『金日成主席革命活動史』

第9節 人民政権の強化方針を提示。
人民経済の主体化、現代化、科学化を指導


 金日成主席は、社会主義経済建設と文化建設の促進とならんで、人民政権の機能と役割の強化に大きな関心を払った。

 社会主義・共産主義の建設を促進して人民大衆のより自主的で創造的な生活を保障するためには、革命と建設の強力な武器であり、人民大衆の自由と権利の擁護者である人民政権を強化しなければならない。人民政権の機能と役割を強化しなければ、社会主義制度の強化、発展と全社会のチュチェ思想化偉業の促進をはかることもできず、また、人民大衆の民主主義的自由と権利の擁護も創造的な生活の保障も期することができない。

 第2次7か年計画の高い目標を達成し、社会主義の完全な勝利を促進し、祖国の自主的平和統一を速やかに実現すべき課題が提起されていた当時の情勢は、人民政権とその機能・役割の強化を緊切に求めた。

 アメリカをはじめとする帝国主義者が、「人権擁護」を唱え民主主義にかんする反動理論をふりまき、国際共産主義運動内の日和見主義者が政権建設の革命的原則を拒否する、さまざまな日和見主義的理論を流していた状況にあって、このことはさらに重大な問題となった。

 主席は1977年12月、最高人民会議第6期第1回会議でおこなった『人民政権をいっそう強化しよう』と題する演説で、主体的な政権建設理論を全面的に体系化し、人民政権強化の指針を明らかにした。

 主席はまず、チュチェの社会・歴史観にもとづいて国家権力の本質と、その革命と建設、社会発展における地位を科学的に解明した。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「国家権力は、政治的支配権であり、人間の地位と役割を規定する基本的要因です」(『人民政権をいっそう強化しよう』1977年12月15日)

 勤労人民大衆は、歴史の主体であり、社会発展の原動力である。勤労人民大衆がなければ社会が存立しえないし、歴史の発展はありえない。

 しかし、どの社会においても勤労人民大衆の地位と役割が同一であるわけではない。階級社会における人間の地位と役割は、国家権力を握っているか否かによって決定される。それは、人間の自主的権利が国家権力に集中的に表現されるからである。搾取社会では、国家権力を掌握している搾取階級のみが支配権を握ってすべての権利を行使し、国家権力を掌握していない勤労人民大衆はいかなる自由も権利も享有できず、搾取と抑圧の対象となるのみである。勤労人民大衆は、権力を掌握した社会主義社会においてはじめて、国家と社会の真の主人となる。

 主席は、権力問題は革命における基本的問題であり、勤労人民大衆は権力を握り国家と社会の主人となったときはじめて、革命と建設のすべての問題を成功裏に解決することができると指摘した。そして、権力問題にかんする朝鮮労働党の闘争史と経験を分析し、共和国人民政権は勤労人民大衆に国家と社会の主人としての地位を保障し、革命と建設において主人としての役割を果たせるようにする真の人民の政権であると明らかにした。また、チュチェの社会・歴史観にもとづいて国家権力の本質と地位、共和国人民政権の性格と優位性を解明し、労働者階級の党と人民大衆が権力問題を正しく解決し、社会主義制度を強化するための指導指針を示した。

 主席は次に、社会主義国家の基本的活動方式と、これを実施するための課題を全面的に明らかにした。

 社会主義国家の基本的活動方式は、社会主義的民主主義である。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「人民政権が人民の忠僕としての使命をまっとうするためには、国家活動において民主主義を徹底させなければなりません。(略)
 (略)この世に真の民主主義はただ一つあるだけであり、それは勤労人民大衆のための民主主義、社会主義的民主主義です」(同上)

 民主主義とは一言でいって、勤労人民大衆の意思を集大成した政治である。すなわち、国家が、労働者、農民をはじめ、広範な勤労人民の意思にもとづいて政策を樹立し、人民大衆の利益にかなうようそれを貫き、勤労人民大衆に真の自由と権利、幸せな生活を実質的に保障するのが民主主義である。真の民主主義はただ一つであり、勤労人民大衆のための民主主義、すなわち、社会主義的民主主義がそれである。したがって、社会主義的民主主義は、勤労人民大衆の国家である社会主義国家の基本的活動方式となるのである。

 主席は、社会主義的民主主義を徹底的に実施する課題を明らかにし、そのためには、勤労人民大衆を人民政権の活動に広く参加させ、国家政治生活におけるその役割をたえず高め、社会主義経済・文化建設をおし進めて社会主義の物質的・技術的基盤を強化し、各種の人民的文化施策を実施して勤労大衆に高度の物質・文化生活を実質的に保障するとともに、人民大衆の利益を侵し、社会主義的民主主義の破壊を企む敵対行為と積極的にたたかうべきであると強調した。

 主席はまた、ブルジョア民主主義と帝国主義者の「人権擁護」論の反動的本質を暴露し、資本主義社会の「民主主義」、ブルジョア民主主義は勤労人民大衆の民主主義ではなく、少数の搾取階級のための「民主主義」であり、したがって、本来の意味での民主主義ではないと指摘した。また、帝国主義者の唱える「人権」は、人民の人権ではなく、人民の敵の人権であり、かれらの言っている「自由」は、人民の民主主義的自由ではなく、帝国主義者と追随者の破壊活動の自由であると強調した。

 主席はさらに、人民政権を強化するためには、官僚主義とあくまでたたかわなければならないと指摘した。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「人民政権をいっそう強化し、人民政権にその使命をまっとうさせるためには、官僚主義に反対しなければなりません」(同上)

 官僚主義とのたたかいは、古い社会の遺物を一掃して人民政権を強化し、社会主義的民主主義を実施して人民大衆の利益を擁護するたたかいである。

 主席は官僚主義をなくすためには、人民政権機関の活動家が人民大衆のなかに入ってかれらの意見に耳を傾け、なにごとにつけ人民の利益を重んじるべきであり、国家・経済機関の活動家がまず社会主義法を厳守すべきであると指摘した。

 主席の演説『人民政権をいっそう強化しよう』は、全社会のチュチェ思想化の要請に即して人民政権を強化する方途を示した綱領的な文献であり、政権建設における労働者階級の党の指導指針である。演説はまた、権力問題、特に社会主義社会における政権建設の原則的問題に深い科学的・理論的解明を与え、社会主義国家を中傷する帝国主義者と社会主義政権建設の革命的原則をねじまげる日和見主義者に致命的打撃を加えた歴史的な文書である。

 主席は、人民政権の機能と役割の強化に力を入れた。そして、政権機関の幹部隊列を党と革命に忠実な人でかため、政権機関の権力機能を強化するとともに、国家・経済機関の幹部が、チョンサンリ方法とテアンの事業体系にもとづいて人民に依拠して活動するようはかった。また、人民政権機関が、国家経済管理と人民生活に責任を負う世帯主として経済・文化建設の指導と供給活動を改善し、人民の物質・文化生活の向上に責任をもつよう措置をとった。これと合わせて、政権機関幹部の官僚主義をなくす思想教育と思想闘争を強化するとともに、国家法秩序の確立のため、社会主義遵法生活指導委員会の役割を高めるようにはかった。

 主席の指導によって、人民政権機関と、その機能と役割が強化され、社会主義の完全な勝利を促す強力な武器がととのえられた。

 主席は社会主義の完全な勝利を早めるために、人民経済の主体化、現代化、科学化と第2次7か年計画の遂行をめざす新たな社会主義経済建設綱領を示し、その実行をおし進めた。

 主席は1977年12月、党中央委員会第5期第15回総会と最高人民会議第6期第1回会議で、人民経済の主体化、現代化、科学化の方針を提起し、第2次7か年計画の展望目標を示した。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「人民経済の主体化、現代化、科学化をおし進めることは、社会主義建設を促進し、国の経済的威力を強化する決定的な裏付けである」(『朝鮮民主主義人民共和国人民経済発展第2次7か年(1978〜1984)計画について』1977年12月17日)

 主席は、経済建設を促進して強力な社会主義・共産主義の物質的・技術的基盤をきずくためには、人民経済の主体化、現代化、科学化を実現しなければならないと指摘した。

 人民経済の主体化は、自国の資源と技術にもとづいて自国の実情に合う経済を建設し発展させることであり、現代化は、立ち後れた技術を先進的な技術に改造して人民経済の技術装備水準を高めることであり、科学化は、科学・技術を発展させて各部門の生産と経営活動を新しい科学的土台にすえることである。

 人民経済の主体化、現代化、科学化を実現してはじめて、増大する社会の物質的需要を自国の力でみたす経済の自立性を確保することができる。また、自然改造を成功裏に進め、労働生産性を最大限に向上させて、必要に応じて分配することのできる程度に生産力を発展させ、精神労働と肉体労働の差を含むあらゆる労働の差を完全になくすことができる。

 したがって、人民経済の主体化、現代化、科学化は、労働者階級の党が社会主義・共産主義経済建設で一貫して堅持すべき戦略的路線である。

 主席は、人民経済の主体化、現代化、科学化を貫徹するためには、主体化を基本とし、これを優先させながら、同時に現代化と科学化をおし進めるべきであると指摘した。

 主体化をはなれた現代化、科学化は、人民の自主性の実現をめざす社会主義・共産主義経済建設の根本目的にそぐわず、現代化、科学化を無視しては主体化を実現することができない。したがって、主体化を基本にしなから、同時に現代化と科学化をおし進めるべきである。

 主席の独創的な人民経済の主体化、現代化、科学化の路線は、社会主義・共産主義の物質的・技術的基盤構築の性格と目標と実現方法を明らかにした科学的な路線であり、経済建設を最大限におし進めて社会主義・共産主義の物質的要塞の占領を早める革命的な路線であり、社会主義建設の高い段階に達した共和国経済発展の成熟した要請を反映した正しい路線である。

 この路線が示された結果、朝鮮人民と世界各国の革命的人民に社会主義・共産主義経済建設の具体的な展望が示され、労働者階級の経済理論の宝庫を豊かにし、さまざまな反動的・日和見主義的経済理論に決定的な打撃を与えた。

 主席は、人民経済の主体化、現代化、科学化を促進するための第2次7か年計画の課題を示した。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「第2次7か年計画の基本課題は、人民経済の主体化、現代化、科学化を促進し、社会主義経済土台をさらに強化し、人民生活をいちだんと向上させることである」(同上)

 第2次7か年計画の工業部門の中心的課題は、既存工業の土台を最大限に活用、拡充し、工業の主体性を強化し、工業全般を現代化、科学化することであった。同期間に工業生産は2.2倍、そのうち生産手段生産は2.2倍、消費財生産は2.1倍に増大させることが予定された。また農業部門の中心的課題は、自然改造を大々的に進め、農村の技術革命を促し、農業を工業化、現代化し、農業生産を科学化、集約化することであった。同期間に穀物1000万トンの生産目標を達成し、各種の野菜、油脂作物、工芸作物の増産が予定された。さらに、運輸および逓信、基本建設、教育、科学、文化、人民生活分野の中心的課題も示された。

 主席の示した第2次7か年計画は、人民経済の主体化、現代化、科学化をおし進め、社会主義的自立民族経済の威力を強化する雄大な経済建設綱領であり、社会主義・共産主義建設を早める設計図である。

 主席は、人民経済の主体化、現代化、科学化と第2次7か年計画の遂行に大きな力を入れ、一連の革命的な措置を講じた。

 主席は「自力更生の革命精神をさらに高度に発揮しよう!」という革命的なスローガンを示し、すべての幹部と勤労者が自力更生の革命精神を発揮して不足するものは探しだし、ないものはつくりだして、みずからの力と技術と資源で経済建設を進めるようはかった。全党員と勤労者を経済建設に決起させるため、1978年1月の党中央委員会第5期第16回総会で全党員に送る党中央委員会の手紙を採択した。また、経済建設の指導と管理を改善するため、政務院から工場、企業所にいたる生産指揮体系を確立し、すべての国家・経済機関と幹部が、経済管理においてテアンの事業体系の要求を貫徹し、特に、政治活動、対人活動をすべての活動に優先させて大衆の自覚的熱意と創造的知恵を十分に発揮させるようはかった。これと合わせて、生産能力と潜在力を最大限に引き出し、節約制度を強め、既存の労働力と設備および資材をもって、より多く生産し建設するよう経済組織活動を強化した。また、経済活動にたいする党の指導を強めるため、党の経済部署を強化する一方、各党組織が経済課題の遂行に力を入れ、党活動と経済活動を密着させるようはかった。

 これらの措置は、広範な勤労大衆を経済建設に奮い立たせ、生産の飛躍と革新をもたらす裏付けとなった。

 主席は、人民経済の主体化、現代化、科学化と第2次7か年計画の遂行を陣頭で指揮した。そして、全国労働行政活動者大会、全国財政・銀行機関活動者大会、全国水産部門活動者大会、全国地方産業部門活動者大会、全国農業大会など人民経済各部門の会議を開いて、経済建設の課題と遂行方法を示し、平壌市、南浦市、平安南北道、咸鏡南北道、清津市、江原道、黄海南道などの重要工業地区や全国の農村を訪ねて、懸案の問題の解決策を講じ、新しい展望計画の遂行へと党員と勤労者を呼び起こした。

 主席はまず、原料、燃料、動力問題を重視し、その解決のために大きな力を傾けた。そして、茂山鉱山、剣徳鉱山など埋蔵量の豊富な大鉱山を大々的に拡張し、生産を正常化するとともに、すべての鉱山を整備、補強して鉄鉱石および非鉄鉱物生産地の強化をはかった。また、安州炭鉱に近代的な技術手段と資材、労働力を集中して石炭生産能力を大きく拡充し、全国が炭鉱を支援し、各地で中小炭鉱を開発する措置をとった。これとともに、北倉火力発電所の拡張工事を促し、建設中の水力発電所の完工を早め、各地方に自力で多くの中小発電所を建設するようはかった。

 こうして、共和国北半部の原料、燃料、動力基地が強化され、すべての経済部門を急速に発展させうる強力な基盤がきずかれた。                     

 主席はまた、国内の原料と燃料によって工業を建設する原則に立って、各工業部門の補強と新設に力を入れ、金策製鉄所の熱間および冷間圧延分工場の完工を促した。金属2次加工品基地が多くつくられ、コークス生産の新しい技術上の問題が解決されて、金属工業は完備し、その自立性が強化された。また、国内原料による新しい合成繊維および合成樹脂工業部門が拡張され、化学工場が多く新設されて、増大する各種化学品の需要を国産で円滑にみたせるようになった。

 主席はまた、工業部門の技術装備を全般的に改善する措置をとった。こうして、大安重機械総合工場をはじめ、多くの機械工場が新設されて、近代的な大型および特殊工作機械と、工場、企業所の重型設備が国内で製作されるようになった。また、自動化要素・計器・器具生産工場が強化されて各種自動化手段の生産が拡大され、人民経済各部門に供給された。

 主席は、経済建設の進展をはかって輸送および貿易の発展にも力を入れた。こうして、鉄道の電化が促されて、電気機関車による幹線区間の一元化輸送体系が完成し、物資別集中輸送、連携輸送、コンテナー輸送の3大輸送方針が貫かれて増大する輸送の需要が円滑にみたされた。また、貿易の多角化と多様化がはかられて対外輸出基地が強化され、南浦、清津、海州など多くの港が拡充され現代化した。

 主席の正しい指導によって生産と建設は新たな高揚を迎え、人民経済を主体化、現代化、科学化し、第2次7か年計画をくりあげ完遂するたたかいでは大きな成果が達成された。

 主席は、人民経済の主体化、現代化、科学化を実現するたたかいのなかで隠れた英雄たちを発見し、「隠れた英雄たちに見習う運動」を提唱した。

 1979年10月、人民経済の各部門を現地指導していた主席は、個人の名誉や報酬をのぞまず、ひたすら党と革命のため、祖国と人民のためにすべてをささげてたたかっている科学者と3大革命グループの高潔な精神と業績を高くたたえ、その模範に見習う運動を大衆的に展開するよう呼びかけた。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「各級党組織と勤労者団体組織は、勤労者のあいだで政治・思想活動を強化し、隠れた英雄の模範に見習う運動を力強くくりひろげて、すべての勤労者が、党と革命にたいする高い忠誠心と自力更生、刻苦奮闘の革命精神をもって、社会主義建設に献身するようにしなければなりません」(『新年の辞』1980年1月1日)

 隠れた英雄たちに見習う運動は、3大革命において決定的な前進が遂げられ、全社会のチュチェ思想化が成功裏に実現されている革命の新たな高い発展段階の要請に即して、党の教育方法である模範的事実による感化教育方法を具現した大衆的な思想改造運動である。

 この運動は、社会の全構成員を主席と党に忠実な熱烈な共産主義革命家につくる共産主義的思想改造運動であり、科学・技術を世界的水準に引きあげて社会主義建設を促す共産主義的技術改造運動であり、思想意識の改造と生産に限らず、活動方法と作風にいたるすべての分野で革新を起こすための共産主義的社会改造運動である。

 主席は、隠れた英雄たちに見習う運動を全党的、全社会的に展開する措置を講じた。主席の構想にもとづいて党中央は、各級党組織が党員と勤労者に主席への限りない忠誠心をつちかわせることに重点をおき、技術革命の時代にかなった主体的な科学・技術を発展させる方向で運動を展開するよう指導した。また、幹部が常に党の立場に立って大衆のなかに入り、実践をもって大衆を導く指導作風と活動作風を所有し、それを具現するたたかいと結びつけて運動を進めるようにし、特に、この運動を3大革命赤旗獲得運動と結びつけて活発に進めるようはかった。こうして、各部門では隠れた英雄の隊列が急速に拡大し、全社会の革命化、労働者階級化が促され、社会主義経済建設は新たな高揚を迎えた。

 主席の指導によって、人民経済の主体化、現代化、科学化が急速に進められた結果、社会主義的自立経済が強化され、人民経済の各部門が近代技術の土台にすえられ、生産と経営活動はより科学的に進められるようになった。

 人民経済各部門の生産が急速に伸び、1980年9月までに第2次7か年計画の3年分課題が超過遂行され、1979年度の工業総生産高は1970年の3.8倍に達し、穀物生産も大きく伸びた。

 これは、主席の示した人民経済の主体化・現代化・科学化路線の輝かしい勝利であり、全社会のチュチェ思想化を促す裏付けとなった。





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