『金日成主席革命活動史』

第1節 過渡期初期の課題提示。北朝鮮人民委員会の樹立


 金日成主席は、北半部で反帝反封建民主主義革命が完遂されると、社会主義革命へ移行する方針を示し、全党、全人民をその貫徹へと導いた。1947年のはじめに社会主義革命へ移行したのは、朝鮮革命の合法則的な要請であった。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「労働者階級の指導する反帝反封建民主主義革命がひきつづき社会主義革命へ移行するのは、革命発展の合法則的過程であります」(『朝鮮労働党建設の歴史的経験』1986年5月31日)

 反帝反封建民主主義革命の完遂後、北半部には、小商品経済形態と資本主義的経済形態がかなり残っていた。社会主義革命によってこれらの経済形態を一掃しなくては、搾取と貧困の根源をなくすことができず、また社会の生産力を古い生産関係の束縛から解放して経済全般を計画的かつ急速に発展させることもできなかった。

 社会主義革命はまた、労農同盟にもとづく全人民の統一と団結を社会主義的基盤のうえで強化し、反動勢力の基盤と古い思想の温床を取り除き、革命の政治的基盤を強化するためにも必要であった。

 社会主義革命は北半部における社会発展の緊切な要請であったが、北半部の革命基地を政治、経済、軍事的に強化し、朝鮮革命全般を推進するためにもまた必要であった。

 主席は、社会主義革命は人間による人間の搾取を最終的になくし、社会発展の新しい道を開いた人類史上最も深刻な社会的変革であるとし、その基本的課題を明らかにした。

 社会主義革命においてはまず、プロレタリアート独裁政権をうち立てなければならない。勤労人民大衆は、プロレタリアート独裁政権の樹立によってはじめて国家と社会の主人となり、あらゆる搾取階級を階級として廃絶する社会主義革命を完遂し、旧社会の遺物を一掃して社会主義・共産主義建設を成功裏に進めることができる。

 従来、プロレタリアート独裁政権は社会主義革命を通じて、古いブルジョア政権を暴力でくつがえしたうえで樹立するものとされていた。

 しかし、主席はそうした見解にとらわれず、朝鮮のように反帝反封建民主主義革命の段階で労働者階級の指導する人民の政権を成立させた国では、その政権を社会主義革命課題の遂行を担当するプロレタリアート独裁政権へと発展させるべきであるという独創的な方針を示した。

 主席はまた、社会主義革命においては、社会主義的生産関係の全一的支配を確立することが重要な課題であると指摘した。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「私的所有にもとづく古い生産関係を一掃するか、または改造して、社会主義的生産関係が全一的に支配するようにすることは、社会主義革命の基本的な内容をなしている」(『朝鮮民主主義人民共和国における社会主義建設と南朝鮮革命について』1965年4月14日)

 社会主義的生産関係の全一的支配の確立は、人間による人間の搾取をなくし、勤労人民大衆を貧困から解放し、政権の主人となった人民大衆を経済の主人とならせる不可欠の条件である。したがってそれは、社会主義革命の基本的な内容であり、最も中心的な課題である。

 主席は、かつて植民地半封建社会であった朝鮮のような国では、個人農経営を協同化し、手工業と資本主義的商工業を社会主義的に改造してはじめて社会主義的生産関係の全一的支配が確立するが、過渡期初期には主としてその準備を進め、人民大衆が古い生産関係の改造を強く求め、それを担当しうる力量がととのったとき、全面的に推進すべきであると指摘した。

 このように、反帝反封建民主主義革命後、社会主義へ移行する正確な方途が示された結果、朝鮮人民はいかなる偏向もおかさずに社会主義革命を遂行することができたし、植民地・半植民地諸国人民は、繁栄する新社会をきずく明確な指針をもつことになった。

 主席は、社会主義革命の主要課題を遂行するたたかいを指導した。

 主席は、著作『歴史的な民主選挙をひかえて』をはじめ一連の著作で、暫定的な性格をおびた人民委員会を強化して社会主義革命課題の遂行を担当するプロレタリアート独裁政権へと発展させる課題を示した。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「民主主義革命が完遂されるにつれて、北半部ではしだいに社会主義革命に移行しうる条件がととのえられました。そこでわが党は、革命の武器である人民政権を、社会主義革命の任務の遂行にかなうように発展させる課題を提起しました」(『朝鮮民主主義人民共和国は、朝鮮人民の自由と独立の旗印であり、社会主義・共産主義建設の強力な武器である』1968年9月7日)

 解放直後に樹立した北朝鮮臨時人民委員会は、労働者階級が指導する人民民主主義独裁政権であった。この政権は、反帝反封建民主主義革命を遂行する過程で、朝鮮の現実に適しており、人民大衆の宿望を実現する正しい政権形態であることが確証された。したがって、それを他の形態の政権ととりかえるのでなく、それを強化して新しい革命任務の遂行に適したプロレタリアート独裁政権へと発展させることが最も合理的であった。

 また、民主主義民族統一戦線にもとづく人民政権の形態を保ちながら、その機能と役割を高めてプロレタリアート独裁政権へと発展させれば、各階層の愛国的民主勢力を最大限に結集し、民主主義革命段階でもりあがった大衆の熱意をさらに高めて、民主主義革命の成果をかためながら社会主義革命を勝利に導くことができるのであった。反帝反封建民主主義革命の成功によって、北朝鮮臨時人民委員会の階級的基盤が強化され、勤労大衆が人民政権を積極的に支持していた状況のもとで、そのプロレタリアート独裁政権への発展は十分に可能なことであった。

 主席は、人民民主主義独裁政権をプロレタリアート独裁政権に発展させる最も合理的な方途は、民主選挙を実施することであると指摘した。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「(略)民主改革の成果をいっそうかため発展させるためには、暫定的性格をおびた人民委員会を法的に強固な人民委員会、すなわち一定の選挙によって樹立された人民委員会に発展させなければなりません」(『歴史的な民主選挙をひかえて』1946年11月1日)

 民主選挙の実施は、暫定的性格をおびた人民委員会を法的にかためるとともに、その階級的構成を改善して労働者階級の指導と労農同盟を強化し、新しい革命段階の任務に即して人民政権機関の機能と役割を高める最適の方途であった。

 主席は、プロレタリアート独裁政権の樹立をめざす民主選挙を勝利に導いた。1946年9月、北朝鮮臨時人民委員会第2回拡大委員会で選挙の実施について討議し、人民委員候補の推薦や選挙手続きなど重要な問題は民主主義民族統一戦線(民戦)で協議して民主的政党・大衆団体の行動の統一をはかり、また全有権者を高度の政治的熱意のもとに選挙に参加させる思想教育活動を活発に進める対策を講じた。また、平安南道江東郡の三登(サムドゥン)面をはじめ、各地に出向いて、選挙の勝利へと人民を励まし、選挙と関連して提起されている一連の問題についてその解決策を示した。

 主席は特に、反動勢力の破壊謀略策動を粉砕するたたかいに人民を立ちあがらせた。選挙運動の開始とともに、南朝鮮の反動勢力と北朝鮮にいる階級敵は、さまざまのデマを流して民戦の共同候補に反対投票するよう扇動し、信者の選挙参加を妨げようと卑劣な策動をこらした。

 主席は、かれらの策動を暴露し、親日派、民族反逆者など反動分子のしゅん動に警戒心を高めその介入を許さぬよう人民の覚醒を促した。そして、反動の謀略に乗って信者の選挙参加を禁じた一部宗教界の上層部や、無関心な態度を示していた階層の人々と会って、選挙に積極的に参加するよう説得した。

 主席のたゆみない活動によって、1946年11月3日におこなわれた朝鮮で最初の道・市・郡人民委員会委員選挙は大きな勝利をおさめた。

 民主選挙の勝利は、主席のまわりに結集した朝鮮人民の威力と愛国的熱意を示威し、朝鮮人民が自力で十分に自主独立国家を建設しうることを実証した。それはまた、主席の政権建設方針の生命力を示し、国家の主人となった人民大衆の民族的自負と革命的熱意を高めた。

 主席は民主選挙の勝利にもとづいて1947年2月、平壌で北朝鮮道・市・郡人民委員会大会を招集し、最高主権機関である北朝鮮人民会議の創設と、新しい中央政権機関として北朝鮮人民委員会の樹立を宣言した。

 北朝鮮人民会議は、全人民の一致した念願をこめて、朝鮮人民を新しい祖国の建設に導いている金日成主席を、北朝鮮人民委員会委員長に選出した。

 北朝鮮人民委員会は、朝鮮最初のプロレタリアート独裁政権であった。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「(略)歴史的な最初の民主選挙をおこない、北朝鮮人民委員会を創設しました。これは、わが国に生まれた最初のプロレタリアート独裁政権でありました」(『朝鮮民主主義人民共和国は、朝鮮人民の自由と独立の旗印であり、社会主義・共産主義建設の強力な武器である』1968年9月7日)

 北朝鮮人民委員会の重要な任務は、全国的範囲で反帝反封建民主主義革命の課題を完遂し、同時に北半部で社会主義革命段階の課題を遂行することであった。

 主席は北朝鮮人民委員会の樹立につづいて、面・里(洞)人民委員会委員選挙を実施するようにし、各級地方人民委員会を新設した。こうして、中央から地方にいたるまで整然とした体系をもつプロレタリアート独裁政権が確立し、社会主義革命の強力な武器がもたらされた。

 主席の指導によってプロレタリアート独裁政権である北朝鮮人民委員会が樹立され、北半部では社会主義への過渡期がはじまった。                





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