『金日成主席革命活動史』

第7節 朝鮮労働党代表者会議


 1960年代の半ばごろ、国際情勢は複雑をきわめ緊張していた。

 アメリカ帝国主義者は、社会主義諸国にたいする侵略策動に狂奔し、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国人民の民族解放運動に強圧を加え、世界各地で平和をかき乱していた。他方、社会主義諸国と国際共産主義運動内には左右の日和見主義者によって複雑な問題が提起され、社会主義諸国は意見相違のため統一し団結した力で反帝闘争を展開することができなかった。こうして、世界革命運動には重大な障害がつくられ、朝鮮の革命と建設もその影響を受けないわけにいかなかった。

 当面の情勢と国際共産主義運動の実態を分析して正確な評価をくだし、党の原則的な対内外活動方針を作成するとともに、すべての党員と勤労者を思想的に武装させて、いかなる状況のもとでも党を中心にかたく団結し、革命のために最後までたたかうようにすることが、緊切な問題となった。

 主席は、この問題の解決をはかって1966年10月朝鮮労働党代表者会議を招集し、『現情勢と我が党の任務』と題する報告をおこない、当面した情勢に分析を加えて世界革命全般と国際共産主義運動を発展させる方途を示した。

 主席はまず、世界革命の基本的戦略を明らかにした。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「こんにち、世界革命の基本戦略は、アメリカ帝国主義に主なほこ先をむけることであります」(『現情勢と我が党の任務』1966年10月5日)

 アメリカ帝国主義は、世界各国人民の第一の闘争対象である。かれらは、侵略と戦争の主な勢力であり、国際憲兵であり、現代植民地主義の元凶であり、世界各国人民の最大の敵である。

 主席は、アメリカ帝国主義の暴悪な侵略的本質と帝国主義世界体制におけるその地位を分析し、アメリカ帝国主義に主なほこ先を向けることが世界革命の基本的戦略であると規定した。これは、世界革命の主打撃方向と世界の革命勢力を編成する基本的方向を明らかにした独創的な革命戦略であり、国際革命勢力の各個撃破を企むアメリカ帝国主義の戦略を粉砕し、かれらを最終的に敗滅させるすぐれた戦略である。

 主席は、世界革命の基本的戦略を貫くうえでの原則的な問題として、まず各国の共産主義者と革命的人民がアメリカ帝国主義とは妥協することなく強硬にたたかう原則的な立場を堅持し、特に、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、ラテンアメリカ、そして、大国と小国を問わず、世界のすべての地域、すべての戦線でアメリカ帝国主義に打撃を加え、力を最大限に分散させて勝手な行動ができないよう手足をしばりあげるべきであると強調した。

 主席はまた、反米闘争の成功を期するためには、その同盟者とたたかうべきであると指摘した。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「世界の平和を守るためには、アメリカ帝国主義とたたかうと同時に、その同盟者とたたかわなければなりません。特に日本軍国主義および西ドイツ軍国主義とのたたかいを強化すべきであります」(同上)

 アメリカ帝国主義のテコ入れのもとに復活し、新たな戦争の温床となりつつある日本軍国主義と西ドイツ軍国主義に反対するたたかいは、世界の平和を守るたたかいであり、反米闘争の重要な一環である。

 主席は、特にアメリカ帝国主義のアジア戦略を破綻させ、アジアと世界の平和を守るためには、かれらを後ろだてにしてアジアの危険な侵略勢力となっている日本軍国主義と強くたたかうべきであると強調した。また、アメリカ帝国主義を撃破し世界革命を促進するには、すべての社会主義国と平和愛好人民が、アメリカ帝国主義の侵略に抗してたたかっているアジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国人民の反帝・反植民地主義闘争を支援すべきであるとし、具体的な課題を示した。

 主席はついで、左右の日和見主義を克服し、社会主義諸国の統一と国際共産主義運動の団結を達成するうえでの原則と方途を示し、日和見主義に反対する闘争において堅持すべき原則的な立場を明らかにした。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「(略)我々は、日和見主義に反対するからといって団結を否定する極左的な誤りをおかしてもならず、団結を守るからといって日和見主義との闘争を放棄する右翼的誤りをおかしてもなりません」(同上)

 主席は諸党間の意見相違がいかに深刻であっても、それは社会主義諸国と国際共産主義運動の内部問題であり、したがって、それを組織的決裂に導いてはならず、あくまでも団結を願って思想闘争の方法で解決すべきである、また、どの社会主義国も排除してはならず、すべての社会主義国を擁護し、その統一と団結を守るために努力しなければならないと強調した。

 主席はまた、国際共産主義運動の団結をはかるためには、反帝共同行動と反帝統一戦線を実現すべきであると指摘した。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「反帝共同行動と反帝統一戦線を実現することは、こんにち国際共産主義運動において、最もするどく提起される原則的な問題であります」(同上)

 主席は、反帝共同行動と反帝統一戦線の実現は、アメリカ帝国主義の侵略と戦争策動を阻止し、世界平和を守るばかりでなく、共産党および労働者党間の意見の相違を克服し、社会主義諸国の統一と国際共産主義運動の団結を回復し、世界革命全般を促進する前提となる根本的な問題であるとし、反帝共同行動と反帝統一戦線を実現するうえでは、偏狭な態度を捨て、たとえ動揺する勢力であってもより多くの同盟者を獲得して反帝戦線を拡大し、アメリカ帝国主義を最大限に孤立させて共同で打撃を加えることを、戦略・戦術上の基本的な原則とすべきであると強調した。

 主席は、社会主義諸国の統一と国際共産主義運動の団結を実現するうえで最も重要な問題は、共産党・労働者党が自主性を堅持することであると指摘した。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「共産党・労働者党が、自主性を堅持することは国際共産主義運動において重要な問題です。自主性が保たれてこそ、それぞれの党が自国の革命を立派におこない、世界の革命に寄与することができ、国際共産主義運動の団結を強めることもできます」(同上)

 自主性を堅持することは、労働者階級の党が革命と建設をおし進め、対外活動を正しくおこなうための根本的な要求である。自主性は、各国の党の神聖な権利であり、各国の党は他国の党の自主性を尊重する義務がある。

 主席は、自主性を堅持し尊重するのは団結と協力の前提であり基礎であるとし、すべての党が自主性を堅持し他国の党の自主性を尊重するとき、諸党間の団結と協力は自発的で同志的な強固なものとなると指摘した。そして、共産党と労働者党が自主性を堅持するためには、相互関係の準則を厳守し、他国の党に自己の思想を強要したり盲従してはならないと指摘した。

 自主性の堅持を主張する主席の思想は、労働者階級の党と社会主義国がいかに複雑な環境のもとでも労働者階級の革命的原則を守り、自国の革命をおし進め、国際共産主義運動と社会主義諸国の統一と団結を強固な基礎のうえで強めるための指導指針であった。

 主席は報告で、社会主義建設を促し革命基地を強化するうえで提起される重要な問題を明らかにした。

 ここではまず、経済建設と国防建設の並進路線を貫徹することが強調された。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「こんにち、我が国における革命闘争と建設で最も重要なことは、当面する情勢の要求にそくして社会主義建設の全般的事業を再編成し、特に、敵の侵略策動に備えて国防力をいっそう強化しうるよう、経済建設と国防建設を並進させることであります。これは、情勢の変化にともなって我が党がすでに数年前から実行してきた基本的な戦略的方針であります。我々は今後とも党のこの方針を堅持し、それにもとづいてすべての活動を展開しなければなりません」(同上)

 主席は、社会主義経済建設においては、既存の経済基盤を活用し、生産と建設の質を高め、国家の経済的自立性を強めて、いかなる状況のもとでも国家と人民の物質的需要を円滑にみたすことが重要であり、国防力を強化するためには軍隊と人民を政治的、思想的に鍛えることを前提に党の軍事路線を貫き、近代戦の要請に即して後方をかため平時から戦争に備えるべきであると指摘した。

 主席はつづいて、党を強化し、全人民を党のまわりに団結させて、革命隊列を政治的・思想的に強化すべきであるとし、まず人民大衆の統一団結を強める活動と階級闘争を正しく結合することが重要であると指摘した。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「我々の革命隊列をかためるうえで、人民大衆の統一と団結を強める活動と、敵対分子の陰謀策動に反対する階級闘争とを正しく結びつけるのは、極めて重要な問題であります」(同上)

 主席は、人民大衆の統一団結の強化と階級闘争を結びつけることは、社会主義社会発展の根本的要請であると指摘した。

 搾取社会とは違って、労働者階級と協同農民、勤労インテリの団結と協力が社会関係の基本をなしている社会主義社会では、労農同盟にもとづく人民大衆の政治的・思想的統一と、党の指導のもとに社会主義・共産主義を建設しようとする人民大衆の共通の志向と熱意が、社会発展の基本的な原動力であり、決定的な要因となっている。他方、社会主義社会でも敵対的な要素が残っており、古い思想の影響がある限り階級闘争がつづけられる。したがって、社会主義社会で革命隊列を強化するためには、人民大衆の政治的・思想的統一と階級闘争を正しく結びつけなければならない。

 主席は、そのためには、左右の偏向を克服し、階級闘争を強めながら人民大衆の統一と団結をたえず強化することが重要であると指摘した。

 人民大衆の政治的・思想的統一と階級闘争のいずれか一方のみを重視し、他方を軽視するならば、革命隊列を強化することができず、社会主義・共産主義建設にとりかえしのつかない損失をまねくことになる。

 社会主義社会では、労働者階級と協同農民、勤労インテリの同盟が社会関係の基本となっていることを忘れて、階級闘争一面のみに走るならば、人が信じられなくなり、罪のない人を敵対分子に扱って、党と大衆を引き離し、社会に不安な雰囲気をつくることになる。逆に社会主義社会にも階級闘争が存在することを忘れて、人民大衆の政治的・思想的統一のみを絶対視するならば、敵対的要素および古い思想とのたたかいが弱まり、党と労働者階級の指導的役割が麻痺し、ブルジョア思想の影響が社会に広がる恐れがある。

 主席は、革命隊列を政治的・思想的に強化するために全社会を革命化、労働者階級化する独創的な方針を示した。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「階級関係の見地からすれば、社会主義・共産主義建設の過程は、権力を握った労働者階級が、経済と文化、思想と道徳のあらゆる分野にわたって社会をみずからの姿に似せて改造していく過程、すなわち労働者階級化する過程であります。プロレタリアート独裁の歴史的な使命は、搾取階級を一掃し、その反抗を抑えることだけにあるのではなく、すべての勤労者を改造し、労働者階級化することによって、あらゆる階級的差を徐々になくしていくことにあります。搾取階級が一掃され、社会主義制度が確立した我々の社会におけるプロレタリアート独裁の重要な任務は、勤労者を教育、改造して、全社会を労働者階級化することであります」(同上)

 全社会の革命化、労働者階級化は、社会主義・共産主義建設の合法則的な要請であり、社会主義制度の確立後、労働者階級の党と国家が遂行すべき最大の革命任務である。

 社会主義革命期には、古い生産関係を社会主義的に改造してあらゆる搾取階級を一掃し、すべての勤労者を社会主義的勤労者にする課題が前面に提起されたが、社会主義制度の確立後は、社会の全構成員を革命化、労働者階級化して階級的差をなくし、かれらをすべて共産主義的人間に育成することが最大の課題となった。

 主席は、全社会を革命化、労働者階級化するためには、労働者階級の指導的役割を高め、それを手本にして農民とインテリを教育、改造すべきであるとし、その方途を具体的に示した。

 まず、労働者階級の思想性、組織性、文化性を高め、その隊列をかためて、労働者階級を真に革命的かつ文化的な階級とならせ、指導階級としての役割を果たさせることである。また、農民を革命化、労働者階級化するため、農村で思想・技術・文化革命を強くおし進め、労働者階級の党および国家の指導と援助を強化し、協同的所有を全人民的所有に引きあげて労働者階級と農民の階級的差をなくし、ひいては、すべての農民を共産主義者に育成することである。インテリを革命化するためには、古い思想の影響を克服して共産主義思想で武装させ、かれらを労働者階級のインテリ、共産主義革命家に改造しなければならない。

 全社会の革命化、労働者階級化にかんする主席の独創的な思想によって、歴史上はじめて階級廃絶と無階級社会への移行方途の問題が解明され、社会の全構成員を共産主義的人間に教育し改造する指導指針がもたらされた。

 主席はまた、社会の政治的・思想的統一を強化するため、社会・政治経歴の複雑な人々との活動を強化すべきであると指摘して、その課題を示し、また政治・思想教育の方向と方途を明らかにした。

 主席は、報告で南朝鮮情勢を分析して、南朝鮮革命と祖国統一にかんする基本的方針と課題を重ねて明らかにし、南朝鮮革命の基本任務は、アメリカ帝国主義の植民地支配をくつがえし、南朝鮮社会の民主的発展を実現し、北半部の社会主義勢力と団結して祖国を統一することであり、南朝鮮人民の焦眉の課題は、アメリカ帝国主義とかいらい一味の戦争策動を粉砕し、ファッショ暴圧をはねのけて民主的自由と権利を獲得することであると指摘した。

 金日成主席は南朝鮮革命の基本方針について、次のように述べている。

 「現段階における南朝鮮革命の基本方針は、敵の弾圧から革命勢力を保存するとともに、それをたえず蓄積、成長させて革命の決定的な時期を迎える準備をととのえることであります」(同上)

 主席は、強力な革命勢力を準備し革命を前進させるためには、まず敵味方の力関係と内外の情勢を考慮せず冒険主義的な闘争に走る極左的偏向と、有利な情勢の到来を待って積極的にたたかわない右翼的偏向をともに克服し、主体的・客観的情勢に応じて政治闘争と経済闘争、暴力闘争と非暴力闘争、合法闘争と非合法闘争などさまざまな闘争形態と方法を正しく組み合わせるべきであると指摘した。また、革命の参謀部である党を強化し、そのまわりに労働者、農民を結集して強力な革命の主力部隊を編成し、各階層の愛国的民主勢力が参加する反米救国統一戦線を形成し、「国軍」兵士と中下級将校を人民の側に獲得することであると強調した。

 主席は、反革命勢力を孤立させ革命勢力の成長を促すうえでは、人民大衆の政治的・思想的覚醒をはかる活動を最優先させるべきであるとし、そのためには、まずかれらのアメリカ帝国主義にたいする幻想および崇米・事大主義思想と「反共」思想を一掃すべきであり、自主、自立の精神と祖国を愛し民族を愛する精神を培い、革命思想教育を強化して社会主義・共産主義にたいする正しい認識をいだかせるべきであると強調した。

 主席は、南朝鮮革命が勝利すれば、共和国北半部の社会主義勢力と南朝鮮の愛国的民主勢力の団結した力によって祖国統一の偉業を達成しうるとし、党の自主的祖国統一方針を再せん明した。

 南朝鮮革命と祖国統一にかんする主席の戦略・戦術的方針は、南朝鮮人民はもとより、民族解放と階級解放をめざしてたたかう各国人民の進路を示す闘争綱領となった。

 主席の歴史的な報告『現情勢と我が党の任務』は、朝鮮革命にとどまらず、国際共産主義運動と世界革命の発展に貢献したすぐれた文書である。

 世界革命と国際共産主義運動の理論的・実践的問題と戦略・戦術を集大成したこの報告は、労働者階級の党と共産主義者、革命的人民が複雑をきわめる国際情勢のもとでも偏向をおかすことなく世界革命をおし進めていくための偉大な戦闘的旗印であった。それはまた、社会主義制度確立後の革命と建設における原則的な諸問題を解明した社会主義・共産主義建設の叢書であり、社会主義諸国人民の革命と建設の指導指針であるとともに、被抑圧・被搾取人民が帝国主義と支配階級に抗する革命闘争で堅持すべき科学的な戦略・戦術と闘争方針を示し、かれらの闘争を励ます革命の教科書であった。

 党代表者会議は、共和国北半部で革命と建設を促し朝鮮革命の全国的勝利を早め、アメリカをかしらとする帝国主義勢力と日和見主義者に大きな打撃を与え、世界革命と国際共産主義運動の発展を促す転機となった。





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