『金日成主席革命活動史』

第1節 明月溝会議。遊撃戦の形式によって
武装闘争を展開する戦略的方針を提示


 1931年秋の情勢は、反日武装闘争の本格的な展開を強く要請していた。

 1931年9月18日、謀略的な方法で「満州事変」を引き起こし、大陸侵略に乗り出した日本帝国主義は、「銃後の安全」を期して朝鮮人民にたいする反動攻勢を強化した。かれらは、朝鮮人民の革命運動を武力で弾圧し、罪のない無数の人民を検挙、投獄、虐殺する一方、軍需産業の拡大と戦略物資の確保を狙って、人民を苛酷に搾取し収奪した。かれらは特に、金日成主席の指導のもとに革命勢力が急速に成長している間島など満州の朝鮮人居住地域における弾圧に全力をあげた。

 日本帝国主義者と朝鮮人民の民族的矛盾が先鋭化するなかで、広範な人民大衆の反日闘争は急激に高まり、国内はもとより東満州でもしだいに暴力闘争へと発展した。

 この時期、組織的な武装闘争の条件と可能性もととのっていた。主席の指導のもとに準備活動が活発に進められた結果、抗日武装闘争の強力な中核が育成され、政治的・軍事的経験が積まれ、大衆的基盤とあわせて活動の拠点もきずかれた。また、満州侵攻による国民党支配の崩壊後日本帝国主義の支配体制はまだ確立せず、満州全土は無政府状態のまま中国人民の大衆的な反日闘争が活発にくりひろげられていた。

 以上のような情勢と武装闘争に有利な諸局面を分析し、この時期を抗日革命戦争開始の絶好の機会とみなした主席は、抗日武装闘争の準備に拍車をかけた。そして、日本帝国主義の満州侵攻直後、安図(松江)地区革命組織責任者会議を開き、日本帝国主義の野蛮な武力弾圧に組織的な武装闘争でこたえることは、いまや焦眉の急務であると指摘し、大衆を政治的、思想的、軍事的に鍛える課題を示した。また、同年10月には国内の鐘城一帯に出向いて国内の状態を調べ、地下革命組織の責任者たちに抗日武装闘争の準備を急ぐよう指示した。その後、東満州各地に政治工作員を送って、党、共青および半軍事組織を整備、補強し、広範な人民を闘争のなかで鍛えるなど抗日戦争開始のための積極的な措置を講じた。

 主席は、1931年12月16日、明月溝で党および共青幹部会議を開き、『日本帝国主義に反対する武装闘争を組織し展開することについて』と題する歴史的な演説をおこない、抗日武装闘争の戦略的な方針を示した。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「現情勢は、我々に日本帝国主義に反対する武装闘争を早急に展開することを求めています」(『日本帝国主義に反対する武装闘争を組織し展開することについて』1931年12月16日)

 当時の情勢と反日民族解放運動の歴史的な経験を分析した主席は、祖国の独立と民族の解放を達成するためには、朝鮮人民自身の力で武装闘争を展開し、すべての人が武器を取って祖国解放の正義の戦いに立ちあがらなければならないと述べ、貧富と貴賤、党派と信教のいかんを問わず、銃のある人は銃を、金のある人は金を、力のある人は力を出し、全民族が反日武装闘争に総決起すべきであると強調した。そして、朝鮮人民自身の力で強大な日帝侵略軍を撃破するためには、遊撃戦の形式を基本として武装闘争を展開すべきであると述べた。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「(略)遊撃戦の形式を基本として武装闘争を展開すべきであります。

 遊撃戦は、みずからの力を保持しながらも、敵に大きな政治的・軍事的打撃を与えることができ、小さな力によっても、数量上・技術上優勢な敵を十分掃滅できる武装闘争の方法であります」(同上)

 植民地民族解放闘争において、被抑圧人民は、国家的後方も正規軍の支援もなしに数量上・技術上優勢を帝国主義侵略軍と戦うだけに、遊撃戦の方法で武装闘争を展開すべきである。その場合、武装隊は行動方向と活動地域を随意に選定し、有利な自然地理的条件を利用して敏速な機動と伸縮自在な戦術、軽便な武器をもって戦うため、常に主導権を掌握し、少数兵員で十分に優勢な敵を撃滅することができる。また、人民大衆との緊密な連係のもとで戦うので、その支援を得て戦闘を有利に進め、武装隊伍を不断に拡大していける。

 主席は史上はじめて、植民地民族解放闘争の特性と遊撃戦の優位性を全面的に分析し、従来は正規軍の補助手段ないし革命闘争における第二義的闘争形態とされてきた遊撃戦を、植民地民族解放運動の主な闘争形式と規定づけた。この遊撃戦の方針は、自国の主体的な革命勢力で反日民族解放闘争の勝利を達成する最も正しい方針であり、植民地民族解放闘争に転機をもたらした独創的な方針であった。

 主席はつづいて、遊撃戦の形式による武装闘争を進めるうえでの重要な課題と遂行方途を示した。

 主席はまず反日人民遊撃隊を組織する課題を提起した。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「武装闘争を展開するためには、敵の反革命軍事力を撃破できるみずからの革命武力をととのえなければなりません。強盗日本帝国主義とのたたかいで勝利をおさめるためには、長期戦において十分みずからの兵力を保持、拡大し、敵の兵力をたえず掃滅、弱化させうる革命武力をもたなければなりません。我々は、そのような革命武力である反日人民遊撃隊を組織すべきであります」(同上)

 反日人民遊撃隊は、義兵隊や独立軍とは根本的に異なる真の人民の軍隊、労働者階級の軍隊、革命の軍隊である。反日人民遊撃隊を創建するためには、地下革命闘争の厳しい試練のなかで鍛えられたすぐれた青年共産主義者を根幹として武装部隊を組織し、実地の革命闘争を通じて点検された先進的な労働者、農民、愛国青年でその隊列を間断なく拡大し、遊撃隊にたいする共産主義者の指導を確立すべきである。また、武装力の二大要素の一つである武装をととのえることは、武装闘争の成果を左右する基本的な要因である。したがって、「武装は我々の生命だ! 武装には武装で!」のスローガンのもとに敵の武器を奪って武装するとともに、みずからも武器をつくることである。以上のように述べた主席は、反日人民遊撃隊創建の成果を期して、最初は小規模の遊撃隊を各地に組織し、それを強化しつつ大部隊の革命武力に発展させるべきであると指摘した。

 主席はつづいて遊撃根拠地創設の課題を示した。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「遊撃戦の形式で武装闘争を展開するためには、遊撃根拠地を創設しなければなりません」(同上)

 強固な遊撃根拠地があれば、強大な敵の包囲のなかでも武装部隊をたえず強化しながら長期の遊撃戦をおこなうことができ、敵の無差別な虐殺から革命的大衆を守ることができる。特に、国家的後方をもたず外部の援助も受けずに遊撃戦をおこなう状況のもとでは、みずからの強固な軍事的根拠地、後方基地がなくてはならない。そして、武装闘争を展開する一方、党創立の準備活動をはじめ革命運動全般を発展させるためにも、遊撃根拠地が必要である。

 主席は、遊撃根拠地の形態と地域の選定、創設の段階と方法などすべての問題を詳述し、現段階においては、豆満江沿いの山岳地帯と革命化された農村地域に解放地区形態の遊撃根拠地である遊撃区を創設すべきであると指摘した。

 主席は、さらに武装闘争の大衆的基盤をきずく課題を示した。

 金日成主席は、次のように述べている。

 「武装闘争を展開するためには、遊撃隊が依拠して活動できる強固な大衆的基盤がなければなりません」(同上)

 遊撃戦は本質上、人民の積極的な参加を前提とする人民戦争である。人民大衆の積極的な参加と支援は、遊撃隊をたえず強化し、その勝利を裏付ける基本的条件である。遊撃隊は強固な大衆的基盤をきずき、人民大衆との血の通ったつながりを強めてはじめて、すべての障害と難関を自力で克服し、長期の闘争で最後の勝利を達成することができるのである。

 主席は、武装闘争の大衆的基盤をきずくためには、各階層の人民大衆を各種の革命組織に参加させて革命的に教育するとともに、闘争のなかで革命勢力を育成し戦闘的に鍛え、その隊列を拡大していくべきであると指摘した。

 主席はまた、朝中人民の反日統一戦線を形成する課題を示した。

 広範な中国人民の反日勢力と統一戦線を形成することによって、敵を孤立、弱化させ、朝中人民の団結した力で日帝侵略者に大きな政治的・軍事的打撃を与え、武装闘争を発展させることができるのであった。

 主席は、朝中人民の反日統一戦線の形成には、抗日の旗をかかげて決起した中国人反日部隊との連合戦線を形成することが急務であると述べ、そのためには、兵士大衆との下部統一戦線を基本にし、これに依拠して上層部との統一戦線を形成する原則のもとに、反日部隊にたいする政治工作を積極的に進めるべきであると指摘した。

 主席は終わりに、党組織および共青の活動を強化する課題を示した。

 党組織の前衛的役割を高め、共青活動を強化せずには、武装闘争を展開するための課題を実現することも、労働者階級の統一的な党創立の組織的・思想的準備を強化することも望めなかった。

 主席は、遊撃隊の指導的中核と将来創立される党の組織的根幹を育成するためには、党生活を強化し、共青の拡大をはかる組織政治活動を強めるべきであると指摘した。

 主席の歴史的な演説『日本帝国主義に反対する武装闘争を組織し展開することについて』は、朝鮮の反日民族解放運動を新たな段階に発展させるための綱領的な文書であり、史上はじめて、常備武力による遊撃戦を基本形式とする武装闘争の独創的な理論と戦略・戦術を全面的に体系づけ、革命戦争と革命武力建設にかんする労働者階級の理論を豊かにした不朽の労作であった。

 歴史的な明月溝会議をもって、朝鮮の反日民族解放闘争は新たな高い段階である武装闘争段階に入った。

 抗日武装闘争の開始は、各階層人民に強い革命的影響を及ぼし、各種形態の大衆闘争を励まして朝鮮革命全般の急速な発展を保障するとともに、革命勢力を守り日帝侵略者に大きな政治的・軍事的打撃を与えて祖国解放の歴史的偉業を完遂する転機となった。また、それは、植民地、半植民地諸国人民に祖国の独立と民族の解放を達成する科学的かつ革命的な方途を示し、かれらを武装闘争へと奮い立たせた。           





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