『金日成主席革命活動史』

第2節 テアンの事業体系と新たな農業指導体系の確立。
党活動におけるチョンサンリ精神、チョンサンリ方法の具現


 金日成主席は第4回党大会以後、膨大な7か年計画を遂行し、社会主義建設を促進するため、チョンサンリ精神、チョンサンリ方法に即して経済管理と党活動の改善に力を傾けた。

 人民経済の指導管理を社会主義社会にふさわしく改善することは、社会主義制度の確立後、社会主義・共産主義建設において提起される根本問題の一つである。社会主義制度の確立によって勤労人民大衆は、政治とならんで経済の完全な主人となり、国の経済は有機的なつながりをもつ全一的な体系を形成する。これは、経済管理における人民大衆の地位と役割を最大限に高め、経済を統一的に指導し管理するための新しい経済管理体系を求める。

 人民経済の指導と管理を改善することは、当時、緊切な問題となっていた。社会主義の基礎建設が完成し、社会主義的経済形態の全一的な支配が確立したのちにも、人民経済の指導体系と指導方法は改善されず、幹部の能力と水準も現実に追いついていなかった。新しい環境に応じて経済管理を改善しなければ、社会主義経済の急速な発展を保障することができなかった。

 また当時、一部の国で社会主義経済の管理に資本主義的経営法をとり入れ、あるいは社会主義社会の過渡的性格を無視した企業管理方法を実施していた結果、社会主義経済建設が混乱し停滞していた事情は、社会主義経済の指導・管理問題をいっそう深刻な問題として提起した。

 主席は、社会主義経済制度の分析と朝鮮における社会主義建設の経験の一般化を通じて独創的な理論を展開し、新しい経済管理体系を創造することによってこの問題を正しく解決した。

 1961年11月27日から12月1日にかけて開かれた党中央委員会第4期第2回拡大総会で、主席は人民経済の指導・管理上の欠陥と不足点を指摘し、抜本的な改善策を講じた。

 ついで、新たな工業管理体系の創設をはかって同年12月大安(テアン)電機工場にたいする歴史的な現地指導をおこなった。

 主席は、この工場に10余日間滞在して、多くの労働者、技術者、幹部と会い、会議にも出席して党活動から生産指導、設備の状態、資材供給状況、工場の機構、各部署の役割・技術者の活動、労働者の生活にいたるまで工場の全容を把握したばかりでなく、他の工場、企業所の実態および、省、管理局の経済指導状況も検討した。

 主席はこれにもとづいて、大安電機工場党委員会拡大会議を開き、古い工業管理体系とは完全に異なる新しい社会主義的工業管理体系であるテアン(大安)の事業体系を創設する画期的な措置をとった。こうして、従来の支配人唯一管理制を廃止し、党委員会の集団的指導のもとに工場を管理運営する方式と生産を技術的、総合的に指導する生産指導体系、資材を上部が下部へ供給する資材供給体系、整然とした給養体系が立てられた。

 主席はその後、テアンの事業体系が優位性を発揮するよう具体的な指導をとおして、経験を積ませ、翌年11月、再び大安電機工場を現地指導して『テアンの事業体系をいっそう発展させるために』と題する演説をおこなった。主席は、この演説と多くの著作でテアンの事業体系の本質と優位性を明らかにした。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「テアンの事業体系は一言でいって、経済管理に、わが党の革命的大衆路線を具現した事業体系であります」(『中心郡党委員会の任務について』1963年4月27日)

 テアンの事業体系は本質上、偉大なチュチェ思想と革命的大衆路線を具現した共産主義的経済管理形態である。すなわち、生産単位の勤労者大衆を経済管理の主人、経済発展の推進力とみなし、対人活動を基本として経済を管理、運営することによって、すべての問題を大衆の志向と要求に即し、かれらの無限の力と創造的知恵に依拠して解決する経済管理体系である。

 テアンの事業体系は、社会主義制度の本質にかなった最もすぐれた経済管理体系である。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「テアンの事業体系は、工場、企業所が党委員会の集団的指導のもとにすべての経営活動をおこない、政治活動を優先させ、生産者大衆を奮い立たせて提起された経済課題を遂行し、上部が責任をもって下部を援助し、経済を科学的に、合理的に管理し運営する社会主義制度の本質にかなった立派な経済管理体系であります」(『朝鮮労働党第5回大会でおこなった中央委員会の活動報告』1970年11月2日)

 テアンの事業体系は、工場、企業所の経営活動が、すべて党委員会の集団的指導のもとに進められる事業体系である。ここでは、党委員会が、各単位の最高指導機関として経済活動の重要な問題を解決する方向と方法を集団的に決定し、その実行を指導し統制する一方、組織活動と思想教育活動を綿密に進めてすべての勤労者を革命課題の遂行に自覚的に参加させる。こうして、企業管理において個人の主観と独断が克服され、生産と管理の主人である勤労大衆の集団的知恵によって大規模な近代的社会主義経済が運営され、広範な大衆が主人らしく生産に参加して自覚的な熱意と創意を発揮するのである。

 テアンの事業体系は、政治活動、対人活動を優先させて経済を管理し運営する体系である。すなわちそれは、大衆の政治的・思想的自覚と革命的熱意を高めて経済課題を遂行し経済を運営する経済管理体系である。これは、生産と管理の主人である勤労大衆の役割を強めて社会主義経済制度の優位性を高度に発揚させ、経済のたえまない急速な発展を保障する。

 テアンの事業体系は、上部が責任をもって下部を援助する事業体系である。これは省、管理局など上級機関の幹部や工場、企業所の管理幹部が生産現場に行ってゆきづまっている問題の解決策を適時に講じ、設備や資材その他生産に必要な物資をすべて上部が責任をもって供給する体系であって、同志的協力と団結を強め、上下が心を合わせて経済課題を完遂することを可能にする。

 テアンの事業体系は、統一的、集中的な生産指導によって経済を科学的に、合理的に運営する事業体系であって、技師長の統一的な指導のもとに、参謀部が計画の作成や技術指導、生産指導を密接に結びつけて生産を統一的、総合的に指導し、特に、技術指導の強化を可能にする。それはまた、近代技術にもとづく大規模な社会主義生産発展の合法則性に即して経済を科学的に、合理的に管理運営する体系である。

 主席は、工業管理体系を全面的に確立するとともに、社会主義農業指導体系の改編にも力を注いだ。1961年12月には、平安南道粛川郡を現地指導し、同郡の営農状態と農業の管理運営および技術水準、農村の物質的・技術的基盤などを全面的に把握して、新しい農業指導体系を創設する画期的な措置をとった。すなわち、郡人民委員会から農業指導の機能を分離し、専門的な農業指導機関である郡協同農場経営委員会を新設して農業技術者と農業部門の国家企業所をこれに集中させ、経営委員会が協同農場を指導する機能と国家の物質的・技術的援助を実現する機能を果たすようにした。同時に、農業にたいする科学的・技術的指導を強化するため道農業経営委員会を新設し、農業省を農業委員会に改組した。こうして、中央から郡にいたるまで、整然とした社会主義農業指導体系が確立した。さらに、新しい農業指導体系が威力を発揮するよう具体的な指導をおこない経験を積ませ、翌年11月『郡協同農場経営委員会をいっそう強化発展させることについて』と題する演説をおこなった。

 ここでは、新しい農業指導体系の優位性とそれを強化する課題が明らかにされた。この農業指導体系は、チョンサンリ精神、チョンサンリ方法とテアンの事業体系を農村の変化した現実に適用した社会主義農業指導体系であり、行政的方法ではなく企業的方法で農業を指導する体系である。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「郡協同農場経営委員会の優位性は、第一に経営委員会が農業を企業的方法で指導するという点にあります」(『郡協同農場経営委員会をいっそう強化発展させるために』1962年11月13日)

 新しい農業指導体系では、郡協同農場経営委員会が農業部門の国家企業所と技術者を統一的に掌握し、技術指導体系を確立したうえで農業生産の技術指導を強化し、計画の作成から生産組織、技術発展、資材の供給、労働力の配置と組織、生産物の分配、財政管理にいたるすべての企業活動を直接指導し、計画化、組織化する。このように、国家が農業を企業的方法で指導するので、農村の技術革命を促し、農業生産力を飛躍的に高め、農業の管理・運営方法を工業の進んだ企業管理方法に急速に接近させることができる。

 この農業指導体系ではまた、全人民的所有と協同的所有の有機的な結びつきを実現し、協同経営にたいする国家の指導と援助を強化することができる。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「次に、郡協同農場経営委員会の優位性は、それが全人民的所有と協同的所有を有機的に結びつけ、協同経営にたいする国家の指導と援助を強化するという点にあります」(同上)

 新しい農業指導体系では、郡協同農場経営委員会の統一的な指導のもとに、農業部門の国家企業所と技術者が協同経営の農業生産に直接参加することによって、工業と農業の生産的つながりが密接になり、全人民的所有が協同的所有により幅広く深く浸透し、協同経営にたいする国家の指導と援助が強化される。こうして、工業が農業を積極的に援助し、農民にたいする労働者階級の影響力が思想、技術、文化のあらゆる面で強まり、労農同盟が強化される。これは、協同的所有を全人民的所有に急速に接近させることになる。

 主席によるテアンの事業体系と新しい農業指導体系の確立は、大きな意義のある歴史的な出来事であった。

 新しい社会主義経済管理体系の創造によって、行政技術的指導を基本としていた手工業的で非能率的な経済管理が、対人活動を基本とする革命的で科学的な経済管理に一新され、社会主義経済管理に残っていた資本主義的要素を克服して共産主義的要素を多分にもつ経済管理に発展した。こうして、経済にたいする党の指導と社会主義国家の経済組織者的機能が強まり、勤労人民大衆が生産と管理の主人としての地位を確立し主人としての役割を最大限に高めて、社会主義経済建設を促進する保障がもたらされた。また、主体的な社会主義経済管理理論の創始と新しい経済管理体系の創設によって、社会主義経済管理にかんする労働者階級の革命理論が豊かになり、経済管理における左右の偏向を克服できるようになった。

 主席は、テアンの事業体系と新しい農業指導体系を人民経済の各部門とすべての単位で確立するため力を注いだ。これは、保守的傾向などの古い思想観点と活動態度、活動方法と作風を克服する深刻なたたかいをともなった。新しい社会主義経済管理体系の本質と優位性を党員と勤労者に理解させる活動とならんで、これを妨げるあらゆる古い観点との思想闘争が強く展開された。

 主席は、社会主義経済管理体系を一般化するため、各省、管理局、安州炭鉱、平壌紡織工場、黄海製鉄所など多くの工場、企業所、そして、海州地区協同農場をはじめ、各農村に出向いて経済指導と企業管理を改善する方法を教え、細心の指導をおこなった。この結果、人民経済のすべての部門と単位に新しい経済管理体系が確立し、経済指導と企業管理には画期的な前進が見られた。

 一方主席は、党活動へのチョンサンリ精神、チョンサンリ方法の具現に力を入れた。

 党活動におけるチョンサンリ精神、チョンサンリ方法の具現は、全党員と人民を主席のまわりに団結させ、かれらの革命的熱意と創造的積極性を高めて、社会主義の全面的建設の困難かつ膨大な課題を完遂する基本的条件である。特に当時、一部の党組織が、チョンサンリ精神、チョンサンリ方法を具現できず、党員の党生活と思想教育、行政・経済活動にたいする指導で一連の欠陥が生じ、党の路線と政策の実行に多くの支障をきたしていただけに、この問題は極めて深刻に提起された。

 1962年初め、黄海南道内の工場、企業所、協同農場、教育・文化機関を現地指導し、党活動にあるこうした実態を全面的に把握した主席は、その改善をはかって同年3月、党中央委員会第4期第3回拡大総会を開き、『党の組織活動と思想活動を改善強化することについて』と題する結語を述べた。

 ここで主席は、党活動の本質と内容を再び明らかにし、党活動でチョンサンリ精神、チョンサンリ方法を具現する具体的な方途を示した。

 それはまず、各級党組織が党内活動に力を入れ、特に党員の党生活指導を強化することである。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「すべての党員が党の組織原則に従って立派に活動するようになるとき、党は強力な不敗の党となり、自己の前に提起された革命の任務を成功裏になし遂げることができます。したがって党活動の基本的な環は、まず党員が、党組織生活を忠実におこなうように指導することにあると言えます」(『党の組織活動と思想活動の改善について』1962年3月8日)

 党活動とは、要するに党を強化し、その戦闘的機能を十分に発揮させる活動である。党の戦闘力を高めるためには、すべての党員が健全で、党の組織原則にもとづいて行動の一致を保つことが重要である。したがって党活動の基本的な環は、党員の党生活を正しく指導することにある。

 主席は、党生活の指導を強化するためには、党細胞と党委員会の機能と役割を高めるべきであると指摘した。党生活は党の与えた任務を果たす活動を意味するが、それは一定の党組織を通じておこなわれる。党員は、誰であれ党の基礎組織である細胞に属し、その一部は党委員会に属して党生活をおこなうので、党細胞と党委員会を強化し、その機能と役割を高めれば、党員の党生活を強化することができる。

 主席は、党活動を改善し、党生活の指導を強化するためには、組織部と宣伝部の役割を高めるべきであると指摘した。

 両者はともに党内活動にあたる部署であるが、組織部は党員の党生活と党組織の活動を指導し、党を整備、強化する隊列部、党生活指導部であり、宣伝部は党員を教育し宣伝活動をおこなう部署である。いわば、組織部は党員のなかから病人を発見して診断をおこなう医師であり、宣伝部は病人に投薬する薬剤師のようなものである。この両部署の役割を高め、協同作戦を緊密にすれば、党生活の指導と党活動全般の成功を期することができる。

 主席は、党の経済部署も関係部門の党活動、対人活動を改善して幹部と大衆を党政策の貫徹に呼び起こすべきであると指摘した。

 次に主席は、各級党、組織は、行政・経済活動の指導を強化すべきであると強調した。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「党は、経済部門の党組織と党員を動かし、かれらを指導して党の要求する方向で経済活動を保障しなければなりません」(同上)

 主席は、経済活動の指導においては、党がそれを代行すべきでなく党的、政治的に指導すべきであるとし、ここで守るべき原則的な問題を明らかにした。そして、行政・経済活動を正しく指導するためには、党活動家が党の路線と政策にもとづいて、党員と党組織を動かし、大衆を正しい方向へ導くべきであり、行政的、命令的、強圧的な指導でなく、組織的、具体的、動員的な指導、すなわち党員と幹部、党委員会と党細胞を動かして行政・経済活動を裏打ちする党的な方法で指導すべきであるとし、党活動家は下部へ行って実状を具体的に理解し、事物と現象を客観的、全面的に把握することによって指導活動で主観主義をおかさないようにしなくてはならないと強調した。

 主席は結語で、社会主義制度の確立後、農村で階級闘争を強化すべき必要性とそのための原則的な問題を明らかにし、ここでは特に、階級路線と大衆路線を貫いて階級敵を孤立させ、一人でも多くの大衆を獲得することが重要であると指摘した。

 主席はつづいて、反修正主義闘争を強化する問題を提起し、修正主義の発生と根源、その反動的な本質と弊害を分析したのち、全党が修正主義に反対する思想活動を強化し、また、修正主義と同類の西洋かぶれを防ぎ、党員と勤労者のあいだで自力更生の革命精神を発揚させる教育活動を強めなければならないと強調した。

 拡大総会における主席の結語は、党員の党生活を決定的に強化し、各級党組織が、党活動、対人活動に力を集中し、新しい環境にふさわしく行政・経済活動にたいする指導を改善して、チョンサンリ精神、チョンサンリ方法を党活動に具現する転機となった。

 主席は会議後、この課題を実行する強力な措置をとった。こうして、各級党組織は、党員との活動に主力を注ぎ、党生活の強化をはかった。特に、党生活の総括を常時おこない、思想・政治生活や革命任務の遂行状況から活動方法、活動作風、私生活にいたるまですべてを批判的に総括することによって党員を革命的に鍛えていった。

 主席は、チョンサンリ精神、チョンサンリ方法にもとづいて、幹部の指導作風と活動方法を決定的に改善することにも力を入れた。それらの措置によって青山里および大安教示の実行総括が、毎年、深刻な思想闘争の雰囲気のなかでおこなわれ、党と国家・経済機関の幹部が官僚主義と形式主義の古い殻を破ってチョンサンリ精神、チョンサンリ方法で活動するようになった。また幹部が、現地で方式講習や模範講習を広範に組織し、生き生きとした手本を通じて下部の活動家に活動方法を教え、新しい形式の移動講習なども随時、組織し、かれらを教育した。同時に、各級党組織に指導グループを送って下部の活動家に援助を与え、活動方法を教えた。

 主席の細心の指導によって、党生活指導体系と党活動体系が全党に確立し、党活動が徹底して対人活動となり、幹部の活動方法と活動作風も改善された。党活動でチョンサンリ精神、チョンサンリ方法が具現された結果、主席の方針と党の意図が適時に伝達され、上部と下部が力を合わせて革命と建設を強くおし進めていけるようになった。





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