闘争をより広範囲に拡大、発展させることができます。

 我々が、北満州の広大な地域に革命の種を積極的にまきつけるうえで何よりも重要なのは、北満州一帯の人民に革命的な影響を与えて彼らを反日闘争に立ち上がらせることです。

 人民を目覚めさせて反日闘争に立ち上がらせるためには、日本帝国主義の反動宣伝の本質を暴き出さなければなりません。我々が彼らの悪宣伝を粉砕する政治活動を着実におこなわなければ、人民のあいだに共産主義者に対する誤った認識が持続する恐れがあります。我々は、人民に共産主義者は祖国を解放し、全人民が等しく幸せに暮らす社会を建設するために反日闘争の先鋒に立った真の愛国者であり、人民の利益と生命、財産を最も大切にし、そのためには命を捨てることもいとわない闘士であることをはっきり認識させて、人民が共産主義者を支持し、狡猾な日本帝国主義に対する敵がい心を抱くようにすべきです。

 人民を反日闘争へ奮い立たせるためには、彼らを革命組織に結集する活動を力強く展開しなければなりません。

 革命闘争の勝利を達成するためには、必ず広範な大衆を一つの政治勢力として固く結集しなければなりません。我々は、北満州一帯で、各階層人民の意識水準と特性に応じて反日会や農民協会など、さまざまな革命組織をつくってそこに広範な大衆を組み入れ、彼らを日本帝国主義とのたたかいに積極的に立ち上がらせるべきです。

 広範な人民との血縁的なつながりを強化することは、革命で勝利するための力の源泉です。

 魚が水を離れては生きていけないのと同様、遊撃隊は人民を離れてはいっときも生きられず、革命闘争を進めていくこともできません。

 いま、日本帝国主義者は、食糧や被服などの物資が遊撃隊に送り込まれないように封鎖政策を実施する一方、遊撃隊と人民の連係を断ち切ろうと悪辣に策動しています。こうした状況のもとで、北満州の人民が、遊撃隊への支援がとりもなおさず日本帝国主義を打ち破って植民地奴隷の境遇から解放される道であることを自覚して、肉親に対する気持ちで遊撃隊を物心両面から積極的に支援するよう導いていくべきです。

 北満州の人民に革命的な影響を与え、組織的に結集して反日闘争へと奮い立たせるためには、彼らのなかに深く入ることが必要です。

 そのためには、その地の生活風習を尊重し、礼儀正しく行動し、朝鮮人民革命軍の気高い政治的・道徳的品性を示さなければなりません。年寄りを尊敬し、女性と子どもを見守り、人民の骨の折れる仕事を誠心誠意手助けすべきです。人民の生命、財産の保護を第一の義務とし、戦闘状況や宿営時を問わず、いつ、いかなるところでも人民にいささかも損害を与えたり、迷惑をかけるようなことがあってはなりません。そうすれば、日本帝国主義がいかにデマを飛ばそうとも、人民は朝鮮人民革命軍がどのような軍隊で、誰のためにたたかう軍隊であるかを理解し、我々に心を開き、我々の言葉を信じて反日闘争に立ち上がるようになるでしょう。

 北満州の広大な地域に革命の種を積極的にまきつけるためには、また、北満州一帯で活動している抗日武装部隊を支援して武装闘争を果敢に展開しなければなりません。

 北満州の武装部隊を支援するうえで重要なのは、彼らが、政治的、思想的に固く武装するようしっかりと導くことです。皆さんは北満州の武装部隊の隊員と起居をともにしながら教宣活動を積極的におこない、彼らが日本帝国主義に対する燃えるような憎悪心と軍民一致の気高い精神、革命勝利の確固たる信念をもって反日聖戦の途上に横たわるあらゆる障害と難関を果敢に乗り越えられるようにしなければなりません。

 我々は、北満州の武装部隊に助力して、彼らを政治的、思想的に武装させると同時に、遊撃戦術を体得させるべきです。皆さんは、北満州の武装部隊の隊員に遊撃活動の原則とその諸般の運用法をしっかり身につけさせ、彼らが目前の敵の動静に対応して遊撃戦を臨機応変に展開できるようにしなければなりません。同時に我々は、彼らと連合して大規模の遊撃戦を繰り広げることで、彼らの士気を鼓舞し、実戦の過程を通じて彼らに遊撃戦術を体得させるようにすべきです。

 北満州遠征の課題を成功裏に遂行するためには、我々自身が、政治的、思想的にしっかり武装しなければなりません。

 政治的、思想的にしっかり武装することは、北満州の広範な大衆を政治的に目覚めさせて反日闘争に奮起させ、我々が軍事活動を円滑に進めるうえで重要な意義を有します。

 政治的・思想的武装で何よりも重要なのは、革命に対する忠実性をしっかり身につけることです。革命に対する忠実性をしっかり身につけてこそ、前途に立ちはだかる障害や難関を主動的に克服し、祖国の独立と人民の自由と解放のために献身的にたたかうことができるのです。皆さんは、常に、祖国を解放し、搾取され抑圧される人民を救う一念で血潮をたぎらせ、革命勝利の日まで屈することなくたたかう覚悟を固めなければなりません。

 隊伍の思想的・意志的団結の強化は、政治的、思想的に武装するうえで重要な問題の一つです。隊伍の思想的・意志的団結を強化すれば、不案内なうえに大衆的基盤の弱い北満州での不利な状況下でも、あらゆる難関と試練を克服して、北満州遠征の任務を成功裏に遂行することができます。特に、青年義勇軍出身者をはじめ、革命的鍛練の足りない青年が多く入隊した状況下にあって、部隊内の思想的・意志的団結を強化することは、ことに重要な問題となっています。

 隊伍の思想的・意志的団結を強化するためには、革命的同志愛を大いに発揮しなければなりません。

 同志を信頼し愛する精神を発揮してこそ、部隊の戦闘力を強化し、北満州一帯の遊撃部隊と広範な人民に朝鮮人民革命軍の気高い戦闘的・道徳的品性を示すことができるのです。

 皆さんは、革命的同志愛の気高い美風を大いに発揮し、指揮官は兵士を弟のようにいとおしんでいたわり、兵士は指揮官を兄のように敬ってかばい、革命同志のためにはみずからの生命をもためらうことなく、ささげなければなりません。

 北満州遠征の課題を遂行するためには、物質的準備も十分に整えることが必要です。

 物質的準備を十分に整えることは、我々自身の戦闘力を強化するだけでなく、北満州一帯の遊撃部隊を実質的に支援するうえでも極めて重要な意義を有します。

 我々は、既に、老黒山戦闘をはじめ、さまざまな戦闘をおこなって、武器と弾薬、戦闘技術機材をある程度手に入れました。しかし、それだけでは物質的準備が十分に整ったとは言えません。我々は、武器と弾薬、軍服や食糧など補給物資をより多く備蓄して、いかなる状況にあっても十分に自力で革命任務を遂行できるように準備しなければなりません。

 我々は、これから太平溝を発って寧安県一帯まで行軍しなければなりません。その途上、険阻で知られる老爺嶺を越えなければなりません。すべての指揮官と隊員は、こうした地形条件を考慮して行軍の準備を綿密に整えなければなりません。

 我々は、北満州遠征の過程で幾多の障害と難関がありうることを予想し、また不測の状況に遭遇することもありうることを覚悟しなければなりません。

 私は、皆さんがあらゆる困難と試練を自力で克服し、北満州遠征を成功裏に遂行するものと確信します。

 皆さん、革命勝利の確固たる信念をもち、天をも衝く勢いで力強く前進していきましょう。

出典:『金日成全集』1巻


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