『金日成主席革命活動史』

第4節 不朽の労作『我が国における社会主義農村問題に
かんするテーゼ』。社会主義農村問題解決のたたかい


 金日成主席は、経済建設と国防建設を並行させる複雑多難な環境のなかでも、社会主義農村問題の解決に深い関心を払った。

 この問題は、社会主義・共産主義建設の成否を決する根本的な問題の一つである。社会主義制度のもとで農民問題、農業問題を正しく解決してこそ、農村の後進性を一掃し、人民経済全般の急速な発展と人民生活の系統的な向上をもたらすとともに、都市と農村の差、労働者階級と農民の階級的差を解消し、社会主義の完全な勝利を早めることができる。

 社会主義農村問題の解決は、朝鮮の社会経済の発展を促すうえでも緊切な問題となっていた。社会主義を全面的に建設し工業化を完成するには、急速に発展する工業に農業を追いつかせるべきであり、そのためには、まず農村問題を正しく解決しなければならなかった。しかし当時、農業協同化をもって農村問題は解決されたものと速断する誤った見解が一部にあり、農業指導機関の幹部も農村において社会主義・共産主義建設をいかに進めるべきかについて正しい理解を欠いていた。

 農村問題は、国際的にも早急な解決が待たれていた。帝国主義者は、一部の社会主義国で農業が停滞し、農村問題の解決に悩んでいることを絶好の材料として、社会主義農業を中傷し、世界の革命的人民の社会主義・共産主義への志向を抑えようと策した。したがって、社会主義農村問題の正しい解決は、共産主義革命理論を完成し、社会主義の尊厳を守り、労働者階級の革命偉業を前進させる原則的な問題であった。

 すぐれた思想・理論活動と豊かな経験にもとづいてこの問題を独創的に解明した主席は、著作『我が国における社会主義農村問題にかんするテーゼ』にそれを集大成し、1964年2月、党中央委員会第4期第8回総会で発表した。

 金日成主席は、テーゼで、社会主義農村問題の本質について次のように述べている。
「社会主義のもとにおける農民問題と農業問題は、農村にうち立てられた社会主義制度をたえず強化し、それにもとづいて農業生産力を高度に発展させ、農民の生活を豊かにし、搾取社会が残した農村の後進性を一掃し、都市と農村との差をしだいになくすことにある」(『我が国における社会主義農村問題にかんするテーゼ』1964年2月25日)

 農村問題は、革命の各段階でそれぞれ違った形で提起される。民主主義革命段階と社会主義革命段階での農村問題は、封建的な土地所有と生産手段の私的所有をなくし、農民を搾取と抑圧から永久に解放し、農業生産力を古い生産関係の束縛から完全に解放することである。この問題は、土地改革と農業の社会主義協同化によって解決される。社会主義革命が勝利したのちの農村問題は、搾取社会の遺物である農村の後進性の一掃、都市と農村の差および労働者階級と農民の階級的差の消滅をその内容としている。すなわち、農民を労働者階級化し、農業を工業化して農民により自主的かつ創造的な生活を保障することである。社会主義のもとでの農村問題は、それ以前の時期のように生産関係の改造によってでなく、農村に確立した社会主義制度を強化し、その優位性を高度に発揮させる過程をとおして解決される。

 主席は、このように社会主義農村問題の本質的内容を明確にして、社会主義制度の樹立をもって農村問題が基本的に解決されたものとみなす従来の見方を克服し、この問題を正しく解決する指導指針をもたらした。

 金日成主席はテーゼで、社会主義農村問題解決の基本的原則を明らかにし、次のように述べている。

 「社会主義のもとにおける農民問題と農業問題を成功裏に解決するためには、必ず農村活動において3つの基本原則をゆるぎなく堅持しなければならない。
 第1に、農村で技術革命と文化革命および思想革命を徹底して遂行すること、
 第2に、農民にたいする労働者階級の指導、農業にたいする工業の援助、農村にたいする都市の支援を全面的に強めること、
 第3に、農業の指導と管理をたえず工業の先進的な企業管理の水準に接近させ、全人民的所有と協同的所有の結びつきを強め、協同的所有をたえず全人民的所有に接近させることである」(同上)

 主席は社会主義農村問題を解決するためには、まず、農村で思想、技術、文化の三大革命を遂行しなければならないと指摘している。

 社会主義制度の確立後、搾取社会の遺物である農村の後進性は、農業の物質的・技術的基盤が工業に比べて弱く、農村住民の文化水準が都市住民のそれより劣り、農民の思想意識も労働者より低いことに発現する。この後進性によって、労働者階級と農民の階級的差、都市と農村の差が残り、農業では協同的所有が支配的になる。したがって、農村の後進性を一掃し、農村問題を解決するためには、思想、技術、文化の三大革命をおし進めて、農民を古い思想と技術、文化の束縛から解放しなければならない。この三大革命においては、思想革命を優先させながら、同時に技術革命と文化革命をおし進めることが重要である。

 次に主席は、農民にたいする労働者階級の指導、農業にたいする工業の援助、農村にたいする都市の支援を全面的に強めるべきであると指摘している。

 労働者階級の党および国家の指導と援助は、農村における社会主義制度の確立と発展の不可欠の条件である。農民は、労働者階級の指導と援助を受けてのみ社会主義の道に入り、共産主義へと進むことができる。したがって、労働者階級の指導と援助の強化は、社会主義農村問題の正しい解決を保障する。

 主席は、朝鮮のようにかつて立ち後れた農業国であった国は、一定の期間、社会主義的工業化に必要な資金をある程度農村から引き出さないわけにはいかないが、社会主義工業化の基礎をきずいたのちは、農村を全面的に支援しなければならないとし、労働者階級は、農民を政治的、思想的に指導するばかりでなく、物質、技術、文化および財政的にも援助すべきであると強調した。

 主席は第3に、農業の指導と管理を工業の先進的な水準に引きあげ、協同的所有をたえず全人民的所有に接近させるべきであると指摘している。

 所有関係における工業と農業の差は、労働者階級と農民の階級的差を規定づける本質的な差であり、また経済管理水準のそれも重要な差である。したがって、都市と農村の差、労働者階級と農民の階級的差をなくすためには、思想、技術、文化の分野にとどまらず所有関係と経済管理水準においても農村の後進性を克服しなければならない。

 主席は、社会主義農業の指導と管理を改善する基本方向は、農業協同経営の管理運営方法を工業の進んだ企業管理方法にたえず接近させることであるとし、このためには、農業の技術指導と経営活動の計画化、組織化を強めるべきであると強調した。

 主席はテーゼで、協同的所有の全人民的所有への移行問題を独創的に解明し、協同的所有を全人民的所有に移行させるためには、工業と農業の緊密な生産的連係を強め、協同的所有にたいする全人民的所有の指導的役割をたえず高める方向で2つの所有を有機的に結びつけるべきであり、それには農業部門の国家企業所を拡大して協同経営の発展におけるその役割を高め、全人民的所有の物質的・技術的手段が漸次農業生産で圧倒的な比重を占めるようにすべきであると指摘した。

 2つの所有の有機的な結合にかんするこの独創的な思想によって、協同的所有にたいする全人民的所有の指導的役割を弱め、両者を分離しようとした右翼的偏向と、現実的条件や可能性は考慮せずに先走って協同的所有を全人民的所有に切りかえようとした極左的偏向をともに克服し、所有問題を科学的に解決する道が開かれた。

 主席はテーゼで、社会主義農村建設の地域的拠点にかんする思想を展開し、農村のように地域的に分散した対象を指導するうえでは、地方ごとに一定の地域を統一的な指導の単位に定め、それを拠点にしてその地域内のすべての単位を直接指導することが重要であるとして、朝鮮では郡がそれに適していると指摘した。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「我が国では、郡が農村活動と地方の全般的な活動を、統一的に、総合的に直接指導する地域的単位となっており拠点となっている。(略)郡は、農村における技術革命、文化革命、思想革命の遂行を促進する拠点であり、都市と農村を結びつけ、農村にたいする都市の政治的、経済的、文化的な支援を実現する拠点である」(同上)

 郡は、農村と労働者区を直接指導する党および行政機関の末端指導単位である。党および政府の政策は、郡を通じて農村と労働者区で実行され、地方経営工業と農業、教育、文化、保健医療活動も郡を単位にして発展する。

 郡は、政治、経済、文化の各分野で都市と農村を結びつける拠点である。郡は、農村の思想革命、技術革命、文化革命を促す拠点であり、農村にたいする都市の政治的・経済的・文化的支援を実現する拠点である。したがって、郡を拠点として農村の全般的活動を強化するとき、社会主義農村建設は成功を期することができる。

 社会主義農村建設の地域的拠点にかんするこの思想によって、複雑かつ困難な農村問題を順調に解決し、政治、経済、文化を全般的に発展させる強力な思想的・理論的武器がもたらされた。

 主席の著作『我が国における社会主義農村問題にかんするテーゼ』は、史上はじめて社会主義農村問題解決の正しい方途を示した不朽の文書であり、労働者階級の党と国家が社会主義・共産主義建設において堅持すべき社会主義農村建設の偉大な綱領である。農村テーゼは朝鮮人民に、農民の労働者階級化、農業の工業化、現代化、農村の文明化によって都市と農村の差、労働者階級と農民の階級的差をなくし、無階級社会を建設する方途を示すとともに、全住民が幸せに暮らせる豊かで文化的な社会主義農村をきずく展望を開いた。また搾取社会が残したあらゆる後進性を一掃して、農民大衆の自主性を全面的に実現する方途を示したこのテーゼは、南朝鮮人民と世界の革命的人民に強い信念と勇気を与え、そのたたかいを励ました。テーゼはさらに、農村問題にかんする労働者階級の革命理論を新たに発展させ、左右の日和見主義者の誤った見解を正し、社会主義農業制度にたいする帝国主義者の中傷を粉砕した。

 主席はテーゼ発表後、社会主義農村問題の解決をはかって大きな努力を傾けた。

 1964年3月、最高人民会議第3期第3回会議で協同農場の経済基盤の強化と農民生活の向上をはかる法令を採択し、ついで全国の農村を回って社会主義農村づくりを指導した。

 まず、農村を政治的、思想的に強化し、思想革命を促進することに努力が払われた。農村の党組織を強化し、その機能と役割を高めてすべての農業勤労者をテーゼの貫徹に呼び起こすとともに、労働者、除隊軍人、愛国烈士の遺族をはじめ、多くの青年を送って農村の陣地を強化する措置がとられた。特に、思想革命を強めて農民を革命化、労働者階級化する活動に力が入れられ、また、物質的関心にのみ偏る傾向をいましめ、物質的刺激と政治的・道徳的刺激を正しく組み合わせて農民の思想意識を高める活動に、深い注意が払われた。

 主席は、農村への支援を強め、農村の技術革命と文化革命を促進する積極的な措置を講じた。こうして、農村への国家投資が増大し、農業用の重工業部門が急速に発展してトラクターなどの近代的農業機械や化学肥料、農薬が大々的に農村に送られた。農村の基本建設と住宅建設が国家の負担で進められ、主な農業用生産設備や農業機械も国から無料で供給されたばかりでなく、1966年には農業現物税制が全廃された。農村技術革命の推進によって、水利化、機械化、電化、化学化の完成が促され、文化革命においても、農民の一般知識水準と技術文化水準が高まり、農業技術者、専門家が大量に養成されていった。

 主席は、農業にたいする指導と管理の改善にも力を傾け、郡協同農場経営委員会を政治的、実務的に優秀な活動家で強化し、その使命に即して活動方法を改め、企業的方法で協同農場を指導するようにした。特に、農民を集団経営の管理に積極的に参加させる生産組織形態として分組管理制を導入し、全国の農村に実施した。この結果、協同農場の管理運営水準が高まり、生産活動と農民の教育・改造活動が結びつき、郡協同農場経営委員会の企業的指導の優位性が生産および労働力組織の末端単位においても顕著となった。

 主席は社会主義農村建設の全般問題を解決するため、郡の役割を高めることに大きな力を傾けた。郡党委員会と郡行政・経済機関を強化して、その役割を高め、地方経営工業を発展させ、商業網を整備し、教育機関や文化・厚生施設をととのえて、郡が思想・技術・文化革命の拠点、政治、経済、文化の全分野で都市と農村を結びつける拠点としての役割を円滑に遂行する措置を講じた。こうして、社会主義農村建設と国家全般の活動において郡の役割が高まり、農村問題を正しく解決する拠点がきずかれた。

 このように、テーゼの課題が積極的におし進められ、農村問題を最終的に解決する展望が開かれた。





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