朝鮮民主主義人民共和国金剛山国際観光特区法
−2011年5月31日−


 2011年5月31日に採択された朝鮮民主主義人民共和国金剛山国際観光特区法、全文は次のとおり。

第1章 金剛山国際観光特区法の基本

第1条 (金剛山国際観光特区法の使命)

 朝鮮民主主義人民共和国金剛山国際観光特区法は、金剛山国際観光特区(以下、国際観光特区とする)の開発と管理・運営で制度と秩序を正しく立てて金剛山を世界的な観光特区として発展させることに寄与する。


第2条 (国際観光特区の地位と位置)

 国際観光特区は、観光およびそれに関する経済活動を自由に行える朝鮮民主主義人民共和国の特別観光地区である。

 国際観光特区には、江原道高城郡高城邑、温井里の一部地域と三日浦、海金剛地域、金剛郡内金剛地域、通川郡の一部地域が含まれる。


第3条 (国際特区観光発展の原則)

 世界の名山、金剛山を国際的な観光特区として建設するのは国家の政策である。

 国家は、金剛山をいろいろな観光の目的と機能を遂行できる総合的な観光地に建設して観光を積極的に発展させていくようにする。


第4条 (投資奨励および経済活動条件保障の原則)

 国際観光特区には、外国の法人、個人、経済組織の投資が可能である。

 南側および海外同胞、共和国の関連機関、団体も投資することができる。

 国家は、国際観光特区に対する投資を積極的に奨励し、投資家たちに特恵の経済活動条件を保障する。


第5条 (財産保護の原則)

 国家は、投資家が投資した資本と合法的に得た所得、それに付与された権利を法的に保護する。


第6条 (国際観光特区管理の担当者)

 国際観光特区の管理は、中央金剛山国際観光特区指導機関(以下、国際観光特区指導機関とする)の統一的な指導のもとに金剛山国際観光特区管理委員会(以下、国際観光特区管理委員会とする)が行う。


第7条 (国際交流と協力)

 国家は、国際観光特区活動に関連して国際観光機関、外国の観光組織との交流と協力を強化する。


第8条 (法規適用)

 国際観光特区の開発と管理、観光および観光業、その他の経済活動はこの法とこの法施行のための規定、細則に従って行う。


第2章 国際観光特区の管理

第9条 (国際観光特区指導機関の地位)

 国際観光特区指導機関は、国際観光特区の開発と管理・運営を統一的に指導する中央指導機関である。


第10条 (国際観光特区指導機関の任務と権限)

 国際観光特区指導機関は、次のような活動を行う。
 1.国際観光特区管理委員会の活動に対する指導
 2.国際観光特区法規の施行細則作成
 3.国際観光特区開発総計画の審議、承認
 4.重要建設設計文書写本の受付・保管
 5.国際観光特区の税務管理
 6.このほかに国家が委任した事業


第11条 (国際観光特区管理委員会の地位)

 国際観光特区管理委員会は、国際観光特区を管理する現地執行機関である。

 国際観光特区管理委員会の責任者は委員長である。


第12条 (国際観光特区管理委員会の任務と権限)

 国際観光特区管理委員会は、次のような活動を行う。
 1.国際観光特区開発総計画の作成および実行
 2.観光資源の調査、開発、管理
 3.観光宣伝と観光客募集、観光の手配
 4.国際観光特区での秩序維持、人身および財産保護
 5.土地、建物の賃貸
 6.投資誘致と企業の創設承認、登録、営業許可
 7.土地利用権、建物、運輸機材の登録
 8.企業活動に必要な労力保障
 9.建設許可と竣工検査
 10.国際観光特区インフラ施設物の管理
 11.国際観光特区の環境保護、消防対策
 12.人員、運輸手段の出入りと物資の搬出・搬入に対する協力
 13.このほかに、国際観光特区指導機関が委任した事業


第13条 (共同協議機関の組織・運営)

 国際観光特区には、国際観光特区管理委員会、投資家、企業の代表で構成される共同協議機関のようなものを設けることができる。

 共同協議機関は、国際観光特区の開発と管理、企業の運営で提起される重要な問題を協議、調整する。


第14条 (国際観光特区の出入管理)

 国際観光特区では、無ビザ制度を実施する。

 共和国領域外から国際観光特区に出入りする人員と輸送手段は、パスポート、またはそれに代わる出入証明書を持参して指定された経路に沿ってビザなしに出入りすることができる。

 共和国の他の地域を通って国際観光特区に出入りする秩序、国際観光特区で共和国の他の地域に出入りする秩序は別に定める。


第15条 (検査、検疫)

 国際観光特区に出入りする人員、動植物と輸送手段は、通行検査と税関検査、衛生および動植物検疫を受けなければならない。

 検査、検疫機関は、国際観光特区の安全と出入りに支障がないよう検査、検疫を科学技術的方法で迅速に行わなければならない。


第16条 (環境管理)

 国際観光特区では風致林を伐採したり、名勝地、海岸の松原、海水浴場、奇岩怪石、優雅かつ奇妙な山勢、風致のよい島をはじめ自然風致と洞窟、瀑布、古城址のような天然記念物と名勝古跡を破損させたり、環境保護に支障をきたす建物、施設物を建設してはならず、定められた汚染物質の排出基準、騷音、振動基準のような環境保護基準を保障しなければならない。


第17条 (通信手段の利用)

 国際観光特区では郵便、電話、ファックス、インターネットのような通信手段を自由に使用することができる。


第3章 観光および観光サービス

第18条(観光当事者)

 国際観光特区での観光は、外国人が行う。

 共和国公民と南側および海外同胞も、観光することができる。


第19条 (観光の形式と方法)

 観光は、登山と遊覧、海水浴、休養、体験、娯楽、スポーツ、治療のような多様な形式と方法で行う。

 観光客は、国際観光特区内で自由に観光することができる。


第20条 (観光の環境と条件保障)

 国際観光特区管理委員会は、観光をハイレベルで行えるよう観光の環境と条件を十分に保障しなければならない。


第21条 (観光客のためのサービス)

 投資家は、国際観光特区で宿泊、食堂、商店、カジノ、ゴルフ、夜間クラブ、治療、娯楽のような各種の観光サービス施設を建設し、観光客のための多様なサービスを行うことができる。


第22条 (国際的な行事の催し)

 国際観光特区では、国際会議と博覧会、展覧会、討論会、芸術公演、スポーツ競技のような多彩な行事を催すことができる。


第23条 (交通保障)

 国際観光特区指導機関と国際観光特区管理委員会は、国際空港と港湾、観光鉄道、観光道路を建設して観光客の交通上の便宜を円滑に保障しなければならない。


第4章 企業創設および登録、運営

第24条 (企業の創設)

 投資家は、国際観光特区開発のためのインフラ建設部門と旅行業、宿泊業、食堂業、カジノ業、ゴルフ場業、娯楽・便益施設業のような観光業に単独、または共同で投資していろいろな形式の企業を創設することができる。


第25条 (国際観光特区開発総計画の遵守)

 国際観光特区の開発は、開発総計画に従って行う。

 国際観光特区でインフラを建設したり、企業を創設しようとしたりする投資家は、国際観光特区開発総計画の要求を守らなければならない。


第26条 (企業創設の承認、登録)

 国際観光特区で企業を創設、運営しようとする投資家は、国際観光特区管理委員会の企業創設承認を受けなければならない。

 企業創設の承認を取得した投資家は、定められた期間内に企業登録と税務登録、税関登録を行わなければならない。


第27条 (インフラ建設の承認)

 国際観光特区開発と管理・運営のための空港、鉄道、道路、港湾、発電所のようなインフラ建設の承認は国際観光特区指導機関がする。

 空港、鉄道、道路、港湾、発電所のようなインフラ建設部門の投資を特別に奨励する。


第28条 (支社、代理店、出張所の設立)

 国際観光特区には、支社、代理店、出張所のようなものを設けることができる。

 この場合、国際観光特区管理委員会の承認を受けなければならない。


第29条 (口座の開設)

 企業と個人は、国際観光特区内に設立された共和国銀行、または外国銀行に口座を開設し、利用することができる。


第30条 (外貨有価証券の取引)

 企業と個人は、国際観光特区内の定められた場所での外貨有価証券の取り引きを行うことができる。


第31条 (保険加入)

 企業と個人は、国際観光特区内に設立された共和国、または外国の保険会社の保険に加入できる。


第32条 (廃水の処理)

 企業は、現代的な浄化場、沈澱池、汚物処理場のような環境保護施設と衛生施設を整え、廃水を観光と環境保護に支障がないよう浄化したり、処理したりしなければならない。


第5章 経済活動条件の保障

第33条 (労力採用)

 国際観光特区で企業は、共和国の労力と外国、または南側および海外同胞労力を採用することができる。


第34条 (観光特区での流通貨幣)

 観光特区で流通貨幣は、交換性のある外貨とする。

 交換性のある外貨の種類と基準貨幣は、国際観光特区指導機関が関連機関と合意して定める。


第35条 (外貨の搬出・搬入と送金、財産の搬出)

 国際観光特区では、外貨を自由に搬出、搬入することができ、合法的に得た利潤と所得金を送金することができる。

 投資家は、外国で国際観光特区に搬入した財産と国際観光特区で合法的に取得した財産を経営期間が終われば、共和国領域外に搬出することができる。


第36条 (税金)

 国際観光特区で企業と個人は、関連法規に定められた税金を納めなければならない。

 空港、鉄道、道路、港湾、発電所建設のような特別奨励部門企業には、税金を免除したり、減免したりする。


第37条 (物資の搬出・搬入)

 国際観光特区では、定められた禁止品を除いて経営活動に関連する物資を自由に搬入、搬出することができる。


第38条 (関税免除および賦課対象)

 国際観光特区では、特恵関税制度を実施する。

 国際観光特区開発と企業経営に必要な物資、投資家に必要な定められた規模の事務用品、生活用品には関税を適用しない。

 関税免除対象の物資を国際観光特区外に売ったり、国家が制限する物資を国際観光特区内に搬入する場合には関税を賦課する。


第39条 (人員、輸送手段の出入りと物資の搬出・搬入条件保障)

 国際観光特区管理委員会と関連機関は、国際観光特区の開発、企業活動に支障がないよう人員、運輸手段の出入りと物資の搬出・搬入条件を円滑に保障しなければならない。

 指定された空港を通じて国際観光特区に出入りする場合には、空港通過税を賦課しない。


第6章 制裁および紛争解決

第40条 (制裁)

 この法に違反して国際観光特区の管理・運営と観光事業に支障をきたしたり、企業、個人に被害を与えた者には、情状によって原状復旧、または損害補償をさせたり罰金を賦課したりする。

 共和国の安全を侵害したり社会秩序を甚しく違反したりした場合には、関連法によって行政的、または刑事的責任を負わせる。


第41条 (紛争解決)

 観光地区の開発と管理・運営、企業の経営活動に関連して発生した意見の相違は、当事者間に協議の方法で解決する。

 協議の方法で解決されない場合には、当事者らが合意した仲裁手順によって解決したり共和国の裁判手順によって解決したりする。

2011.6.2 朝鮮中央通信ホームページ




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