金 日 成

当面の情勢の要請に即して革命運動を
さらに拡大・発展させよう
懐徳県五家子での朝鮮革命軍指揮官・革命組織責任者会議でおこなった演説 
1930年12月25日

 皆さん!


 我々は当初、この会議を東満州地方で開く予定でしたが、その地の情勢がひどく緊迫しているため、この五家子で開くことになりました。


 今日の会議では、当面の難局を打開して革命運動をさらに拡大・発展させる問題を討議したいと思います。


 我々は、
倫での共青および反帝青年同盟幹部会議以来この半年問、精力的に闘って革命組織を結成し、革命勢力を強化するうえで貴重な成果と経験を得ることができました。


 我々は
倫会議の方針を実行する最初の措置として、この7月初めに青年共産主義者のなかで育成された指導的中核をもって初の党組織を結成しました。これは基層党組織を拡大し、党創立の準備を健全な土台に立脚して力強く進めるうえで大きな意義をもつものです。初の党組織の結成後、我々はそれを母体として国内の穏城(オンソン)や国境一帯をはじめ、各地に基層党組織を設ける活動を活発に展開してきました。その結果、党創立の準備は進展し、また国境一帯をはじめ、党組織の影響が及んでいる地域でさまざまな形態の反日大衆団体を拡大・強化してその役割を高め、共産主義運動に対する党の指導を実現することが可能となりました。


 我々はまた、
倫で示した闘争方針にもとづき、孤楡樹で青年共産主義者からなる朝鮮革命軍を編制しました。朝鮮革命軍の編制によって、革命勢力を拡大・強化し、反日武装闘争の準備を加速させることができるようになりました。


 朝鮮革命軍の構成員は、これまで、孤楡樹、五家子をはじめ、満州各地はいうまでもなく、国内にも深く進入して政治・軍事活動を活発に展開し、大きな成果を上げました。


 孤楡樹、五家子など中部満州一帯に派遣された朝鮮革命軍と革命組織の構成員は、広範な大衆のなかに入って各階層の大衆を目覚めさせ、革命的に教育して反日の旗のもとに結束する闘争を活発に展開することで、武装闘争の大衆的地盤をいっそう固め、この過程で農村革命化の貴重な経験を積みました。


 特に、この8月、国内に派遣された朝鮮革命軍の構成員は、大胆不敵な戦闘行動で豊山(プンサン)と洪原(ホンウォン)一帯の悪質な日本人警官を懲罰して敵の心胆を寒からしめ、至る所で大衆政治活動を活発に展開し、塗炭の苦しみをなめている朝鮮人民に勝利の信念を抱かせ、抗日武装闘争の大衆的地盤をさらに固めることに大きく寄与しました。


 実に、これまで我々は、最悪の状況のもとで革命組織を結成し、革命勢力を強化する活動を精力的に展開して大きな成果をおさめました。


 しかし、目下の政治情勢は、我々に新たな闘争方針を確定し、より積極的な闘争へと勇躍立ち上がることを求めています。日本帝国主義の中国侵略策動が刻一刻、露骨さを増しているうえ、分派・事大主義者が起こした無謀な暴動の後遺症によって情勢は極度に緊迫しています。


 周知のように、海外膨張の野望を遂げようと狂奔している日本帝国主義は、いま、まさに満州まで植民地にしようとする動きをいっそう露呈しています。悪辣な日本帝国主義は、その侵略的野望を達成するにあたって満州一帯の朝鮮人反日勢力が大きな障害になると見て、中国の反動軍閥をそそのかして革命組織を弾圧し、朝鮮の青年共産主義者と反日運動家を手当たり次第に検挙、投獄し、虐殺しています。


 一方、愚鈍で無知蒙昧な分派・事大主義者は、その卑劣な政治的野心を遂げるために5・30暴動や8・1暴動といった無謀な暴動を起こして革命組織を敵の前に露呈し、成長しつつある革命勢力を敵の仮借ない弾圧にさらすという破局を招きました。こうした弊害は、特に、東満州で顕著にあらわれています。


 緊迫した情勢のもとで、我々共産主義者には、情勢の推移を正確に判断してこの厳しい局面を打開する、より積極的で新たな闘争方針を模索すべき課題が提起されています。


 当面の難局を打開するうえで何よりも重要なのは、革命大衆のくじけた政治的意気を盛り上げて彼らが勝利の信念を失わないようにし、破壊された革命組織をすみやかに立て直し拡大する活動を用意周到かつ積極的に展開することで革命勢力を極力温存し、その拡大を図ることです。


 我々に課されているこの重大な革命任務を成功裏に遂行するうえで焦眉の問題は、何としても東満州での活動を強化することです。


 東満州は、分派・事大主義者が引き起こした極左冒険主義的暴動による被害が最も甚だしい地域です。


 周知のように分派・事大主義者は、多数の革命家と人民の貴い血を流させた5・30暴動から深い教訓をくみ取るどころか、この8月1日の「国際反戦デー」と8月29日の「国恥日」を契機に、敦化を中心とした吉敦沿線一帯でまたしても無謀な暴動を起こして、敵に革命組織と革命勢力をさらに露呈し、過酷な弾圧の口実を与えてしまいました。


 こうして、敵の野獣じみた弾圧に直面して情勢が悪化すると、ことの判断をできない一部の人たちは、敵の狂気じみた弾圧と虐殺蛮行があたかも共産主義者の無分別な暴挙によって引き起こされたものと思い込んで共産主義者を恨み、また一部の頑迷な民族主義者のあいだでは共産主義者を敵視する傾向がことに顕著になりました。


 このような状況のもとで、東満州での活動を強化するための正しい対策を講ずることは、一刻の猶予も許されない切実な要求となっています。


 我々革命家には、試練に直面してへたばりこんだり、尻ごみしたりする権利はありません。ひたすら、死を決して闘いに敢然と立ち上がって当面の難局を克服し、打開する義務しかありません。


 東満州は、我々が朝鮮革命運動の総体的な発展、とりわけ武装闘争を準備するうえで主要な拠点になることを見通して、早くから開拓しようと多大の関心を向けてきたところです。そのため、我々は、既に内島山をはじめ、白頭山一帯の多くの地域に有利な活動拠点を築き、この秋には党組織の結成のために、国内の穏城地区に行った帰りに東満州の党組織と革命組織の実態を調べて打開策を講ずる協議会も開きました。


 東満州は、特に、自然地理的にわが国と隣接し、朝鮮人が住民の約80%を占めており、その階級的構成も良好です。


 それゆえ、我々は早急に正しい闘争方針を打ち出し、東満州で破壊された革命組織を立て直し、拡大する活動をより積極的に展開して、この一帯で革命闘争の火の手が勢いよく燃え上がるようにしなければなりません。


 もちろん、かなりの革命組織が破壊され、多数の革命同志が敵に逮捕されましたが、彼らがまいた革命の種は、いまなお生き続けており、我々の革命家たちは組織とのつながりの復活を待ち望んでいます。我々が革命に対して担っている崇高な使命を自覚し、大衆のなかに深く入り、革命の種を見つけ出して大事に育てるため献身的に尽くすならば、我々の闘争目的は必ず達成されます。問題は、我々が革命の種をいかに見つけ出してよく育てるかにかかっています。


 我々は、大衆のなかに深く入って彼らに依拠し、身を潜めている組織構成員を一人ひとり捜し出して組織との連係を回復し、萎縮している彼らに力と勇気を与えて、彼らが信念をもって革命組織の立て直しと拡大に献身するよう手助けしなければなりません。


 我々は、至る所で共青と反帝青年同盟、農民協会など大衆団体を立て直し、新設し、そこに各階層の反日大衆を結集させるべきです。


 革命組織の立て直しと拡大にあたって、特に重要な問題は、既成の党組織をさらに強固にするとともに、闘争を通じて鍛えられたすぐれた中核分子で新しい党組織を結成し拡大することです。


 党組織の拡大に伴い、その指導体系を確立し、党組織に破壊された革命的大衆団体の立て直しと拡大に第一義的な関心を向けさせなければなりません。


 当面の難関を打開し、革命を力強く前進させるためには、反日武装闘争の準備を促進しなければなりません。


 これまでの我々の反日闘争の経験は、革命武力によってのみ、日本帝国主義の反革命武力を撃滅して祖国の解放を達成できる、ということを示しています。特に、目下の情勢は、我々が
倫で示した武装闘争路線にもとづいて反日武装闘争を本格的に展開するあらゆる準備をしっかりと整えることを切実に求めています。


 武装闘争の準備を促進するためには、我々自身が軍事行動の指揮や、大衆政治工作を巧みにおこなえるよう能力を高めるとともに、闘いのなかで鍛えられた信頼できる構成員で革命武力の中核隊列を整備・拡大しなければなりません。


 武器を獲得する戦いをいっそう精力的に展開することは、武装闘争の準備を促進するうえで最も重要な問題の一つです。


 つま先まで武装した日本帝国主義を相手に戦う武装闘争を成功裏に展開するためには、武器の準備に万全を期さなければなりません。


 我々は、敵の武器を奪取したり、義兵運動や独立軍に参加した人たちから武器を集めたり、または武器を購入したり製造したりして、革命武力創建の軍事的土台を築かなければなりません。


 武装闘争の大衆的地盤を強固に築かなければなりません。


 我々は、これまでの農村革命化の経験を生かして大衆のなかに深く入り、彼らを革命的に教育し目覚めさせて、革命的な大衆組織に結集させるために積極的に活動しなければなりません。こうして、いかなる厳しい状況のもとでも武装闘争を活発に展開できる大衆的地盤を強固に築かなければなりません。


 我々は、世界の革命勢力との国際的連帯の強化にも深い関心を向けるべきです。


 朝鮮革命は、植民地民族解放闘争の一環として進められているのですから、世界革命と緊密なつながりがあります。朝鮮革命が成功裏に遂行されれば、それだけ世界革命に寄与することになり、世界革命が順調に進展すればそれだけ朝鮮革命に有利な条件が整うことになります。


 当面する緊迫した政治情勢に照らして見ても、国際革命勢力との連係を強化することは極めて重要な問題です。


 最近コミンテルンは、我々との連係を図るため連絡員を派遣してきました。朝鮮革命は世界革命と緊密につながっており、我々は世界の革命勢力との国際的連帯を強化するために努力しているのですから、コミンテルンの連絡員が来たのを機にコミンテルンと連係を保つ必要があると思います。


 我々は、コミンテルンに、わが国の厳しい革命情勢と、朝鮮革命の前途に横たわっている難局を打関するために朝鮮の共産主義者が堅持している革命的立場と、我々が主導的に講じている措置についても知らせコミンテルンとの連係を強化する具体的な対策について意見を交わすことも必要であると思います。


 我々がコミンテルンとの連係を図るからといって、決して先行した「共産主義者」の前轍を踏んではなりません。かつて、共産主義者をもって任じた先行者たちが朝鮮共産党を破壊した後も自派を中心に「党」の再建を図る分派的な目的のもとに、それぞれコミンテルンを訪ね回りながら醜態を演じたことは我々のよく知るところです。分派分子がてんでにコミンテルンの承認を受けようと訪ね回ったため朝鮮共産主義運動はさらに分裂し朝鮮革命は厳しい試練に直面しました。


 我々は、このことから深い教訓をくみ取り全世界の労働者階級との国際的連帯を強め、コミンテルンとの連係を図るにあたっては、常に、我々自身が朝鮮革命の主人であるという自覚と原則的立場を堅持し自己の革命的本分を全うしなければなりません。


 皆さん!


 朝鮮革命の前途には、幾多の障害と難関が横たわっています。いかに、前途が険しくとも朝鮮革命は勝利に向けて前進し、必ずや新たな高揚をもたらすでしょう。


 皆さん、革命勝利の揺るぎない信念をもち、大衆のなかに深く入って彼らを立ち上がらせ限りない献身性と犠牲的精神を発揮して闘い、革命の前途に横たわっている難局を打開し、反日民族解放闘争を新たな高い段階へと導いていきましょう。
出典:『金日成全集』1巻

<注釈>-8・1暴動 M・L派系の分派分子が1930年8月1日の国際反戦デーを前後して吉敦鉄道沿線一帯を中心に起こした極左冒険主義的暴動。


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