『金日成主席革命活動史』

第2節 祖国光復会の創立


 金日成主席は南湖頭会議後、祖国光復会の創立に向けて不眠不休の努力を傾けた。

 祖国光復会の創立に先立ち、武装闘争の国内への拡大と関連して、まず人民革命軍主力部隊の強化に力が注がれた。

 1936年3月、迷魂陣で開かれた軍事・政治幹部会議で主席は、人民革命軍部隊を再編成し、特に、主力部隊を強化するために新師団を組織することと、その強化のための課題と方途を示すとともに、祖国光復会の創立準備をおし進めることについて強調した。

 会議後主席は、広大な地域および国内への武装闘争の拡大を成功させるため、人民革命軍部隊を再編成してそれぞれの担当地域に派遣し、同時に新師団の編成に着手した。新師団の編成は、敵の攻勢を粉砕し、極左的な反「民生団」闘争が残した弊害を一掃する厳しいたたかいのなかで進められた。

 主席が新師団の編成のために馬鞍山地区に着いたとき、そこには「民生団」の疑いをかけられて戦闘隊列からはずされ、迫害されていた隊員たちだけが残っていた。既に、打撃を受けて下火になった反「民生団」闘争の極左的偏向が司令部から遠く離れたこの地区ではまだ是正されずにいることを知った主席は、かれら100余名の「民生団」嫌疑書類を焼き払い、全員新師団に編入した。

 主席は新師団編成の過程で、馬鞍山の児童団員を革命をつぐ後続部隊に育成するため温かい愛情と配慮を払った。馬鞍山にいた児童団員たちは、偏狭で無知な排外主義者とその追従者たちから「民生団」呼ばわりされ、飢えと寒さに苦しみ、健康を害していた。この惨状に胸を痛めた主席は、母、康盤石女史の深い愛情がこもっている形見の金20円で衣服をつくって着せたばかりか、部隊にひきとって世話を見ることにした。

 主席は分散して活動していた小部隊や隊員、入隊を志望する愛国青年を集めて新師団を編成し、その政治的・軍事的強化に努めた。

 ついで、全国的な常設的反日民族統一戦線組織体の結成に取り組んだ主席は、まず祖国光復会創立準備委員会を組織し、同時に政治工作員を広い地域に派遣して各階層の人民を祖国解放の旗のもとに結集していった。

 主席は南湖頭から東崗にいたる、苛烈な戦闘の絶えない苦難にみちた行軍のさなかにも、密林のかがり火の前でも、不眠不休の思索と探究を重ね、祖国光復会の綱領と規約、創立宣言を一つ一つ完成していった。

 こうした準備にもとづいて1936年5月1日〜15日に東崗で朝鮮人民革命軍の軍事・政治幹部会議が開かれた。

 主席はまず、常設的な反日民族統一戦線組織体としての祖国光復会を創立することについて歴史的な報告をおこない、光復会の綱領と規約、創立宣言を発表した。

 主席によって作成された『祖国光復会十大綱領』には、不滅のチュチェ思想にもとづいて反帝反封建民主主義革命段階で解決すべき基本課題が全面的に規定されていた。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「祖国光復会十大綱領のなかには、日本帝国主義を打ち破って、真の朝鮮人民革命政府を樹立する問題、朝鮮の独立のためにたたかう革命軍を組織する問題、産業国有化と土地改革、8時間労働制、男女平等権、無料義務教育をはじめ民主主義的な諸施策の実施にかんする問題などが規定されています」(『社会主義経済建設で新たな高揚を起こすために』1974年3月7日)

 祖国光復会の綱領には、民族的自主権を実現する政治的課題として、日本帝国主義の植民地支配をくつがえして真の朝鮮人民政府を樹立し、人民に民主的自由と権利を保障し海外朝鮮公民の民族的権利を擁護することが規定されている。

 綱領にはまた、国の自主的発展を保障する経済的課題として、土地改革と重要産業の国有化を実施し、勤労者の生活を改善し、自立的な民族経済を建設することが提起されている。

 綱領にはさらに、社会の民主化のために社会生活のすべての分野から日本帝国主義の植民地支配体制と封建的遺習を一掃し、民主的民族教育と民族文化を発展させる課題が規定されている。

 また綱領の最後の部分には、自主的な対外政策の基本的原則が示されている。

 『祖国光復会十大綱領』は、朝鮮の共産主義運動と民族解放運動を一つの目標のもとに結集し、全民族を動員して朝鮮人民みずからの力で民族解放の歴史的偉業を達成するための主体的な革命の綱領であった。これは、反帝反封建的民主主義革命の段階における労働者階級の基本的要求と各階層人民の利害関係を正しく反映し、民族解放の課題と民主的社会変革の課題を有機的に結びつけた独創的な革命の綱領であった。またそれは、反帝反封建民主主義革命の完遂後、社会の進歩と繁栄および祖国の自主的発展を予定した新しい社会づくりの偉大な綱領であった。

 祖国光復会の規約には、統一戦線組織体の名称と加入対象、闘争目的とその実現方途などが明示され、会員の資格と入会手続き、組織の形式と構造、会員の任務と権利、規律とともに、特殊会員の資格と入会手続き、工作任務などが規定されていた。

 この規約は、広範な反日愛国勢力を唯一の原則と規準のもとに組織的に結集し、反日闘争を統一的に進める保障となるものであった。

 主席は、『祖国光復会創立宣言』で、日本帝国主義侵略者の暴圧と虐殺、苛酷な搾取と収奪を厳しく糾弾し、都市と農村のいたるところで祖国光復会を速やかに結成し、『祖国光復会十大綱領』の旗のもとに全民族が団結して祖国の解放のためにたたかうことを訴えた。

 会議は十大綱領と規約、創立宣言を満場一致で採択し、ついで全朝鮮人民の念願をこめて、金日成主席を祖国光復会会長に推した。

 1936年5月5日、祖国光復会の創立が内外に宣言された。

 祖国光復会は、内外の反日勢力を結集し統一的に指導する、朝鮮で最初の幅広い反日民族統一戦線組織であり、強力な地下革命組織であった。それはまた、唯一の綱領と規約、組織体系をもち、民主集中制の原則にもとづいて活動する常設的な統一戦線組織であり、朝鮮革命にたいする主席の指導を実現する強力な革命組織であった。

 祖国光復会の創立は、朝鮮の反日民族解放闘争を発展させるうえで大きな意義があった。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「1936年5月5日の、わが国における最初の反日民族統一戦線体である祖国光復会の創立は、革命の大衆的地盤を強化する活動において画期的なできごととなりました。祖国光復会が創立された結果、反日民族統一戦線運動は抗日武装闘争と密接にむすびつき、よりいっそう組織的、系統的に、そして全国的範囲で急速に発展するようになり、すべての反帝勢力を国の解放をめざすたたかいに力づよく組織し動員することができました」(『レバノン新聞「アルアンワル」の記者アリ・バルートの質問にたいする回答』1969年11月22日)

 祖国光復会の創立により、金日成主席のまわりに全民族の反日勢力を結集して革命の大衆的基盤を強化し、反日民族統一戦線運動を主席の唯一の指導のもとにいっそう組織的、系統的に、そして全国的範囲で発展させることができるようになった。また、抗日武装闘争と人民のさまざまの反日闘争を密接に結びつけて発展させ、党創立の準備活動をさらに組織化し国内深くに拡大することができるようになった。祖国光復会の創立は、日本帝国主義を民族の主体的な力によって打倒する道を開くとともに、国際革命勢力との連帯を強め、国際反ファッショ闘争戦線の発展に不滅の貢献をなした。

 主席は祖国光復会の創立宣言についで、反日民族統一戦線運動の活動原則と光復会の組織網を広げる具体的な方途を示した。

 まず、反日民族統一戦線運動と祖国光復会の活動において共産主義者の堅持すべき原則が明らかにされた。

 統一戦線運動で重要なことは、共産主義者の指導を確立することである。それは、反日民族統一戦線運動を労働者階級をはじめ、全人民大衆の利益に合わせて進め、革命的な戦略・戦術にもとづいて発展させるうえでゆるがせにできない問題であった。主席は、統一戦線運動で共産主義者の指導を確立するためには、共産主義者が祖国光復会の指導的地位を占めて組織を革命的に指導し、あらゆる左右の偏向を克服しなければならないと指摘した。

 統一戦線運動で重要なことは次に、階級路線と大衆路線を正しく結びつけることである。階級的偏見にとらわれて、労働者、農民だけを対象にしようとする極左的偏向と、無原則にすべての人と手を握ろうとする右寄りの偏向はともに克服されなければならなかった。したがって主席は、祖国光復会には反日的要素をもつ愛国的民主勢力を最大限に団結させるとともに親日派、民族反逆者などの敵対分子や、さまざまな異分子を徹底して孤立させ、かれらと妥協することなくたたかわなければならないと指摘した。

 統一戦線運動で重要なことはまた、団結と闘争を正しく結びつけることである。統一戦線に参加する各階層は、それぞれ異なる階級的利害関係から異なる態度をとっており、なかには立場があいまいで動揺する階層も少なくないだけに、そうした弱点を克服してたたかいながらも、かれらとの団結を強めなければならないことが強調された。

 主席は、さらに祖国光復会の組織網を広げる具体的な方途を明らかにした。光復会の組織網を速やかに拡大するためには、なによりも労働者、農民をはじめ、反日の要素をもつすべての階層と人士を最大限に獲得し、各地で分散的に活動している反日団体を傘下に網羅すべきであり、また非合法活動に力を入れながら合法活動の可能性を最大限に利用し、祖国光復会の下部組織の組織形式と名称は具体的な実情と条件に即して多様にすべきである。そして大衆政治工作は、各階層の現状を考慮に入れて巧みにおこなうことである。労働者、農民にたいしては、階級的自覚を高めることに重点をおきながら反日革命闘争の主力としての誇りをいだかせ、青年学生、知識人には、反帝的・愛国的立場を守らせ、民族資本家、民族主義者、宗教者は、その準備程度と特質に即して愛国主義教育を強めて漸次反日民族統一戦線に引き入れ、また婦人を封建的因習から解放し反日闘争に進んで参加するように教育すべきである。

 主席の示したこれらの原則と方途は、反日民族統一戦線運動を力強く展開し、祖国光復会の組織網を急速に広げる指導指針となった。

 主席は最後に、白頭山一帯に新たな形態の根拠地を創設する問題と、党創立の準備活動を全国的な規模で積極化する具体的な対策を示した。

 歴史的な東崗会議を契機として、朝鮮の反日民族統一戦線運動は急速に発展し、武装闘争を国内に拡大し党を創立する準備活動が全国的な広がりをもって強力に推進された。





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