朝鮮の法律

社会保障法について
-2008年5月23日「民主朝鮮」解説-


 朝鮮民主主義人民共和国の最高人民会議常任委員会および内閣機関紙「民主朝鮮」(5月3・4・14・16・23日付)は、同国で制定された社会保障法に関する解説記事を掲載した。その全文は次のとおり。


(1)

 金正日総書記は次のように指摘した。

 「我が国で社会保険制と社会保障制による恩恵は、国家的、社会的負担によって施され、法的にしっかりと保証されています」

 社会保障法は全6章49条で構成されている。ここには、社会保障申請と社会保障金の支払い、社会保障機関の組織・運営における原則と方途、手続き上の問題が記されている。

 第1章社会保障法の基本(第1条~第8条)には、社会保障法の使命と社会保障対象、社会保障事業を改善、強化するうえでの原則が規定されている。

 社会保障法の使命を正しく規定することは、社会保障法を制定し、適用するうえで非常に重要な意義を持つ。

 第1章はまず、社会保障法の使命について規定している。

 社会保障法の使命は、社会保障事業において制度と秩序を厳格に樹立し、人民の健康を保護し、彼らに安定した幸福な生活環境と条件を与えることに貢献するものである。

 国家が人民の健康と生活に全面的な責任を持って見守ることは、我が国の社会主義制度の本質的優位性の一つである。我が国において、社会保障事業は国家が責任を持って勤労者の健康を保護し、増進させ、労働能力を失った人と身寄りのない人に安定した生活を保障する人民的施策である。社会保障法は、我が国の社会主義制度の本質的優位性に即してその使命を正しく規定することによって、党と国家の賢明な指導のもとに社会保障事業で収めた成果を法的に強固にし、社会保障事業を社会主義制度の本質と革命発展の要求に即していっそう改善、強化していける広い道を設けている。

 社会保障対象を正しく選定する問題は、社会保障法の特性と優位性を規定する重要な問題である。

 第1章ではまた、社会保障対象に高齢や病気、または不慮によって労働能力を失った人、身寄りのない老人や子供が属するということを記している。このような法的規定は、我が国での社会保障事業が徹底して広範な勤労人民大衆の健康と利益のための人民的施策として強化、発展するうえで確固たる法的保証になっている。

 社会保障法の基本原則を正しく規定することは、社会保障事業を人民の利益に即して行ううえで重要な意義を持つ。

 第1章は次に、社会保障事業と関連した基本原則を記している。

 まず、社会保障部門の投資原則を規定している。

 社会保障制を絶えず強化、発展させることは、我が共和国の一貫した政策である。国家は社会保障部門に対する投資を系統的にふやし、その物質的・技術的手段を改善、強化する。

 また、優遇原則と社会保障機関の運営原則、社会保障金支払いの拡大原則を規定している。

 それによると、国家は祖国と人民のために功労を立てた革命闘士、革命烈士の家族、愛国烈士の家族、社会主義愛国犠牲者の家族、戦争老兵、栄誉傷痍軍人を社会的に優遇するようにし、社会保障者が安定した幸福な生活を送れるよう社会保障機関を現代的に整え、日常的に管理、運営する。財政収入がふえるのに伴い、社会保障金の支払いを系統的に増ふすことにする。

 第1章はこのほかにも、国家が人民に対する教育事業を強化し、彼らが社会保障者を積極的に支援するようにし、社会保障分野において外国、国際機関との交流と協力を発展させることについても記している。

 社会保障法の第1章に記されたこのような法的規定は、社会保障事業が人民の健康を保護し、彼らに安定した幸福な生活環境と条件を与えることに積極的に貢献するうえで確固たる法的保証となっている。


(2)

 金正日総書記は次のように指摘した。

 「国家社会保険制と社会保障制を正確に実施しなければなりません」

 社会保障法第2章(第9条~第16条)には、社会保障申請と関連した手続きと方法上の問題が記されている。

 社会保障申請を正しく行うことは、人民が社会保障の恩恵を正確に浴するようにするための重要な要求である。

 社会保障法第2章は、機関、企業所、団体と公民は、社会保障申請秩序を厳格に守らなければならないということを社会保障申請の基本要求として記したのに続き、まずそれを実現するうえでの手続き上の問題を規定している。

 社会保障申請で重要なことは、申請文書を提出することである。申請文書がなければ社会保障申請を行えない。だからといって、社会保障申請は社会保障を受ける人が提出することはできない。

 社会保障申請は、社会保障を受ける公民が属した機関、企業所、団体が行い、機関、企業所、団体は社会保障を受ける対象があらわれた場合、社会保障申請文書を作成し、対象によって中央労働行政指導機関、または人民委員会に提出しなければならない。

 社会保障申請文書には、社会保障申請の承認に必要な内容が正確に記されなければならない。

 社会保障申請文書には、社会保障を受ける公民の氏名と年齢、職場の職責、申請理由と経歴、受勲関係のようなことを正確に記し、機関、企業所、団体の公印を押捺し、労働手帳とその他の必要な書類を添付しなければならない。

 病気、または負傷を理由に社会保障申請を申し込む場合には、当該の保健機関が発給した医学鑑定書を添付しなければならない。

 機関、企業所、団体が提出した社会保障申請文書は、当該機関の審議を受けなければならない。

 中央労働行政指導機関と当該の人民委員会は、社会保障申請文書を受け付けた場合、随時に審議して承認、または否決する決定を下し、社会保障申請文書審議で承認された公民を社会保障者として登録しなければならない。社会保障者に登録された公民には社会保障金証書を発給し、社会保障者登録状況をその人が居住する地域の里、邑、労働者区、洞事務所に通知しなければならない。社会保障者が居住地を移動した場合には、その人の社会保障登録資料を当該の居住地域人民委員会に送付しなければならない。

 第2章にはまた、当該人民委員会が病気、または負傷によって社会保障を受けていた公民が健康を回復した場合、1カ月以内に相当の仕事を保障しなければならないということを記し、社会保障者の任務についても規定している。

 社会保障法によると、社会保障者は次のような義務を負う。

 労働能力喪失による社会保障者は、定期的に労働能力に対する医学鑑定書を受け取り、居住地、家族数、その他の生活上の変動が生じた場合には5日以内に当該の里、邑、労働者区、洞事務所に通知しなければならない。国家の法規範と規定を自覚的に守らなければならず、社会保障年金と補助金支払いのため、当該が求める資料を随時に提出しなければならない。社会保障金証書を他人に貸し出すことはできず、紛失、汚損した場合には随時に再発給を受けなければならない。

 社会保障法の第2章に記されたこのような法的規定は、社会保障申請において定められた制度と秩序を徹底して守るようにすることで、法を正確に執行することのできる法的保証を与えている。


(3)

 金正日総書記は次のように指摘した。

 「すべての部門、すべての単位では、国家社会保険制と社会保障制を正確に実施し、労働能力を失った人と身寄りのない老人、子供たちに心配をせずに生活できる条件を責任を持って保障しなければなりません」

 社会保障法第3章には、社会保障金の支出における原則が記されている。

 社会保障金は、社会保障者の生活を保障するために支出する資金である。

 第3章社会保障金の支出(第17条~第23条)には、財政銀行機関と当該人民委員会が社会保障金を正確に支出しなければならないということを社会保障金支出の基本要求として記したのに続き、まず社会保障金の支払い対象を規定している。

 社会保障金の支払い対象を正しく定めてこそ、社会保障金が徹底して社会保障者の生活保障に支出される。社会保障法は、社会保障金は社会保障年金、補助金の支払いと社会保障機関の運営、障害補助器具の生産、供給のような目的に支出するということを規定している。社会保障年金は、社会保障年金を受けている人が国家から授かった金であり、補助金は一定の対象に国家的、または社会的に援助するために授ける金であり、ここには老齢補助金、労働能力喪失補助金、遺族補助金、奨励補助金、一時的補助金、産前産後補助金などが属する。社会保障機関には栄誉傷痍軍人保養所と養老院、養生院のようなものが属し、障害補助器具には矯正器具、三輪車、メガネ、補聴器などが含まれる。社会保障金の支払い対象に対するこのような法的規定は、国家が社会保障金支出計画を正しく作成し、正確に執行するうえで非常に重要な意義を持つ。

 第3章ではまた、社会保障金の支払いにおける原則を記している。

 社会保障者は社会保障金証書に従って社会保障年金と補助金を受給し、社会保障年金、補助金の支払い対象と基準を定める事業は中央労働行政指導機関が行う。社会保障年金と補助金は社会保障者に登録された月から計算して支払われ、社会保障年金と補助金の支払いを中止、変更すべき事由が発生した場合にはその翌月から払いを中止、または変更する。社会保障年金、補助金を払いすぎたり、払い足りない場合には、その年に限って払いすぎた分を回収したり、払い足りない分を追加で支払う。

 しかし、法秩序に反する行為によって死亡したり労働能力を失った場合、違法行為によって法的制裁を受けている場合、虚偽の社会保障申請を行った場合、国家から生活上の援助を別個に受けているなどの場合には、社会保障年金と補助金を支払わない。社会保障者に二つ以上の社会保障年金、または補助金を受け取る事由が発生した場合には、その内本人に有利な一つの社会保障年金、または補助金を支払う。

 第3章に記されたこのような法的規定は、社会保障金の支出が徹底して国と人民の利益に即して支出されるうえで確固たる法的保証となっている。


(4)

 金正日総書記は次のように指摘した。

 「社会保険制と社会保障制を正しく実施するためには、静・休養所と栄誉傷痍軍人保養所、養老院、養生院を立派に整えてその運営を改善しなければなりません」

 社会保障機関をしっかり組織して運営することは、社会保障者の生活条件を円滑に保障し、その人たちが何の不便なく生活できるようにするための重要条件である。

 社会保障法第4章社会保障機関の組織運営(第24条~第36条)では、中央労働行政指導機関と当該人民委員会が社会保障機関の運営システムを正しく樹立し、絶えず改善していくことを社会保障機関組織運営の基本要求と記し、それを実現するうえでの原則を規定している。

 社会保障機関の組織運営と社会保障機関で生活できる対象を規定している。中央労働行政指導機関と当該人民委員会は、栄誉傷痍軍人と身寄りのない老人、障害者の生活保障のため栄誉傷痍軍人保養所、養老院、養生院のような社会保障機関を組織し、責任を持って管理運営しなければならない。身寄りがなかったり、身寄りがいてもその扶養を受けにくいと認められる社会保障者は、社会保障機関で生活することができる。扶養義務者がいる対象を社会保障機関で生活させる場合には、本人の同意を得なければならず、この場合、扶養義務者は毎月定められた扶養料を社会保障機関に払わなければならない。

 第4章ではまた、社会保障者の派遣(入所、入院)と関連した手続き上の問題を記している。

 社会保障機関で生活しようとする対象が発生した場合、その人が属した機関、企業所、団体と里、邑、労働者区、洞事務所は、社会保障者派遣申請文書を作成し、当該人民委員会に提出しなければならない。社会保障者派遣申請文書には社会保障機関で生活する公民の氏名と年齢、申請理由、扶養関係などを記す。当該人民委員会は社会保障者派遣申請文書を受理した場合、審議・決定し、栄誉傷痍軍人保養所と他の道にある養老院、養生院などに送る対象については上級人民委員会を経て中央労働行政指導機関の承認を得なければならない。当該人民委員会は、社会保障機関で生活することになった社会保障者に社会保障者派遣証を発給し、社会保障者派遣証は当該の社会保障者が属した機関、企業所、団体と里、邑、労働者区、洞事務所に送付する。社会保障者を社会保障機関に派遣する事業は、その人が属した機関、企業所、団体と里、邑、労働者区、洞事務所が受け持ち、社会保障者派遣証を受理した機関、企業所、団体と里、邑、労働者区、洞事務所は社会保障機関で生活するために派遣される社会保障者を安全に連れて行かなければならない。この場合、社会保障者とその人を連れて行く公民の旅費は当該機関、企業所、団体が負担する。

 第4章ではまた、社会保障者の生活条件保障と生活保障施設の整備、社会保障者の健康保障などでの原則的要求を規定している。

 社会保障機関は、社会保障者が何の不便もなく生活できるよう条件と環境を十分に整えて面倒を見るようにし、学習室、寝室、食堂、診療所、理髪室、洗面所など厚生施設を現代的に整え、社会保障者に必要な生活必需品を定められたとおりに整えなければならない。社会保障者の健康に常に関心を払って治療、看護をしっかり行い、専門治療を受ける対象が発生した時には、随時に専門病院に送って治療を受けられるようにしなければならない。

 第4章ではこのほかにも、社会保障者を社会保障機関から出所、退院させる場合と社会保障機関を出所、退院する社会保障者の生活条件保障と関連した問題も記している。

 保護者、扶養者があらわれたり、労働行政機関の労力派遣状を受けた場合、扶養義務者が3カ月以上の定められた扶養料を払わなかったり社会保障機関の扶養を受けなくても自力で生活できると認められた場合には、社会保障者を社会保障機関から出所、退院させ、当該人民委員会と機関、企業所、団体は社会保障機関から出所、退院した社会保障者に住宅や仕事などをその都度提供しなければならない。

 社会保障法の第4章に記されたこのような法的規定は、社会保障機関の運営システムを正しく樹立して絶えず改善することのできる正しい方途となる。


(5)

 金正日総書記は次のように指摘した。

 「国家社会保険制と社会保障制を正しく実施してこそ、勤労者が社会主義制度の真の優位性と我が党の人民的かつ共産主義的な施策について実生活を通じていっそう深く感じ、社会主義制度の強化発展のためにすべてをささげて働くことができます」

 社会保障法第5章と第6章には、補助器具の生産、供給と社会保障事業に対する指導・統制における原則が規定されている。

 補助器具は障害者の必須的な生活補助手段である。

 第5章補助器具の生産、供給(第37条~第43条)では、当該機関、企業所が障害者に必要な補助器具を随時生産、供給しなければならないということを基本要求と記し、その実現においての問題を規定している。

 まず、補助器具の生産と供給における問題を記している。

 中央保健指導機関と当該機関、企業所は、矯正器具、三輪車、メガネ、補聴器などの補助器具を計画的に生産し、保障しなければならず、補助器具生産企業所は障害者の性別、年齢、障害程度と好みに合った各種の補助器具を製作しなければならない。

 補助器具の供給を求める障害者は申請書を作成し、当該人民委員会に提出しなければならず、申請書を受理した人民委員会はそれを正確に検討して補助器具供給承認文書を発給しなければならない。

 補助器具は定められた機関、企業所で供給し、補助器具の供給を受ける障害者は当該人民委員会が発給した補助器具供給承認文書を当該機関、企業所に提出しなければならない。当該機関、企業所は補助器具供給承認文書に従って補助器具をその都度供給しなければならない。

 第5章にはまた、補助器具の値段と障害者が補助器具を供給されるために行き来したことにかかった旅費の負担と補助器具の修理、矯正器具招待所の組織・運営と関連した問題も規定している。

 補助器具の値段と障害者が補助器具を供給されるために行き来したことにかかった旅費は国家と本人が負担し、補助器具を供給した機関、企業所は使用過程で補助器具が使えなくなった場合、それをその都度修理したり、再度製作しなければならない。矯正器具生産企業所は障害者のための矯正器具招待所を設置し、障害者が矯正器具を供給されるために滞在した期間、生活上の不便がないよう便宜をはからなければならない。

 第5章に記されたこのような法的規定は、障害者の必須的な生活補助手段である補助器具をその都度生産、供給し、障害者の便宜を最大限にはかるうえで重要な法的保証を設けたことになる。

 社会保障事業に対する指導・統制を強化することは、国家の社会保障政策を徹底して執行するための根本保証である。

 第6章社会保障事業に対する指導・統制(第44条~第49条)では、国家が社会保障事業に対する指導と統制を強化するうえでの一連の問題を規定している。

 社会保障事業に対する指導は、内閣の統一的な指導のもとに中央労働行政指導機関と当該機関が行い、国家計画機関と労働行政機関、保健機関、財政・銀行機関、人民委員会は社会保障事業に必要な労力、資金、設備、物資をその都度保障しなければならない。社会保障事業に対する監督・統制は、当該中央機関と監督・統制機関が行う。

 社会保障法第6章に記されたこのような法的規定は、国家の社会保障政策をさらに徹底して執行していくうえで確固たる法的保証となっている。

 社会保障法の採択は、社会保障事業を強化するうえで既に収めた成果を法的にいっそう強固にし、社会主義の本性と現実発展の要求に即して社会保障事業を改善、強化していくうえで重要な意義を持つ。

 すべての部門と単位では、社会保障法の要求をしっかり把握してその執行のための事業を実質的に組織することで、我が国社会主義制度の真の優位性を余すところなく示すことに積極的に貢献しなければならない。
出典:2008.5.3・4・14・16・23「民主朝鮮」解説(全文)-朝鮮通信=東京
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