『金日成主席革命活動史』

第9節 不朽の労作『資本主義から社会主義への過渡期と
プロレタリアート独裁の問題について』。
社会主義の完全勝利と最終的勝利にかんする理論の展開


 金日成主席は社会主義の全面的建設をおし進めるなかで、過渡期とプロレタリアート独裁問題、社会主義の完全勝利と最終的勝利の問題の解決に心を砕いた。

 これらの問題は、社会主義・共産主義建設の革命的路程を解明し、科学的な戦略・戦術を作成するうえで解決がまたれる原則的な問題であるが、朝鮮で社会主義建設が本格化し、党員と勤労者のあいだでチュチェの思想体系を確立する課題が前面に提起されていた当時、その解決は猶予のならないものとなった。社会主義の全面的建設を推進するためには、党員と勤労者に社会主義・共産主義建設にかんする正しい理解を与えるべきであり、一部に生じていた事大主義、教条主義を克服し、チュチェの思想体系を確立するためにもこの問題が正しく解決されなければならなかった。

 特に、国際共産主義運動内の日和見主義者が、過渡期とプロレタリアート独裁問題、社会主義の完全勝利と最終的勝利の問題について誤った見解を流し、社会主義・共産主義建設を難渋させていた当時の事態は、この問題の早急な解決を求めた。

 主席は、1967年5月に発表した『資本主義から社会主義への過渡期とプロレタリアート独裁の問題について』、翌年9月に発表した『朝鮮民主主義人民共和国は、我が人民の自由と独立の旗印であり、社会主義・共産主義建設の強力な武器である』などの著作で、この問題について全面的な解明をおこない、現時代の要請にこたえた。

 主席はまず、問題解決の方法論的指針を明らかにした。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「過渡期とプロレタリアート独裁の問題も、ほかのすべての科学、理論的問題と同じように、必ず我が党のチュチェ思想から出発して解かなければなりません」(『資本主義から社会主義への過渡期とプロレタリアート独裁の問題について』1967年5月25日)

 チュチェ思想は、共産主義者が備えるべき科学的かつ革命的な世界観であり、現時代の革命と建設における唯一の正しい指導思想であり、すべての問題を正しく解決する思想的・理論的・方法論的指針である。したがって、過渡期とプロレタリアート独裁、社会主義の完全勝利と最終的勝利の諸問題も、チュチェ思想にもとづいて考察すれば、教条主義や事大主義をおかさずに正しく解決することができる。

 主席は、チュチェ思想にもとづいて過渡期問題を解明した。

 ここではまず、過渡期の界線が独創的に設定された。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「我々が、社会主義建設を前進させて中産階層を我々の側に完全に獲得するようになったとき、労働者階級と農民との差異をなくし、無階級社会を建設するようになったとき、資本主義から社会主義への過渡期の任務が遂行されたといえるでしょう」(同上)

 主席は、過渡期問題では、その界線を正しく引くことがもっとも大切であるが、そのためには、先行理論を当時の歴史的条件や前提を考慮せずにそのまま踏襲すべきでなく、現時代の社会歴史的条件と朝鮮の実践的経験にもとづいて新たに解明すべきであると指摘した。

 現時代の特徴の一つは、資本主義の発展段階を正常に経なかったか、資本主義がある程度発展しても農村は資本主義化されなかった国々で、社会主義革命が勝利し、社会主義建設が進められていることである。これらの国では、社会主義革命の遂行後も革命と建設をつづけて、旧社会からひきついだ農村の思想的・技術的・文化的後進性とそれによる労働者階級と農民の階級的差を解消し、国の物質的・技術的基盤を強化して中産階層も社会主義を積極的に支持するようにしなければならない。そうなるとき、資本主義の復活を防ぎ、社会主義の完全な勝利が達成できるのである。

 主席は、過渡期は社会主義制度の確立をもって終わるのでなく、社会主義の完全勝利、すなわち中産階層を完全に獲得し、無階級社会が実現するときまでつづくということを明確にした。過渡期の界線をこのように設定せず、搾取階級の廃絶、すなわち社会主義制度の樹立を過渡期の界線と見るならば、右よりの誤りをおかすことになる。この場合、資本主義の影響の危険性を過小評価し、くつがえされた搾取階級の残存分子と古い思想を克服する階級闘争を放棄するならば社会主義建設を停滞させ、ひいては革命の獲得物を失うことにもなりかねない。逆に共産主義の高い段階までを過渡期と見るならば極左的偏向をおかすことになる。これは事実上過渡期の界線を引かないのと変わりなく、したがって、各革命段階に合った科学的な戦略・戦術の作成がなおざりにされ、社会主義・共産主義建設は積極的におし進められなくなる。

 主席は、過渡期が終わったのち共産主義の高い段階に移行する合法則的な過程も明らかにした。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「むろん、過渡期が終わったからといって、すぐさま共産主義の高い段階に移行するわけではありません。過渡期が終わっても、共産主義の高い段階へはいるためには、革命と建設をつづけて、各人は能力に応じて働き、必要に応じて分配をうける水準にまで生産力を発展させなければなりません」(同上)

 社会主義の完全勝利は、共産主義の高い段階の実現を意味しない。社会主義が完全に勝利しても、古い思想の影響が人々の意識から一掃されるわけでなく、生産力も各人が能力に応じて働き必要に応じて分配を受けるほどには発展せず、精神労働と肉体労働の差も存在する。したがって、共産主義の高い段階へ移行するためには、過渡期以後も社会の全構成員をチュチェ型の共産主義革命家に育成し、共産主義の物質的・技術的基盤をきずき、あらゆる労働の差をなくすたたかいをつづけなければならない。

 主席は、過渡期から共産主義への移行は、社会主義・共産主義建設の全期間、条件がととのうにつれて漸次、共産主義的施策を実施する方法で実現しなければならないと指摘した。

 共産主義社会は、勤労人民大衆が自然と社会のいっさいの束縛と従属をふりきって、完全に自主的で創造的な生活を営む社会であるだけに、それは一挙には建設できず、条件がととのいしだい、共産主義的施策を漸次実施する方法で完成していかなければならない。

 主席はまた、世界に帝国主義が存在していても、一国ないし一部の地域で過渡期が終われば先に共産主義の高い段階へ移行しうることを解明した。

 全世界において社会主義の完全勝利を達成し、共産主義の高い段階へ移行する政治的・思想的・社会経済的・物質的条件は同時にととのうものではなく、個々の国を単位としてつくられる。したがって、世界に帝国主義が存在していても、共産主義実現の条件と可能性がととのえば、一国ないし一部の地域で先に共産主義の高い段階へ移行することができるのである。

 主席は、プロレタリアート独裁問題について理論的解明をおこなった。

 金日成主席はまず、プロレタリアート独裁の存続期間について明らかにし、次のように述べている。

 「(略)プロレタリアート独裁が過渡期の全期間にわたって存在しなければならないということはいうまでもなく、過渡期が終わった後にも、それは共産主義の高い段階まで、必ず存続されなければなりません」(同上)

 過渡期とプロレタリアート独裁の問題は、密接な関係にありながらも、互いに性格の異なる問題である。過渡期問題は、社会生活の全分野で資本主義にたいする社会主義の完全な勝利を達成する歴史的な時期の問題であり、プロレタリアート独裁問題は、階級闘争の武器、社会主義・共産主義建設の武器にかんする問題である。したがって両者は、別個の問題として考察しなければならない。

 プロレタリアート独裁は、過渡期の全期間にわたって必要である。過渡期には厳しい階級闘争とならんで、すべての分野で資本主義の遺物を一掃し社会主義の完全勝利を達成するたたかいが進められるが、その成果はプロレタリアート独裁によってのみ保障される。プロレタリアート独裁は過渡期が終わったのちも、共産主義の高い段階にいたるまで存在しなければならない。こうしてこそ、社会の全構成員を革命化し、共産主義の物質的・技術的基盤をきずくことができるのである。また、共産主義の高い段階に入っても、世界に帝国主義が残っている限りプロレタリアート独裁は必要である。世界革命が完成されず資本主義と帝国主義が残存していては、一国ないし一部の地域で共産主義が実現しても、そうした社会は帝国主義の侵略の危険から免れえず、外部の敵と結託した内部の敵の反抗も免れない。このような状況のもとでは共産主義の高い段階においても国家は凋落せず、プロレタリアート独裁が存在しなければならない。

 プロレタリアート独裁の必然性をこうした角度から理解せずに、社会主義革命が勝利すれば搾取階級が一掃され、したがって、プロレタリアート独裁は不必要であると唱えるのは、社会主義の獲得物を破壊し、自国の革命とともに世界革命をも放棄する危険な行為である。

 主席はまた、プロレタリアート独裁の基本課題を明らかにし、一方では階級闘争を継続しながら、他方では社会主義経済建設をおし進めなければならないと指摘した。階級闘争と経済建設は、社会主義・共産主義建設におけるプロレタリアート独裁国家の基本的な革命任務であり、社会主義・共産主義への途上の思想的および物質的要塞を占領する不可欠の条件である。

 主席は、プロレタリアート独裁国家が、その使命をまっとうするためには、独裁と民主主義、階級闘争と人民大衆の政治的・思想的統一の強化を正しく結びつけるべきであると指摘した。敵対分子にたいするプロレタリアートの独裁を強化するのは、勤労人民大衆に真の民主主義を保障する前提であり、広範な人民大衆にたいする民主主義の実施は敵対分子への独裁を実現する保障となるのであって、この両者を正しく組み合わせてこそ、プロレタリアート独裁は敵対分子の反抗を鎮圧し、労働者階級をはじめ、勤労人民大衆の自由と権利を擁護する武器としての役割と使命を果たすことができるのである。

 主席はつづいて、社会主義の完全勝利にかんする理論を全面的に体系づけた。

 ここではまず、完全に勝利した社会の本質的内容が解明された。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「敵対階級の策動があり、古い思想の腐食作用がつづき、都市と農村の差、労働者階級と農民の階級的差が残っており、国の工業化が完全に実現せず、社会主義の強固な物質的・技術的土台がきずかれていない社会は、まだ完全に勝利した社会主義社会とは言えません」(『朝鮮民主主義人民共和国は、朝鮮人民の自由と独立の旗印であり、社会主義・共産主義建設の強力な武器である』1968年9月7日)

 完全に勝利した社会主義社会とは、敵対階級の策動と古い思想の腐食作用が存在しない社会であり、都市と農村の差、労働者階級と農民の階級的差が解消された無階級社会であり、社会主義の強固な物質的・技術的基盤がきずかれ、全人民の生活水準がかつての中産階層のそれ以上に高まり、中産階層も社会主義を積極的に支持するようになる社会である。いわば、全社会が労働者階級化し、経済と文化、思想と道徳の全領域で社会主義が資本主義に完全に勝利して国内では資本主義復活の危険が完全に除かれた社会を意味する。

 主席は次に、社会主義の完全勝利を達成するための課題を明らかにした。それはまず、階級敵にたいする独裁を強化し、思想革命を遂行して全社会の革命化、労働者階級化を達成することである。階級敵にたいする独裁を強化すれば、敵の反抗を鎮圧しその反革命的策動を粉砕して社会主義制度を強化することができる。また、思想革命を進めて全社会を革命化、労働者階級化すれば、古い思想の影響を一掃して革命の獲得物を守り、勤労者の革命的熱意と創意を発揚させて社会主義・共産主義建設を早めることができる。したがって、階級敵にたいする独裁の強化と思想革命の推進は、社会主義の完全な勝利の保障となる。

 主席は、次に農村問題を最終的に解決し、協同的所有を全人民的所有の水準へ引きあげることは、社会主義の完全勝利を達成するいま一つの根本的条件であると指摘している。

 農村問題の最終的解決は、農村における思想、技術、文化の立ち後れを一掃して都市の水準に引きあげ、協同的所有を全人民的所有に発展させて農民を労働者階級に改造し、また、反動思想の影響と階級敵の地盤を一掃して農民を集団主義へと導き、農業生産力の高度の発展を可能にする。したがって、農村問題の最終的解決と協同的所有の全人民的所有への発展は、社会主義の完全な勝利を保障する根本条件の一つとなる。

 主席は、社会主義の完全勝利を達成するためにはまた、社会主義経済建設を強くおし進めるべきであると指摘している。社会主義経済建設の強力な推進は、社会主義の物質的・技術的基盤を強化し、生産力を社会主義社会に照応する水準に高めて、すべての勤労者の生活をかつての中産階層の生活水準以上に向上させることになる。こうして、すべての勤労者が体験を通じて社会主義制度の優位性を深く理解し、社会主義制度を強化するために奮闘するのである。したがって、社会主義経済建設は、社会主義の完全勝利を達成するための重要な課題となるのである。

 主席は社会主義の最終的勝利の問題についても、独創的な解明をおこなった。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「(略)世界の大多数の国、少なくとも周辺の多くの国で連続的に革命が起こって、帝国主義の包囲を社会主義の包囲に変えるべきであり、社会主義国を包囲している帝国主義の障壁をうちこわしてプロレタリアート独裁の世界的体制への転換の道を切り開くべきであり、包囲された一国の社会主義要塞の孤立化を防ぎ、国際労働者階級と世界の被抑圧人民の戦闘的連帯の強力なきずなをつくりあげるべきである。ただこうなった時にのみ、帝国主義者の武力干渉と資本主義復活の企てから完全に免れることができ、社会主義の最終的勝利が保障されたと言えるであろう」(『アジア・アフリカ・ラテンアメリカ諸国人民の偉大な反帝革命偉業は必勝不敗である』1968年10月8日)

 世界資本主義の包囲のなかで労働者階級が権力を握った個々の国は、社会主義の完全勝利を達成しても、帝国主義の侵略と資本主義復活の危険を免れることができない。したがって、これらの国は、内外からの資本主義復活の危険を防ぐ国際的条件をつくるためにたたかうべきであり、こうしてこそ、社会主義の最終的勝利を達成することができる。外部からの帝国主義者の武力干渉と資本主義復活の危険を完全に免れるためには、世界の大多数の国もしくは周辺の多くの国で連続的に革命が起きて帝国主義の包囲を社会主義の包囲に変え、社会主義国を包囲している帝国主義の障壁をうちこわして、プロレタリアート独裁の世界体制への転化を促し、包囲された一国の社会主義要塞の孤立をなくし、国際労働者階級と世界被抑圧人民の戦闘的連帯を確保しなければならない。それは、社会主義の最終的勝利の重要なしるしといえる。

 主席は、権力を握った各国の労働者階級が革命の最終的勝利を達成するためには、主体的な革命勢力を強化するのみでなく、世界社会主義革命の他の部隊の支援を受け、世界の労働者階級および被抑圧人民との真の国際主義的連帯を強めなければならないと指摘している。

 主体的革命勢力の強化は、社会主義の最終的勝利の先決条件である。自国の革命勢力を強化してはじめて、帝国主義者の侵略策動を排し、外部からの資本主義復活の危険を防ぎ、社会主義諸国を拡大して帝国主義の包囲を社会主義の包囲に変えることができる。また、世界社会主義革命の他の部隊の支援と世界の労働者階級および被抑圧人民との国際主義的連帯の強化は、社会主義の最終的勝利の保障である。こうしてこそ、帝国主義の侵略的企図を適時に粉砕し、社会主義国を包囲している帝国主義の障壁をうちこわすことができるのである。

 過渡期とプロレタリアート独裁、社会主義の完全勝利と最終的勝利にかんする主席の理論は、実に大きな意義がある。

 主席は、過渡期とプロレタリアート独裁にかんする理論を独創的に発展させ、社会主義の完全勝利と最終的勝利にかんする理論を創始することによって、社会主義・共産主義建設の革命的路程と世界革命発展の会法則性、その過程で堅持すべき戦略・戦術的原則と当面の任務、社会主義・共産主義建設の武器にかんする問題に完全な理論的解明をおこなった。これは、予測と仮定の枠を脱却できずにいた共産主義革命理論を科学的に基礎づけ、労働者階級の革命思想と理論の完成に貢献した歴史的な功績である。そして、朝鮮人民と世界の革命的人民が社会主義制度の確立後、偏向や曲折を経ることなく社会主義・共産主義建設を遂行する方途が明らかにされ、世界革命を発展させて世界的に労働者階級の革命偉業を完成する指導指針がもたらされた。またそれは、労働者階級の社会主義・共産主義建設理論を歪曲する左右の日和見主義者に厳しい打撃を与えるとともに、社会主義諸国にたいする帝国主義者の中傷の反動性を暴露した。          





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