金 日 成

産業の復興発展と電力工業部門の働き手の課題
―電力工業部門働き手におこなった演説― 
1946年3月22日 

 皆さん!

 朝鮮人民は解放後、みずからの手で全国各地に人民委員会を樹立し、各道と行政局を統一的に指導する北朝鮮臨時人民委員会を組織しました。北朝鮮臨時人民委員会は全人民の利益を代表し、民主祖国の建設を促進するためにたたかう真の人民の政権です。

 最近、北朝鮮臨時人民委員会は、11カ条の当面課題の一つである土地改革を実施する法令を発布しました。この法令は人民大衆の絶対的な支持を受けており、土地改革はいま労働者、農民の積極的な参加のもとに成功裏に実施されています。

 土地改革は、北朝鮮で封建的搾取制度を永久になくし、農民を土地の主人にするためのものです。土地改革の実施は、わが国の民主的発展にとって歴史的な意義をもつ大きな出来事です。我々は早急に土地改革を終え、重要産業の国有化、8時間労働制の実施、男女平等権の実現など民主的諸改革を実施する予定です。

 我々は間もなく、北朝鮮臨時人民委員会の名で、将来樹立されるべき全朝鮮臨時政府の政綱を発表する予定です。北朝鮮臨時人民委員会はこの政綱にもとづいて、政治、経済、文化の各分野の課題を遂行し、民主主義的自主独立国家建設の土台を築くでしょう。

 こんにち、我々の最も重要な課題の一つは、産業を早急に復興させることです。

 現在、わが国の産業は取るに足らないものです。悪辣な日本帝国主義者は、朝鮮の財貨を略奪し、大陸侵略戦争を強行するため朝鮮にわずかばかりの工場を建設しましたが、それさえ「大東亜戦争」の時期に酷使し、敗走する際にはそのほとんどを破壊しました。

 破壊された産業を復興せずには、失業者をなくして人民の生活を安定、向上させ、新しい朝鮮の建設を促すことができません。我々は、あらゆる障害と難関を克服し、工場、企業を早急に復旧して操業させなければなりません。

 こんにち、産業の復興をめざす我々には、多くの難関が横たわっています。

 我々は、工場の機械設備の補修に必要な資材をもっておらず、ねじくぎさえ満足につくれない状態です。

 我々は、食糧難にも直面しています。かつて、日本帝国主義者は朝鮮を「大東亜戦争」の「後方基地」にするため、「農工並進」「農村振興運動」などの美名のもとに農村収奪に狂奔しました。日本帝国主義の侵略戦争と穀物収奪のため、農民は飢餓と貧困にあえぎながら、かろうじて露命をつなぎ、農村は手のほどこしようもなく疲弊しました。そのため、現在米が足りず、労働者、農民に食糧の供給が満足におこなわれていません。

 産業建設で技術者が少ないことも大きな難関となっています。

 破壊された産業を復興し、長年にわたる後進性をなくして富強な新しい祖国を建設するためには、多数の技術者がいなくてはなりません。しかし、かつて日本帝国主義の甚だしい民族差別政策のため、朝鮮人は技術を学ぶことができませんでした。

 日本帝国主義者は、朝鮮人労働者に技術を教えず、力仕事しかさせませんでした。彼らは、簡単な技術も秘密にして、重要な機械設備のあるところには朝鮮人が近づくことさえ禁じました。こんにち技術者の問題が極めて深刻な問題となっているのはこのためです。

 資金の問題にしても同様です。かつて、日本帝国主義は、わが国の産業、運輸、金融をはじめ、全般的経済の主要命脈を掌握し、朝鮮のすべての物資と財産を侵略戦争の遂行に使い果たしました。日本帝国主義から空の金庫を引き継いだ我々には、現在産業の復興建設に必要な資金がありません。

 しかし、我々は、このような難関に屈して日本帝国主義の罪を責めてばかりいるわけにはいかず、他人の支援を頼りにするわけにもいきません。もし、我々が障害と難関にたじろいで破壊された産業を早急に復興させないならば、富強な自主独立国家を建設することはできず、わが民族は再び過去のように国なき民の境遇に陥るでしょう。我々は、祖国と人民のために力と知恵と技術のすべてをささげて産業を復興させなければなりません。

 産業の復興にあたって電力工業部門の従事者が担っている責任は重大なものがあります。

 電力は産業の基本動力です。電力がなくては、工場、鉱山をはじめ、産業機関を復興し、人民の生活に必要な工業製品を作ることができません。また、電力は農業の発展にとっても切実に必要です。

 わが国には、水豊発電所、長津江発電所をはじめ、多くの水力発電所があります。それらは新しい祖国建設の貴重な元手です。

 発電所を早急に復旧し円滑に運営すれば、すべての産業部門と農業の発展、そして人民の生活向上に大いに寄与するでしょう。

 電力工業部門のすべての労働者、技術者は、電力工業の重要性を深く認識し、破壊された発電所と変電所を速やかに復旧し、電力を多く供給するために努力しなければなりません。

 現在、発電所や変電所のすべてが運営されてはいません。解放後、電力工業部門の労働者、技術者の努力によって多くの設備が復旧されましたが、まだそれでは足りません。

 電力工業部門の従事者は、復旧した発電所と変電所の設備を立派に管理、運営する一方、その他の電力設備をすべて復旧して運営するために努力しなければなりません。もちろん、現状では電力設備を残らず復旧して運営するというのは決して容易なことではありません。しかし、力と知恵を合わせて努力するならば十分解決することができます。

 皆さんは、電力工業部門の技術と運営経験をもっています。

 皆さんは、その技術と経験を電力工業の復旧に惜しみなくささげるべきです。

 電力設備の復旧と整備において重要なのは、資材と資金の問題を解決することです。現状では、電力設備の補修や復旧に要する資材と資金を国家が十分に提供することはできません。電力工業部門の従事者は、国家から資材を供給してもらおうとばかりせず、自力で資材の問題を解決するために努力すべきです。日本帝国主義が敗走する際に埋めたり捨てたりした電気資材もすべて見つけ出し、人民が使わずにもっている電気資材も集めて電力設備の復旧、整備に利用すべきです。それでも、なお足りない分は外国から少し買い入れるべきです。

 電力工業を発展させるためには、資材と資金の問題ばかりでなく技術問題も解決しなければなりません。電気技術者が非常に少ない現状において、この問題の解決に特に関心を払うべきです。

 電力工業部門の技能工を動員して労働者に技術を教え、技術講習会をおこなって電気技術者を養成する対策を講じるべきです。

 こうして、電力工業部門の労働者の技術・技能水準を早急に高め、電気技術者の陣容を拡大しなければなりません。

 電力工業を発展させるためには、この部門従事者の企業管理水準を高めなければなりません。

 皆さんとしては企業の管理が初めてなだけに、仕事のうえで難関が多いことでしょう。しかし、今すぐ皆さんを仕事から外して勉強させるゆとりはありません。したがって、自習をしなければなりません。学習は学校に通わなければできないというものではなく、働きながらも十分できます。皆さんは国の現状をはっきり認識し、働きながらたゆまず学び、企業管理の豊富な知識を身につけるために努力すべきです。

 どんなことでも神秘がったり、難しく考えようとせず、大胆に取り組むべきです。自力ですべての問題を解決する固い決心と高度の愛国的熱意を抱いて粘り強く学び働くならば、不可能というものはありません。皆さんが、国の主人、電力工業の主人であるという自覚をもって働くならば、資材や技術問題をはじめ、すべての問題を十分解決していけるでしょう。

 困難なときほど、なお自分の力を信じ、大衆の力と知恵に頼って奮起し、難問を解決していかなければなりません。

 次に、反動分子の策動に警戒心を高めることが大切です。

 現情勢は、警戒心を一段と高めることを求めています。アメリカの反動派と親日派、民族反逆者は、南朝鮮の民主勢力を抹殺しようと策動する一方、我々の民主建設を妨げるため北朝鮮にスパイ、破壊・謀略分子を絶えず送り込んでいます。北朝鮮に潜んでいる反動分子も新しい朝鮮の建設を破綻させるため殺人、放火をはじめ、あらゆる蛮行を働いています。こうした状況のもとで、我々は決して安逸に流れてはなりません。

 電力工業部門の従事者は、高度の警戒心をもって仕事にあたるべきです。電力工業部門で敵の破壊・謀略行為を許すならば、それは人民経済の各部門に大きな災いをまねくことになります。

 皆さんは、人一倍警戒心を高め、敵の破壊・謀略策動をそのつど粉砕しなければなりません。

 電力工業部門から日本帝国主義の悪影響を一掃し、規律と秩序を打ち立て、安逸な行為に反対して強くたたかうべきです。

 こうして、敵に突け込まれるすきを与えないようにすべきです。

 最後に私は、皆さんが力と知恵を尽くして早急に発電所と変電所を復旧、整備し、立派に管理して、人民経済の発展と人民の生活に必要な電力を円滑に供給してくれるよう期待します。
出典:サイト「わが民族同士」 参照:『金日成著作集』2巻 

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