『金日成主席革命活動史』

第1節 南湖頭会議。反日民族解放闘争を
全国的に発展させる戦略的方針を提示


 反日民族解放闘争を全国的に一大高揚へと導くことは、1930年代中期における朝鮮革命の合法則的要請であった。暴虐な日帝侵略者に決定的な打撃を加えて滅亡へ追い込み、祖国解放の歴史的偉業を早急に達成するためには、民族の力を総動員して反日闘争を全国的にくりひろげなければならなかった。一方、そのための主体的な革命勢力も準備されていた。

 主席の指導のもとに、数年来の厳しい闘争を通じて多くの共産主義者が育成され、朝鮮人民革命軍は強力な勢力に成長した。また、排外主義者と分派・事大主義者の策動が粉砕されて共産主義隊列の政治的・思想的統一が実現し、各階層の広範な大衆が結集して革命の大衆的基盤も強化された。

 全般的情勢も、朝鮮人民の反日闘争に有利に発展していた。

 国際的には、ファッショ勢力と反ファッショ勢力間に激烈な闘争が展開され、反ファッショ民主勢力は着実に力を増していた。アジア全土を制覇する野望のもとに中国本土への侵略の手をのばした日本帝国主義者は、アジアと全世界の自由愛好人民から排撃され孤立を深めていた。それでもなお、かれらは大陸侵略戦争の準備に全力を傾け、特に朝鮮人民にたいするファッショ的暴庄と収奪をかつてなく強化した。朝鮮人民の反日感情は極度に達し、反日抗戦は広範囲に展開されていた。

 革命の諸要請と有利な情勢は、反日民族解放闘争を高い段階へと発展させることを切実に求めていた。

 金日成主席は1936年2月27日から3月3日にかけて、南湖頭で、朝鮮人民革命軍の軍事・政治幹部会議を開き、『反日民族解放闘争を強化発展させるための共産主義者の任務』と題する歴史的な報告をおこない、抗日武装闘争を中心とする反日民族解放闘争を全国的に一大高揚へと導く戦略的方針とその具体的な課題を示した。

 まず、朝鮮人民革命軍の主力部隊を国境地帯に進出させ、戦いを漸次国内に拡大する方針がうちだされた。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「現段階において、我が国の反日民族解放闘争をいちだんと高揚させるためには、朝鮮人民革命軍主力部隊を国境地帯に進出させ、その闘争舞台を漸次国内に拡大していくべきであります」(『反日民族解放闘争を強化発展させるための共産主義者の任務』1936年2月27日)

 人民革命軍の主力部隊が国境地帯に進出し、戦いを国内に拡大してこそ、暴虐な植民地支配に苦しむ朝鮮人民に祖国解放の希望と勝利の信念をいだかせ、かれらのさまざまな反日闘争にたいする指導を強化し、反日民族解放闘争を全国的に一大高揚へと導くことが可能であった。これは、朝鮮革命に責任を負っている朝鮮共産主義者の当然の権利であり、義務であった。

 人民革命軍が強大な勢力に成長し、金日成主席を民族の太陽、希望の灯台として仰ぐ国内の人民が、人民革命軍の国内進出を渇望していた状況のもとで主力部隊の国境地帯および国内への進出は、極めて緊要な問題であった。朝鮮人民革命軍が、国境地帯と国内に進出して反日闘争を展開するためには、なによりも白頭山を中心とした国境一帯に新たな形態の遊撃根拠地を創設することが必要であった。そこは、大衆的基盤または自然地理的条件からみて遊撃根拠地の創設に有利な条件を備えており、やがて白茂(ペクム)高原、蓋馬(ケマ)高原、狼林(ランリム)山脈沿いに根拠地を拡大し、武装闘争を国内へ広げるうえでも極めて有利なところであった。

 主席は、白頭山の大森林地帯に人民革命軍が依拠する密営綱を張りめぐらし、周辺地域の人民を組織化して半遊撃区形態の遊撃根拠地をきずくべきであると指摘した。また、人民革命軍が国境一帯と国内に進出して革命をおし進めるためには、武装闘争を積極的に展開すべきであり、またそのためには、抗日武装隊伍、特に人民革命軍主力部隊を強化しなければならないと強調した。

 主席は、国境地帯への進出によって中国人抗日武装部隊との共同闘争を弱めるべきではなく、中国の共産主義者とともに抗日武装闘争をひきつづき強力に展開しなければならないと指摘した。

 主席は次に、反日民族統一戦線運動を発展させる方針を示した。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「朝鮮人民の反日民族解放闘争の新たな高揚のために、我々は反日民族統一戦線運動をさらに発展させなければなりません」(同上)

 反日民族統一戦線運動を全国的におし進めてこそ、各階層の反日愛国勢力を幅広く結集して革命勢力をさらに強固にきずき、朝鮮人自身の力で祖国の解放と独立を達成することができるのであった。

 反日民族統一戦線運動を強化することは、国際情勢の要請でもあった。ファッショ勢力は血の独裁と侵略戦争によって、全世界をファシズムの支配下におき、全人類を奴隷化しとうとしていた。各国の共産党には、反ファッショ人民戦線、反帝民族統一戦線を結成して国際ファシズムに反撃を加えるべき緊切な課題が提起されていた。

 こうした情勢は、朝鮮においても反日民族統一戦線運動の幅を広げることを求め、その条件も十分にととのっていた。

 日本帝国主義の未曾有のファッショ的暴圧と植民地的収奪にあえぐ労働者、農民はもとより、良心的なすべての人々が祖国の解放を渇望していた。また、それまでの数年間、反日民族統一戦線運動を展開する過程で貴重な経験が積まれ、運動を発展させる指導的中核も成長していた。

 主席は、反日民族統一戦線運動を新たな段階へ発展させるためには、常設的な統一戦線組織体を結成することであり、それは、親日派地主、買弁資本家、民族反逆者などごく少数の反動分子を除き、全民族を祖国解放の戦線に結集する大衆的な革命組織とし、組織体の名称も各階層人民の共通の念願を反映した「祖国光復会」あるいは「民族解放同盟」とすべきであると指摘した。そして、統一戦線組織の綱領の基本的内容についても明らかにされた。

 主席は反日民族統一戦線運動を成功させるためには、それを抗日武装闘争との緊密な連係のもとに展開し、同時に発展する情勢の要請に即して共青を大衆的な青年組織に改組し、広範な各階層の愛国青年を結集する大衆的青年組織として朝鮮反日青年同盟を組織することであると強調した。

 主席はさらに、党創立の準備活動を全国的な規模で積極的に進める方針を示した。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「我々は、党創立の準備活動を全国的な範囲で力強く進め、情勢が熟せばいつでも党を創立できるように、党創立の組織的・思想的基礎をきずきあげなければなりません」(同上)

 党創立の準備活動を全国的におし進めてこそ、情勢が熟せば適時に党を創立し、広範な革命勢力を結集して反日民族解放闘争の高揚をもたらすことができるのであった。

 主席は党創立の準備活動で重要なことは、人民革命軍部隊と朝鮮人居住地、特に、国内で党組織網を広げるとともに、人民革命軍の党委員会から地方の党組織にいたるまで統一的な組織体系をうちたて、すべての党組織が同一の歩調をとることであり、労働者、貧農、雇農の入党者を極力増やして党創立の組織的根幹を階級的にかため、また、各地の革命組織内に党の基礎組織をつくることであると指摘した。さらにセクト主義と日和見主義に反対してひきつづき非妥協的にたたかい、共産主義者と革命組織のメンバーを朝鮮革命の路線と戦略・戦術で武装させて革命隊列の思想および行動の統一を保障し、それとならんで各階層の人民大衆を反日の旗のもとに広く結集して党創立の強固な人衆的基盤をきずくことであると強調した。

 南湖頭会議における主席の報告は、歴史的に大きな意義があった。

 それは、当面の情勢と発展する革命の要請に即して抗日武装闘争を中心とする反日民族解放闘争を全国的に一大高揚へと導く戦闘的な旗印であり、朝鮮人自身の力で祖国解放の歴史的偉業を達成する革命的な方途を明らかにした主体的な闘争綱領であった。それはまた、ファシズムに反対し世界革命のためにたたかう共産主義者と人民、特に、植民地、半植民地諸国の人民に信念と希望をいだかせ、そのたたかいを励ます不滅の戦闘的旗印であった。

 南湖頭会議は、朝鮮人民に新たな希望と信念をいだかせ、かれらを祖国の独立と民族の自主権をかちとるたたかいに決起させ、朝鮮革命をチュチェの旗のもとに力強く前進させるうえで画期をなした歴史的な会議であった。       





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